第0章 0-6 : 実験開始
更新遅れました。
今年中は予定が多く、投稿出来るタイミングを見計らっての投稿になります。
次回やっと第1章へ入ります。
「早速実験を始めようと思う!」
そうアイラは宣言すると机の上に置かれているいくつかの道具の中から黒い筒のような物を取り出す。
「まずはこのペンに魔力を込めたインクを入れて…」
と呟きつつ
「この床に魔法陣を描いていくのじゃ。」
そう続き、床に半径1mはあろうかと言う緻密な魔法陣を描いていく。
実はこの魔法陣と言うものは魔力インクを使わなくても描くことができる。ただ、込められる魔力の容量の関係で転移や今回のような魔力を大量に使う場合は床や紙を媒体にしてインクを使用して魔法陣を書き出す
必要がある。
アイラが書き出したその魔法陣は魔道具を作り出すセナですら計り知れないほど緻密で複雑であった。
静かな研究室にキュッキュッと言う音が響き、とても複雑な魔法陣が描かれていく。
10分程経った頃だろうか、アイラは
「これでよしなのじゃ、次に・・・。」
再度机の上から深緑色の結晶のような物を取り出す。
「時空術に必要な触媒の魔力結晶を魔法陣の中央に設置して、後はワシの魔力を通した時に拒否反応が出ないように魔力を適応させるのじゃ。」
そう言いながら魔法陣の上へと座り目を閉じる。
数秒後、アイラの身体から澄んだ青色をしたオーラのような物がふわりふわりと煙のように出てくる。
その煙は魔法陣へとすうっと吸い込まれて行き、
魔法陣全体がその青色を模したかのようにぼんやりと青く光りだす。
そのまま15分ほど魔力を吸わせたアイラは肩で息をしながら全体が光りだすのを確認してから目を開け立ち上がる。
「これで後はワシが魔力を魔力結晶に吸わせたら魔法陣が起動し、5分後のここにワシが時空転移する筈なのじゃ。」
と説明する。
「では早速じゃが実験を始めたいと思う。 賢者以外の研究員は全員結界の中に入るのじゃ、賢者達は不測の事態に備えてその場に待機してて欲しいのじゃ」
アイラがそう言うと賢者達は頷き研究室にいた研究員達は急いで結界の中に入る。
「それでは皆よ、実験開始じゃ。5分後にまた会うのじゃ。」
そう言いながら先程とは比べ物にならない程の魔力を放出し、魔力結晶へと吸い込ませて行く。
光るという言葉では言い表せない眩い輝きがアイラを包む。
余りの輝きに気のせいだろうかと、他の賢者達も仄かに輝いている気がする。
魔力結晶へと吸い込まれて行くアイラの魔力は常人の数十倍にも及ぶ。
と、その時であった。
パキッ
と言う音がして魔力結晶が半分に割れたのだ。
超高純度の魔力結晶を使っていたのでそれは無いと思われていた事が起きてしまったのである。
魔力結晶とは純度別に込められる魔力の量が決まっている。
今回使った魔力結晶は超高純度と言われ、国宝にも匹敵する価値がある特別な物だった。
時空転移に耐えられる魔力結晶は超高純度の中でも極僅かであり、今回の物もアイラの残っていた魔力ほぼ全てにも確実に耐えられる物だったのだが、間違いがあったとすれば一つ。
この場に七賢者が揃っていた事である。
七賢者が揃っていた事により魔力結晶の持つ特殊な性質により魔力が共鳴してしまっていた。
アイラ以外の賢者達が輝いていたのも気のせいではなく、実験を真剣に見ていた為か、本人達も気づかない程度に魔力を吸い取っていたのである。
だが、七賢者達の『本人達も気づかない程度』とは一流魔術師数人の魔術にあたり、アイラの残っていた魔力全てと賢者達の漏れ出た魔力により許容量が超えてしまったのである。
魔力結晶が割れたその瞬間賢者達は何が起きても良いように自分達の武具へと手を掛ける。
そして。
研究室全体を一瞬、七色の輝きが満たす。
「・・・まさかなのじゃ。」
輝きが満ちた瞬間にアイラがそう呟いた気がする。
次の瞬間、アイラと賢者達の姿は研究室に無かったのであった。
これが現時点では誰も知り得ぬ未来に大きな影響を及ぼす事になる【七賢者消失事件】の始まりであった。