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第146話 三者会談


 「ネイビス・マクアレン大公がご到着なされました」


 「そうか、わかった出迎えよう」


 ・・・


 しかし私のような者が出迎えていいのだろうか。

 現在、この国には上級役職の者が誰もいない。

 魔物が城壁をこえた事を知って真っ先に逃げ出したのだ。

 なんとも嘆かわしい事だよ。

 対応できるものが私しかいないので、仕方ない事なのか。

 私のような粗雑で一般人上がりの者は礼儀など教わっていないからな。

 周りでそのように振舞っているのを見よう見まねで真似をしているだけだから。

 相手はネイビス大公だ。

 失礼な事をしてしまうか、気が気でならない。

 せめてローレリア上級伯爵が立ち会ってくれればな。

 ローレリア伯爵は魔王軍が攻めてきた時、戦時中だったので特に礼儀を重んじることは気にしなかった。

 一緒に魔王軍と戦った者なので少しくらい礼をかいても気にしたそぶりはしない。

 今は魔物との戦いは終わっている?

 ローレリア伯爵が交渉したのだからいわば休戦状態と言っていいだろう。

 そうであればある程度礼を尽くさねばならない。

 ネイビス大公はこの人間世界のトップに位置する方なのだからな。

 悩みどころだな。

 ローレリア伯爵は私に貴族の爵位を与えると言われたがどうなんだろうな。

 爵位で地位が向上するのはいいのだが、礼儀とか面倒で私には合わない気がする。

 粗雑な軍人で良いのではないかと思えてくる。

 どうやら、来てしまったようだな。

 さて行くとするか。


 ・・・


 「ネイビス・マクアレン大公様ですね。

 お初にお目にかかります。

 私ですが、今現在、この軍を仕切っていますゼピュロス・ガーゲイン大佐と申します。

 以後お見知りおきください」


 「ゼピュロス大佐か、出迎えご苦労である。

 今この国はどういう状況なのだ?

 聞かせてくれないか。

 魔物と交戦中だと聞かされていたが、そうではないのか?

 街の様子から見て、破壊された様子もなく、魔物を討伐、撃退をしたとは思えない。

 魔物はいたのか?

 どうみても街が襲われた形跡が見当たらないのだがな。

 ゾニス伯爵とゾイド子爵は、

 ・・・

 そうか、伯爵は亡くなり、子爵は監禁していると言う話だったな。

 それは本当の事か?

 それにこちらは雨が降っていないのだな。

 天候が途中から急に変わったのでおかしいと思っていたのだが、どうなっている。

 嵐の為に遅れると思っていたのだが予定どうりに何とか到着できたのは良かったのだが。

 ネイビスではかなり天候が荒れているぞ。

 避難民がネイビス領へ向かっていると聞いたが一向に見えないので焦ってしまったぞ。

 それにどうしたのだ?

 銀狼の城が消えているのではないか?

 この陥没したところがもしかして城があった場所か?

 あまりにもこの国に来ておかしなことが多すぎる。

 説明をしてくれないか」


 ネイビス大公らしくもなく取り乱したようでかなり混乱している。


 「ご説明したいのですが、ここではなんですから、城の中にお入り下さい。

 中でご説明させていただきます。

 ご案内いたしますのでどうぞお入り下さい」


 「そうか、わかった。

 詳しい事は中で聞くか。

 ビスマルク大将、軍の統制頼む。

 郊外に簡易テントを造り兵を休ませろ、嵐の中から来たのだ、だいぶ兵にも負担がかかっているだろう。

 休ませてやれ」


 「了解いしました、お任せください」

 

 「頼むぞ。

 総参謀長アールグレイとゲイニッツ将軍は私と共に来てくれ。

 話を聞かせてもらい協議をしてもらいたい。

 しかし魔物と戦闘中だと思っていたがそうではないのだな。

 市民をネイビス領方面に避難させていると聞いたので鉢合わせになると思って心配していたのだがな。

 被害がどうなのかわからないが、今のところ、見た限りそれほどではないので一安心はしたのだが。

 こちらも情報が混乱している整理したいので、詳しく聞かせてくれ」


 「わかりました。

 部屋を用意してありますのでこちらにどうぞ」


 ・・・

 

