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第148話 荒れた会議


 白狐の月13日の朝、金虎の城、牙の間にネイビス連邦に連なる各国の代表と重鎮が集まっている。


 オルネニア武游国とイカロス魔導法国は残念なことに代表が死去した為、空席になっている。


 替わりに、貴族の今のところで一番高い位の者が参加しているが、席に付いておらず、他の国の重鎮と同じように周りに立ち並び、参加をしているのだ。


 その中には手縄をされ衛兵に両腕を掴まれたゾイド子爵もいた。


 関係者の重鎮も全員、誰もかけることなく参加している。


 ・・・


 ネイビス大公が話を始める。


 「先日に引き続き緊急の招集会議だが、朝から皆の者、集まってくれて礼を言う。

 挨拶はこんなところにする。

 今回の件は悠長に挨拶など語っていられる議題ではないのだからな。

 さっそくだが議題の内容の話しをするとしよう。

 ネイビス大公連邦各国に連なる国に、出没した奈落のダンジョンから来た魔物の事だ。

 その魔物については、先日からわかっていたと思うが、こちらでより詳しく分かった内容を話すとする。

 まずはその魔物について話しをしよう。

 私が調べあげた件を話そう。

 そのあとに証人として私で保護している、イカロス魔導法国の諜報員だったドル・ドレイクの話を聞いてくれ。

 私が話し終えたら連れてくる。

 彼の話は非常に重要だ。

 現在、オルネニア武游国の城壁外にいる魔物から聞いたと言う話だ。

 彼の話をよく聞いてから、これから今後の事を各国それぞれ対応を考えてもらいたい。

 それでは私から話を進めたいと思う」


 「おいおい、その前にオルネニア武游国の代表が座っていないじゃないか。

 ここには俺がいるっていうのに、これはないんじゃないのか」


 手縄をかけられ衛兵に掴まれている、ゾイド子爵は言い放った。


 「ゾイド子爵、ここは伯爵以上が発言を許された場所だ。

 私達が発言を認めなければ、余計な口を開いただけで、お前達下級の者が首が飛んでも仕方ないことだぞ。

 お前は今まで会議を開いてきて、何もわかっていなかったのか?

 これからお前には、嫌でもしゃべってもらうからな。

 おとなしくそこで突っ立ってろ」


 「なんだと、てめえ、この国は俺の国だぞ。

 他国の者が出しゃばった事をするんじゃねえ」


 「ゾイド子爵、勘違いして貰っては困るな。

 この国は私がオルネニア・ゾニス上級伯爵に預け、任せているだけだ。

 お前の国ではない。

 お前の事はこれから議論する名目に入っている。

 せいぜい今のうちにゾニス伯爵を追い落とし、この人間界に多大な被害をだした言い訳でも考えていろ。

 お前の言い分もあるだろう。

 我々の慈悲でこの場に生かされているのだからな、その点を良く考えておけ」


 「くそう・・・」


 「さて邪魔者がはいってしまったな。

 余計な話をしてしまった、時間がない、私から調べた事のいきさつを話そう。

 皆の者おとなしく聞いてくれ」


 ・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 私の話は以上だ。

 

 ・・・

 

 「ネイビス大公」


 「おっと、ロイロ・ディドリット上級伯爵、すまないがこれから連れて来る人物がいる。

 そいつの話を聞いてから発言してもらいたい。

 すまないな。

 ドル・ドレイクを連れて来い」


 ・・・


 「ドル・ドレイクを連れて参りました」


  衛兵の一人がネイビス大公に声をかける。


 「うむ、ご苦労。

 次にドル・ドレイクお前からだ。

 こいつはイカロス魔導法国で奈落のダンジョンを調べるために使わされていた諜報員だ。

 外にいる魔物に捕まっていたらしい。

 そこで魔物から聞いた話が合ったそうだ。

 こいつの話はかなり重要だ。

 真実かどうかは己で判断してもらいたい。

 ドル・ドレイク私に話した、外にいる魔物から聞かされたすべての事を此処で話せ。

 話しをしたら約束通り開放してやろう」


 ドル・ドレイクはネイビス大公の前に連れてこられる。


 外にいる魔物に会って、聞かされたことを皆の前で全部話をした。


 ネイビス大公がまだ聞いていなかった話も出てきたので、大公も一時混乱したが、それよりも周りに聞いていた他国の代表、重鎮の方が驚いている。


 あまりの突拍子の無い話の内容に、特に何も聞かされていなかった、3ヶ国のオルトス・アレイ上級伯爵、ロイロ・ディドリット上級伯爵、バルバトス・テスタロッサ上級伯爵は態度で取り乱し、事をあらわにし混乱している。


