ブルームーンを一緒に……
実里と竜樹の大騒ぎを夫婦は笑ってみている。
竜樹はお子ちゃまであり、実里のアプローチしたボールを素で打ち返すホームランバッターである。
そして、主李が、
「優希、手を出して」
目をクリクリさせた優希は、おずおず動かせる手を差し出す。
「袋で渡したいけど、開けることできないでしょ?渡すね?」
袋から取り出したのは、指輪。
「これはレインボームーンストーンって言って、珍しいんだって。聞いたら、石の中に傷があって、それで光を当てると屈折して、色々な色が現れる。だから虹色なんだって。ムーンストーンは女性の石で、母性とか愛情って言う意味があるんだって、それに癒し。一つ目」
優希は指につまむとじっと見る。
指輪を少し動かすと乳白色の石が緑、青、紫と混じったように見える。
「『凄い‼』」
少し唇を動かす。
「だろ?で、石言葉って言うのがあって、『健康』『長寿』って言う意味があるんだって……で、二つ目」
ぱちくりさせた優希は、自分の手の指輪とデザインの違う指輪を見る。
「これも優希に。でね?『富貴』『母性本能』と、身に付けていると『自分の将来が見える』んだって……三つめ」
「~‼」
魔法のように現れる指輪にどうしようとおろおろする優希に、主李は笑う。
「で、他にも言い伝えがあって、『ムーンストーンにキスをしながら願い事を祈ると、それが叶う』とか、『満月の夜にムーンストーンを口に含んで願をかけるとその願いが叶う』それと、『満月の時にムーンストーンを身に付けていると、未来の恋人に会える』んだ。で、四つめ」
最後に現れた指輪は少し大きめで、主李は優希のもっている指輪をそっととると、
「ムーンストーンとは違うんだけど、四つ葉のクローバーの意味は、『wealth』(富)『fame』(名声)『faithful love』(満ち足りた愛情)『glorious health』(素晴らしく健康)で『True love』(愛情)なんだって」
4つの指輪を優希の手に渡すが、一つを取る。
「待ってて。今日、優希に渡すのはこの三つ。俺も優希もまだ中学生で、親の脛をかじってる。でも離れても、俺は一所懸命頑張って、必ず絶対に優希を迎えに行く‼」
言い切った主李の声に、
「ダメや‼あきまへん‼おとうはんはゆるしまへん‼優希はどこにもやりまへん‼」
と、賢樹の一言に、
「じゃぁ、俺が行きます‼」
「あては、優希も竜樹も嫁にだしまへん‼」
「俺次男なので、良いですけど?あ、うちの両親に聞いてきます‼」
きっぱり言い切った少年にグッとつまる。
紅葉がクスクス笑いながら、
「将来のことは、誰にもわからしまへん。でも、さっきいわしまはった、『石に口づけしながら願い事を祈ると叶う』……夢がありますなぁ。なぁ、だんはん?」
「あきまへん‼男女交際は……」
「親馬鹿もええ加減にしなはれ‼ゆうちゃん。たっちゃん。ジュースをこうてきますさかいに、なかような?」
夫を引っ張り連れ出した紅葉を見て、優希と主李はクスッと笑うと、そっと自分の持っていたムーンストーンを唇に当てた。
ひんやりとした石が、ほのかな温もりを帯び、願い事を吸い取っていく。
「……絶対に……叶えるよ」
鎖からはずした少し大きい指輪を自分の指と優希の指にはめた主李は、指を絡めたのだった。
「で、何を祈ったの?竜樹は」
「ゆうちゃんの健康。長生き‼元気になったゆうちゃんと、京都の街を踏破‼」
拳を固め言い切った竜樹に、実里は撃沈する。
もう、何回分投げきったのだろう……やっぱり主李と野球部に入っておけば良かったのだろうか……とやさぐれそうになった実里の唇に、竜樹は自分がキスをしたムーンストーンを押し当てる。
硬直する実里にテレテレと、
「えっと、いつもありがとうございました。あの、ゆうちゃんの次でもいいので、仲良くしてください。大好きです」
竜樹の直球に冷静沈着な実里もぼんっと顔を真っ赤にする。
「えっと、優希は親友で、彼女になってほしいのはた……」
「あー!先輩先輩‼これ、改造して、毒入れませんか?」
物騒なことを口走った、彼女になったばかりの竜樹に、
「たーつーきー‼ムーンストーンは『悪魔払い』とか『愛の予感』『純粋な愛』って言う石言葉もあるんだ‼それをどこをどうやったら毒なんだ‼せっかく、ムーンストーンの中から必死に見つけて……」
「あ、正確に言うと、俺がレインボームーンストーンを見つけても、一つも見つけられなくて、見つけてあげたんだ」
「かず、言うなぁぁ‼」
ぎゃぁぁ‼
大騒ぎする少年たちに、優希に近づいた竜樹は照れくさそうに、
「エヘヘ……貰っちゃった」
「『可愛いね』」
「ゆうちゃんのも可愛いよ‼それに良いね‼主李先輩かっこいい‼」
「俺は⁉」
「内緒~‼」
笑い声が弾ける。
その様子を扉の向こうで夫婦は見守っていたのだった。




