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優希先生直伝の、美術鑑賞?

 そんなこんなで美術館に向かった4人はチケットを3枚購入していた為、差し出し、当日券を購入しようとした主李かずいの横からスッと招待券と書かれたチケットを優希ゆうきが差し出す。


「あれ?」

「あ、これ、貰ったんです。招待券」

「お姉ちゃん、懸賞応募が趣味です」

「懸賞応募……」


 初耳の情報に驚くが、優希は顔を赤くして、


「この前に、懸賞でうどんの詰め合わせ。その前は、映画のチケット……特別招待チケットが当たったんです。それに、有名な声楽家の方のスペシャルコンサートとか」


指を数え、説明していく優希に唖然とする。


「図書カードとか、とってもうれしいです。今回は偶然当たっていて……」

「本当は二人で行こうかって」

「じゃぁ、もう一枚は?」

「あ、みどりちゃんにあげました」


 竜樹たつきが答える。


「あ、柳沢やなぎさわ先輩です‼」

「あぁ、幼馴染みだっけ?」

「はい」

「あの、チケット代は……?」


 優希は尋ねるが、


「良いよ。俺が誘ったんだし」

「でも……」


躊躇う。

 中学生のお小遣いなど大体いくらというのは分かったものである。

 実里みのりが言葉を挟む。


「優希先生の授業の受講料だと思って安心しておけば?」

「あ、そうそう。気にしなくて良いよ」

「あ、でも……」

「いいの。ほら行こうよ」


 連れられて入り口で、チケットをちぎってもらう。

 その、美術館の職員らしき人が、


「500円別にお支払下さいましたら、マイクでご案内も出来ますが?」


という。

 実里が、


「いえ、良いです」

「大丈夫ですか?」


4人が中学生と解る為、問いかける。


「はい、大丈夫です。ありがとうございます」


と、4人で入っていく。


 入り口で、チケットが返された時に渡された薄いこの美術展のチラシを見て、


「……コナン・ドイル、『シャーロック・ホームズ』も出てくるのかな?」

「あ、コナン・ドイルって、それは姓なので、本当はアーサー・コナン・ドイルが通称なんですよ」

「え?コナンが名前じゃないのか?」

「えっと、例をとると、マクドナルドという姓があるのですが、これはドナルドという人物の息子という意味なんです。『McDonald's』と書くのですが、『Mc』が息子という意味なんです。元々の姓はドイル『Doyle』で、大伯父にコナン『Conan』という姓を貰っているので、コナン・ドイルは複合姓になります」


優希は、バッグからノートを出してさらさらと書き始める。


「アーサーは『Arthur』。アーサー王伝説のアーサーです。これはギリシャ神話のアルテミスにゆかりがあるとされていて、『アルテミスの夫』、『月の狼』という意味があるんです。それに、アーサー・コナン・ドイルは、1902年にナイトに叙せられて、サー『Sir』を付けるので、正式にはサー・アーサー・イグナチウス・コナン・ドイル『Sir Arthur Ignatius Conan Doyle』です」

「はぁ……凄いな。ナイト……騎士?」

「イギリス王室から当時の勲功のあった人物に与えられるもので、最近ではあの有名な魔法の世界の小説の作者の方が与えられたものですが、一代限り。名誉称号なのです」

「あぁ、あの作者‼」


 映画化されたシリーズである。

 主李もチェックしている。


「なので、日本ではコナン・ドイルが知られているのですが、アーサー・コナン・ドイルが普通なのです。それに元々はお医者さんで、余り患者がいなくて、その待ち時間に執筆し投稿。1884年に『緋色の研究』発表ですね。『シャーロック・ホームズ』シリーズ第1作です」

「医者?」

「はい。生まれがイングランドのスコットランド、エディンバラ。エディンバラ大学医学部卒業してますよ。生年が、ここに書いてますが、1859~1930年ですが、誕生日は5月22日。亡くなった日は7月7日です。シャーロック・ホームズは有名すぎていまだに住まいのあるとされた住所に手紙が来るそうです。そこには、返信をされる専門の方がいて、返事を書くそうですが、普通のファンだけでなく、本当の事件の依頼も来るとか。本当に物語の登場人物にもすがりたいと思う……その方の心にはシャーロック・ホームズは生きていると思える何かがあるのでしょうね」


