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可愛いのはどっち?

 優希は、本気で驚いた。


「あれ?守谷もりやくん、ずっと一緒だったのですか‼はちす幼稚園に、桜小学校、城北中学校……一緒だったんですか?」

「って、気がついてなかったのか‼全然?」


 主李かずいの言葉に、目を見開き、そして真っ赤になってモジモジと答える。


「しょ、小学校の高学年に同じクラスになった時に、うわぁぁ‼格好いい、趙雲ちょううんみたいな人だって思いました‼」

「ちょ、趙雲‼」

「趙雲は頭がよくて、当時は武将としては他の将軍よりも格は落ちるとされていますが、それでも諸葛亮しょかつりょうを支えて北伐に参加して、229年に亡くなった時に『私の片腕を失った』と諸葛亮に嘆かれる程信頼された人なんです。『三国演義』では諸葛亮が行った『空城くうじょうの計』は元々、趙雲が行った策略なんです。正史に残ってるんです。美形でそして賢くて武将‼うわぁぁ、格好いいって」

「ねえ、曽我部そがべ。そこで、萌えるの良いけど、かず、鼻血寸前だからやめてあげなよ」


 拳を固め熱心に訴えていた優希ゆうきの横、右側は主李、そして反対側は主李の親友で優希の読書友達の菊池実里きくちみのりがいた。

 名前はかわいいが男である。


「えっ?体調悪かったのですか‼保健室‼」

「それはいいから、二人で照れるのやめない?それとも俺帰ろうか?」

「ちょっと待て‼」


 主李は慌てて止める。


「なに?二人でデレデレしてれば?」

「ちょっと‼」


 引っ張り、少し離れた所に行くと、


「頼む‼ふ、二人でいるのって、緊張するんだ‼」

「って、堂々と手を繋いで教室に登場したかずが言うとはね~?」

「あ、あの時は……」


ブシューと顔を真っ赤にする主李に、


「あれからはいかがですか~?」

「言うな‼……あぁぁ、ごめん‼優希」


戻っていく主李は親友を引っ張っていく。


「あ、二人が用事あるのでしたら……」

「違う違う‼あの、最近、部活で忙しいだろう?総体あるし、だから、今度遊びに行かないかって。自転車でもいいし、何か近くでいってみようって……」

「俺聞いてな……」


 言いかけた実里に、こそこそとそれでいて必死に……。


「の、のり‼た、頼む‼俺より優希の趣味知ってるだろ?な?」

「そりゃ知ってるけど……」

「だったら……頼む‼一緒に……」


 必死の訴えで渋々、


「一つ貸し」

「前に貸しただろ‼」

「仲良しで、良いですねぇ……」


羨ましそうな優希の声に、


「まぁね」

「でも、曽我部との方が付き合いは長いんだけどね。俺は」

「はぁ?」


主李は、呆気に取られる。


「な、何で⁉小学校も違うし……」

「小学校の頃から市立図書館で会ったことあったし。市立図書館で貸し出し不可の資料室に入り込んで、積み上げて読み込んでるのって目立つんだよ。しかも5冊とか。で、普通なら小学生は禁止されてて注意されるのに、なんにも言われずに、司書の先生と仲良く話していてコピーとかも許されてるから、話してみたんだ。な?」

「あ、そうですね。知らない男の子に言われたので、ビックリしました。同じくらいの人って入ってこないんですよ。それに、受験勉強する先輩方は入っちゃいけないんです。で、何読んでいるのって聞かれたので、お話しして、菊池君ってお名前を伺いました」


 何であっさり、こいつとは仲良くなったんだ⁉


 恨めしいと言うか羨ましい。


「でもさぁ、かず。曽我部って変わってんだぞ?名字を教えてもらったから、返したら、『菊池君って、『池』の方ですか?『地』ですか‼』だぞ?」


 実里の言葉にガックンとよろめきそうになるのをこらえる。


『池』と『地』の違いって、そんなに気になるのか‼


 すると、優希は拳を握り、必死に、


「だ、だだ、だって、『池』の菊池と言う名字は、九州地方に多いんです。歴史に関連があって、昔読んだ本に、『安徳天皇生存説』があって、菊池家の少年と天皇が入れ替わって、檀ノ浦で入水したのはその少年だったって説があったんです‼それで‼」

「……」

「……こう言うわけだ。心配するな」


 慰めるようにポンポンと肩を叩かれる。


「それよりも、かずはどこにいきたいんだよ」

「いや、えっと……これ行ってみないかって思って……」


 後ろから差し出す。


「……美術館のチケット?」

「えっと、前に、優希が妖精が好きだって聞いて……何かイギリスの美術展にそう言うのが出てるって聞いて……一緒に行こうよ」

「……俺、邪魔じゃない?」

「頼む‼俺、不勉強‼二人で教えてくれ‼」


 手を合わせる主李である。


 二人でデートにいけないヘタレであり、友人に気を使う優しさを持つ……それが彼である。

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