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即動き出すお兄ちゃんずです。

 古い型の携帯を取り上げるのは、醍醐だいごである。


「ひな。SDカードを」

「あぁ。留守電の情報を貰おう。それに……悪いけれど、メールを見せてもらう」


 操作を始める。

 実里みのりが慌てて、


「こ、個人情報……」

「動物虐待だけじゃない可能性もある。残しておくことをおすすめする。それに、もし、主李かずいが持っていて、確認して食って掛かってみろ」


 日向ひなたは、操作しながら告げる。


「それじゃ言いがかりだといなされるだけだ。それよりも、証拠を集めといて、ある時に出してやる」

「ほな、大原おおはらはん呼びまひょか」

「そうだな」


 二人が電話に操作をしていると、再び電話がかかる。


 画面を見ると、


『お兄ちゃん』


 と書かれており、しばらくプルルル……と音がして、留守電になると、


「おどれぇぇ‼俺をまたバカにするんか‼出てこんか‼このくずが‼」


 の悪鬼のような声に、主李が咄嗟に取ろうとした電話を取り、祐也が電源を入れる。


「もしもし」

「なっ!守谷もりやか?」

「悪いけど、俺は優希ゆうきちゃんの友人の、大学の文学部、安部祐也あべゆうや。確か曽我部誠一郎そがべせいいちろうだったよな?俺の妹が同じ学校だ」

「安部……」

安部紅あべくれない。知らなかったか?そっかぁ……そんなに有名じゃないもんな。兄貴は同じ大学の教育学部の安部一平あべいっぺい。それに、そちらの犬が歯が折れてたり、ホッソリとした顔がパンパンに腫れ上がるほどの怪我で何度か担ぎ込まれてたよな?家の動物病院に……」


 腕を組み、続ける。


「優希ちゃんと竜樹たつきちゃん……特に優希ちゃんに何でこんなに頻繁に電話をするのかな?俺は聞きたいね。それに、今すぐ、その後ろにいる『かずき』だっけ?その犬を連れに行くから、そのまま待ってろ‼警察に連絡しても無駄だ。もうこちらから連絡済みだ。じゃぁな?」


 電話を切り、主李に、


「優希ちゃん達の家は知ってる?」

「は、はい‼」

「じゃぁ、一緒にいってくれるかな?醍醐先輩。服装はいいですので、持てる範囲のものをいれて帰りますので……」

「そうやなぁ……」

「あ、僕も‼」

穐斗あきとはここにおり。実里と話しよいでや」


 3人は二台で移動する。


 そしてしばらくして、到着すると、チャイムをならす。

 すると出てきたのは、祐也の父と同じくらいの男。


「誰ですか?誠一郎が、誘拐やって言ってるんですが」

「私は、ご存じだと思いますが、こちらのペットの『かずき』君の主治医の安部の次男、祐也と申します。大学一年生です。たぶんご存じだと思うのですが、誠一郎君の一年先輩に安部紅と言う者がいると思いますが、妹です」

「あ、あぁ‼安部先生の‼あの、どう言った用件で……」


 温厚一点張り……真面目な父親そのものに、初めて会った主李が頭を下げる。

 弟の康弘やすひろをそのまま年を取ったような瞳に印象のある、40代の男である。

 誠実さは娘の優希に似ている。


「はじめまして。優希……さんの同級生で守谷主李もりやかずいと申します。実は今日は私とクラスメイトの優希さんと友人、そして優希さんの妹の竜樹ちゃんと4人で美術館を観に行ったのです。それで、先輩方に会って、食事に誘っていただきました。今日は日曜日ですし、私たちは受験生ですが、その前に部活動の総体や大会を控えていて忙しく、一緒に楽しもうとワクワクしていました」

