第24話 推測ではなく憶測か……
冒険者たちとの戦いを終えて、少しだけ時間が経過した。
体も順調に回復している。
根元から切られた外回りの大きい触手も、頭上にこぶができ
治ってくる兆候がみえる。
再生しないと思ったが、その心配はどうやら杞憂だった。
頭部の中の細い触手も短めだが生えてきている。
私の中にある、魔核が傷ついてしまって、元の姿に戻れるのか心配だったが今のところは問題はなさそうだ。
魔核に回復のイメージを流すと治りが早いような気がする。
この世界ではモンスターの魔核がどういう扱いにされているかわからない。
ゲームや漫画では魔法アイテムに加工できる材料になっている設定が多くある。
魔法を補助する武具や防具、アイテムになるらしいが、この世界でも同じような扱いになっているのだろうか?
私が人間に討伐されると、間違いなく魔核を奪われるだろう。
それも高値で取引されるという。
盗賊の冒険者が話していたな、私の魔核を手に入れれば生涯は遊んで暮らせる。
それだけの価値があるとは、ダンジョンに一攫千金を求めて来る冒険者が間違いなく現れる事が予想される。
いや現実に現れているのではないのか?
今後のために傷の回復と、冒険者の対応策を考えないといけない。
万が一今すぐにやってきたら、何もできず狩られてしまうだろう。
少しでも傷を治すのに、心がけなければいけないな。
不明な事が多く、完全回復するまで冒険者たちの情報をあくまで推測のいきで、考えてみたいと思う。
この異世界には人間タイプの生物が存在する。
人間と判断していいだろう。
それも魔法が使えるゲームのような、中世ファンタジーの世界を描いたような暮らしをしているようだ。
女性の魔法使いが、ローパーの魔核が金貨5万枚とかで売れるとか話していたな。
それも国家間で取引されるとか言っていた。
人間の国家が多数存在し、金貨と言う信用できる基軸通貨がある文化形態を持った人間社会が構築されているのだろう。
知識がある人間タイプの生命体が存在しているのがわかっただけでも良いだろうか。
ここのダンジョンを抜ければ、地上界があり、人間社会の文明が広がっている世界があると判断していいだろうな。
問題はモンスターと話しあいができるかと言う事だけど、さすがにそれは無理な話だろうな。
前世が人間だから一応、知識があるモンスターだよ。
話せば理解しあえるなんて無理そうか?
見た目がかわいいモンスターだったら可能性はあるが、この姿ではさすがに厳しいと言ったところだな……
…… …… ……
そういえば、このダンジョンやはり大きさがとてつもなく巨大にできている。
自身が小さいのかと思っていたが勘違いだったようだ。
冒険者たちのサイズを考えて見れば一目瞭然だ。
冒険者アレスの見た目は私から見て180センチくらいの身長だった。
一番大きかった、剣士のガリウスとか言うやつはフルプレイトメールで兜をかぶった大柄な男だったけど、見た感じは、230センチくらいの身長だっただろう。
鎧と兜、レッグアーマーを入れてあの大きさだから実際の身長は210センチくらいと考えていいと思う。
女性の冒険者も160センチから180センチくらいの人たちだった。
前世での地球人とほぼ体格は変わらないと言っていいだろうな。
巨大に造られた謎の多いダンジョンだ。
…… …… ……
冒険者の持ち物を調べてみようか。
アレスが持っていた装備はひととおり私が持っている。
神剣?、鎧、ガントレッド、レッグアーマーを調べてみたらどれも、細かく彩飾などがほどこされていた。
美術品といっていいほど装飾が細かい。
私の胃液でも解けないほど硬い金属でできている。
この金属を溶かし、成型するのならばかなりの金属加工技術が発展しているものと推測される。
細かい装飾もあるので職人の技術も高い水準だろう。
私に切りかかってきた、ギドと言う剣士は、ドワーフにこしらえさせたミスリルの剣と言っていた。
と言うことは人間以外にドワーフも存在すると言うことだな。
これは確定でいいだろう。
それも人間と共存している可能性がある。
ドワーフの国とかもありそうだな。
他にはどんな種族が存在するのだろう。
私的にはエルフが存在してくれれば良いと思うのだが……
なにも邪なことは考えてはいないよ。
エロゲーで女騎士やエルフが触手系モンスターに捉えられひどい目にあうのが定番だけど私はそんな事は考えていないから。
ただ奇麗なエルフの人たちとお近づきになりたいと言うのが本心だね。
なぜか知らないが、女騎士とかエルフで反応してしまうんだよ。
おかしいな、前世でちょっとだけゲームで遊んだだけなのに、なんかあるのだろうかローパーって?
