表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/40

優希の治療は、時間がかかりそうです。

 優希ゆうきは、血が溢れる口の中の治療をすることになった。

 すると、二本歯が折れ、幾つか欠けた歯もあり、その上、


「なんっ……」


紅葉もみじが言葉を失う。

 レントゲンの結果、優希の顎の骨が折れていると言う。

 その上脱臼していて、一度戻して、顎関節症がくかんせつしょうにならないように治さなくてはいけない。

 地道な治療になると言う。


「どないしまひょ……こないなとこに優希を置いて帰れしまへんわ……それに、おいておいて、またこないなことがあったら……」

「どないしたんや?」

「あぁ、だんはん‼どないしまひょ‼優希が……」


 紅葉の説明を聞き、見つめていると、優希は歯の治療を受け、口の中を何ヵ所も切った部分を縫う前に、麻酔をした状態で、顎の骨を正しい位置に戻し、その後で口の中を縫った。

 しばらくは口を湿す程度で、顎を固定しておく必要がある。




 こんこんと眠る優希を見守り、手を握ると、賢樹さかきは口を開いた。




「よしを、こがいな目に遭わせたんは、あんたらや‼やのに、なんや‼その態度は‼」


 怒り狂うタツエは、鬼と化していた。

 醍醐だいごが震え上がる程、凄まじい怒りである。

 しかし、鬼子母神きしもじん……母性溢れた母の怒りである。


「しかも、よしが倒れたのに様子も見に来んと、明日の旅行の準備や言うて、子供らを来させといて?冗談やない‼離婚や‼わの子を、こがいにしといて、なんや‼謝罪もなんもないんか‼」

「知りませんよ。お兄さんが不摂生だっただけでしょう?」

「何いよんで‼醍醐さん‼嵯峨さがさんを呼んでくれませんか‼」

「大丈夫です」


 スマホをとり出し、示す。


「先程のやり取りも全部録音して、送りました。家のおじさんに、お金を押し付けてこれで握りつぶしてくださいと言うのも……それに」


 ニッコリと笑う。


「私の兄が、誠一郎せいいちろうくんの学校から、話を揉み消そうとされましたので、教育委員会にも。大丈夫ですよ?姪御さんに進学させず働けと強要、その上虐待、育児放棄、家庭内で暴力……」

「何が、証拠でもあるんか‼」

「あるやないですか。優希さんの病気、公衆の前で暴力、他にも借金……どないでしょうね?」

「……終わりや……終わりや‼家は、終わってしまう‼名家めいかのうちの家が‼優希のせいで‼姉ちゃんのせいで‼そのよそもんのせいで‼全部‼」


 叫ぶ女に醍醐は、だーんっとテーブルを叩く。

 ビクッとした女に、低い声で告げる。


「何が名家の家や‼あんな小さい姉妹が、怯えて萎縮してしまう程、暴力やそのヒステリックな叫びで脅しつけて、それで使えんなったら捨てる。そんな家など潰れてしまえ‼婿養子の良明よしあきさんが過労死寸前まで追い詰められても、自分達が行ったことも恥じず、当然のように借金を繰り返し、良明さんの借金ができんなったら、高校に行かせずに働かせる優希ちゃんに借金をさせるつもりやったんでしょう‼」

「家の為や‼」

「そんな腐った家‼なくなってしまえばいい‼優希ちゃんの為にも、私は裁判をさせてもらいます‼それで、あなた方のおかしい、歪み狂った家を世間に知らしめるがいい‼そして言ってみては?『うちの家はこんなんです‼まともです‼』と」

「脅すんか?脅すんやな?あんたこそ、訴えてやる‼金を要求して、脅すと‼」


 醍醐は持っていたスマホを見せる。

 そして、


「嵯峨にいはん。聞こえましたか?」

『あぁ。キンキンとようしゃべられますなぁ……病院でしょうに。電話越しに失礼いたします。私は大原嵯峨おおはらさが。優希ちゃん、竜樹たつきちゃん、良明さんと賀茂賢樹かもさかきさんの弁護人を勤めております。裁判の準備を進めておりますので、よろしくお願いいたします』

「な、なんでや‼」

『おかしいことを言われますね?虐待、家庭内暴力、言葉でも無視でもそうですよ。それに、優希ちゃんはかなり悲惨だとか……』


 嵯峨は電話を通じて伝える。


『裁判を、お待ちください。そして、揉み消しを図ろうとか考えませんように。そうして、もう一つ。優希ちゃん、竜樹ちゃん、良明さんに近づかないようによろしくお願いいたします。病室ですよ。お帰りください』




 立ち去った二人に、仁王立ちしていたタツエはふらっとよろめく。


「大丈夫ですか?」

「あぁ、だんだん……ありがとうさん。助けてもろて……だんだん……」


 母親っ子の為、おばあちゃんにも実は弱い醍醐である。


「大丈夫ですか?少し座ってください。あぁ、そうでした」


 持ってきていた包みを開く。


「実は、私の実家は京都の菓子舗なんです。双子の兄が跡取りで、手作りに。これは、兄が作ったものなんです」


 箱を開くと、


「まぁぁ……かいらしい」

「上の兄は伝統的な菓子が得意ですが、ここに来ている下の兄は創作和菓子が得意で、本当は皆で、とこれは、良明さんとここで。私もご一緒します。お茶もお入れしますので、お茶を入れるのは任せてください」


