第1章 1-2 : 見知らぬ場所
魔力結晶が割れ、眩い光に包まれた後の事は記憶に残っていない。
何かがあったのかもしれないし、何も無かったのかもしれない。
しかし遥か彼方まで見えるこの場所に立っていると言う事だけは事実だと認識出来た。
他の賢者達は何処へ行ったのだろうか、それともあの研究室に残されているのだろうか。
そんな事を考える一人の少女。
【魔の賢者】であるアイラは周りには果てしない森しか見えないその場所で考えいた。
「うーむ、参ったのじゃ。 また実験を失敗させてしまったのかのう。」
そう呟き状況を確認する。
周りには特に何も見えない、見えるのは木と草が生い茂る森だけである。
そして手持ちの物は何も無し、あるのは亜空間収納に入れてある数日分の食料と水、そして数枚の白金貨。
この場所では金など役に立たないと考え、今後の行動を決める。
(転移実験の時のように亜人族領の果て辺りかのう。しかし、このような場所は見覚えがないのじゃが… 取り敢えず人里に向かい坊主に連絡を取らないとじゃな。)
そう決めたアイラは森の中を一人歩き出すのだった。
◇ ◇ ◇
歩き出して1時間ほどが経っただろうか。
研究室に朝早く入ってからというもの、何も食べていなかったアイラは空腹を感じ始めたので食事をしようと落ち着ける場所を探す。
周りを見渡すとちょうど座れそう岩があり、アイラは腰を下ろす。
腰を下ろしたアイラは亜空間収納の魔術を発動させ、中からパンと水を取り出した。
取り出したパンを咀嚼しながらアイラは次の行動について考える。
(一時間ほど歩いて分かったがやはりこの場所はワシの知り得ぬ場所じゃ。実験の時、魔力結晶のキャパオーバーで魔力結晶が割れたのは分かったのじゃ。 何よりも時空転移魔法陣など前例の無い実験の失敗、もしかするとここはワシの住んでいた世界ですら無いということもありえるのう。)
と考える。
そもそも時空転移自体が前例の無い魔法陣で空間転移時ですら大陸の端に飛ばされたのだ。
その前例の無い大規模魔術の失敗とあっては違う時空間の異世界へと飛ばされていてもおかしくないのだ。
(他の賢者達が無事ならいいんじゃが…。)
アイラは自分のせいで大変な事に巻き込んでしまったかもしれない友人達を思う。
あの時魔力結晶の検証を100%終らせていれば、それ以前にまず一人で実験をしてみるべきだった。
考えればキリが無い後悔が溢れ出る。
(しかし、どうなっているかも分からん。もしかしたら巻き込まれずにあの場に取り残されているかも知れぬしのう。)
そう切り替え
「さて、もうちょっと探索してみるかの。」
そう呟き立ち上がった時にそれは聞こえた。