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アル・フィアータの魔女物語  作者: 宿木ミル
まったりする日常編
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私とクリスマスの為の部屋作り

 クリスマスの『自室』を使ったお泊り会。その準備に私は励んでいた。


「美味しいチキンの相談はトゥリと一緒にしたからいいとして……私は部屋を用意しないと」


 普段の客室で対応するのもできないわけではないけれど、それだとなんだか質素な感じがする。折角の魔女の集まりなのだからもっと賑やかにしたくなる。

 魔力を集中させて、部屋を増築する。魔女図書館という空間だからこそできる部屋の開拓方法だ。


「部屋増やすの久しぶりだけど……まぁ、なんとかなるでしょ」


 魔女図書館は魔力で出来た空間なのもあって埃被ったりすることはない。どれだけ増築しても迷子になりやすくなること以外はそこまで問題はなかったりする。

 『自室』の中央。部屋を管理する為に魔力を注ぎ、新しい空間を広げていく。

 ちょっとしたパーティールーム、というのも広すぎるだろう。だから適宜控え目な大きさの部屋に調整する。人数にして五人くらい入れるスペースがあればいい。魔力を注入して新しい部屋を作成する。


「……これで大丈夫かな?」


 ちょっと多めに魔力を使ったのもあって、ふらっとする。このちょっとした眩暈の感覚も久しぶりだ。

 少しの休憩を挟んだのちに、立ち上がり、新しく出来上がった部屋に移動する。

 魔女図書館の『自室』の部屋は基本的には扉を通じて移動できるようになっている。だから、すぐに移動するのは簡単だ。

 扉を開け、新しい部屋を確認する。


「悪くない、いい感じ!」


 部屋の広さはほどほど。

 それなりの人数が入れる余裕もある。

 なかなか快適な部屋なのではないだろうか。

 机も椅子もまだない部屋だけれども、これは期待が持てる。


「あとは……家具をどうするかだけど」


 流石に新しく家具を用意するのは出費が大きくなってしまう。

 だから、別の手段を考えるのが無難だ。


「今のテーブルにする前に使ってたやつが無事に動かせたらそれ使おうかな」


 呪文を唱えて、目の前に机を召喚する。

 前に使ったっきり、売ることもなく物置に置きっぱなしにしていたテーブルだ。

 若干サイズが大きすぎたのもあって、使う時にちょっと失敗したと考えてどうするか困っていたものだったりする。

 状態を確認。汚れも目立たない。ぐらぐらして使えない、なんてこともない。問題なさそうだ。


「うん、使える!」


 これがあれば机は問題なさそうだ。

 次に用意するのは椅子。

 ……これはどうしようもない。

 使い古しの椅子とかそういうのはないからだ。


「困ったなぁ」


 腕を組んで考える。

 新しく四人分購入するとなったらお金がかかってしまう。だけれども、パイプ椅子みたいなのを用意するのもなんだか質素に思える。

 悩む。

 じっくり悩む。

 答えを出そうとしていたその時だった。


「知ってる顔が部屋を増設してたから気になって来てみたけど、悩んでる様子だね?」


 ショノンがひょっこりと顔を覗かせてきた。

 部屋を見つめては満足そうに頷いている。


「ショノン? どうしてここに」

「理由は言った通りさね。気になったから来ただけ。ところで、何を悩んでたのさ」

「家具……具体的には椅子をどうしようか悩んでてね」

「椅子?」

「机は自前で用意できたんだけどね」

「なるほどねぇ」


 部屋の様子を見に来たショノンだったけれど、私の様子を見て閃いたような表情を浮かべていた。


「たまにはサービスするのも悪くはないかもしれないね」

「サービス?」

「こういうことさ」


 彼女が指を鳴らすと、机の周辺に椅子がよっつ召喚された。

 全部新品のように綺麗だ。


「い、いきなりこういうの貰っていいの?」


 流石に困惑してしまう。

 なんていうか、申し訳ないような気持ち。


「たまには、魔女図書館の創始者のひとりとしての力を見せたかったからね。これくらいはお安い御用さ」

「……どういう仕組みで出来てるの?」

「魔女図書館の魔力を利用して椅子に変換してるだけさ。外には持ちだすことはできないけれど、この空間ならば問題なく運用できるはずだよ」

「なるほど……」

「まぁ、これができるのはこのショノンを除くとシオンや、他の創始者くらいじゃないかね?」


 そう言うとショノンは微笑んだ。

 これくらいお安い御用という雰囲気からは、長年生きている魔女の実力を感じさせる。

 彼女がその気ならば、素直に甘えておこう。そう思い。ありがたく受け取った。


「他に困っていることがあったら教えてくれたら対応できるかもしれんね?」

「困っていること……」

「パーティーでも開くつもりなんだろう? この時期なんだから」

「その予定だけど」

「普段親しくしてる魔女の困りごと、もうひとつくらいは解決しようじゃないか」


 ありがたい言葉に対して、少し考える。

 なにか、あるだろうか。

 ……あっ、ひとつ困ったことがあった。


「夜のことで悩みがある」

「ほう、夜と」

「あっ、そこまでいかがわしいことじゃないよ? ただ、なんていうか、お泊り会みたいなのがしたいけど、ひとりようのベッドしかないから……」

「人数が多すぎて困ってしまうと」

「そういうこと」


 その私の悩みに対して、ショノンは唇に指を添えて考える。


「個人用のものを使って寝るのもありだと思うよ?」

「いやいや、流石に窮屈になっちゃう」

「冗談さ。寝苦しかったらお泊り会の意味がなくなってしまう」

「どうにかならないかな」

「そうさね……」


 その返答は思った以上に早かった。


「よし、これはどうかね」

「閃いたの?」

「うむ。シオンが新しい娯楽の実験という形で寝室を用意しててね。それの体験を兼ねて、寝室として利用するのはどうかな?」

「寝室の娯楽?」

「まぁ、色々あるのさ。どうだい? これを受け止めるかどうかは自由さ」


 ありがたい提案だ。

 それを断る理由はなかった。


「使ってみたい。シオンにお願いしてもいい?」

「構わないさ。後で確認してみるといい」

「ありがとう」

「いいってことさ」


 これで少しずつ用意が整ってきただろう。

 メモに進捗を書いておくと幸せな気持ちになれるかもしれない。


『みんなと楽しむ準備が進む時間は楽しいけど、体調管理も気を付けよう!』


 当日体調を崩してしまうというのはよくないし、寝不足になったりするのも危ない。

 こういうのは自分なりにのんびり準備していくのが大切だろう。


「まぁ、シオンの用意した部屋がどういう反応になるかが興味あるから、感想は聞かせてほしいね?」

「……うん? ま、まぁ、特別変なものはないだろうし大丈夫だと思うけど」

「どうだろうねぇ」


 怪しい微笑みを浮かべる彼女。

 どういうものがあるかはわからないけれど、ちょっとだけ調査したりするのはいいのかもしれない。頼り切りにならず、私なりにも動いてみようと思った。

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