 3階の客間の一室を用意して休んでもらう。


 ・・・


 「ゼピュロス大佐と言ったな。

 説明してもらおうかな」


 「いきさつについては私から説明させていただいても宜しいかな。

 ネイビス・マクアレン大公殿」


 ・・・


 ローレリア様、助かりました感謝します。


 私には荷が重いです。


 ネイビス大公を対応するなんて。


 心の底からゼピュロス大佐はそう思った。


 中間管理職の位置にある彼は、今この国で一番苦労を強いられている。


 魔物であるみつぐと話をしていたほうが楽ではないかと思ってきているのである。


 でもゼピュロス大佐の悩みの原因を作っているのはみつぐのせいで有るとは気づいていない。


 ・・・


 「おお、なんだローレリアよ、お前まで来ていたのか」


 「私だけではないですよ。

 カンザス・メイファン殿も来ています。

 まずは三人で話をしませんか」


 「了解した。

 またろくでもない話ではないといいのだが、この状態でそんな事言えんだろうな。

 なにせ、目の前に見えるはずの銀狼の城が無くなっているのだからな。

 この部屋には前にも通されたが、確かに見えたはずだと思ったのだがな」


 「そうでありましょうね。

 私もそう思いますから。

 場所を変えて話しましょう」


 「うむ、そうだな」


 「それでは 金虎牙の間へご案内します」


 ・・・


 ネイビス・マクアレン大公とフュリューゲル・ローレリア上級伯爵とカンザス・メイファン上級伯爵が並び向き合う。


 それぞれの護衛や従者を伴った状態で会議を始める。


 フュリューゲル・ローレリア上級伯爵から事のいきさつを話し、一同聞き始める。


 ・・・


 「なるほどな、大まかな事はわかったよ、ローレリアよ。

 説明有難うな。

 これで納得いったよ」


 「ネイビス・マクアレン大公、今のところは私が交渉に赴いて話を付けておりますので大丈夫だとは思います。

 しかし事がことです。

 この事態、私達だけでは収集がつきません。

 ネイビスに連なる各国の代表を緊急招集したいと思いますがどうでしょうか?」


 「そうだな、そうしたいところだが、全員集まってくれるかは、疑問に思うな。

 この国の城壁の外にはその魔物がいるのだろう。

 ここが一番危険な場所だと言ってもいいからな。

 魔物と話はローレリアがつけてくれたのはいいが、イカロス魔導法国の件もある。

 それにだ、あの魔物に絡んで各国が今現在かなり混乱をしているのだよ。

 特に光輝翼神の消失の件でな。

 ロイロ光翼国とオルトス交易商国がひどい状況だ。

 先日から吹き荒れている嵐も神が消失してしまったから起きた天災だと言われているからな。

 この国はどうして嵐の影響がまったく受けていないのかわからないのだが?

