表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/40

主李は、必死に探すのでした。

 賢樹さかきは、祐也ゆうやの家の優希ゆうきの愛犬に会いに行く。


 祐也の父、朔夜さくやは、


「……何でしたら、家で引き取りましょうか?」

「いえ、優希が悲しみますわ。向こうで、きちんとしつけスクールに通わせようおもてます。私たちもちゃんとあの子に寄り添えるように致します」

「まだ、落ち着いていないので、落ち着くまではこちらで。落ち着きましたら京都にお連れします」

「えぇんですか?お忙しいのに」


朔夜は寂しげに微笑む。


「優希ちゃんの苛めや虐待は、薄々気がついてました。でも私は獣医で、かずきくんの主治医と言うだけで手を出せませんでした……祐也のように、また助けられませんでした……」

「祐也はんでっか?」

「祐也は私の実の子じゃありません。妹の前の夫との子供です。父親の父……祐也の祖父の名は……」

「……‼」


 賢樹は驚く。

 脂ぎった、肥え太る政治家。

 女性差別、他国での人種差別発言だの、賢樹からみれば、


「ただのバカ」


である。

 罵声しか浴びせられず、バッシングを自分が偉いと思い込む。

 自分が発言する段にはしどろもどろ、文章をきちんと読めない。

 これが日本の政治家……この国の代表かと恥ずかしいと思っていた。


「妹は好きな男ができました。この街で育って、大学は県外で目新しかったんでしょう……遊びらしいものはしませんが、友人たちと合コンで一人の男と知り合った……国家公務員のこの男の息子です。そして子供ができた。そうするとこの男が妹を罵り、自分の息子を堕落させたと。その上、息子の子供の訳がない、堕ろせ‼と。私は妹を子供は生んでもいい。でもあの男は信用できない。結婚はするなと……そう言いましたが、別れず結婚し、外交の仕事の為に着いていって生まれたのが祐也でした。妹の前の夫は、その頃には自分の本性をあらわにして、『お前のせいで父が、金をくれなくなった。お前が稼いでこい‼その体で‼お前と結婚したせいで‼』と殴る蹴るをして、息子を守って何度もボロボロにされ、向こうの友人の家に駆け込んで助けを求めて離婚したんです」

「……大変でしたな……」

「いいえ、祐也は向こうが取り上げ、妹は息子を取り戻すんだと働き始めました。その時に私を通じて知り合った男と恋に落ちて結婚したんです。祐也を迎えに行く。返してくれと連絡しても、会いたくないといっているとか、電話にも出さない……子供を身ごもっていた妹や妹の夫ではいけないと私が、オーストラリアに行きました。前の夫のその男の家に行くと、祐也はおらず、オーストラリア大使館に駆け込んで、警察にも頼み、探すと、首都から反対側までヒッチハイクして移動していたんですよ。人に怯え、警戒する祐也を、まずは髪を切り、お風呂にいれ、服を着替えさせて、もう野生児でしたよ」

「あのボンがですか?」

「えぇ、あの子がですよ」


 クスクス笑う。


「スラングの強い英語で、『あのおっさん嫌い‼おばはんも‼あいつらも‼殴るし蹴るし、飯くれない‼残り物を食べようとしたら殴られた。学校にも行かせてくれなくて、逃げ出したんだ‼最初にヒッチハイクしたおっちゃんが、身を守るための方法とか、獲物のさばき方とか、変な人間から襲われないように、逃げる方法とか教えてくれたんだ‼それにお金ももらった。これも、何なのかなぁ?なんかあったら出せって』って出してきたのが、あっちの国の有名なアスリートの写真とサイン。『この子は私の可愛い孫だ。誘拐や手を出してみろ、私がお前を締め上げる‼』って書いていて……祐也を連れて、その方のところに行って謝罪にお礼に行きました」


 名前を聞くと(  ̄- ̄)になる。

 彼は、敵に出来ないだろう。


「で、事情を説明したら、彼が泣き出して『祐也は私の孫だ‼いくらでも援助をしよう‼』と、今でも贈ってくるので、大丈夫ですよと言うんですけどね……妹のところでは萎縮するだろうと家の息子として引き取りました。他の子はあの性格ですし……」

