第141話 暗殺者・・・
日も落ちて、真っ暗になってしまったか。
残念なことに擬態魔法はうまくいかなかったので、今日はここまでにしよう。
出来そうにも無い感じがするが、こればかりは諦めたく無いのでもう少し違う考えでできるか挑戦しようと思っている。
さてと飯でも食べて休むとしようかな。
そういえば私の食糧関係はどうだったかな。
まったく狩りをしていないから空間収納魔法 の中はだいぶ減ってきたと思うんだけど。
食料が無くなるよりも、ダンジョンから持ってきた石片が無くなるのが気になるかな。
あの石片は奈落のダンジョンでしか手に入らない代物だからね。
一端戻って石片を集めてくるのもいいけど、ネイビス大公との話し合いがいつになるのかわからないので、ここに居なくてはならないのがつらいな。
もう話し合いなんて、どうでもいいなぁと半分思っているんだよね。
・・・
人間界に来た時に、獣人達の争いで少しだけその時食料が手に入っただけだったかな。
狩りにもいかなくてはいけないので面倒だな。
ダンジョンでは適当に動いていればモンスターが勝手に寄ってくるので探さなくてもいいから楽なんだよね。
でも寄って来る奴は強いので、その分危険がつき纏うけどね。
あっ、そうか別に地上では狩りしなくてもいいのか。
この地上には木々が生い茂っている。
確か私は雑食で草とか木とか食べても問題ないはずだったな。
と言うか奈落のダンジョンで壁とか柱の石片を食べてるし、ようはエネルギーに還元できればなんでも食べても良いみたいなんだよね。
どうせ味なんか、口から出る胃液で一瞬で溶けるのでわからないから気にすることもないし。
せっかくの鬼人の国で出された日本風の料理の味をまったく味わえなかったのが今でも残念にならない。
あの時は沙也加さんがおいしそうに食べているから、食べているふいんきだけ味わっただけだったんだよね。
こういうところがこのローパーと言うモンスターの不憫なところだね。
力は極端にあって良いのだが、生活面を考えると不遇で仕方がないな。
とりあえずそこら辺の草とか食べて、休んでしまおうかな。
特に何もしていないのでエネルギー的には十分だろう。
・・・
夜もかなりふけてきたな。
?
あっ、あれは私に訪問者かな。
1キロ先に人影が見える。
誰か来たんだけど、見えているだけでまったく気配がない。
なんなんだこいつは、姿がはっきり見えるんだよね。
まぁ、見えるのは望遠透視能力の特殊スキルのおかげなんだけど。
黒づくめの忍者風な服装に身を包まれているな。
でも顔を晒しているんだよね。
40代近い中年の男性かな。
細身で背が高く、筋肉が鋼のようにえらく鍛えあげているって感じだな。
頭を坊主にしてあり銀色の髪の毛の色が少し見える。
目の色も銀色か、こんな目はじめて見たんですけど。
銀色の白目って怖いんですけどね。
左頬には傷があり、いかにもヤクザもんが感じるふいんきもだしているな。
あきらかに一般人では無い。
いかにも暗殺者て感じなんだよね。
危険な相手かな?
