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デモンズ・ゲート  作者: 梅
第3章
34/50

異国



 葉が紅く染まった木々の間を抜けて行くと、次第に川のせせらぎが聞こえて来た。川と呼ぶにはあまりにも小さく、走って飛べば向こう側に渡れる位の幅しかない。それでも水を確保出来る大事な所だ。川の水をバケツに汲むと、来た道を戻る。


 森の中にぽつんと建つ小屋が現れる。苔むした屋根、壁の木の板には隙間があちこちに出来た小屋の扉を開け中に入ると、水瓶に先ほど汲んできた水瓶を移す。


 「お疲れ様、アレン」

 朝食の準備をしていたマナが声を掛けた。

 マナの手元を覗いてみると、食材は山菜ばかりだった。

 「流石に山菜ばかりだと飽きて来るな。また何か動物を狩って肉を食べたいな」


 それを聞いてマナはため息を漏らす。

 「そんな事言って前に狩りをして来た時も、気持ち悪いって言って捌けなかったじゃない」


 そう言われると、その時の記憶が蘇って来る。……やはり無理か。

 「山のふもとにある村で、何か手伝いをして分けて貰えないかな?」

 「うーん、村の人でも肉は貴重だから中々難しいんじゃない?」

 「やっぱりそうか……」


 当たり前でしょ。と言う表情をしながら、マナは床に朝食を置く。


 「……机も欲しいな」

 アレンの呟きにマナはまた、ため息をついた。

 「お金が無いんだから仕方ないでしょ! こんな山ばっかりの所じゃ、山菜を取って村に持って行ったって買う人も居ないし」

 怒るマナを見て、余計な事を言ってしまったなと後悔した。


 朝食は山菜を香辛料で和えただけの物で、ここ数日はほとんどこればかりだ。


 山菜はあまり好きでは無い。

 口の中に一気に詰め込み、水で胃の中に押し流した。

 「今日は村に何か仕事が無いか、見に行ってみるよ」

 「仕事って言っても、年配者の手伝いとかでしょ? 村に行くなら次いでに動物の捌き方を教えてもらったら?」

 「……捌き方は日をおいてからにするよ」

 山菜が逆流してきそうになるのを、必死で抑え込めながら言った。


 皿を洗って片付けると、ふもとの村を目指し出発する。

 村までは山道を20分ほど下りれば着く。


 ここに来た頃は、滑りやすい草に足を取られもっと時間が掛かっていたな。


 通りなれた山道を下って行くと、すこしひらけた場所に出た。ここからは、村や遠くの山々まで見渡せる絶景の場所だ。

 山の色は緑から赤へと変わり始めていた。


 キャスタル王国の崩壊から、もうどれほどの月日が経ったのだろうか?

 この村には暦と言う物がないため、日付の感覚はとうに無くなってしまった。感じる季節で判断するなら、3ヶ月ぐらいだろうか。


 キャスタルの王室で、グリーヴァの魔法に飲まれ辿りついたのがこの国だった。

 村の人は島国だと言うが、想像していた島とは比べものにならないほど広大だ。遠くまで見渡しても延々と山が続いている。

 ここがどこの国かも分からず、帰る国も無かったため、マナとここで暮らしていく事を決めた。


 物思いにふけり、不鮮明になっていた視界に人が見えた。


 「お~い、異国の兄ちゃん」


 声を掛けてきたのは、村に住む老人だ。背はマナと同じ位で、男にしては低いが山で暮らしているだけあって、上背とは不釣り合いな逞しい体格をし、髪や髭は伸びるなりに伸ばした仙人みたいな風貌だ。


 「ガロさん、おはようございます」

 「今日は可愛いお嬢ちゃんは、一緒じゃないんかえ」

 「村へ何か仕事が無いかと下りて行ってる所で僕だけですね」

 「そら残念だわい。ワシの楽しみの一つなんじゃが」


 本当に残念そうな顔をしている。ガロの暮らす村には若い女性は少なく、年配の人が多い。気持ちは分からなくも無いが。


 「ガロさんの教えてくれた、山菜や食べれるキノコの知識はマナも喜んでましたよ。……おかげで毎日、山菜ばかりになりましたが」


 ガロは自分の教えた事が役に立っていると分かって、嬉しそうな顔で笑った。

 「それは良かったわい。おまえさんも山菜嫌いを直さんと、ここで生きていけんぞい」


 図星なことを言われ、苦笑いで返すのがやっとだった。


 「じゃあ僕は村に向かいますので、ガロさんも気を付けて」


 あいよ、と手を返すとガロは慣れた様子でひょいひょいと山へ入って行った。



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