 各国いろいろ問題が抱えているのだよ。

 今回は全員集まってくれるかが問題だ」


 「それは、関係ないです。

 集まるしかないでしょう。

 強制参加で連れてくるしかないです。

 ネイビス大公、今回の件はそれほど重要なのです」


 「メイファン殿あなたにそこまで言われるとは、わかりました。

 ネイビス・マクアレン大公の名において各国に緊急招集を発令しましょう。

 各国のゲートの門を解くように連絡を入れてくれ。

 使者にすぐに向かわせよう。

 連れてくるのだぞ、誰一人かけることなくな。

 もっともイカロス魔導法国とオルネニア武游国には代表がいないのだがな。

 しかし笑い事だな。

 開催国のこの国に上級職が誰もいないとは、ほんとお笑い草だよ。

 真っ先に重鎮が逃げ出したと言うのか、現実はこんなもんか。

 前魔王大戦でも最初はそうだったな。

 残った者が後をついで戦い、死んでいった。

 戦が終わってから戻ってきて偉そうい幅を利かせる。

 貴族特有の習わしだな。

 だが今回はそのような事はさせない。

 逃げだした貴族の奴らはすべて排除する。

 私が王族と戦いで勝って、門閥貴族共を共に駆逐したようにな。

 ・・・

 しかし武を学ぶのに良いと思って修行に行かせたのだが大失敗だったようだ。

 これほど私が過ちを犯したことはないよ」


 そう言ってネイビス大公は肩を落とした。


 大半の者達は何のことだか、わからず困惑している。


 ・・・


 「会議を始めるのは3日後だ

 集まらなければ、集まった者だけで始める。

 一応強制で連れてくるつもりだがな。

 それと私からも調査隊が重大な知らせを持ってきた件がある。

 カンザスメイファン殿から聞いている獣人達の件もその件についてのことも含まれる。

 今回の事はかなり事が大きくなっている。

 心して対応をはかってくれと各国に伝えてくれ。

 それでは3日後の白狐月の13日朝からこの場で会議を始める。

 ゼピュロス大佐と言ったな。

 不本意であろうがその会議にゾイド子爵も参加させる。

 今は地下の部屋で幽閉しているのだな。

 奴にはいろいろ聞きたいことがあるのでな。

 頼むぞ」


 ネイビス大公は殺気まじりの言いまわしで言った。


 「了解いたしました」


 「それとこちらへ何人か招き入れたい人物がいる。

 私の方で連れてくるのでそいつの見張りを頼みたい。

 イカロス魔導法国の諜報員だった奴だ。

 此処へ連れてくるまでに何度か逃亡をはかっているからな。

 重要参考人と言ってもいい。

 決して傷つけないで、捕まえておいてくれ」


 「了解しました」


 「しかしなんだ、そいつから聞いた話だがあまりにも馬鹿げた話で半信半疑だったが、どうやら本当の事かも知れないとここへ来て思えてきたよ。

 どうせ招集会議で話は聞くと思うが、先にローレリアとメイファン殿にも聞いてもらえるかな。

 ここに集まった全員にもだ。

 聞いてもらい意見が欲しい。

 特にあの魔物と会ったお前だったらわかるかなと思ってな。

 意見を聞きたいのだ。

 率直に答えてもらいたい」


 ・・・


 ネイビス大公は情報収集中に捕らえた、元イカロス魔導法国のドル・ドレイクから聞いた話を聞かせた。


 あまりにも、考えられない作り話のようで、周りの者達はあきれたような顔をしていたが、フリューゲル・ローレリア上級伯爵とゼピュロス大佐率いる側近は特に驚いた様子もなく普通に納得しているように話を聞いていた。


 その態度からネイビス大公はドル・ドレイクの話は、半ば真実だと思い始めたようである。


 「ローレリアよ、その感じでは、先ほどの話真実だと思えるのかな?」


 「私はみつぐ殿が嘘を言っていると思えませんわ」


 「みつぐ殿?

