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第103話 フリューゲル紅宝国・・・


 私達は川を渡りイカロス魔導法国に進んでいる。


 途中、アレッタさんが声をかけてきた。


 「みつぐ殿、川を渡ってから魔獣の種族も変わってきます。

 それにこの付近は戦姫フリューゲル・ローレリア上級伯爵の管轄する地域です。

 フリューゲル紅宝国の領内に近い場所に入ります。

 大森林の奥に入り、迂回いたしましょう。

 その方が良いと思われます。


 「なるほど、わかりました。

 確かイカロス魔導法国の隣国だったですよね。

 軍が動き出しているならば、森林地帯内に斥候が隠れ潜んでいる可能性もありますね。

 イカロス魔導法国のだいたいの位置はつかめました。

 おっしゃるとおり、森林地帯の奥に入り迂回しましょう。

 それでは迂回しますね」


 ・・・


 私は方向を変え、森林地帯の奥に入って行く。


 先ほどいきなり、アレッタさんに声をかけられたが、私の事が完全に見えているのだろうか?


 透明化能力インビジブル 状態で消えているはずなんだけどね。


 ほんとに、アレッタさんて何者なんだろう。


 夕暮れ時まで、時間がたってしまっているな、ここらへんでいいだろう。


 一端立ち止まり、周辺を見渡たす。


 索敵と望遠透視能力ルビーアイで調べたが半径3キロ以内には危険なモンスターはいない。


 透明化能力インビジブル を解き姿を現す。


 私はアレッタさんと駁猫族の獣人達に声をかける。


 「ここらへんで一端休憩をとりましょう」 


 ・・・


 私も甘いな、最初はおいてけぼりにしていくはずだったのに、結局そのままお供をさせている。


 アレッタさんや護衛についている獣人達を助けて、世話を焼いてしまっているとはな。


 私一人だけだったら、休みをとらずに真っ直ぐにイカロス魔導法国へ向かっていただろう。


 下手をするとすでについているかも知れないな。


 移動速度を獣人達用に下げているんだよね。


 さてとさすがにあれだけ走れば腹が減ってしまったな。


 私はアイテムボックスから大きな布を取り出し、先ほど持ってきた魚人を出して布の上に置いてしまう。


 ダンジョンに来た冒険者のガゼルが持っていた日用品らしいものがこういう時に役にたつな。


 捨てないで持っていて良かったよ。


 さてと、どうしようかな3メートルある魚人だよ、でかいよな。


 これを切り分けたいのだけど私にはやり方がいまいちわからない。


 いつもだったら半分にするか、丸かじりで食べてしまうのだが、駁猫の獣人達にも分けてあげると約束したからな。


 獣人達に切り分けてもらおうかな、そこらへんは手慣れているはずだ。


 駁猫族の獣人達を呼んで魚人を切り分けてもらう。


 魚人を凍らせてしまったけど、獣人達は手際良く切り裂いていく。


 気になるのは切り裂きながら、よだれを垂らしているということだ。


 そんなに旨そうなのかな、切り分けながらよだれを出すほど好きなのだろうか。


 まぁ、いいけどね。


 私はいつもだったら丸かじりするので、適当に残った部分を食べると言っておいた。


 大きさも3メートルと馬鹿でかい、どうせ食いきれないのだ。


 先に食べたい部分を欲しいだけ持っていって良いと言っておいた。


 この際だから、好きなだけ持っていってもらう。


 でも魚人だからか、人間の手と足がついているのでそこの部分は微妙に食べたくないな。


 でも嫌な部分も、最後は残っさず食べてしまうんだけどね。


 アレッタさんにも分けてあげてと一言いっておく。


 そういえば、獣人達の名前を聞いてなかったな。


 護衛でついていた駁猫族の獣人達は男性が3人で女性が2人組の30歳から15歳くらいの獣人達だった。


 どうやらギンジの直系一族の者達らしく、兄弟や子供関係の駁猫族の獣人だそうだ。


 ギンジの弟の男性3人のオルガとナガルとゼイラそれと娘のトウカとオウカの5人がアレッタさんの護衛について来たらしいな。


 私と話していた獣人の少女は15歳のオウカというお嬢ちゃんだった。


 お嬢ちゃんもそうだけど、ここまで走って来られるのだから相当能力は高いのだろう。


