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電話のメッセージに呆然とする人々です。

 浴室に入る前に、脱衣場に優希ゆうきはビックリする。


「わぁ……綺麗ですね」


 ステンドグラスからキラキラと光が降る。

 その光は同じ光り方ではなく、そして、柔らかく降り注ぐのだ。


「そうなの。綺麗でしょう?」

「あ、ステンドグラスのガラスは昔はギヤマンって言うんですよね。漢字だと硝子ガラス。もしくは玻璃はりって。ここにあるのは新しいものですけど、確か近くにギヤマン美術館があるんです」

「あら、そうなの?」

「はい。不思議な感じがしました。あの『涼州詞りょうしゅうし』……唐の王翰おうかんの七言絶句ですが、『夜光の杯』は最初ガラスの杯だと思っていました。調べてみたらシルクロードの酒泉しゅせんと言う地域の玉石から作られたものだそうです。残念ですけど、ガラスだったとしても、綺麗だったと思います」


 ただすは頬笑む。


「優希ちゃんは詳しいわね。竜樹たつきちゃんもビックリじゃない?」

「いつもすごいなぁって思います‼」

「じゃぁ、入ってみましょう」


 扉を開けるとそこは湯気と香りがふんわりと漂う空間。


「わぁぁ……お姫様みたいだよ!薔薇のお風呂だよ‼」


 竜樹は感動する。


「走らないようにね」

「うわぁぁ……綺麗~‼」


 感動する竜樹に、


「甘いにおいで、素敵ですね……」

「でしょ?前に聞いて来たことがあるの。それで時々今日は5にんでだったけど、女の子一人ってつまらないでしょう?良かった~‼二人がいてくれて」


 かけ湯をして湯船に浸かる。


「ふあぁ……ものすごく贅沢をしている気分……です」

「あら、そう言って貰えると嬉しいわ。私もいつも、『ひなちゃん‼大丈夫~‼』って思うもの。一応良いところの生まれだけど、裏がガタガタでね、でも家族が見栄を張るのよ。いつまで過去の栄光にすがっているのかしら、嫌だわ」


 糺は長く伸ばした髪を上でまとめている。

 華奢な人だが、優希には眩しい人である。


「でも、凄いです……私は、子供なのか大人なのか、親にとって娘なのか、家族にとって小間使いや侍女じゃないかと思うときがあります……」


 竜樹が別の場所ではしゃいでるのを見て、


「滑らないようにね?たっちゃん‼」


 声をかけると、糺を見る。

 べちゃっと張り付いた髪はくるくるとしているが、こしも艶もない。


「エヘヘ……この髪は、元々茶色じゃなくて黒くての真っ直ぐの髪だったんです。2年前から、苛めにあって、髪の毛が一気に抜けました。円形脱毛症なんてものじゃなくて、後頭部はほとんど、この辺りもほとんど抜けてました」


 指で触れる。

 前髪にするか、後ろにするかの境の辺りである。


「さすがにそのときは、母が……」

「学校に言いに行ったの?」

「いえ、従姉の美容師の先生に言って、育毛剤を買ってくれました」


 さすがに糺ですら、呆気に取られる。

 普通、苛められているのだから、学校に訴えるではないのか?


 その顔に苦笑し、


「家の母、外聞を気にしてました。お兄ちゃんもいるし……その頃、おじいちゃんが調子を崩してて、末期ガンでした。見舞いに行きました。他の兄弟は冷たい缶ジュースですが、私には毎回飲みかけのミックスジュースの缶です。ぬるくて、気持ちが悪いのに、『飲まんのか?せっかくやったのに‼』と祖父と、付き添いの祖母や叔母に責められました」

「だから、ミックスジュース……」


好き嫌いはほとんどないといっていたのだが、食後のジュースに、決してミックスジュースに手を出さなかった。

 オレンジジュースや、グレープフルーツジュースは飲む。

 しかし、混ざったものは避けていた。

 寂しげに目を伏せる。


「この髪は……ひどいくせ毛だった祖父と同じなんです。柔らかいくせ毛だった……。父はまっすぐで、母は太くて真っ黒ですがひどいくせ毛で……なりたくなかった……。なのになってしまった。絶望しました」