…… …… ……
そういえば女盗賊と戦っていた時かなり気になったことがあった。
気になったと言うより疑問に思っていることがあるのだ。
爆弾玉が少なくなった時に、どこから補充しているのかわからなかったのだ。
玉の大きさは直径2センチくらいだったか、左手に4個持ちながら右手に1つ魔力を込め投げてきたので、それはわかったのだが、爆弾玉をどこから補充していたのか不明だったんだよ。
女盗賊もそうだけど、冒険者たち全員が装備以外の荷物を持っていなかったのが気になる。
ダンジョンに入るのだったらそれなりの食糧と水が必要だ。
ここまで来るのにどうしてなのか不思議に思った。
女盗賊は爆弾玉を私に投げてきたのは20個くらい使っているはず。
戦いの最中で、余裕もなかったのだが、20個の爆弾玉どこからとりだしたんだ?
他の冒険者もそうだ荷物を持っていない。
これはもしかして、漫画でよくある空間魔法? 時空魔法とか使って、別の空間からアイテムとか取り出していたのではないかと思っていた。
よく言われる空間収納魔法の事だ。
そうじゃなければ説明がつかない。
冒険者たち全員食糧もなしでダンジョンに来ているとは考えられない。
食べなくても生きていけるって事があるのだろうか?
服とかだって汚れるから着替えとか必要だし、それに最低限の日曜雑貨品もあると結構な量になるはず。
バックパッカー系の荷物持ちとかいればわかるのだが、アレスたちはバリバリの戦闘系のパーティーだったと思う。
他には誰かがついてきた感じがないので、何か秘密があるはずだ。
魔法で腹がすかなくなるとかできるのかな?
確か体調を調整する魔法があってトイレとか回数を減らすとか、体と服が汚れても浄化の魔法できれいにできるとか、この異世界もかなりのご都合主義の世界なのか?
まさかと思うが、モンスターを狩って食べていたのだろうか?
ダンジョン内で自給自足とかありえるのかな。
水は魔法で精製すれば飲めそうだし、火も魔法で使える。
モンスターを狩って食糧を補充する。
文化形態が違えば食べ物だって違うから、いちがえにないとは言いきれない。
地球でも国とかで食生活がまったく違うし、まして国の中でも地方でさえ食べ物の区別がある。
ここは異世界だ、何を食べているのかわからないしな。
私みたいなモンスターを狩って食糧にしている世界だったら怖い。
ゲームのモンハンみたく大きな肉をあぶって丸焼きにして食べていたりして、地上ではモンスターの肉が食料扱いの可能性だってあるな。
なんてことだそう考えると上階を登って地上へ行くのはとても危険じゃないか……
…… …… ……
そういえばアレスという冒険者、あいつだけは違っていたな。
人間の中でも種族がいろいろあるのか?
あきらかにあいつだけは、ほかの冒険者と違いすぎていた。
アレスは変身した。
それもスーパー〇〇〇人に、もしかして異世界の人間には変身できる種族とかいるのだろうか?
それってやばくない?
スーパー〇〇〇人のバーゲンセールだって言うことになっていたらどうしよう。
あんなのが地上にゴロゴロいたら大変だよ。
確か〇〇〇人王子のベ〇ータって、最初に登場した時、惑星を襲って敵らしい爬虫類の生物を、生で手足とかかじっていなかったか?
それと同じ事をしていたら大変だ。
モンスターのことを食糧にしてる可能性があるのか?
