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アル・フィアータの魔女物語  作者: 宿木ミル
悪魔憑きの魔女編
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私と悪魔的魔女の研究

 待ち合わせをする場所はどこでも良かった。正直なところ、話ができれば問題ない。

 そう思った私は、なんとなくお話できる場所がほしかったので、気になった人物と温泉へと足を運ぶ約束をした。寒いから、身体を暖めたかったというのも理由のひとつだったりもする。

 そんなこんなで、今の私は温泉に浸かっている。場所は普段から利用している自然の天然温泉だ。前に、色々な魔法少女達と入浴したこともある。

 私の隣にいるのは、ベゴニア・ルートリッハの弟子、春野すみれだ。彼女に対して確認したいことがいくつかあったので、接触した。

 ……ここまでの流れだと、真面目な雰囲気だ。けれども、実際はのほほんとしていた。

 温泉というのはやはり、癒やしの空間であるものであり、ゆったりするのにちょうどいい。

 適切な温度が、身体の調子を整えてくれているようにも感じるので、とてもありがたい。


「やっぱり温泉は温かくていいですね」

「私はのびのびできるところが好きかな」

「あ、わかります。なんだかリラックスできますよね」


 二人でゆったりと湯船に浸かりながら他愛もない会話を行う。

 ……下手すれば目的を忘れてしまうかもしれない。

 お風呂から出たら牛乳を飲んだら美味しいかもしれない、みたいに思うくらいには温泉パワーに襲われていると思う。

 ここは、シャキッとしないといけない。大きく息を吸って、吐いて、気を取り直そう。


「すみれ、ちょっと質問があるけどいいかな」

「はい、私が知ってることなら、なんでも答えますが」

「師匠……んっと、ベゴニアって、特定の魔女とか探してたりする?」


 ありがたいことに、すみれも話を聞いてくれる雰囲気で、少し温泉気分から切り替えた。だから、私も気になったことを積極的に問いかけてみる。


「うーん……私には、なんとも言えないかも」

「知ってるけど教えられないみたいな」

「そういうわけじゃないんです、ただ、なんていうか……師匠的に不安だから探している魔女がいるというのは、知っているけれども、それ以上、細かいところがわからないという感じで……」


 すみれは悩みながら、私の質問に答えた。色々考えているけれども、答えには結びつかない、といった口調だ。

 彼女の様子から考えると、嘘を付いているわけではないだろう。弟子の立場ではあるものの、わからないものが多いという印象を強く覚える。

 だったら別の観点から話を切り出したほうが情報が掴めるのかもしれない。


「ベゴニアが探しているのは、悪魔と契約した魔女だよね」

「はい、そう言ってます」

「過去に、師匠と悪魔と契約の魔女とで、何かあったのかな」

「それならば思いあたりがあるかもです」

「ちょっと聞いてみたいかな」


 そっちなら話せるといった感じで、すみれが手をぽんと叩いた。

 話が聞けるのはそれだけでありがたい。なるべく、聞き漏らさないようにすみれの声に耳を傾けることにした。


「過去に、魔法少女と魔女が対立していた、というのは聞いたことがありますよね」

「それについての知識は大丈夫」


 魔法の優位性などを巡って、対立していた時期があったというのは本の知識ながら把握はしている。人間……つまり、魔法少女側が勝利して、魔女が敗北したこと。そして、その反省から、知識を深める魔女図書館が誕生したこと、更にその出来事がきっかけに、魔女と人間との対立関係が前よりは落ち着いたこと、これらの三点が重要だろう。

 情報を整理して、もっと耳を傾ける。


「その対立中に特に魔法少女と戦った魔女が、悪魔と契約した魔女だったそうです」

「そこで、魔法少女の師匠……つまり、ベゴニアがその魔女と戦っていたということ?」

「そうなりますね。技術的なものより、自然干渉系の魔法を得意としているのが悪魔と契約した魔女の特徴で、契約した悪魔によっては危険な性質もあったって師匠が言ってました」

「悪魔と契約した魔女は、どちらかというと危険になっちゃうみたいな……」

「過去の経験から、師匠はそう感じているところが強いみたいです」

「なるほど」


 技術的な魔法は、魔女の得意とするものである。それとは別に、悪魔と契約したことによる魔法が自然干渉を扱えるようになるとするのであれば、それは魔女だけれども独自的で、本来の魔女とは異なっている力を持ったものとなるだろう。