 友人でありネイビス大公の相談役であったアルザス・レイン上級伯爵も眉間に深い皺をつくり、腕を組んで考えている」


 話を一通り聞いて、最初に言葉を口にしたのは、ロイロ・ディドリット上級伯爵だった。


 ロイロ・ディドリット上級伯爵、彼女の治めるロイロ光輝翼国は光輝翼神を熱心に信仰している国だ。


 国の名前にもロイロ光輝翼国とつけており、ロイロ・ディドリット上級伯爵が熱心に光輝翼神を崇拝しているのが伺える。

 

 光輝翼神を祭った大聖堂もあり、聖地とされている。


 大聖堂に月一回は必ず光輝翼神が実際降臨して、神託を告げているのだ。


 神を存在する事を確認できている。


 国民の9割以上が光輝翼神を信仰した宗教に入り、熱心に修行をつんでいる。


 彼女も熱心な信者の一人で、大神官の位を持っている。


 光輝翼神に直接いただいた大神官の地位なのだ。


 現在29歳と言う若さで教会では大神官の地位についている。


 23歳と言う年の若さで大神官に昇りつめ、今もその地位に居続けているのだ。


 あと数年で光輝翼教会をまとめる大司教になると言う話も出ていたのだ。


 ロイロ光輝翼国は光輝翼神のお告げにより、国の運営方針を担っていた国だった。


 1カ月前に起きた天空が光り輝く異常現象が起こった時を境に、光輝翼神からのお告げは途絶えている。

 

 先月は一度も降臨していないし、神託も一度も届いていない状況だった。


 神託が途絶えたことにより、光輝翼神が亡くなられたと言われる話でもちきりになっている。


 現在、国は先日から大嵐に見舞われ、大混乱が起きている。


 神がお怒りになって私達に神罰を与えていると言う噂もあり、国民のほとんどが家で祈りを続けている状態なのだ。


 そんなさなか、この会議に出席し、先ほどの話を聞かされたロイロ・ディドリット上級伯爵だった。


 ・・・


 彼女のいでたちは大神官に相応しい高級な生地で出来た真っ白いローブの服を纏っている。


 金の刺繡をところどころに縫い合わせた神官を思わせる清楚な柄のいでたちで、頭からも白い頭巾で覆われている。


 白い頭巾から見える顔は整った顔立ちをしていて、エメラルドグリーン色の眼の色が映えて見える。


 白い頭巾から白銀色の髪が見え隠れしている。


 白い頭巾を取ればかなりの美貌を秘めた人物だと言われている。


 そんな彼女が大声で張り叫ぶ。


 「・・・

 そんな馬鹿な話はないわ。

 嘘よ、嘘よ、嘘よ、ネイビス大公、あなたは私を陥れようとしているの。

 この泥臭い、密偵の口から、言う事なんて信じないわ。

 嘘に決まっている。

 なんでこんな嘘をつくの?