「その時に、偶然私たちも行っていて、丁寧に美術品のことや歴史的なことを説明してくれる優希ちゃんに感心して、教えてくれませんか?代わりにお昼をご馳走しますねと」


 醍醐はにっこり微笑む。

 しかしその目は、玄関を薄く開けてこちらの様子をうかがっている人物をちらっと見た。

 そして、可愛らしい手づくりのお人形……野球服とグローブを身に付けたフェルトのぬいぐるみのついた携帯を示す。


「これ、聞いていただけませんか?」


 ガラパゴス携帯と俗に言う携帯を操作した醍醐は、例の留守電を流す。

 長男の乱暴なと言うよりも、行きすぎた口調に行為に真っ青になる。


「せ、誠一郎‼」

「俺は悪くない‼俺の言うことを聞かん、あいつが悪いんや‼全部‼」


 顔を出さずに喚く。

 つかつかと近づき、祐也は扉を開けると、


「どけぇ‼弱いもんにしか、力ずくでねじ伏せる、屈服させるしかできん、くずが‼かずき‼出ておいで」


 押し出し、優しい声で呼び掛ける。

 するとヒョコヒョコ足を引きずるようにして出てくるのは、鎖で繋がれた中型犬。

 顔はどう見ても変形し、胸部は腫れている。

 首も鎖の擦れたあとなのか、アザになっている。

 警戒するように毛を逆立てるかずきに、祐也は近づき、手を差し出す。


「かずき。久しぶり。祐也だぞ~。大丈夫か?それに、優希ちゃんの携帯の匂いする?」


 クンクン……匂いを嗅いでいたが、パタパタ尻尾を振った。


「あ、解るか?あ、この車に匂いがあるから、このお兄ちゃんと一緒にいってくれるかな?主李っていうんだよ?」

「あうい?」


 コテンと首をかしげた犬に、


「わぁぁ、なんか、喋ってる?」

「あうい、ゆーあうぅ。あうひ‼」

「うはぁぁ、賢いよ‼はじめまして。主李だよ。かずき?」

「あう‼」


 車のなかでかずきと共に止まっている間、親子は、


「どう言うことぞ‼」

「俺は知らん!優希が全部悪い‼家のこともせんと遊びよるが‼何で俺が責められないかんのや‼」

「安心してくださいね」


 主李のいる車はロックをかけており、いくつかの当座の荷物を出しながら、醍醐は微笑む。


「これから安部先生の動物病院にいってきますし、それに、弁護士に依頼しましたので、動物虐待は器物損壊ですが、これはれっきとした脅迫ですよ?」

「なっ!」

「本当に、学校では成績優秀、サッカー部でもエース級の扱いを受ける温厚な生徒が、裏では妹に暴力を振るい、こきつかい、命令し、このように脅迫まがい……困りますね?君の学校は、進学校でも、問題が多い体育会系多いんじゃないんですか?煙草とか、下級生に暴力とか、昔は全国大会常連校だったそうですが、そういう部活の生徒は優遇されて、煙草問題、暴力問題揉み消してたんですよねぇ?後援会や学校側や、部活で。君はたしかサッカー部とか?大丈夫ですか?」


 ニヤリ……


 笑った醍醐に、家の中から出てきたのは、


「あら?優希と竜樹ちゃんとじゃなかったの?」


 40代の女性……誠一郎に似ている。

 母親らしい。

 ちなみに、主李は何度かあっている。


「優希にお父さんのズボンの裾を繕って貰おうと思ったのに。それに、晩御飯も。洗濯の取り込みもしてないんだもの……ひとつくらい仕上げて行けば良いのに」

「ご自分でなさったら如何ですか?優希ちゃんの母親でしょう?」

「私は洗濯をしたので後は子供たちが手伝ってくれるんです。繕い物や食事に洗濯物も優希のお仕事ですから」


 その言葉に、祐也も醍醐も、車の中の主李も呆気に取られる。


「優希ちゃんは受験生ですよね?」

「あら?あの子に聞いていませんか?あの子、家の手伝いをするので進学しないんです。忙しいんですよ。家を手伝わせるので」


 ふわふわとした言い方の母親に、


「……普通、高校卒業位は親が払うべきじゃないんですか?」

「いえ、なくなった父が、娘は役に立たないからと言っていましたの。家には息子が二人いるでしょう?そちらにお金をかけたいのですわ」


 眉間にシワがよった醍醐は、


「ご自分は進学されたのでしょう?」

「父や妹が、私に進学させても意味がなかった。その娘だからって。優希も納得していますよ」

「するわけないでしょうが‼ご主人はご存知ですか‼」

「いや、いや全然聞いていません‼」


 首を振る。


「では、申し訳ありませんが、一時的にお嬢さんをお預かりしてもよろしいでしょうか?話が噛み合いませんし、今、二人を連れて帰っても、どこかの誰かさんが、二人……特に優希ちゃんを傷つけないとも限りません。そちらの御夫婦間でも、親子間でもやり取りも出来ていませんし、このお嬢さんに対する扱い、高校すらこの時代に進学させないと言うのは、お嬢さんの権利を侵害しているのではないですか?」


 醍醐の正論に、顔を歪め、頭を下げる。


「……よろしくお願いいたします」

「私は、松尾醍醐まつのおだいごと申します。連絡先を、お父さんにのみお伝えしておきますので、よろしくお願いいたします。お二人のお嬢さんのことはきちんとお守りいたします」

「かずきのことも、きちんと面倒見ますね。勉強道具のみでも持っていきます。では」


 祐也と醍醐は二人の勉強道具等をもって出ていったのだった。

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