少しじっとして様子でも見ようかな。
一応からだは高質化して戦闘準備だけはしておこう。
寝ているふりでもして待ってみよう。
・・・
いたいた、こんなところで呑気に寝ているとはね。
魔物も就寝中だとは。
俺の事をまったく気づかないとは、この魔物たいしたことはないのではないか。
私の気配を察知できるものなど今まであった事がないが当然だと言えるだろう。
確かに見た目はなんて奇形な姿しているんだ。
私が今まで見た魔物の中で一番不細工な姿をしているな。
こんな魔物があのイカロス魔導法国やフリューゲル紅宝国の軍隊を退けたとは未だに信じられん。
話は尾を引いて大きくなると言うが、負けた奴が言い訳で話を盛っているのだろう。
さてと私の糸が操れる射程20メートルに近づいたな。
ここからでも殺れるが、念の為もっと近づいて確実に仕留めるとするかな。
並みの魔物ではないと聞いているからな。
それに私の事を未だに気づいた様子はない。
10メートルくらいまで近づいて対処しようか、近くに寄った分威力も上がるからな。
・・・
この俺の使う鋼の糸はどんなものでも切り刻ざむことができる。
長年の鍛錬により鋼の糸を魔法で強化し自由自在に操れるようになったのだ。
この鋼の糸に触れたものは鋭いカミソリのように切り刻まれる。
切れ味の質の良いナイフでチーズを切った滑らかな断面のように、巨大な岩盤だって切り裂けるのだ。
たかだか馬鹿でかい魔物など、幾重にも糸を絡みつかせ、切り刻めば、あっと言う間に肉塊のブロックの出来上がりよ。
寸分たがわず正方形の断面にして切り刻んでやってもいいな。
この魔物俺がこれだけ近づき、それも幾重にも鋼の糸を絡みつかせているが、これで気づかないとは哀れでしかたないな。
俺に会ったのが運の尽きかな。
いかに人間界で恐れられていても所詮魔物は魔物だな。
俺にとっては柔らかい肉の塊にしか見えないぜ。
しかし、人間の奴らは、何を恐れているんだよ、こんなたかだか魔物にな。
さてと鋼の糸の準備は整った。
これに魔法力を入れて引っ張れば、魔物の肉塊のブロックの出来上がりよ。
こいつの肉を肉屋にもっていって売ると言うのも良いかもしれないな。
案外うまいのかも知れないぞ。
・・・
千の糸切断 魔物に無数の鋼糸を絡ませ魔力を糸に伝わらせる。
終わりだ、奇形な魔物さんよ。
「斬」
・・・
全方位雷撃衝撃破
私はからだに魔法感知が届いた瞬間に、全方位に向け雷の衝撃破を放つ。
纏わりついていた鋼の糸は一瞬にして粉々に粉砕され飛び散って消滅した。
暗殺者の右手に持たれていた鋼の糸に電撃が伝わり右腕を粉砕する。
「グギャー」
なにがおこった。
魔物の野郎、何かしたのか、俺の右腕が吹き飛んでやがる
いったいなにが起きたのだ。
・・・
魔法無効化領域
私は近づいてきた暗殺者を中心に魔法無効化領域を発生させ魔法を封じてしまう。
むふふ、これで逃げも隠れもできないよ。
魔法を封じてしまえば人間相手だ。
からだのスペックで圧倒的にこちらが勝っている。
肉弾戦で負けるとはよほどの事ではない。
どんなに鍛えても人間には限界があるのだよね。
それに魔法を封じているので転移石で逃げられることもないからな。
こちとら、古代神が作った生物兵器だ。
侮って貰っては困るんだよね。
それに私はモンスターらしからぬ、鍛えているからね。
・・・
私は素早く近づき、大きな触手で頭上から殴った。
「ドガン」
大きい触手はまともに直撃し、鋼の糸で襲ってきた暗殺者は這いつくばる。
「グオォー」
口から血を吐き項垂れる。
「ほほう、これは驚いた。
生身の人間で私の攻撃を食らって即死しないとはね。
まぁ、手加減して殴ったのだからそれもそうかな」
「ガハァ」
なんだ、この魔物今しゃべったように聞こえたが気のせいか。
くそうダメージの為に、幻聴が聞こえたのだな。
ここは一端引いてしきり直しだ。
魔物の不意を突いたと思ったが失敗してしまったのだな。
我ながら情けないな。
こんな魔物に油断するなんて。
左手でズボンのポケットの中から小さな青い球を出し魔法を唱える。
「転移魔法」
?
なに、馬鹿なアイテムが発動しない。
これはいったいどういうことだ。
不良品でもつかまされやがったのか。
私は追加攻撃で、口から下半身に酸の液を飛ばし動きを封じる。
「グギャー」
暗殺者の左足に液があたり、ふとももから溶け出してくる。
肉が下げ落ち左足の骨が見え始め、左足首が剥き出しになった。
「オワァー」
俺の左足が解けて無くなった?