「あぁ……4人で仲良しですね」

「それぞれがもううろうろするのを祐也がまとめて、大丈夫と思ったら妻が……」

「あら、私がなあに?あぁ、賀茂かもさん。ようお越しくださいました。だんだん。あ、かずき君ですが、優希ちゃんの名前を呼んでますの。来たのかと思ったのでしょうか?」

「優希を?」

「ゆぅぅ~‼あうひうう……ってウニウニ言ってますわね」




 その言葉に案内されていくと、わんわん吠える犬の中で、知的な瞳の犬がエリザベスカラーをつけていた。

 エリザベスカラーは通称になるものの、エリザベス一世の時代の立った襟にそっくりな、柔らかいプラスチックなどで、動物の顔を覆っているものである。

 あれは、野性時代の名残で、傷は嘗めて治す動物が、せっかく治療した傷を嘗めたり、ガーゼなどをとったりしてはいけない為、つけておくものであり、治り始めると外す。

 しかし、頭にも体にも重い傷を負っているかずきには、もうしばらく必要である。


「かずき。優希ちゃんは今日は来ていないんだよ。優希ちゃんは怪我をしてね、しばらく会えないんだ」


 その朔夜の声に、心底がっかりとした顔の犬。

 俯き、顔を背け、ふてくされると言うよりも悲しんでいる。


「……かずき?こんにちは。賀茂賢樹かもさかきだよ。この前、会いに来たけれど、お話があるんだ」


 身動きはしないが耳がピクッと動く。


「かずき。優希は実はね?竜樹たつきと一緒に、おじさんのお家に行くことになったんだ。昨日、実は優希が大怪我をしてね?こちらではなく、おじさんの家で、おじさんの娘として暮らすことになった。病院もそっちに移るんだ」

「……」

「かずきの症状を聞きに来たんだ。優希が何度も『かずき』『かずきとおる』って言ってね?でも、優希は本当にひどい怪我で、ダメなんだ……でね?かずき。お願いがあるんだけど聞いてくれないかな?」


 なに?


と言いたげに見つめる漆黒の瞳に、


「元気になったら、おじさんの家に、優希のいる家に帰ってきなさい。優希が待ってるから。ここで大丈夫って言われるまではダメだよ?かずきの家は、ここから遠いんだからね?いいね?」

「わうん?」

「ん?」

「おうーん?あうひ、ゆううううー‼」

「多分、いいの?かずきは優希ちゃんと一緒でいいんですか?みたいです」


その言葉に頷くように、賢樹を見る。


「あうひ、あうらゆぅぅ~‼」

「かずきは優希ちゃんのことがアイラブユーだそうですよ」

「それはすごい。熱烈だね。かずきは。うん、大丈夫だよ。おじさんは、毎朝森を散歩するからね、一緒に変なものがないかとか探してくれないかな?優秀なパートナーになりそうだね」

「おう!」


 吠えたのではなく、そう返事をした娘の愛犬の賢さを、思い知ったのだった。




 そして、主李は、


「母さん‼青い薔薇売ってるお店知らない?」

「は?青い薔薇?そんなのないわよ。主李も和真かずまもお母さんにカーネーションすら贈ってくれないのに」

「は?白いの送ったじゃん‼」


テレビを見ていた兄の和真に、拳が舞う。


「白いカーネーション、贈るアホがいますか‼親不孝者‼」

「え?何で?」

「赤いカーネーションは普通に‼白いカーネーションは亡くなったお母さんにあげるのよ‼」

「なんだ~、だから沢山安く残ってたのか」

「ボケ‼」


 再び拳が見舞われる。

 その横で、必死にネットで探すと、


「……え、エェェェェ‼めっちゃたっかい‼……しかも売ってない……ネットで今日は金曜日で発送が月曜日じゃ無理だ……」


愕然とすると言うよりも、落ち込む。


「どうしたの?主李」

「……優希が月曜日に京都に行くって……それで……」

「今必要なの?」

「……約束したくて……このままじゃ嫌なんだ‼折角、折角……」


 唇を噛む。


「あぁ、『花言葉』ね?『奇跡』とか『夢叶う』でしょう?」

「う、うん。聞いたの……」

「でも、ダメよ~、突然高い青い薔薇何て引いちゃうわよ」

「だって、実里みのりに白い薔薇って大笑いされて……」

「深紅の薔薇は『あなたを愛しています』。つぼみは『純粋な愛に染まる』だけど、ちょっと大人だもの……もう、チューリップにしなさい‼チューリップ‼」


 母の一言に、


「チューリップ咲いてないよ?もう、終わってるし……」

「あら、そうね……でも、今は一年中咲いてるでしょ?」

「そっか……」

「お母さんの知り合いに聞いてあげるわ」


電話を掛けると、


『ごめん、白と黄色しかないわ。花言葉は『失われた愛』、『望みのない恋』』

「……ダメね……家の主李が好きな子と別れちゃうからって、最初ブルーローズを贈るって言い出して……」

『ねぇ。季節落ちで捨てられる寸前のブルーローズの苗ならあるけれど?あげるわよ。それに、ピンクローズは幸福って言う意味なの。仕入れているわよ?いつ?渡す日』

「月曜日ですって」

『あら、じゃぁ、朝作って届けるわ。お金は幾らかしら?』

「主李?お小遣い幾らだすの?」


 主李は振り返り、


「全部‼貯金も崩す‼」

「……駄目だわ……ごめんなさい。おバカさんで。大体、中学生の子が初めての彼女にプレゼントしたい程度でいいの……」

『ふふふっ。じゃぁ、苗は全部あげるわ。で、花のお金はプレゼントするわ』

「えっ!何言ってるのよ‼払わせるわよ」

『良いのよ。気持ちを贈らないとね』




 花屋の友人は微笑む。

 友人の息子の成長に祝福を願ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