第1章 1-1 : 七賢者消失事件
短くてすいません。
眩い光が消え、七賢者が消えた。
研究室に残されたのは結界の中に入る研究員と数名弟子達のみであった。
床に描かれていた魔法陣をまるでそこには最初から無かったかのように消えており、床に転がっているのは割れた魔力結晶のみであった。
研究員達は呆然としていたが、七賢者が居なくなったという事をはっきりと認識し直し正気に戻る。
正気に戻ったアイラの弟子の一人であるサイスは一人そっと
「馬鹿師匠がまたやらかしやがった…」
と呟く、師匠でもあるアイラは研究員気質であり、今までも何度となく実験の失敗をしていた。
今日の失敗もいつも通り、亜人族領の果てに転移してしまった程度の物だろう、そう考えてサイスは動き出す。
まずは王宮へ行き王への報告。
七賢者全員が消えたと聞いて王は酷く狼狽えたがサイスのいつも通りの事だろうという言葉を信じて民への発表は無しという事になった。
◇ ◇ ◇
あの実験から一週間が経った。
しかし七賢者からは何も音沙汰が無くサイスもいい加減心配になっていた。
生憎今のところ研究室はアイラがいない事への心配の声が上がるが特に問題もなく回っている。
しかし研究材料や膨大な魔力が必要な実験にアイラは不可欠だ。
しかし待てども待てども音沙汰が一切無い。
王へと相談したがもう少しだけ様子を見るという事に決定している。
心配は募るばかりだがサイスは様子を見る事にした。
◇ ◇ ◇
実験から1ヶ月、サイスは王宮へと呼び出されていた。
「サイスよ、まだ七賢者達からの連絡は無いか?」
そうサイスに問いかけるのは[人族]の王であるサーダル・ラス。
その問いにサイスは
「魔族領、亜人領共に連絡を取り合っておりますが、現在なんの連絡も無いとの事です。」
と報告する。
その報告を聞いた王はどこか覚悟がついたような声で
「ここらが限界であろう。 元より七賢者は常に目立っておった存在、居なくなった事に気付いた者たちも多くいるであろう、これ以上隠していると民全体への不安が募る。 その為全世界に住む民へと[七賢者消失]の事実を知らせようと思う。」
そう告げる。
それに対しサイスは
「仕方ありません、しかし 消失の理由は如何為さるおつもりで?」
そう聞き返す。
「七賢者はすべき事があると告げ、国を離れているという事にしようと思う。」
そうラスは言うとすぐに全世界への通達の指示を告げる。
その日の夕刻、全世界の民へと[七賢者消失]の通達がされる。
その報告に多くの民は泣き、驚愕するのであった。