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主李くんの親友、実里くんです。

 守谷主李もりやかずいの親友は菊池実里きくちみのりである。


 しかし、幼稚園や小学校は全く違い、中学校で学級委員に選ばれた時に、委員会で意気投合。

 二年生と三年生は同じクラスである。


 二人は、周囲の信頼も厚く、学級委員に毎回選ばれる。

 前期と後期の二回選挙があったため、前期である今、5月は主李が委員なので、10月からの後期が実里が委員になる可能性が高い。


 総体……地域の総合体育大会はもうすぐ。

 実里は一応吹奏楽部に誘われたが断り、文芸部に在籍。

 しかし、運動部の主李は野球部の副部長も兼務しているので忙しい。

 その為手伝っているのだが……。


「おーい、曽我部そがべ


 声をかける。

 日直で日誌を書いているのは、主李の彼女の優希ゆうきである。

 優希とは実は小学校の頃から市立図書館での読書仲間である。


 乱読派の優希の片寄ってはいるものの本人は気がついていないが、『王子さま』を待っている女の子であり、本の世界でその『王子さま』を探す……現実逃避タイプ。




 中学校が一緒になり、クラスは別だったが、苛められているのを聞き、目の前に見て、


『曽我部は現実世界生きられないよな……』


と思っていた。

 ある日、仲良くなっていた主李が、


「お前のクラスでいじめがあるんだってな?どうにかしろよ‼」


と、後で聞くと小学校時代のクラスメイトの学級委員に食って掛かっていた。


「苛め?知らねぇよ‼」

「嘘つけ‼曽我部優希そがべゆうき‼いじめのせいで、教科書とか捨てられてたって聞いたぞ‼」

「だから‼俺だって知らねえって‼それに、苛めたやつが言ってたけど、曽我部だって悪いんだぜ‼仲間に入れてやろうとしたら、びくびくするし、ぎこちないし……ありがとう、ごめんなさいしかいわねえんだ‼」

「曽我部は小学校の時から大人しかっただろ‼でも悪いやつじゃない。なのに何で中学校になったら手のひら返したみたいに‼」

「はいはい、主李」


 追いかけていっていた実里はどうどうと宥める。


「どうしたのさ」

「こいつのクラスの曽我部が苛められてて……どうなってんだって思って……」

「曽我部?えーと、図書室でよく会う子?」

「知ってるのか?」


 必死に問いかける友人に、頷く。


「文芸部だろ?図書室で活動多いし。で、会う。あの、『図書室の精霊』って呼ばれてる」

「幽霊だろ‼」


言いはなった主李の知人に、


「クラスでは幽霊かもしれないけど、図書室では生き生きしてて、文芸部の先輩とかとも仲良くしてる。曽我部が馴染めないようになった、距離を作るしかできなくなったのはそっちが悪いんだろ」

「ぐっ!」

「それに、曽我部は不器用なだけで、真面目でかなり知識も持っていて、賢い。あの全国大会出場レベルの吹奏楽部に入れる実力もあるし、辞める気もないのならそれだけの覚悟だって持ってる。それを妬んでクラス全体で苛めているって伝えても良いけど?」


実里は青ざめる同級生に繰り返す。


「クラスをまとめる学級委員が、止めもせずに見てましたってなったら問題だよな?な?主李」

「そ、そうだよ‼何とかしろよ‼」

「わ、解った」


 逃げ出した同級生を見送って、


「……あれでもしないんだろうな」


呟いた主李に、


「お前、『図書室の精霊』しってんの?」

「幼稚園から一緒。同じクラスになったのは、桜小学校の高学年の時……だよ‼」


うっすらと頬が赤くなる。


「ゆ、友人‼クラスメイト‼俺はハンドボール部で、曽我部は器楽部」

「器楽部……吹奏楽部な」

「まぁ、苛められて、辞めたんだけど。そうしたら、部活じゃなくて、小学校の図書館に毎日通っていたんだけど、ハンドボール部の練習場から図書館見えるんだ」


 実里は思い出す。

 市立図書館の隣にある小学校は図書館があった。

 とても不思議な学校で、古い歴史のある学校だと聞いたことがある。

 現に、町の中の学校だと言うのに、学校の敷地のなかに噴水と大きな木々があり、公園がある。


「何か、狸がいるって言う学校?」

「あぁ。外でもよく読んでて……何を読んでいるのかと思って……」

「……と言うか、聞かなくていいと思う。」


 主李は優希が気になっていた本の題名を知らない。

 聞くなと思う実里である。


「でも、『精霊』って知らなかった。か、可愛いからか?」

「可愛い……?いや、部活以外には図書室に籠ってるのと、本を読み尽くして、司書の先生と仲良く話していて、どこの図書館にこんな本が入っていたから、こんなの入っていたらうれしいなぁ……って」

「は?」

「何か、『妖精との暮らし方』?古い絵本らしいんだ。で、探してみるって」


 嬉しそうに喜んでいた同級生を思い出す。


「でも、結構、図書室の本が偏ってるって不満そうだったな」

「偏ってる?そうか?」

「ん?あぁ、俺も知ってるけど、ここの図書室の本は、推理小説とかが主体で、古典文学とか、歴史の本とか少ないんだ。だから、国語や歴史の調べものが出来ないんだよ」

「そうなのか?」


 主李は頭がいいが運動が優秀で、勉強は習ったことやゲームなどの情報を探す程度である。

 しかし、優希は徹底的に調べ尽くす人間である。

 図書室の本は市立図書館でほぼ読み尽くしていると思われる。


「だから、読んでいるのは、世界の神話かな?まぁ、お前も頑張れ」

「……な、何を頑張れだよ‼」

「気づいてないなら、良いけどな。楽しんで見守ってやる」

「何をだ~‼」




 あれからもうすぐ2年。

 モタモタしていた主李とちょっとどころかずれている優希がどんな風に変わっていくのか……。


「面白そうだな」

「なぁに?菊池くん。もしかしてご先祖の……」

「違う違う。ほら、吹奏楽部の部長の……」

「あ、みどりちゃん‼」

「翠ちゃんはやめーい‼」


 スッパーンと頭を叩く。


「ヒドーイ‼意地悪‼」

「優希がまた遅刻だからだ‼菊池。ありがとな。ほら行くぞ」

「えぇぇ?翠ちゃん。あ、あ。菊池くんばいばい‼」


 翠……柳沢翡翠やなぎさわひすい

 素っ気ない言い方をするが、女子生徒である。

 優希と翡翠は幼馴染みらしい。


「気を付けて、また明日」




 明日は晴れか……嵐だろうか?

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