1-7
「――よし! 取れた! ……これか? お前の探してた〝赤い球〟って?」
――ホリィのパンツから出てきたのは、俺の予想していたとおり、パチンコ玉大の、小さな〝赤い球〟だった。
俺は取り出したそれをすぐにホリィに見せてみる――と、ホリィの顔には、ぱぁ、と花が咲いた。
「そう! それ! ありがと、りょうさま! です!」
――です、が戻った。
ホリィはすぐに俺からその〝赤い球〟を受け取ると「ほんとうによかった~…です」と呟き、溜まった涙を指で拭った。……どうやら、心の底から安堵したらしい。
いや~……何はともあれ、よかったよかった……これで無事に話の続きが聞けそうだ。
ほっ、と次の瞬間、俺もホリィにつられて安堵のため息を溢してしまった。
俺はそれから、とりあえずホリィの服をかき集め、ホリィにそれを渡し――
「――えいっ! です!」
――と、その時だった。
ホリィは俺の目の前で、せっかく見つけたその〝赤い球〟をいきなり放り投げ――
「って!! ちょぉぉっっっ――!!???」
何してんだ!? そう叫ぶ前に、俺は投げられた球に向かって思いっきりダイヴした。
――せっかく見つけたのに、投げたらまた見つからなくなっちゃうじゃないか!! そう、直感で思ったのだ。
……だが、所詮は人間の反射神経。当然、すでに投げられた球よりも早く動くなんてこと、俺には到底無理な注文だった。
俺はホリィの服を抱えたまま、そのまま、ズデェ!! と床に額を打ち付けてしまった。球はそんな俺をあざ笑うかのように、ヒュー、とさらに保健室の奥へと向かって飛んで行く。
そして――
コンッ――ぼふんっっ!!
球は、床に落ちたのとほぼ同時に、突然〝爆発〟し――えっ!!?
何だ!?
バッッ! と俺はすぐに、床に手をついて急いで起き上がり、音がした方向を見た。
――すると、そこにはすでに、もくもく、と青白い煙が立ち込めていて、さらに、
「――にゃあ!? 何これ!?」
という、ネコの声が……いや、違う! これは……〝人の声〟!? 何で煙の中から――!?
俺はさらにそれを凝視してみる……と、だんだんとその煙は晴れて行き、やがてその中から〝小さな人影〟が姿を現した。
――そこにいたのは、長くきれいな黒髪を後ろで檀紙(高級和紙)と水引(祝儀袋などに使われる紅白の紐のこと)を使って一つにまとめられた、白衣と緋袴の……つまりは〝巫女〟の格好をした、小さな女の子の姿だった。
……いや、てゆーかそこにいたのは……間違いない。俺のよく知る――
「――楓!!?」