 それに私が透明化能力インビジブル を使って極力気配も消している。


 それなのにわかるのだからたいしたもんだ。


 アレッタさんもそうだけど特殊な魔法、スキルなど使っているのだろうか。


 もしかしたら、追跡トレース の魔法があるのかも知れないな。


 前に思ったことだけど自分でも今度そのような反応ができるか試してみよう。


 ・・・


 どうやら切り分けが終わったみたいで、オウカという一番ちいさいお嬢ちゃんが私に話しかけてきた。


 この子は積極的に話しかけてくれるんだよね。


 他の獣人は恐れているのか、緊張しているのかわからないのだが、まだ話をしていないな。


 さてと、切り終えた魚人の残りは私が貰う事にしよう。


 うむ、残念なことに手と足はやはり残っているんだよね。


 持っていってくれてもよかったのにね。


 獣人達は本当に良い部分だけ切り分けて持っていってしまったみたいだ。


 こういうところは素直とかいうか、率直に受け入れてしまうみたいだね。


 まぁ、日本人みたく遠慮がちにすることが逆に少ないんだろうな。


 他の国の人もそういうところは遠慮はしないみたいだからね。


 日本人みたく遠慮している様子がおかしいと、他の国の人から見られるらしいね。


 どうやら獣人達は串にさして、焼いてから食べるらしいな。


 焚火を用意し、竹のような串にさし始めたよ。


 分担していたらしく材料を集めてきてしまったよ。


 速いな、いつの間に行ったのだろう。


 こういう事は手慣れているな、現地調達で材料など集める手際といい関心させられる。


 火にあぶりながら嬉しそうに焼けるのを待っている。


 なんかこの姿かわいくて写メを撮りたいな。


 駁猫族は炎の魔法が使えるみたいで、こういうサバイバルの時には魔法ってほんと便利だと思ってしまう。


 それに獣人達はまったく火を恐れないんだね。


 やはり動物とはまったく違うと言って良いみたいだな。


 私は属性相性のせいか、炎系は全く使えないんだよね。


 雷の魔法は得意なんだけど、雷を利用して、火をおこせるくらいしかできないからな。


 焼いた状態で食べたことはこちらの世界に来てからは無かったな。


 まぁ、食べている食材もいまいちわからないモンスターばかりだから、焼いて食べてもおいしそうには見えないんだけど。


 かみ砕いている最中に強力な消化液出すので、味も半減してしまうから。


 でも、魚人は旨そうに思えたから他のモンスターとは味が違うのだろう。


 カエルとスライムのモンスターは旨かったな。


 魚人もそんな感じしてならないか、でもここでは食べられないので、少し離れたところに持って行ってこっそり食べてしまおう。


 なんせでかい魚人を丸かじりするなど、獣人達が見たら恐怖でしかなかろう。


 他の獣人達には見せられない姿だな。


 地上に来てからかなり気をつかっているな。


 でも私が気を使っていても、獣人達には相当負担はかかっているかも知れない。


 まさか駁猫の族長のギンジさんが泡を吹いて倒れるとは思っていなかったし、魚人のリーダーらしきやつも泡を吹いてしまう不始末だ。


 体格も他の魚人より倍はあったし1匹だけ装飾品をつけた服を身に纏っていたのでもしかしたら魚人の群れの頭だったかもしれない。


 それなりに強そうに思えたのだけど私を見ただけで倒れてしまうとはね。


 やはり私の見た目相当怖いのかな、どうなんだろう。


 地上には私のような生物がもしかしたらいないのかも知れないな。


 野生のローパーいるのではないかと思っていたけど、残念ながら同種族はこの地域にはいないのだろう。


 ・・・


 私は少しだけ離れて食事をすると言って獣人達のそばを離れた。


 それでは食事とするかな。


 皆と食べられないのは、残念に思うね。


 バラバラに切り裂かれているけど、まぁ、いいか。


 いつもどうり触手で一気に口に入れ、食べてしまう。


 魚人は結構旨かった。


 いままで食べた中ではベスト3に入るな。


 スライム、カエル、魚人だ。


 この種類のものは私には味が良く感じるらしい。


 ウサギも結構いいのだが、あれは少し血が生臭く感じるんだよね。


 でも、これってただの食材丸かじりだからなんと微妙なかんじだな。

 

