第150話 それぞれの見解
「しかしこの件に関しては、わからない事と不審な点が多くあるのだ」
「どういうことかなネイビス大公」
「使節団の暗殺未遂はここにいる冒険者が間違いなくおこなうように手配はあったみたいだが、ドラゴンと魔物が戦闘をした形跡が全くないのだ。
調査隊をその場にいかせたのだが、戦闘の形跡の確認がとれていない。
ドラゴンと奈落のダンジョンの魔物との戦闘だ、ただでは済まされてはいないはずだ。
話によれば、かなりの被害があったようだからな」
「ニキータと言ったな。
お前は本当に見たのだろうか?」
「間違いなく見ました。
戦いの余波で岩山が陥没し大きな穴が開き、森事態地形がかわりいたるところに大きな切り裂かれたような爪跡がありました。
天候も変わり雲が吹き飛んだのです。
それは間違いなかったことです」
「キリギスお前も同じものを見たのか」
「私も見ました。
間違い御座いません」
「しかし戦った形跡もなく、その時の大きな魔力も観測はされていない。
大きな魔力のぶつかり合いがあったら感じるはずなのだが、今回は人間界で察知していたものがいないのだ。
そこが疑問に思うところだ。
もう一度聞く、戦闘があったのは本当の事なのか、ニキータよ。
嘘ではすまされないのだぞ」
「本当の事です。
私を含め三人ほど生き残っていたのですが、他の二人は殺され私だけ魔物に捕まり生き残りました。
魔物に話しかけられて、怖くて使節団の襲撃の事と魔物に賞金を懸けたことを話してしまいました。
凶悪な姿をしていたので怖くて、聞かれたことを話してしまったのです。
魔物は話した後には、約束通り私を開放してくれました。
解放する前になにかおかしなことを魔物は口ずさんでいました。
こちらになにか得体の知れない力を持って者がくるかも知れないと、その意味はわかりません」
「得体の知れない者か」
ゼピュロス大佐は挙手をしている。
「ゼピュロス大佐、話をする事を許す。
何か知っている事があるのだな」
「はい、ドラゴンと魔物との戦闘は私は存じていなかったのですが、天候が変わった日です。
魔物が城壁前に現れた日です。
私の部下の一人が特殊な眼のスキルを持っており、魔物の発見をいち早く気づいたと話がありました。
その時の事ですが、私は見てはいなかったのですが、部下の話によりますと草原のところに魔物と宙を浮いている女性が現われ戦闘になったと聞きました。
時間帯は夕暮れ時だったと言う話です。
一方的に魔物が女性に対して、攻撃を繰り返ししていたと言う話でした。
その宙を浮いている女性は消えたり現れたりの繰り返しで攻撃を交わし続けていたらしいです。
それから魔物が大きな魔法を使ったらしく、その女性の周りの地面が大きく陥没し台地が掘り下げられた状態になったと聞きました。
かなりの上位魔法だと思われます。
おそらくはイカロス魔導法国で使われた、地面を陥没させたと言われる魔法だと私は思っています。
女性はまったく無傷で宙を浮いている足元以外、周りの地面はかなりの深さで陥没していたらしいです。
その女性の足元だけに地面が残っていた不思議な状態だと聞いております。
そのあと魔物が掘り下げた地中に逃げるように入ったみたいなのですが、陥没した穴から魔物が宙を浮き出てきて、そのあと地面に放り出されたらしいのです。
魔物が魔法でできた陥没た巨大な穴はおかしなことに、見る見るうちに塞がり始め、草も一気に生えだし、元の草原に戻ったようです。
そのあと女性にたいして魔物は平伏したように見えたと聞いております。
ちょうどその頃私も大きな地響きは聞きましたが、大きな魔力を使った感じは感じられていませんでした。
ですがその日以来、オルネニア武游国は天候は今のところ晴れ間が広がっている次第です。
もしかしたらですが、その女性の管理者と言う古代神が地形を元通りに直したのではないでしょうか?