生で食べてしまうと言う可能性もあるのか!
この異世界の人間てそんなにワイルドなのか。
本当にモンスターのこと食糧にしてる可能性がある。
これじゃ恐ろしくて地上に出られないじゃないか。
…… …… ……
今のままだと、戦力不足だ。
もっと強くならなければいけない、いつここへ冒険者が来るともかぎらないからな。
より強くなる方法を考えなくてはいけない。
このダンジョン内では、うまくいっていると思っていたけれど、あの一件で今までの考えがすべて吹き飛んでしまった。
このフロアには子供のドラゴンがいるけど、そのくらいだったら勝てると思っていたのに。
地上ではドラゴンとか普通にいて人間と生存競争をやっている可能性もある。
このダンジョンは巨大だ、モンハンみたいに巨大なモンスターが地上にはたくさんいる可能性もある。
私が思っているより危険な世界が広がっているかもしれない。
なんてことだ、中世魔法ファンタジーをモンハンの世界とかけあわせた異世界だったのか。
思った以上にやばい異世界だぞ。
…… …… ……
今後やるべきことを整理しなくてはいけない。
まずは魔核での魔法力の底上げをどうできるか、今後使えるかもしれないスキルと魔法の検証。
または今までは使えなかった魔法の再検証も考えよう。
最近、練習をはじめた透明化能力のスキルの習得を一刻も早くやらないといけない。
冒険者たちも同じ、透明化能力を使っていた。
身を隠すのに有利なスキルがほしい。
索敵の制度も上げなくてはならない。
冒険者の反応をまったく私は感知できなかった。
後ろにいた相棒は震えていたのでわかっていたのだろう。
冒険者たちの気配の消す能力が高いのか、それとも特別なアイテムを使って気配を消していた可能性もある。
ダンジョンがやけに清んでいたから、何か仕掛けたのは確かだ。
アイテムの効果であっても看破できない事が問題なのだ。
索敵制度をもっと上げる。
もしくは看破できる魔法の習得をしなくてはならない。
できることをやるじゃなくて、できないこともやらないといけないとは、この異世界は厳しいところだな。
マニュアルなんてありもしない世界だからよけいか……
やる事が多すぎる。
そもそもできるかわからないではないか?
『あきらめたらそこで試合終了ですよ』
! なぜか安〇先生の声が聞こえた。
私の場合、試合終了と言う事は死亡という事なんですけど……
とんでもない異世界に転生してしまった。
それもモンスターとして、条件が悪くない、厳しすぎない、不公平を感じるよ。
有利になるため、先手を取りたいんだ。
透明化能力のスキルを使えば先手をとれる。
完全ではないが少しだけ透明になれることがある。
もうすこし、もう少しで完全に使えるはずだ。
覚えたら世界が変わるかもしれない。
新たに覚えなくてはいけない魔法もある。
空間魔法と時空魔法だ。
女魔法使いが言っていた。
ローパーは空間魔法と時空魔法が使えると……
そういえば空間魔法と時空魔法は、どちらも試したことがなかった。
遊んでいたゲームにはなかったんだ。
ただ無属性魔法と闇魔法に分類されて空間魔法が入っていたのだ。
空間魔法と時空魔法はどれも高い難易度のスキルになっていたのでまだ高位のスキルはためしていない。
試して覚えなくてはいけないことになってしまった。
能力が低くて蹂躙されるのは嫌だ。
どこまでできるか試してみるしかない。
今回は情報は少なかった。
あくまで推測でしかないけど、もし私が思っているような世界が地上にあるならば絶対に行きたくない。
推測が当らない事を願うばかりだ。
でもね、悪い時だけいつも当たってしまうのがいやなことなんだよ。
いや、これは推測ではなく、憶測か、なんの根拠もない、私のマイナスな考えを思っただけだろう。
憶測であってもらいたいな。
…… …… ……
あ、だいじなことを忘れていたな。
神剣だ。
アレスが持っていた神剣・神威だったか?
これがどんなものか調べなくてはいけない。
神剣と言うほどだ、能力に興味が引かれるな……