 獣人達の料理とは言えないけれど、ひと手間かけ食べる様子を見て旨そうに思えてきたよ。


 なんで私はローパーなんかに生まれてきたんだろうな。


 こういうの見ると前世で人間だった頃の未練とか出てしまうんだよね。


 なんか考え深く思てしまった。


 食べ終えて一息つこうと思ったら風下付近に気配を感じた。


 索敵をしていたのだが今になって反応した。


 何かが近づいてきたのかな。


 望遠透視能力ルビーアイ で確認すると人間らしいものが潜んでいる。


 ここから500メートル先か。


 どうやら人間の斥候のようだな、一人ほど確認できる。


 黒装束のいでたちで真っ黒な仮面をつけている。


 全身真っ黒ないでたちで、身なりもそれなり装備が整えてあるな。


 でも体格が異様に小さく感じられ、なにかどことなく違和感が感じられるのだがどうしてだろう。


 気配の消し方が、うまく今は感じられない。


 なにか焦りのようなものがあったのだろうか、一瞬だけ索敵に反応してわかったのだ。


 私は望遠透視能力ルビーアイ があるので確認できるが普通の奴だったらわからないだろうな。


 今は索敵かけても反応しておらず、目視で見えている状態だ。


 なかなか能力の高い、斥候の奴だな。


 この区域、確かフリューゲルと言う国の近くの森林地帯の中だったな、フリューゲルの諜報員の可能性が高いな。


 少し奥の方の森林地帯に入っているが、前から追いかけてきたのだろうか。


 軍が展開しているのだ斥候を出していて当然か、内陸に入ったと思っていたがもっと距離をとるべきだったか。


 これは私の失策だな、まったく気付かなかったよ。


 どうやら獣人達も食べ終わったみたいで、私は獣人達に近づき、風下に斥候がいることを知らせる。


 とりあえず私達は、斥候を捕らえる事に決めた。


 もし私のようなモンスターが、フリューゲルの国の近くにいるとわかれば軍が動くかもしれない。


 たぶん、軍を動かして、討伐するようにこちらに仕向けて来るだろうな。


 そのことだけは絶対に防ぎたい。


 これは何としても捕まえなくてはいけない。


 私達は動き出す。


 イカロス魔導法国方面に、移動する素振をして、斥候が追ってくるか確かめる。


 やはり私が動いたら追いかけてきたな。


 透明化能力インビジブル を使い途中で消える。


 それと同時に追ってくる斥候に向かう。


 獣人達も一端、間をおいてから斥候を捕らえに向かいはじめる。


 斥候はその反応に気付き、逃げる反応を見せた。


 だがしかし、私は後ろに回り込んでしまっている。


 姿を現し追いかけてきた斥候の後ろへ立つ。


 斥候は後ろを振り向き私を見た。


 それでも逃げようとして左に動いたが、獣人達がすでに来ていて斥候を取り囲んでしまっていた。


 さすがに早いな獣人達は。


 捕まえようと動いたら、斥候は突然動きを止め、倒れ込んでしまった。


 こ、これは。


 私は望遠透視能力ルビーアイ を使いお面の付近を確認する。


 あぁ、やはりな舌を噛み切っていたか、捕まる前に自害をしたのだろう。


 諜報員をやっているのだ、当然の事だろう。


 逆に私に捕まったアレッタさんやドルが自害しなかったことが不思議だと思っていたくらいだからな。


 私の認識では当然の事だと思っていたのだ、情報漏洩の為やらなければいけない事だろう。


 アレッタさんを呼び確認してもらう。


 斥候のお面をとり顔を確認する。


 お面を取った顔御見たら、私は驚いてしまった。


 口元から血が垂れている。


 素顔を見たら、まだ年派もいかない、かわいらしい女の子だったのだ。

 

 そんな、まさか。


 体格は小さいと思っていたけど、まさか女の子だとは思っていなかったのだ。


 「みつぐ殿、この服装とお面の様相からしてフリューゲルの放った密偵だと思われます。


 「そ、そうか、だがこの姿は幼なすぎていないのではないかな。

 それもこの子、女の子だよね」


 「はい、その通りです。

 密偵に年齢など関係御座いません。

 ましてや性別など皆無です。

 しかもフリューゲル紅宝国は女性上位主義者の国です。

 政治も軍部の重鎮はほぼ女性で占めております。

 女性でしたら能力の高い者でしたら重宝されます。

 このような幼い少女が諜報員に抜擢されるのもごくあたりまえにある事です」


 「そうなのか?

