0章 0-5 : 七賢者集結
基本的には今回より月 木 土 の18 週3投稿となります。
物語、描くのと読むのでは天と地程の差がありますね。
見直すと直す所沢山ありそうだ。。
早いものであの連絡から既に一週間が経ち、時刻は夕刻に差し掛かろうとしている。
集合を掛けた当人であるアイラは今か今かと七賢者が集まるのを研究室で待っていた。
久しぶりに全員が顔を合わせる楽しみもあるが、何よりも長年してきた研究が実るかもしれないという事の方がアイラには大事であり、楽しみだった。
「まだ来ないのかのう、早く実験を始めたいのじゃが…。」
そう言いながらそわそわと研究室の中をグルグルしていると扉が開く音と共に
「アイラちゃーん!!お久しぶりぃ!アイラちゃんの大好きなセナだよーー!!」
と叫びつつ半ばタックルのような形で抱き着いてくる狐耳に狐の尻尾が生えている16歳程に見える陽気な少女。 【創作の賢者】セナであった。
突然のタックルにアイラは盛大に地面へと転がった。
「あいたたたた。久しぶりじゃのう、セナ。それともうちょっとで良いから優しく来てもらえると助かるんじゃが…。」
そう言いつつも娘を見るような目で微笑みながらセナの頭を撫でるアイラ。
当然ながらタックルを仕掛けたセナもアイラに抱き着いた状態のまま転んでいた。
「あいたたた、アイラちゃん。ごめんなさい・・・。」
怒られたとでも思ったのだろうか、しょんぼりとしながら謝る。
そのしょんぼりした姿もまた可愛らしいのだが。
「気にしなくて良いのじゃ。それよりも良く来てくれた。 」
「そう言えば他の皆は?私は参加出来なかったけど王都で昼食を取るような事を言ってたよ?」
とアイラが知らない情報をセナが話す。
「ふむ、初耳じゃの。 それならばそろそろ来てもおかしくないのじゃが・・・。」
昼食を王都で取るという事は既に王都入りをしているという事、しかし未だ来ない所を見ると各自自由時間のようなものを設けて夕刻までの暇を潰しているのだろう。
そう推測し考えに耽っていると扉が開く。
「すまんすまん、飯食って昼寝してたらこんな時間になっちまった。」
カイルがそう言いながら研究室に入ってくる。
「良く来てくれたのじゃカイル。 大体何時もお主は寝すぎなんじゃ。 」
そう言ってアイラはカイルを歓迎する。
その後15分ほどセナとカイルと話し込んでいると扉が開く。
「久しぶりだのうアイラ! [人族]の武具屋を周ってたらこんな時間になってしまった!」
ガッハッハと笑いながら入ってくるのはドワーフの老人 【鍛治の賢者】ダンであった。
ダンの後ろからもガヤガヤと声が聞こえる。
恐らく他の賢者達の声だろう。
「お久しぶりですねアイラさん、私にとっては久々の自由な時間だったもので、遅れてすいません 途中でカノンさんランドルさんご夫婦にも会ったので連れて来ましたよ。」
「ダン!アリアス!久しぶりじゃのう!良く来てくれたのじゃ!他の皆も!」
「行き遅れの巫女に拉致られた。ランドルとの楽しい時間を邪魔された。不服。」
「こ、こらっカノン!行き遅れなんか言っちゃダメでしょ!…ブフッ」
そんな会話をしながらアリアス、カノン・ランドル夫婦も研究室に入る。
「行き遅れ?カノンさん?ランドルさんも笑いましたよね今。天罰をお望みでしょうか?」
想像するのであれば邪神そのものである笑顔をカノンへと向けるアリアス、本来女神に仕えるアリアスだがその眩しすぎるほどの笑顔は女神も走って逃げるレベルである事は間違い無い。
「「すいませんでした!」」
その笑顔を向けられたカノン夫婦は目にも留まらぬ速さで土下座をする。
そんな光景を見たセナとカイルが腹を抱えて笑っている。
「ま、まぁそれくらいにしておくんじゃアリアス。お主にも必ず良い巡り合わせがあるのじゃ」
そうアリアスを励ます。
「ありがとうございます、アイラさん。」
励ましは有効だったようでアリアスが邪神の笑顔を辞め普段の天使の様な笑顔に戻る。
その光景を見たカノン、ランドル夫婦はホッとしてアイラへ感謝の気持ちを眼差しで送って来ていた。
「さて、話も良いのじゃが本題に入るのじゃ。」
アリアスが元に戻りホッとしたアイラは気持ちを切り替えて説明する。
「改めて良く来てくれたのじゃ、七賢者達よ。 今回集まって貰ったのは他でもないのじゃ。苦節30年余り、お主達にも何度か手伝って貰った事もあると思うのじゃが、とうとう時空術が完成したのじゃ。 その時空術を人類が使えるように今回実験を行いたいと思っておるのじゃ。」
今回集結したのじゃ理由を軽く説明するとセナから質問が飛ぶ。
「それは事前の連絡でも聞いてた事だけど、私達をわざわざ集めた理由はあるの?アイラちゃん」
アイラは質問に対しその説明はしていなかったな、と思い説明する。
「勿論あるのじゃ。第一の理由としては時空術行使にはワシの魔力を空にしなければならないほどの莫大な魔力を使う、もし何かあった時には七賢者の諸君に対応してもらいたいのじゃ。」
「アイラちゃんの魔力を空に・・ってとんでもないね。それで、第一の理由って事は第二の理由もあるんだよね?」
説明したアイラに対しセナは驚いた表情を見せる。
アイラの魔力はそれだけとんでもない量であり、例えると王都にいる人間の中でトップの魔力を持つ宮廷魔術師、その50倍と言えば分かるだろうか。
王都には冒険者ギルドが存在するのだが、ダイヤ級と言われる世間では人外と呼ばれる存在ですらアイラの1割程度の魔力しか持たないのである。
「よくぞ聞いてくれたのじゃセナ! 第二の理由!それは、お主達にただ自慢したかっただけじゃ!」
ズコーっと聞こえそうな程の勢いで他の七賢者がコケる。
「あはは、まぁアイラちゃんらしいと言えばアイラちゃんらしいね・・・」
近くに紙などがあれば飛んでいってしまうであろうと思うほどの大きな溜息をついて呆れるセナ。
アイラはこのような人だったと改めて思い出した。
「説明も終えた事だし、早速実験を始めようと思う!
七賢者以外の者は安全の為観測用結界の中にいるのじゃ!」
そう言って弟子や研究員達を部屋の隅に設置されている結界へと誘導し実験を開始する。
---この時9割以上の成功確率と思われていたこの実験が後に未来を変える大きな事件のキッカケになるとはこの時まだ誰も知らない。