古代神でしたら、あのような不思議な現象が出来てもおかしくはないと思います。
ドラゴンと魔物の戦闘の形跡は古代神が直してしまった可能性があると考えられます。
しかしドラゴンと魔物の魔力のぶつかり合いは、私もきづきませんでした。
その女性との戦いのときも大きな魔力は感じられませんでした。
なにか古代神がしていた可能性があると考えられます」
「ゼピュロス大佐よ。
そう言う事は早く言ってほしかったな。
私は聞いていないぞ」
「申し訳御座いません。
私もこの一連の混乱で、話しをするのを忘れておりました」
「仕方ないか。
ここで一番苦労しているのは君だからな、今回の事は何も言うまい。
遅かったが話をしてもらって助かる。
しかし君の話では管理者と言う古代神が地形を元通りに直した可能性が高いと言いたい事がわかった。
そう言う事だな」
「その通りです」
「そうか、しかし早く言ってほしかったな。
まあ、仕方ないか。
・・・
これで何となく一連の状況がつかめてきたのが分かったのだが、どれも私達では手に負えないことがあると理解はできる。
ある程度つながったので今回の成りゆきが見えてきたな。
ドラゴンが魔物と戦って打ち負けたのは事実なんだろう。
そににくわえ、ドラゴンを打倒した魔物が手も足が出なかった古代神が来ていると言うのも本当の事だろうな。
今この場に確実にいるのだろう。
天候を見ればわかると言う事なのだからな。
特使団暗殺未遂事件は本当の事なのだな。
これでも認めないのか、ゾイド子爵よ」
「・・・
ああ、俺がすべて指示を出しやったのは、間違いないぜ。
そのことは認めるぜ。
だがな、俺は本当にこの人間界の事と思ってやった事なんだよ。
わかるかよ、ネイビス大公。
お前だって若い時に冒険者をやっていたんだ、知っているはずだぜ。
力があり知恵がある魔獣なんて大森林地帯に多くいるのはな。
このオルネニア武勇国は大森林地帯に隣接している区域が多くある。
中で安全に過ごせる国とは桁が違う酷な環境だ。
魔王の襲来の時もしかり、俺達は常に魔獣などの危険に晒されている。
その為に森林地帯に接している近くの魔獣や魔物を多く討伐して安全を保っているんだ。
ここで魔獣と戦っている俺達の経験からだ。
俺は、魔獣なんかと交渉はしてはいけないと思っている。
過去に実際魔獣と取引して、人柱のいけにえを出した事が会っただろう。
お前も知っているだろう。
あの時は、俺達でチームを組んで討伐したんだからな。
大型の3つ首の虎の魔獣だ。
知能が高く普通に人間としゃべれる魔獣だったよな。
手下に30匹くらい大虎の魔獣を従えていたよな。
覚えていないとは言わせないぜ、お前の冒険者仲間だった奴も食われて殺られているんだからな。
俺の仲間も殺られている。
人柱でおびき寄せ、罠をかけ何とか討伐できたよな。
人柱でいけにえになった者も何人か死んでいる。
あんなことがあったんだ。
今回もこれからもそんなことは絶対させないと俺は思っているのだ。
此処にいる奴らで魔獣との争いがない国ではわからない話だろうがな。
俺達は国を持った、自国の国民が人柱のいけにえとして魔獣に渡されるなんて、そんなことあってはならねえんだよ。
魔物に舐められ遅れはとってはいけねえんだ。
俺は兄貴にも言ったそんなことは許されないとな。
しかし兄貴は俺の言う事などまったく聞く耳を持たなかった。
見もしない、魔物に恐れをなしているとは、兄貴には心底幻滅したぜ。
だから俺は兄貴を追い落とした、本当にこの国の為にだと思ってな。
俺は特使団の派遣に反対し潰そうとしたんだ。
魔物との交渉などしてはいけないと思ってな。
魔物との交渉でまた同じように人柱のいけにえを用意されるのが嫌だったからな。
もし、お前達交渉の中でいけにえを求められたら出せるのか?
自国の国民を魔物に売るのだぞ。
そんなことなどできはしないだろう。
殺るしかないんだよ。
魔物を殺して俺達自身で安全を確保するしかないんだよ。
この国を建ててから俺はそう思って魔獣を狩ってきた。
強くなろうと冒険者組合も大きくしたんだ。
だから交渉を決裂させる為、冒険者をよこしたんだ。
なにが悪いのだネイビス大公、てめえが先に奈落のダンジョンにアレス達冒険者を派遣しちょっかいを出したのが悪いんじゃねえか。
俺だってイカロスの爺とお前に言われなければ、あの時はそうかよと言って冒険者を派遣はしなかったぜ。
それにあの頃魔物が活発に動いていたのは確かだぜ。
被害もあっただろうが、お前も確認していただろう。
お前が奈落のダンジョンに冒険者をやる事を決めたんだ。
命張ってこの国を守っている、俺達冒険者に擦りてけているお前に何が言えるんだ。
どうなんだよ、ネイビス大公よ。
・・・
ゼピュロスお前もそうだ。
城壁で魔物から死守しているのは良く俺もわかっている。
今までの功績からして、俺も高く評価はしているんだぜ。
だからこそ、幻滅した。
なぜあの魔物が侵入した時点で戦わないんだ。
街を守るのは当然だろう、それがお前の仕事なんだからな。
魔物を抑えるのはいいぜ。
でも、なぜ抑えるだけで戦っていない。
お前はすぐにあきらめてネイビス大公に泣きついたよな。
魔物と戦いもしなかった奴が俺になんでそんなことを言える。
それに魔物と話会うなんて信じられないぜ。
お前は命欲しさに媚びたのだろう。
命欲しさに魔物とどんな取引を結んだ?