「なんなんだこいつは、この魔物はいったいなんなんだよ」
「いやー なんなんだと言われてもね。
私は普通に危ないモンスターですよ。
見ればわかるでしょうが」
私は律義に答えてあげる。
「しゃべった、しゃべりやがった。
魔物がしゃべりやがったよ。
くそう」
胸辺りに隠持っていたナイフを左手につかみ私に対して投げつけてきた。
「キン」
「馬鹿な俺のナイフが弾かれるなんて」
「弾かれるとか言っているけど、たかだかナイフでしょう。
こんなもの私には刺さりもしないんですけどね」
私は触手を出し、ナイフを拾いあげる。
「きれいなナイフですね。
切れ味がよさそうで高そうだ。
それに匂いからして毒が塗ってあるのですか」
私はナイフを口の中に入れ食べてしまう。
「モグモグモグ。
うむ、特殊な金属ではなかったのですね。
高そうに見えたのですけど一瞬にして胃液で溶けてなくなってしまいましたよ。
毒が塗ってあっても私は耐性が高いからまったくきかないしね。
と言うか私は口から毒液はけるし、それに全状態異常回復 使えるので毒状態になってもすぐに回復できるんですよね」
「バケモノめ」
「バケモンとはひどいな。
それよりもおっさん誰だよ。
人が休んでいる中、変な糸を絡みつかせてくるなんて、どこかの変態か。
私はそういう趣味はないので遠慮させて貰いましたよ。
そのおかげで雷撃を全身から飛ばさせていただいただけなんだけどね。
でも、おっさん鋼の糸なんて扱うんだね。
私に鋼の糸を絡みつかせていた時、きれいな動きをしていたのでカッコよく見えましたよ。
私もからだから出せる触手を使い細い糸ように使ってみようと思ったけど駄目だったんだよね。
糸の扱いって難しいですよね。
でもねいくら鋼鉄の細い糸でもたかだかやはり細い糸だ。
そんなの簡単に切れるし、粉々に吹き飛ばすことなどできるんだよね。
さてと本題に入りましょう。
おっさん本当に何者ですか。
答えれば楽に殺してあげてもいいですけど、どうしましょうか。
もし答えなければ口の中に入れて、ゆっくり溶かして食べてあげますよ」
「グㇷ」
あらら、舌を噛み切ってしまったか。
でもこいつまだ生きているな。
舌が切れて口の中で巻き付いて喉を塞いでいる。
舌を噛み切ると喉に巻き付くって本当だったんだ。
出血多量で死ぬのではなく窒息で死んでしまうと言う事聞いたが本当だったのね。
鍛え上げられたせいか、なかなか死なずに苦しんでいるな。
この人暗殺者みたいなので人を多く殺しているのだろうな。
自爆したのだがそのままにしておいてあげるね。
今まで殺した者を思い描いて、罪を償いゆっくり死んでくださいね。
・・・
30分くらいしたらやっと息のとまり、心臓の鼓動も止まってしまった。
死んでしまったか、かなり長く生きていたな。
苦しんだのは、まさに自業自特だね。
念の為心臓と頭を触手で撃ち抜いておくかな。
モンスター相手には、死んだふりしている奴とかいるのでそこまでするけど、人間相手にはさすがにやらないと思っていたけどこの暗殺者は例外だろう。
人間の部類ではかなり強かった敵だね。
生きていたら困るので止めを刺してあげるね。
私は念の為、触手で心臓と頭を撃ち抜く。
これでいいだろう、確実に死んだな。
しかしこいついったい何者だったんだ。
突然の来訪者だったけど、出来れば女の人のほうが良かったな、男はむさくて嫌だね。
女の暗殺者が来て返り討ちにしても、いたづらなんかしようとは考えていないよ。
エロ漫画の定番ではあるかも知れないけどね。
あした門行って衛兵に突き出し訪ねてみるかな・・・