 意味が分からないわ」


 ドル・ドレイクに対し憎悪の視線を見据える。


 「ネイビス大公この泥汚れた男を処罰して下さいな。

 光輝翼神を侮辱するんなんて許せない。

 今、この場で天罰をくれてやる。

 ネイビス大公この男を殺しなさい。

 神からのお告げよ。

 今、神託が下されました。

 神はお怒りになられております。

 目の前にいるこの泥臭い男を殺せと神託にあります。

 これは光輝翼神の神託を受けた私の啓示よ。

 早く殺しなさい。

 殺しなさいよ」


 先ほどの席についていた時は、確かに狼狽えて聞いていたが、まったく異なる豹変した様子を見せたので、この場にいる全員が驚いている。


 ロイロ・ディドリット上級伯爵の部下達もいつも見せない彼女の豹変ぶりに驚きを隠せないでいる。


 頭にかぶっている白い頭巾を取り、ドル・ドレイクに投げつけた。


 評判通り、美しい顔立ちをしているが、長い髪を乱し怒りにみちた形相でドル・ドレイクを睨みつけている。


 「お、落ち着けロイロ・ディドリット上級伯爵、彼の言ったことは調べにより真実性が高いだけだ。

 本当かどうかは定かではない。

 それに外にいる魔物からあくまでこいつが聞かされた話だ。

 こいつには関係ない。

 少し落ち着いてくれ」


 「落ち着けですってネイビス大公、神を侮辱されて落ち着いているわけがないでしょう。

 あなたが殺さないのだったら、私がやって殺るわ。

 これは神を冒瀆した、神罰よ、神の裁きを受けなさい」


 そう言って席を立ちあがりドル・ドレイクの元に向かう。

 

 ドル・ドレイクに向かいあい右手の拳で殴りつけようとする。


 衛兵がドル・ドレイクの前に割り込み、すんでのところでドル・ドレイクは難を逃れる。

 

 「何をするのそこをどきなさい。

 殺す、殺してやるわ、神の裁きを受けなさい。

 そう言って暴れだし、立ち塞いでいる衛兵に対して暴力をふるう」


 「ドル・ドレイクお前の話は聞き終わった。

 約束どうり解放してやる。

 この部屋から直ちに立ち去れ」


 ネイビス大公はそう言ってすぐさまドル・ドレイクを部屋から追い出した。


 場は騒然となっていたがドル・ドレイクを部屋から追い出したことにより静まり帰ってきた。


 居なくなったドル・ドレイクを見てロイロ・ディドリット上級伯爵は暴れるのをやめる。


 その場で力なく蹲ってしまった。


 ・・・


 部下が駆け寄り、蹲まってしまったロイロ・ディドリット上級伯爵を介抱している。


 ・・・


 次に口を開いたのはオルトス・アレイ上級伯爵だった。


 彼の国は物流を廻す商業国で成り立っている国だ。


 北部内陸に位置し、周りにそれぞれ各国に囲まれている。


 地理を生かして他国に物流を流す仲介国の役割を担っている。


 カンザス国からは農産物をバルバトス国からは海産物を取り扱い流通する役目を担っているのだ。


 周りには、他国に囲まれているので、魔物とかに滅多に合わない、比較的安全な国の部類に入る。


 しかし自分の国では特に産業を興せる物が何もない。


 主に隣国のバルバトス国が大規模に海洋事業に専念しているのもあり内陸へ海産物を輸出する事業を生業としている国だ。


 バルバトス海洋国があるので特に海産物の扱いに手慣れている。


 しかしその流通、システムを神の神託と言う形に任せておこなってきた。


 神の神託は毎日おこなってきている。


 それも事細かく神託は来ているのだ。


 神託は間違っていることが少なく、腐りやすい魚類を内陸へ運びやすい交易をうまくおこなってきた。


 神託は非常に正確で間違えが今まで少なかった。


 神の啓示により毎朝取引の内容が知らされていたが、ここ1カ月は啓示されていない。


 それも同じように天空が異常に光輝く現象が起きてからだ。

 

 流通に必要だった神託が途絶えている。


 それに加え雨期の時期にはいり、ここ数日は大嵐に見舞われている。


 神託の欠如と大嵐によって物の流通が止まり、今現在商業的に成り立たない状況に陥ってしまっているのだ。


 神罰が合ったのだと、この国の人達も本気で思っている。


 ・・・


 オルトス・アレイ上級伯爵 年齢39歳、貴族と言うより中年の太った商人のような様相をしている。


 服装もゲームに出てくるト〇ネコのような商人の格好をしており、普段見たならば誰も貴族とはわからないだろう。


 かなり太った様相で顔にはふくよかな肉がたっぷりついている。


 その顔の口から、ため息が漏れた。


 ・・・


 「ふう、私の国は終わりですかね。

 神が死んでしまった可能性が高いとは、私はこれからどうしたら良いのでしょう」


 「・・・

 神が死んだですって、馬鹿な事をいいなさんな」


 蹲まって部下に介抱されていた、ロイロ・ディドリット上級伯爵が突然起き上がった。


 部下の制止を振り切りオルトス・アレイ上級伯爵のもとにかけよる。

 

