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第22話 Re:勇者アレス


 アストリア大陸に衝撃が走った。


 魔王の1柱 暴食の魔王グラトニー・パイロンが突如として人間界に宣戦布告をしてきたのである。


 アストリア大陸各地に魔王軍が侵攻をはじめた。


 ここ、小さな村落、ナッツ村も例外ではなかった。

 魔物の襲撃があったのだ。


 突然、何の前触れもなく1匹の大きな魔狼が複数の魔獣型モンスター50匹以上を従えて村を蹂躙じゅうりんしはじめた。


 統率をしている大きな魔狼は全長4メートルはあり毛並みは漆黒の色をしている。


 銀色の兜をかぶり鋭い突起物を仕立てた鋼鉄の鎧をつけている。


 モンスターが、それも犬型の魔獣が武装をしているのか疑問があるが、魔王軍に関係していることは確かだ。


 ナッツ村には襲われる理由があった。

 この村には勇者『神の血を引く者』がいるとうわさされている。


 300年前にこの村から1人の勇者が排出しているからだ。


 勇者とは神の天啓を受け選ばれたもの、または神の血をやどりしものが勇者と呼ばれている。


 300年前の勇者は神から選ばれたのではなく神の血をやどりしものとして勇者となった。

 太古の昔の神が人間と交わってできた家系の者たちである。


 それは遙か昔に途絶えているが、まれに先祖返りで神の血が現われる者たちがいる。


 昔に勇者が排出されたという事だけで、この小さな村は目を付けられ襲われてしまったのだ。

 実際はなんの特徴のない貧しい農村だ。


 村人もわずか100人程度しかいない。


 突然の襲撃で村人たちはなにもあらがうこともなく殺されていく。


 そんな中に近い将来『勇者アレス』と呼ばれる者がいた。


 この魔王軍侵攻がのちに勇者アレスと呼ばれる若者にとっての悲劇の道がはじまる。


 …… …… ……


 突然の襲撃だったが母親たちがすぐに気が付いて、近くにいた子供たちを集める。


 納屋の床下への倉庫に連れて行き、ここに隠れているように言う。


 「アレス、ディーノ、ハンセン、フィル、ミーおまえたちは納屋へ隠れていなさい」



 「いい、ここからは絶対でちゃだめよ」

 「でもお母さんたちは」

 「私たちはあの魔物を追い払うから心配しないで、いい絶対ここからは出ないでね」

 そう言ってアレスの母親たちは出て行ってしまった。


 外では破壊音と獣が唸り声がなり響く。


 …… …… ……


 しばらくして音が鳴りやんだ。


 それから何時間がたったのだろうか?

 子供たちは言いつけを守っていまだに隠れている。


 …… …… ……


 隠れていたら床下の扉が突然開いた。


 もしかしてお母さんたちが魔物を追い払ってここへ来てくれたのかもしれないと子供たちは喜ぶ。


 ハンセンという子供がまっさきに納屋の倉庫から飛び出す。


 だが、目の前には1匹の大きな狼のモンスターがいた。


 目があった瞬間だったかハンセンは頭から食いちぎられた。

 それを見ていた子供たちは恐ろしくて何もできず呆然あぜんとしている。


 だが1人だけ違う子供がいた。


 アレスだ。


 仲の良い友達だったハンセンを目の前で食い殺されて、怒り、悲しみにとらわれている。


 それに母さんは……


 ちきしょう、僕に力があったらあんな獣などに……


 目の前の大きな魔狼はハンセンを食いちぎってアレスの方にむかってきた。


 その瞬間アレスの体が黄金の光に輝きはじめる。


 体は黄金の光をまとい、髪の毛は銀色に輝き目は赤く光っている。


 「殺す、母さんを、友達を、村のみんなにひどいことをした魔物は、すべて殺す」

 彼に宿っている神の血が目覚めてしまった。


 魔狼は体から発光する光で一端は後ろへ退くが、再びアレスをめがけて牙を突き立てた。

 アレスは襲ってきた魔狼を殴りつける。


 「バシュー」

 殴られた魔狼は頭が吹っ飛び、一瞬で絶命した。


 アレスは納屋から出て魔物たちを前に雄たびをあげる。


 「ウォー」

 魔獣たちにかかってこいといわんばかりに……


 それからアレスの蹂躙じゅうりんがはじまった。


 50匹以上いた魔物も残り10匹くらいに減っている。

 だが、アレスは力が目覚めたばかり、それに子供だ。


 力を使い果たし疲弊して這いつくばってしまう。


 そんな中、魔獣たちは一斉に襲いかかった。


 「母さん、みんなごめんよ、僕は仇をうてなかったよ」

 魔獣たちが襲ってきた瞬間、目の前にまばゆい光に包まれた美しい女性があらわれる。


 飛びかかってきた魔獣を弾き飛ばした。


 女性はアレスを抱え込み手を頭にかざす。

 アレスは意識を取り戻し、体力も回復させる。


 アレスは目を覚ます。

 女性はアレスに言う。


 「あなたはこれで良いの? あなたの力はこんなものではありません。

 さあこれを手に取りなさい」

 女性は一振りの剣を持っていた。


 「この剣を手に取って戦うのです。あなたならできます。

 この神剣・神威を手に取って」


 アレスは神剣を手に取りふたたび立ちあがる。


 村を襲っていた魔獣を1匹のこさず駆逐した。

 倒し終えた時には力を使い果たし倒れこんでしまった。


 村の様子は悲惨だ、村人のほぼ全員が殺されてしまったのだから。


 でも、ここから奇跡がおこる。 

 光に包まれた女性が魔法のようなものを唱え眩い光がさしたとき、倒れて死んでいた村人たちが生き返ったのだ。


 残念ながら魔獣に食われた人たちと、バラバラに引き裂かれた者たちは無理だったようだが、村人の40人ほどが生きかえったのだ。


 そして生き返った村人に女性はこう告げる。


 「私の名は慈愛をつかさどる女神イシス。

 この子アレスを勇者と認めるわ、この神剣・神威を授けます。

 世界で暴れている魔王を倒してください」

 そう言って眩い光を出し上空に消えていった。


 …… …… ……


 それから10年、アレスは魔王の1柱、暴食の魔王グラトニー・パイロンを打ち滅ぼし世界中に女神の意向を伝え名声を手にいれたという。

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