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『私たちノことも、気にナル、ことでショウが、先に、モットも重要な、コノ、〝世界〟について、説明サせて、いただ、キマス。……すでに亮サマ、もオ、察しの、とおり、ココ、は亮さまガ元いた、世界と、ハ、似てイルようで、〝全く異ナル世界〟、にぞクしテ、います。……通俗、テキな用語でイエば、コノ世界は全て、〝ユメ〟と呼ばれる、モノの一部、というこトになりますガ……通常の夢と比較シテ、最も異ナル部分は、厄介ナことに、この〝ユメ〟ノ中で、亮さまのミに、起こったデキごトは、そのほとんド〝全て〟が、現実、セカイの亮さまに、〝影響〟が、出てしまウ、ということなのデす』
「〝全て現実世界の俺〟に……? え? ということは……」
『ハい。例え、ば先ほど頬を、ツネられてイタよう、ですが……あのジョウ、タイで、もし、〝ケガ〟を負ってシマッテいた、場合、現実世界で寝テイル亮サマも、コチラのセカイの亮さまと同様ニ、〝ケガを負ってシまう〟、というコトニ、なるんです……ただし、〝時〟がクるまで、いくらこちらのセカイで亮さまの、肉タイに痛みヲあた、えようとも、向こウノリョウさまがソノ痛みで目覚める、コトハ絶対、にありません、ので、ご注意を、オネ、ガいします。――マタ、こちらのセカイ、での〝記憶〟は、現実世界の亮さま、ニハ全く、引き継がレません。その逆は引き継ガレ、ますが……よって、現実世界デ、コレに対処する、ことは、事実上、〝不可能〟ダと、思われまス……まァ、文字ヲ……とい、っテモ、ペンで書いたダケ、ではカラだに、影響はデマせ、んので、痛みヲ我慢して、〝身体ニ直接文字を彫リ込メ〟ば……あるいは、可能かもしれ、ませんが……』
「なんだと……!!」
くっ!! 俺は歯噛みした。
そんな死神の十三番に襲われた時のハイエロファント緑みたいなこと、俺にはとてもできない! 第一、それをやったからといって、それで本当に現実世界の俺が気づくとはとても思えないし……きっと、俺は自分が何か悪い病気……〝心の病〟にでもかかったとでも思って、そのまま病院に行って何もしないで終わってしまうことだろう! それでは意味がない!
――いや、でも待てよ? それ以前に……???
「マナ、一つ、聞いていいか?」
ハイ、とマナが頷いたのを確認してから、俺は聞いた。
「……そもそも、俺はいったい、何でそんな不気味な世界に迷い込んでしまったんだ? 現実世界の俺が何か……マズイことでもやらかしたのか? 例えば、河原にあった神さまを祀っていた石を、ただの石ころだと思って蹴っ飛ばした、とか……?」
『そレ、は……申し訳アリま、せん。わタシ、にも分かりマせん……』
しかし、とマナは続けた
『その世界カラ、〝抜け出ス方法〟な、ら、一つダケ、ココロあたりがアリ、ます』
「何!? 本当か!? それはいったい――???」
『はい。ソ、れは……』
――と、その時だった。
「うぅぅ~あ~……まな、おねえ、さま……ほりぃ、もう限界……です~」
ホリィが、ぺたん、と座り込んでしまったのだ。どうやら何か〝魔法力的なモノ〟が尽きたらしい。ホリィの真剣な顔は一転。一瞬にしてだらけ顔になってしまった。
――瞬間、だった。マナを覆っていた光はどんどん崩れていき、マナ自身の身体も光と共に崩れ始めたのだ。
『いけナい!!』
マナは崩れゆく中、身を乗り出して大声で叫んだ。
『亮サマ!! 〝北北西〟、へ向か、ッて、くだサイ!! そ…こ…………!!!』
――だが、
「お…おい!? マナ!? マナ!!?」
……光は、完全に消えてしまった。無論、後に残された鏡からは何の音も聞こえてこない。
「くそっ!」
ギリリ、と歯を鳴らし、俺はあごに手を当てた。
〝北北西〟へ向かえ、だと!? いったいそこに何があるってんだ!? ドラちゃんの畳に引き続き、そこにはギガンティックなゾンビ術師でもいるってのか!? せめて詳細伝えてから消えてくれよマナちゃんめ!!