悪魔の門
馬車に揺られて半日。
アレン達はキャスタルへとたどり着いた。
街全体が高い石の壁で囲われており、中の街並みもホーストンとは違い、家も全て石積みの壁で作られていて数も多い。道の両脇には簡易なテントで作られた商店が立ち並び、活気がある。
「なんだこれ? どうやって歩けばいいんだよ」
見たこともない人混みに、アンジは戸惑った。
「田舎育ちにはビックリするかも知れないけど、キャスタルではコレが普通よ」
ジャオシンジャが応える。
「お前、そういやキャスタルの出身だったな」
ジャオシンジャ・インスウ
クールな女性だが、「攻撃」「回復」「補助」「防御」を満遍なく使える木属性の魔法を得意としており、操る三節棍と相まって総合的な強さはアレンやアンジより上だろう。
「ではこのまま私の研究部に向かうから、付いてきたまえ」
そう告げると、ケイムは北に見える城へ向かって歩き出した。
美しい街路樹が立ち並ぶ石畳の道を通ると、城門が見えてきた。重厚な門をくぐった先は、青々とした芝生に、美しく見える様に配置を計算された木々や花々が植えられた中庭がある。しかし街の活気と違い、どこか悲壮感が漂っている気がした。
ケイムは中庭の一角にある図書館の様な場所へと入る。中には天井に届くほどの本棚と、おびただしい量の本が貯蔵されていた。
ケイムは職員に挨拶をしながら、階段を降り地下へと向かっていく。
ロウソクに照らされた薄暗い廊下を歩くと、突き当たりに大きな扉が現れた。
「さぁ、入りたまえ」
ケイムが扉を開くと、部屋の中は廊下とは打って変わってとても明るかった。
「どうなってるんだこれ?」
部屋を見回しながらアレンは尋ねた。
「この部屋に取り付けられた発光する物体は、雷の魔法石を使った新たな灯りだ。ロウソクの代わりとなる新技術なのだよ」
発光体を指指しながら説明すると、ケイムはソファーに深々と腰を下ろした。一つ息を吐き、ケイムが語り始める。
「まず魔法学校を卒業したばかりの君たちには、話しておかなければならない事がある」
いつものニヤついた顔はそこには無く、今までに見た事のない真剣な表情をしたケイムがいた。
「ここキャスタル以外の地方の町へは、まだ知らされて無い事だが……この国は今、戦争状態にある」
「敵国の名はバルバロ。我が国より広い領土を持ち、世界有数の軍事国家シックザールの属国だ。戦力差があり過ぎて、このままでは我々キャスタルは勝てる見込みが無い」
少しの間を置いて、ナオは机を強く叩くと、イスを倒しながら立ち上がった。
「知らない間に戦争してて、それも隠して、しかも負けそうですって何だよ! 訳分かんねぇよ! ふざけんな!」
「黙れフォスター、座って話を聞け」
あまりにも凄みの効いたケイムの顔に、反抗的なナオも何も言わずにイスに座り直した。
「で、でもケイム。戦争って言っても、敵の兵が攻めて来たなんて噂でも聞いた事ないよ?」
ダートンの言う事も分かる。確かに噂話でも、そんな話題は聞いた事は無かった。
「いや、攻め込まれているぞ。……お前達がホーストンで見た物がそうだ」
顔を見合わせる。
そんなはずは無い、だってあれは……
「あれはモンスターだった筈だが?」
グリーヴァがアレンの疑問と同じ事を聞く。
「あれが我々を悩ます、もう一つの種なんだよ」
「悪魔の門と言われる神話を知っているか?」
少し考えてから、ジャオシンジャが答える
「確か……人の悲しみとか憎しみが多くなると、悪魔が現れる。そんな神話じゃ無かったかしら?」
それを聞くと「正解!」と言うジェスチャーを見せた後、8人の顔を見てから足を組み直すケイム。
「悪魔の門……」
「実在すると言ったら、どうする?」