 まるで貞〇が井戸から出てきたような様相で髪をばらばらにし、かなりやばい見た目で近寄っていく。


 一同、その姿に騒然とし引いてしまっている。


 先ほどから替わりはてた姿は何だろう。


 人間て変化できるのかと思われるくらいに変わってしまっているのだ。


 ロイロ・ディドリット上級伯爵はオルトス・アレイ上級伯爵に近づき顔を向ける。


 「神が死んだだと、てめえどういうことだ」


 ロイロ・ディドリット上級伯爵はオルトス・アレイ上級伯爵に対して目を見開き顔御近づけ威嚇している。


 美しいエメラルドグリーンの瞳は血管が浮き出ており赤く充血し瞳の色は赤く変わっている。


 周りの者もその形相に驚き何も言えずただ見ているだけだ。


 ネイビス大公も唖然とした顔をして眺めている。


 止めに入れるふいんきではないのだ。


 人間ここまで変われるのか、狂信者とは怖いものだと内心思っているのだ。


 ここにいる一同全員が思っているのかも知れない。


 ・・・


 ロイロ・ディドリット上級伯爵はオルトス・アレイ上級伯爵に対して両手を突き出した。


 首に手をかけ閉めようとしている。


 ネイビス大公はとっさにロイロ・ディドリット上級伯爵に闘気を放ち動きを止めることに成功する。


 こんな会議場で闘気を発して止めるのは、人間相手にやったことは無く生まれて初めての経験だ。


 冒険者だった頃には魔物に対して使っていたが、人間相手にうまくいくとは思えなかったが、何とか動きを抑えられたようだ。


 ネイビス大公は一瞬安堵したが、ロイロ・ディドリット上級伯爵の次の行動に驚く。


 ロイロ・ディドリット上級伯爵の右手には、魔法で創られた光の短剣がにぎられていたのだ。

 

 ロイロ・ディドリット上級伯爵はネイビス大公に対し、光の短剣を投げつけてしまった。


 すぐさま衛兵が飛び出し、ネイビス大公の席を押しのけ難を逃れる。


 光の短剣は壁に突き刺さり、そのまま消滅する。


 ネイビス大公に対し怒りの形相に見据えたロイロ・ディドリット上級伯爵は新たに光の短剣を両手に作り出し手に持ちかける。


 投剣する前にフリューゲル・ローレリア上級伯爵が後ろに周っていた。


 「失礼します。

 ロイロ・ディドリット上級伯爵」


 フリューゲル・ローレリア上級伯爵は、ロイロ・ディドリット上級伯爵の首筋のところへ手刀で殴打する。


 ロイロ・ディドリット上級伯爵を気絶させた。


 フリューゲル・ローレリア上級伯爵の手刀には赤い炎のような気が纏わりついていた。


 「なんとか気絶してくれたみたいね、良かったわ。

 もし意識があったなら追撃をおこない、怪我をさせてしまったかも知れないわね。

 しかしロイロ・ディドリット上級伯爵がこれほど攻撃性が高い人だとは知らなかったわ。

 いままでは興味がない人物だったけど、気になる存在になったわね」


 そう言って席に戻っていった。


 気絶したロイロ・ディドリット上級伯爵を部下達が開放する。


 ・・・


 「ネイビス大公失礼しました。

 お怪我はありませんか」


 大公の部下の一人がネイビス大公を起こして、椅子を並び直す。


 「ああ、有難う助かったよ。

 まさかロイロ・ディドリット上級伯爵があのような暴挙をはかるとは思いもよらなかった。

 神へ信仰深いとは怖いものだな。

 しかし私も腕が鈍ってしまっている。

 闘気は放て動きは止められたが、その分彼女を怒らせてしまったようだ。

 彼女に睨まれた時に一瞬、魔物と鉢合わせしたと思ってしまったよ。

 これは本当に鍛え直さないといけないかも知れないな」


 そう言って席につきなおした。


 「ふう」

 

 ネイビス大公は大きな溜め息をついた。


 それから話し出す。


 「本来だったらこんなことが起こり、会議は中断するのが良いのだろう。

 だがな事はこれ以上に深刻な問題がおこっているのだ。

 すまないが会議はこのまま続ける。

 休憩も今のところは出来ない状態だ、我慢してくれ。

 ロイロ・ディドリット上級伯爵には少し休んでいて貰うことにする。

 すまないがもうしばらく皆の者、付き合ってくれ」


 そう言ってネイビス大公は何もなかったように話を進め始めた。


 

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