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「――そうだ! な、なぁ、ホリィ?」
はっ! とそのことに気がついた俺は、しかし今度はなるべく冷静に、優しく、座り込んだままのホリィに聞いた。
「お前…今のマナってコと知り合い……なんだよな?」
「……ふぇ? まなお姉さまと? うん。まなお姉さまはホリィのお姉さまだよ? だってホリィの名前は、みもり ホリィだもん! です」
お姉さま……〝家族〟??? このどう見ても外国っ子のホリィが、髪の色こそ蒼いが、あのたぶん日本人であるマナの姉妹……? ――あ、いや! そんなことはこの際どうでもいい!
俺は湧き出る疑問を全て後回しにし、すぐに本題のみをホリィに聞いた。
「よし、じゃあ、ホリィ? そのマナお姉さまから、この〝ユメ〟の世界のこと、何か聞いていたりしないか?」
「え? 〝ここ〟のこと? ――うん、ちょっとだけ聞いてるよ? です」
やっ――いや、落ち着け!!
俺は焦る気持ちを必死に抑えつけ、ゆっくり、慎重に聞いた。
「……で、ホリィ? それって、例えば……どんなことだ?」
「うん、えっとね……です」
そう呟くと、なぜかホリィは自分のことを指差し、話し始めた。
「えーと、まずはホリィのことなんだけど……ホリィは〝本物のホリィ〟じゃなくって、まなお姉さまが〝半年前くらいに見た時のホリィ〟なんだって。よくわかんないけど……とりあえずホリィは〝強い子〟だから、りょうさまの〝たびのオトモにはぴったり〟だろう、って言ってたよ? です」
〝強い子〟? 〝旅のお供にはピッタリ〟……???
こんな金髪ちびっこシスターさんのホリィがなぜ、〝ピッタリ〟、なのだろう? 普通はもっとゴツイ、所謂SP的なオッサンたちの方が、この場合は、ピッタリ、だと思うのだが……これではまるで真逆ではないか。
……。
……俺は少し悩んだが、しかし、それはつまり遠回しに、ホリィを連れて歩けば、何かしらの役に立つ、ということをホリィ伝手にマナが俺に伝えようとしてくれたのではないか? そう考えることにした。
……まぁ、何しろこの世界は普通の世界じゃないからな。まだ保健室の外に一歩も出ていない状況だし、ここは〝ユメ〟について何かと詳しそうなマナの、〝ピッタリ〟、という言葉を信じることにしよう。
「――よし、分かったよホリィ。俺といっしょに行こう。……で? マナ…お姉さまには、あと他には何か言われてたりすることはないのか?」
「え?」とホリィの首は、くにゃん、と傾げられた。そして次にまた、うーん、うーん、腕を組んで悩み始める。……クセなのかな?
俺はそんなホリィをわざわざ焦らせる必要はなかったため、ただ黙ってその答えを待った。
そして、数十秒後。
「うーん……うー…はっ! 思い出した! です!」
……無事、思い出せたらしい。――しかしホリィは突然、身体中を手で……どうやら、何かを探しているみたいだな? 「あれ? ない……どこいった? です」と呟きながら色んな所をまさぐっていた。
そしてしまいには……
「ここか! それともこっちか! です!」
立ち上がり、帽子も、服も、何もかも、全部脱ぎ捨て、最終的には真っ白な〝パンツ一丁〟姿になってしまっ……ああ、安心してくれ。俺には全く〝そういう趣味はない〟から。べつに小さい子の裸なんて見てもうれしくも何ともないから。その証拠は……まぁ、いずれ明らかになるだろう。