 あの魔物の名前の事か?」


 「そうです。

 名前もきちんとありますね。

 しかし『みつぐ』とはどういう意味かわかりませんが」


 「そうか真実だと思うのか、この世界には神などいない力を持った異世界人が神の名を語り侵略をしようと考えているとはね。

 人間と獣人を使って代理戦争をしているとは考えられない事だろう。

 人間達が崇拝している光輝翼神も獣人の神だとされる獣神も異世界から来た異邦人とはね。

 その他に神の名を語る異世界人が多く存在しているとは。

 奈落のダンジョンにいる古代神とやらも遠い世界から来た異世界人だとは思わないだろう。

 そんなこと考えたことも思ったこともないな。

 異世界などあるかもわからない。

 ここにいる者は、もしかしてこのアストリア大陸以外の未開の大陸から来ているのではと思っていないかも知れないが、言っとくが違うぞ。

 私達が今いる別の世界からだぞ。

 そんな世界あるのかわからないしな。

 あきれた話だと言うしかないよ」


 「でもその話だと辻褄が合うのでしょう。

 真実と考えてもおかしくはないのでしょうか」


 「そうですね、メイファン殿。

 確かに心当たりはある事が多い。

 光輝翼神からの神の啓示は人間に対し不利な要求ばかりしてきたからな。

 しかし教えが利にかなっていることもあり、実際神の啓示で間違ったことは少なかった。

 少なかったと言うのが問題だが、曖昧な事なので解釈の違いだと司教が話していたこともあったな。

 おかしいことは、技術進歩が全く進んでいない。

 理由がわからず、開発を辞めさせる。

 光輝翼神の啓示とやらが無ければもっと進歩してもいいのではないかと思う時があったからな」


 「みつぐ殿の話ではその光輝翼神も今は消えてしまったと言う話なんですよね。

 正確にはみつぐ殿が消し去ったと言っていいのかしら」


 「ああ、そのようだな。

 実際に神託が途絶えたらしいな。

 月始めに降臨する光輝翼神が、イカロス魔導法国の件からまったく降りていないらしいのだ。

 光輝翼神が死んだと言われ始めている。

 オルトス交易商国では神託を受けて物の取引をやっていたらしい。

 神託が途切れて物流が途切れていると言う話だぞ。

 今回の大嵐のせいもあるのだがな。

 神託を聞いて商いをやっていたこと事態どうなのかと思うが、実際それで発展した国だからな。

 神だよりがいなくなって混乱しているとは誰も思わんだろうな」


 「信仰心深いロイロ光輝翼国なんか特にそうだ。

 ロイロ・ディードリット上級伯爵は光輝翼教会の大神官の位をもっており、国の名前に光輝翼とつけるほど熱心な信者なのだからな。

 国民の9割以上が光輝翼教会に入門して信者になっているんだからな。

 魔物に襲われないのは光輝翼神のおかげだと本気で信じている。

 ただ魔物が住む大森林地帯に隣接ていない比較的安全な国だと言うだけなのにな。

 光輝翼神の意向で国の運営をしていたのだったら、もっと繁栄した国になっていてもおかしくはないのではないかな。

 それなのに人の生活は苦しく文明も発展はしていない。

 神の意向でいるならば、もっと豊かになっている国になるのではと今更だが思っている。

 各国の事情はおのおのの采配なので、何も言えなかったがな。

 今を思えばおかしなことばかりだよ。

 まったく俺達はこの世界の事をわかっていなかったんだな。

 よく考えれば見えてくるだろう。

 あきらかにおかしいと言う事がな」


 「仕方ないですよ。

 誰もが楽に、安全と幸せを求めたいのですからね」


 「おいおい、どうした何の心境のかわりか。

 ローレリアお前から楽に安全を求めると言う言葉が出るとわ思わなかったぞ」


 「私だって思いますよ。

 あんなに力の差があるものと戦ったのですからね。

 努力してもどうにもならないものがいてはね。

 その私が全く適わなかった相手が、赤子同然に相手をされる存在がいると聞いては、尚更考えてしまいますからね。

 私はこれでも魔王・グラトニー・パイソンを退けたのですからね。

 そうですよね、ゼピュロス大佐、あの時一緒に撃退したのですからね」


 「左様で御座います」


 「まさか魔王すら撃退した私が、何もしない相手に負けたとは考えつかないでしょう。

 みつぐ殿はただ私の攻撃を受けていただけですからね。

 悔しくてなりませんわ」


 「わかった、わかった、落ち着けローレリア、お前の強いのはわかっているよ」


 「だと分かれば良いのですがね。

 そのみつぐ殿がまったく歯が立たなかった者が、この国の上空近くに、来ているとは誰も思わないでしょうね。

 今、私達の事を見ているのかも知れませんよ」


 「そうだろうな。

 このありえない、光指す晴れ間を見なければ、誰もそんなこと思わないだろうな。

 しかし本当におかしいぞこの国の状況は」


 うふふふ ふ・・・



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