 こういっては何だが、女性の諜報員が捕まったら、男性とか違う拷問の仕方とかこの世界ではあるのかな」


 「はい、あります。

 女性で諜報員になった者は、それなりの覚悟はしています」


 「それでこの少女は舌を噛んで自害した可能性もあるよな」


 「その可能性は大きいです。

 ましてフリューゲルはその辺の軍部の内容はいきとどいています。

 捕まったら死ねと命じられていたのでしょう」


 「その可能性が高いのか」


 ・・・


 私は絶句する。


 もう一度、斥候を確認する。


 体長は1メートル30センチくらい、かなり幼い顔をしている。


 まだ中学生になったばかりの、女の子だと思ってしまった。


 なんてことだ、そんな少女が私の目の前で自害したのだ。


 これほど大きいショックは今まで受けたことがない。


 戦闘の生き死にではそれなりに、死ぬほど痛い思いはしてきた。


 死ぬ寸前までいった事もある。


 だが今回は違う。


 肉体の痛みとはまったく異なる痛みが、心の底から湧いてくるのだ。


 奇妙な痛みだ、この感覚何なんだろう。


 黒猫族の村が焼き討ちされていた光景よりも衝撃に感じ、痛みと脱力感が増してくる。


 私のせいで、この子は自害したのだな。


 確かに軍に所属して斥候としての任務を持っているのはわかるが、これはないのではないか。


 年端のいかない子が自害して果てたのだ。


 私に捕まったアレッタさんやドルは生きている。


 だがこの子は死んだ、自害してしまった。


 なんともいえない虚脱感が私を襲う。


 ・・・


 「みつぐ殿、どうなされますか」


 「返してくる」


 「は、いまなんと!」


 「今からフリューゲルの国に入ってこの女の子を返してくると言ったのだよ」


 「そんな馬鹿なことを」


 「なにか問題でもあるのかな。

 この子は自国を守る為斥候になり使命をまっとうし役目を果たしたのだよ。

 結果このような事になってしまったけどね。

 それなりの配慮はしたいと思う。

 アレッタさん正直に言おう。

 あなたより私はこの子の事を尊重している。

 私に捕まる前に自害をして、情報漏洩を防いだのだ。

 こんな幼い子が国の為に命を捨てたのだよ。

 尊重しないわけにはいかないだろう。

 あなたには理由があって生き延びならなくては、いけないのはわかるが、そのこと考えてもこの子のほうが上だ。

 立派なことをしたと思っている。

 幼いのに死して自国の為に貢献したのだからな」


 「・・・」


 ・・・


 前世で戦争に行った日本の軍人さんはお国の為、こんな覚悟をして戦争にいったのかと思ってしまった。

 

 この幼い女の子は、それ以上の覚悟を持っていたんだろうな。


 ・・・


 「獣人達の皆さん、ここからアレッタさんを連れて黒猫族の村へ戻っていただきたい。

 あとは私一人でやろう。 

 この件は私の独断で行動するのだ。

 無謀な行動かもしれない。

 かなりの危険が付きまとうだろう」


 「私はみつぐ殿についてきます。

 あなたの行動を見極めると決めたのですから」


 「私達獣人もついてきます。

 兄、いえ族長からの使命です。

 やりとげないと意味がない。

 危険は承知の上です。

 ここへ来るには死を覚悟しています。

 お気になさらずいて下さい」

 獣人の男性の年長者であるオルガが答えた。


 「死んでも知りませんよ」


 「元よりその覚悟です。

 みつぐ様は使命を続けてください」


 ・・・


 「わかりました。

 そこまで言うなら私は何もいいません」


 私はアイテムボックスからきれいな布を出し少女の遺体をくるむ。


 空間を開きアイテムボックスの中へ収納する。


 それではフリューゲルに向かいます。


 私はそう言ってフリューゲル領内に走り出した。


 走り出してから3時間、日も落ちてきてだいぶ暗くなってきたな。


 迂回しながらどうやらフリューゲルとイカロスの森林地帯を抜けた。


 両国の国境付近にはいる。


 この途中何人か人間らしき斥候にあったが、すべて無視して、そのまま撒いて走り去って来た。


 おそらくフリューゲルもしくはイカロスには、私が移動してきている事の知らせは入っているだろう。


 ここからはかなり危険に入るが、まずはフリューゲルの軍に近づいてみるか。


 どう対応がするのかわからないが、まぁただでは済まないだろうな。


 こんな夜中だ、私の突然の訪問は歓迎されないだろう。


 しかし亡くなった、この少女を届けると決めたのだ。


 送り届けてやろう、どんなことになってもな・・・

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