どれくらい国民を売って命が助かった?
俺からお前を見たらそう考えるのは当然だろう。
魔物となんか話し合いなど今までできた事が無いんだからな。
違うのかよ、ゼピュロス大佐さんよ」
・・・
・・・
・・・
「ハハハハハ、どちらとも答えられないだろうな。
ネイビス大公お前が指示したことで、こんな大騒ぎになったのは事実なんだからな。
俺がやったことが間違いだと言えんだろう。
間違っているか説明して貰いたいものだ」
「ゾイド子爵よ、だからと言ってお前が不謹慎な行動をとらなければ、息子が死なずに済んだかもしれないんだ。
魔物との交渉はうまくいっていた、それなのに」
「はあ?
息子だって、ああそうだったか。
俺に息子が修行がしたいと言って預けていたよな。
マクレシアンの事か、確かここではアドルと名乗っていたはずだな。
そうか、魔物によって殺されたか。
銀狼の城の一室の良い部屋を用意してやっていたからな、そこに居たのだったら俺の銀狼の城と共に崩れ去ったのだろう。
なんだよお前それって結局私怨じゃんねえかよ。
息子が殺されたからって俺に八つ当たりしているのか、奈落のダンジョンに冒険者を行かせたのはお前だぜ、あの魔物に殺されたんだったらお前が殺したと同じじゃねえか」
「だからと言ってお前が軽率な事をしなければ、銀狼の城ごと潰されはしなかったんだ。
お前が賞金など懸け魔物を怒らせなければな」
「意味が良くわからないぜ、なんで魔物が賞金懸けたのがわかって怒らねばならねえんだよ?
お前頭がおかしいのか?
魔物が賞金懸けて怒ると思うのがおかしいだろうよ。
それになんで魔物が俺の銀狼の城を壊すんだよ。
それこそ意味が分からねんじゃねえのか?
どうして俺の銀狼の城を壊したんだよ。
説明できるのか。
それこそおかしいぜ。
どうなんだよネイビス大公。
それにお前本当に魔物が約束を守ると思っているのか?
守ると思っているお前こそおかしいぜ。
・・・
本音は息子が殺されたから、俺に八つ当たりしているだけじゃ、ないのか。
ただの私怨でそれも、人に擦り付けて自分の責任をのがれているだけじゃねえのか。
最低な奴だな。
おれにどうこう言う資格がねえぜ。
自業自得ってやつだぜ。
元凶のお前がなにを言っているんだよ」
「そうだ、ただの私怨かも知れない。
八つ当たりかも知れないな。
ただ、俺の命令を無視し、軽率な行動をしたお前を許すことは出来ない。
・・・
貴様に決闘を申し込む。
これは俺の私怨だ。
息子を殺された、八つ当たりかも知れん。
俺に勝ったらお前の好きにしろ、大公の称号をくれてやるよ。
国を動かせるんだ。
そうなれば好きにあの魔物と殺れるだろう。
お前の好きに殺ればいい。
俺はお前を殺ってからあの魔物と戦う。
その前に邪魔なお前を梅雨払いしてやる」
「ハハハ、なんだ結局、お前も魔物と戦うんじゃねえのか。
それも息子を殺された私怨でな、自分が起こした自業自得のことでな。
・・・
いいぜ決闘を受けるぜ。
国は俺が貰う。
貰ったら人間界全部であの魔物に対して全面戦争仕掛けてやるよ。
その前にお前を殺してやる。
安心してあの世にいっていいぜ。
お前の息子の仇は俺が取ってやるからよ」
「・・・」
「確かこの金虎の城の五階に劇場があったな。
あそこは広いからなそこで決闘ができるか。
ネイビス大公、第5階の劇場で決闘をしようぜ。
あそこだったら観客も良く見える場所だ。
お前の最後を見るのにいい場所だろう」
「・・・
ああ、受けてたとう」
「ハハハ、これは面白くなってきたぜ」