 優希は微笑む。


「イングランドは不思議です。他の国では幽霊なんて恐ろしいと言って避けるでしょうが、イングランドでは幽霊は身近で、心霊学と言うか心霊主義が研究されていて、普通なら幽霊のいる家なんて怖がって避けると思いますが、逆に、そういう家に住みたいという人も多いって聞きました。聞いたのですが、イングランドの俳優さんのガウェイン・ルーサーウェインさんのお父さんであるウェイン大臣が、そう言うことに興味があるそうです。でも、テレビで笑ってましたが、『それが、私には見えないのだ‼残念なことに‼』って」

「あぁ、あの『アーサー王伝説』の映画化で、ランスロットを演じた美形俳優‼」

「そう言えば、ガウェインさんは、お母様の妹弟が日本の人なんだそうです。よく日本に来られるのは、その方に会う為なのだそうですよ」

「そうなの?」


 実里に聞くが、首をかしげる。


「それは聞いたことがない……あ、すみません‼」


 いつの間にか後ろにいた5人の人に驚き、邪魔をしたのかと謝る。


「あ、こちらこそごめん。その子が話しているのがすごく詳しくてビックリしたんだ。聞き入っていて、こっちこそごめんな?」


 長身の引き締まった体つきの青年がにっこり笑う。


「いえ、あ、あの、間違っていたらごめんなさい。独学です」

「いや、結構情報量持っているな……俺も、もう少し勉強し直すか……って、すぅ‼また、何やってるんだ⁉」


 細身の眼鏡をかけた青年が横で何かを書きなぐっている女性を見る。


「ひなちゃん‼黙って‼今の情報と、可愛い女の子が、彼氏さんに説明するシーンをネタに‼可愛い~‼」

「落ち着いて‼」

「いや、ひなが一番焦ってるでしょう?あ、すみませんね。私は松尾まつのおと言います。大学の読書サークルのメンバーで、丁度来たところなんです。もしよかったら、一緒に観ませんか?あ、邪魔はしないようにしますね」


 にっこりと笑う笑顔は最初の青年よりも黒い……。

 しかし、今まで黙っていた竜樹が、


「松尾って、京都の松尾大社まつのおたいしゃと一緒ですね‼京都の方ですか?」

「よくお分かりで……」

「わ、私もお姉ちゃんも歴史が大好きなのと、京都の寺社仏閣が大好きなんです‼東寺の立体曼荼羅りったいまんだらの中に住みたいです‼」

「す、住みたい……?」


松尾と名乗った青年は顔をひきつらせる。


「はい‼毎日朝晩ジーッと見るのです‼お姉ちゃんは、太秦うずまさ広隆寺こうりゅうじか下鴨神社のただすの森に住むって‼それか晴明神社の前の一条戻り橋の下に住むって言ってました‼」

「……ぶっ‼くくくっ‼」


 松尾はひなと呼んだ青年の後ろに隠れる。


「へ、変なこと……」


 しゅーんとしょげる竜樹に、ひなは、


「いや、大丈夫だ。醍醐だいごは、笑い上戸なんだ。ただ、立体曼荼羅に住むとか一条戻り橋と言うのは、凄いな……」

「立体曼荼羅は密教の粋を集めたものだって言ってました‼今度、お姉ちゃんたちが修学旅行に行くんです。でも、清水寺に金閣寺と三十三間堂とかしか回らないので残念だって言っていました。お姉ちゃん、広隆寺の半跏思惟像はんかしゆいぞうが好きなんです‼」

「あぁ、『国宝彫刻の部第一号』」

「『宝冠弥勒菩薩半跏像ほうかんみろくぼさつはんかぞう』だね。アルカイック・スマイルとも呼ばれる。あの足の組み方って……」


醍醐の問いに、優希は、


「弥勒菩薩様が、下界を見下ろしていて、修行をされているのですが、立ち上がって救いを求める人のもとに向かう姿を写し取っているそうです。奈良の法隆寺の横にある尼寺になる中宮寺にもいらっしゃいますが、髷を結っている形です。1960年に指が折られて、修復したと聞きました。涙が止まりませんでした」

「情報通だな……これは、ますます楽しみになったぞ」


ひなはにっと楽しげに笑うのだった。

あははは……、4人ってネタが細かくってレアというか、優希があれなのでクッションに出してみましたf(^_^;

時代的には、ギリギリありかなぁと(^^ゞ

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