「絶望……?」

「……もう一生この家から逃げられないんだと……一生、兄をたてて、弟を妹を面倒を見て……結婚しないで生きていくんだと思いました……っ……す、すみません……」


 涙をぬぐう優希に、


「良いのよ。私も同じようなものだったの。ひなちゃんと幼馴染みだったのよ。お隣の。でも、ひなちゃんのおうちは一般のおうち。家は旧家って言えばいいけれど、バブルの時におじいちゃんとお父さんがバーッと散財してね?バブルが弾けて借金よ。でも見栄をはってね。ますます悪化。それに、優希ちゃんと一緒で女の子だからってあれこれね」

「どうやって……」

「大学進学しようとしたら、結婚しろだったの。結婚相手は父親と同じくらいのオジさんでね。嫌だって言ったのに、詞願書とかを取り上げられそうになって、ひなちゃんのところに逃げたの。丁度、ひなちゃんは、おばあちゃんが亡くなられて、財産の奪い合いをしようとする両親や親族に飽き飽きしていて、そうしたら、遺言書でひなちゃんにって。それで、取り上げようとする親族に嫌気がさしてて、二人で逃げちゃった」


 エヘヘ、


首をすくめる。


「運が良くてね?大原嵯峨おおはらさがさんって言う辣腕の若手弁護士さんが私たちについてくれた上に、嵯峨さんと、友人の松尾紫野まつのおむらさきのさんに頼んで、ひなちゃんとここに来たの。私は大学でしょ?高校を転校して。で、同じ大学」

「松尾紫野さん?」

「うん、醍醐だいごくんのお兄さん。双子でね?弟さんが標野しめのさんって言うの。で、醍醐くんとも知り合って、こんなになったの」

「……良いなぁ……私も……」


 表情が消え失せ、逆に虚ろになった少女に、


「やだぁ。守谷もりやくん……主李かずいくんって言う王子さまがいるじゃない~‼格好いい優しい素敵な王子さまでしょ?」

「あ、わぁぁぁ‼あの、あのっ‼」


 かぁぁっと真っ赤になる少女に、


「てを繋いで、丁寧に説明しつつ、主李くんにわかってもらえたかな?って見てるのが可愛くって……良いなぁって思ったわ」

「え、糺さんは日向ひなたさんと……」

「う~ん。逆転夫婦?姉さん女房なのに、一応、料理洗濯掃除はできるのよ?でも、小説を投稿してたの。そうしたら偶然目に留まって、出版できることになって、それからはひなちゃんが……悪いなぁって一杯迷惑かけちゃったなぁって……でも、笑ってくれるから……嬉しい。キャァァ‼こんなところで何を……」




 糺と優希、そして竜樹とも女子トークにいそしんでいるなか、早々に風呂を上がった6人は部屋に戻っていたのだが……、何かの音楽が鳴った。

 一番に反応したのは穐斗あきとである。


「あ、これ、昔のゲームの曲だ~」

「ん?昔?」

「お母さんが大好きな、京都をモデルにしたゲームだよ。しかも本編じゃなくてキャラソン……好きなんだね~」


 と音を聴いていると、音が切れ、声が聞こえた。


「おい、こらぁ‼いい加減にでんか‼優希‼無視するんか‼」


 主李と実里みのりはぎょっとする。


「いい加減にセェよ?美術館に行くだけやろが‼どこでちんたらしとんぞ‼また図書館か‼図書館のカードを取り上げても、取り上げても行きやがって‼洗濯と晩飯の準備があるやろが‼このどんくさいやつが‼」

「せ、先輩……」


 呆然とする。

 午前中に会った青年の声である。

 しかし、全く違う。


 しかも、後ろで、犬の鳴き声……わんわんではない、息苦しそうにあえぎながら、ヒャンヒャンと鳴いている。


「うるせー‼」


 ドガッ‼


 すさまじい音がして、キャンッと悲鳴が上がった。


「はよ戻れ‼戻らんかったら……」


 電話が切れた。


「な、に……あれ?」




 主李の声が割れて響いた。

現実にあったことです……。

器物損壊にしかならない、罪とも思っていないと思います。

助けられなかった自分を憎んで、18年間生きた私の『弟』に謝罪したかったです。

こんな形でしか謝罪できない、『姉ちゃん』を赦してください。

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