醍醐はニッコリと笑い、そして、うるさすぎて眠れなかった良明に告げたのだった。


「お菓子とお茶をお持ちしますね」




 そして、優希の部屋で泣いている竜樹を宥めるために、ただすが、


「私と紅葉おばさまとが選んだ、お洋服を見て貰いましょう」


と、ファッションショーになった。

 まぁ、醍醐が祐也ゆうやに預けていたお菓子とお茶を、少年たちに振る舞う。


「……優希は大丈夫でしょうか」


 主李かずいは青い顔をしている。

 はっきり見えていた、情け容赦ない拳の二撃。

 どうして庇えなかったのか……。

 唇を噛む主李に、


「はい。主李くん。これ、見せてあげる~‼」


 穐斗あきとは持っていた本を見せる。


「『花言葉図鑑?』」

「うん。えっとね、花言葉。四つ葉のクローバーは幸運って言うけれど、五つ葉は金運なんだよ。で、バラやチューリップにも、色によってやつぼみや開いた花によって違っていたりするの」

「えっ?」

「たとえば、初恋草は『淡い初恋』、カタクリは『初恋』『寂しさに耐える』、ミヤコワスレ『別れ』『しばしの憩い』、桑は果実は『共に死のう』、白果は『知恵』、花は『彼女のすべてが好き』」


 微妙な表情になる主李に、実里みのりが、


「カタクリ‼頑張れ‼」

「うるさい!うー。えっと、優希に合いそうな花って……」

「うーん。優希ちゃんって清楚なイメージが強いから……これは結婚式によく使うけれど、ホワイトローズ。白薔薇は『純潔』『私はあなたにふさわしい』『深い尊敬』。つぼみは『恋をするには早すぎる』『少女時代』」


実里はとうとう吹き出し、笑いながら、


「あのお父さんにつぼみ渡されるよ絶対‼」

「うるさーい‼」

「あ、英語だったら『innocence and purity』『純潔と純粋』だね。純粋かも」

「あ、そう言えば、穐斗。ブルーローズ見てみろ」


祐也が声をかける。


「え?ブルーローズ?『不可能』じゃないの?」

「違う。確か最近ブルーローズが作られたから『夢叶う』『奇跡』『神の祝福』って言う意味があるんだ。英語では『mystery』『神秘的』、『attaining the impossible』『不可能なことを成し遂げる』、『love at first sight』『一目惚れ』と言う」

「『love at first sight』‼エェェェ‼」


 ブシュー……


顔を赤くした主李に、


「あれ?違うのか?」

「えっ……えっと、あの……」


挙動不審になる主李に、実里はますます笑い転げる。


「何々?楽しそうね?あ、そうそう。竜樹ちゃんのよそ行きワンピースよ~」


 出てきた竜樹は、いつものピンクとは違う空色の小さな花の散ったドレス。

 膝丈に、ふんわりと膨らんだスカートにはレースが使われ、上はギャザーを使ってウエストの横のラインをきれいに見えるようにしている。

 ヘッドドレスのリボンが大きく結ばれ、胸を隠すかたちでストッキングは白、靴は黒でちょっとヒールになっている。

 同じ柄の日傘と、肩に黒革製のバッグがおしゃれである。


「わぁぁ‼可愛い‼似合う~‼」


 穐斗が携帯を構えるが、ふと、


「あれ?実里くん撮ってあげないの?」

「……え?な、何で俺が……」

「優希ちゃんに見せてあげなきゃ。それに竜樹ちゃんも見たいでしょ?撮る‼」

「は、はい」


慌てて撮る。


「あ、俺は、優希ちゃんのお父さんたちに見せてあげよう」


 祐也も撮る。


「あ、あの、守谷もりや先輩。お姉ちゃん、これの色違いしました。淡いクリーム色です」

「エェェェ‼そうなのか‼見たい‼……けど、無理……」


 悔しくなる。

 あの怪我はどうなっただろうか……。


「……じゃ、じゃぁ、ごめん。撮っていい?」

「あ、これよ‼」


 糺がマネキンに着せたドレスを見せる。

 色違いではあるが、バッグは茶色で靴も茶色。


「め、メッチャクチャ……可愛い‼似合うと思う‼見てみたい‼」

「今度写真で我慢してね~」


と、数回着せ替えをして、そのたびに、今度は実里が挙動不審度が増していく。


「どうしたんだ?」

「い、いや、何でもない……」




 この時、主李はブルーローズのことを考えていた。


 そして、優希は手術を終え、眠ったまま病室に向かったのだった。

ブルーローズは元々、薔薇は青い色素を持っておらず、昔の薔薇は、水に青い色素を混ぜて、水と共に吸い上げた色素が花びらを染めることでつくられていましたが、薔薇愛好家の方は長年交配を重ねていた夢で、『不可能』と言う花言葉でした。


しかし、日本の企業サントリーが、14年の研究を重ね、2004年に開発の成功を発表、2009年から『サントリーブルーローズアプローズ』(花言葉『夢叶う』)として発売したそうです。


実物を見てみたいです。


欲しい~‼

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