 少し考えて、思いついたことがあった。


「自然に干渉するって側面だと魔法少女の魔法に似てると思うけど、どうなのかな」

「想像力を利用したもの、炎などを展開する力みたいなものなど、性質は魔法少女っぽいものが多いとは師匠が言ってましたが……」

「やっぱりそうなのね」


 メモ用紙があったら今すぐにでもメモしたい内容だ。今は温泉で、服を着ていないし、道具もないからできないけれども。

 魔法少女の魔法と性質が似ているからこそ、その危険な部分も知っていて、未然に危険を防ぎたいというのがベゴニアの目的なのだろうか。

 すみれの話を聞いていると、なんとなくそう感じた。


「ベゴニアが過去を知っているから、警戒しているって可能性は高いのかも」

「悪魔と契約した魔女は油断すると大怪我する相手と、常々言っているので、それはありえますね」

「……もしかして、戦うのかな」

「流石に武力行使は最後の手段かなーって私は思っていますが……」

「ちょっと心配かも」


 勿論、悪魔と契約した魔女が悪い奴だったらそれは仕方がないのかもしれない。けれども、そうではなく、普通に私のような魔女だったりしたら、少しピリピリしているベゴニアと接触してしまうのは可哀想な感じがする。


「もしかして、アルさん、その魔女に先に会いたいって思ってます?」

「思ってるかも」

「危険かも知れないですけれど」

「でも、やっぱり気になるじゃない? 悪魔と契約した魔女が、私みたいな魔女とはどんな感じで異なってるかとか、色々なこと聞いてみたい」

「……アルさんらしいです」

「ありがとう」


 危険と言われても、知識欲には敵わない。

 それに、昔のようなピリピリした魔女や魔法少女の関係みたいなものはきっとないだろう。それを私は信じている。


「私、魔法少女と仲良くなれてるんだし、きっと大丈夫だって」

「ちょっと自信過剰のように聞こえちゃいます」

「油断してないから大丈夫。いつも、そこそこ警戒とかしてるから」

「どれくらいですか?」

「……トゥリに容易に背後を取られないくらいには」

「あっ、凄そうな感じがします」


 それなら問題ないかもみたいな表情をされてしまった。なんというか、トゥリウットの魔法の評価は高いのかもしれない。少し複雑な気持ちだ。

 自信過剰、みたいなのは確かにあるかもしれないけれども、それはそれとしてチャレンジする精神は持っていきたいというのが私の考えだ。やってみるの精神は、どんな場面でも通用する。


「でも、手がかりとかあったりするんですか?」

「手がかり……一切ないかも」


 そう言った瞬間、すみれにジト目で見られてしまった。計画性がないことに対してツッコミを入れているのかもしれない。

 いや、でも何かしらあるだろうと思って言葉を続ける。


「最近、魔女の方で色々やってることがあるみたいだから、そっち調べるつもりでいるかな」


 はぐらかしながら話す。私が調べたいのは魔女の島だ。そこにいけば、何か手がかりが見つかるかもしれない。


「何やってるかは教えてくれないんですか?」

「んー、教えていいかが心配だから、今は待っててほしいかな」


 魔女の島のことを話すのは容易だけれども、今それを話すのは良くない気がする。何かしらのトラブルに繋がる可能性があるし、準備している魔女の邪魔はしたくはない。

 友達を信頼していないというわけではないけれども、念には念を込めて、喋らないことにした。

 すみれは、それに対して、少ししょんぼりした顔にはなったけれども、私の表情を見て悟ったのか、わかったと言ってその話から引き下がってくれた。


「もし、友達になれたら紹介してほしいかもです」

「どんな魔女かはわからないから、まだ知らないけど……紹介できたらいいな」


 魔女と魔法少女の関係を良くするというのは、私にできることの一つに違いない。

 一歩ずつ、少しでも前に進めるならば、それが重要なことに繋がるかもしれない。


「あっ、まだ紹介していない魔女もいるから、今度紹介したいかも」

「気になります!」


 それと平行して、リアヴィリアの人間と仲良くなる挑戦も手伝ってあげたいという気持ちはある。

 悪魔と契約した魔女を探す前に、彼女と会ってお話するのも悪くないかもしれない。

 やれること、やりたいことが多くなったけれども、一つ一つ丁寧に頑張っていきたい。きっと、どれも重要なことだ。

 今回のメモはこんな感じに書いてみるか。


『目的を果たす為に焦らない、一生懸命一つ一つ頑張る!』


 焦って、自分を潰してしまっては元も子もない。

 自分の歩幅で頑張っていくことが大切だろう。


「……ところで、アルさん、結構距離近いの気がついてましたか?」

「……えっ」


 全く意識していなかったけれども、私とすみれの距離がほぼ無かった。肩と肩がぴったりとひっついているくらいに。

 逆に意識すると、気になってしまう。温泉だから尚更だ、少し距離を取ってすみれと向き合う。温泉に浸かっていたからか、恥ずかしかったからか、顔が赤くなっていた。


「なんだかアルさん、トゥリさんに影響されてきてる気がします」

「ど、どこが?」

「距離の詰め方とか」

「そ、そうかなぁ……」

「絶対そうですよ、そうでもなければあんな距離にはなりません」


 色々な出会いが私を変えているという風に考えれば、それは、なかなか面白いのかもしれない。頬を膨らませているすみれの姿を見つめながら、そんな風に考えた。

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