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9人で街探検に出掛けました。

 到着したのはホテルのレストラン。


松尾まつのおさま。ご予約変更お間違えはありませんか?」

「本当にすみません。急にお願いしてしまって……構いませんか?」


 醍醐だいごは微笑むと、コンシェルジュと担当らしい人が頷く。


「大丈夫でございます。どうぞ、テーブルの準備は整っております」

「じゃぁ、皆もおいで」


 祐也ゆうやの後ろをついていきつつ、


「ど、どうしよう……俺、違和感ありまくり……」


優希ゆうきと手を繋いだ主李かずいに、同じく竜樹たつきの手を引く実里みのりは、


「醍醐さんが、言ってた。こう言うホテルは観光シーズン以外に空きがあると泊まるお客さんだけじゃなく、昼間のランチとホテルの大浴場、休憩出来る部屋を提供できるんだって。特に女性の好きそうなデザートバイキングとか、お風呂とか。手頃なお値段なんだって」

「手頃って言っても、お金ないなぁ……あのテディベアも買えないし……」


ごめん……。


と主李に謝られ、


「いいえ、見るだけで良いです‼あ、それよりも、パンフレットは、誰が出したんですか?お金払います‼」

「あれ?実里?」

「いや、俺は主李が払ったのかと……」


 4人は顔を見合わせ、


「祐也さん‼」

「あ、俺はそれは知らないんだ。本当に」


穐斗あきとの手を引きながら歩く。


「えぇぇ~‼でも、知らないって‼」

「いや、本当に。な?穐斗」

「うん。僕のテディベアも」


 穐斗の一言に、


「あぁ、荷物でしたらひなが持っていってますよ。ちょっと忘れ物をしたって家に帰ってますから」

「えぇぇ‼じゃぁ、もしかしてパンフレットとか、絵はがきとか、キーホルダーとか……」


言いかけて、はっと口を閉ざす。


 主李は、優希とお揃いが良くて、買えなかったテディベアの飾りのついたものを持っていたのだ。

 それも、気をそらせている間になかった。


「うん。別に運ぶって言ってたよ、先輩」

「まぁ、大丈夫だろ」


 しばらくいくと、見晴らしの良いテーブルに案内される。

 気を聞かせてくれたのかテーブルは二つを近づけてくれている。


「うっわぁ……街が別方向から見える‼少し高い‼丘の上だ」

「良いでしょう?新緑の季節ですし、桜の時期とも違って綺麗ですよね」


 どうぞと座っても、気になるのかチラチラと見下ろす。


「わぁぁ……」

「あ、遅れてすまない」

「ごめんなさいね」


 手を繋ぎ日向ひなたただすが現れる。


「じゃぁ、ランチバイキングですし、取りに行きますか。メインディッシュは選べるそうですよ。お肉とお魚どっちです?」

「あ、お肉で」

「お、僕も……」

「私も……」


の中に、優希は、


「お魚で。レパートリー増やします‼」

「レパートリーって、魚さばけるのか?」


日向の問いかけに、


「はい。5才の時に三枚下ろししてました。キャベツの千切りも得意です。日本の包丁は引くんです。本当はこうやって切るのが普通なんですが、押しちゃうんですよね……美味しさが落ちるっていつも言われます」


よく子供が教わる包丁を持つ手と逆の手は『猫の手』と言う感じに丸くして、包丁で切る仕草をする。


「その人差し指は?」


 醍醐の問いかけに、


「ぎゅっと柄を握ってしまうと、包丁の刃先がどこに行くかわからない。だからこの指で微調整しつつ包丁を扱いなさい。手を切ってはいけない。時間との勝負で料理をしなさいと父に」

「時間との勝負……」

「はい。父は料理人なんです。家とは離れてますが、お店を開いてて……」


名前を言うと、5人はあぁ……と思い出す。


 昔ながらのうどんを出すお店である。

 昼間は定食をしている。


「時々手伝っているのか?」

「はい。部活動がない日はほとんどです」

「じゃぁ今日も?」


 主李の問いかけに、ぱぁぁっと赤くなり、もじもじと、


「美術館にいくからって……父は言いって言ってくれましたが、お祖母ちゃんや叔母さんたちに……でも行ってきなさいって」

「何で、お兄ちゃんや弟にさせないんだろ……ねぇ?お姉ちゃん。ずるいよね」


唇を尖らせる竜樹に、寂しげな表情で苦笑する。


「お兄ちゃんに包丁は持たせないでしょ。康弘やすひろも落ち着きがないからって、仕方ないんよ」

「でも、ずるいよ‼男だからいいの?女だから何でも命令なの?それなら女に生まれるんじゃなかった‼」


 竜樹の悔しげな声に、7人は息を飲む。


「生まれるんじゃなかった‼苛められるんなら、馬鹿にされるんなら、無視されるんなら……生んでほしくなかった‼お姉ちゃんが一杯苦労してるのに‼お母さんなんて手伝いにもいかずに、掃除もせずに、洗濯だけ‼料理だってお姉ちゃんがしてるのに‼おかしいよ‼」

「た、たっちゃん‼」

「私やお姉ちゃんがいじめられてても何も言わないくせに‼康弘がいじめられてるって聞いたら学校にいく‼」


 マシンガンのように怒りのたまを、どこに向けていいのかわからないと言うように、怒り狂う。


「赦せない‼赦せない‼だから、大嫌い‼」

「たっちゃん‼落ち着いて‼ね?デザート一杯食べさせてもらおう?ね?プリン好きでしょ?それにアイスクリーム‼絶対美味しいよ。お姉ちゃん作らないし」

「……お姉ちゃんのクッキーは大好きだよ」

「本当‼良かったぁ‼」


 喜ぶ姉を見て、ニッコリ。


「今年の2月にチョコレートのかわりにって主李先輩に贈るんだって作ってたの、贈ったの?」


 ぶしゅぅぅぅ……


顔から火を噴きそうになるほど真っ赤な顔になった優希は、


「な、何でそんなこと言うのぉ~‼」

「だって、何回もお試しって作ってたから、一月からしばらくおやつはクッキーだったもん。美味しかったからいいけど」

「貰ってない……けど」


主李の一言に、


「駄目だよ~‼お姉ちゃん。男のハートよりも胃袋つかめって言うでしょう?」

「どこで覚えてきたのぉぉ‼たっちゃん‼」

「内緒。先輩。クッキー今度お姉ちゃんが作るって」

「あ、ありがとう。楽しみにしてる‼」


真っ赤な顔の初々しい二人に、苦笑しつつ、


「えっと、まずは、バイキング形式の選びに行こうか」


動き出したのだった。




 しかし、5人が思うのは、優希がお節介と言うよりも、世話好きなこと。


「たっちゃん。ピーマン嫌いでも、食べようね。一口でいいから。あ、それに実里くん。お肉ばっかり。バランスよく。主李君も、お魚食べなきゃ……」

「ピーマン苦いんだもん……」

「えぇぇ?山盛り野菜?嫌だなぁぁ」

「じゃぁ、煮物とか青椒肉絲チンジャオロースーとか、豆腐も体にいいから麻婆豆腐もね?」


 でも大量ではなく少しのせる。


「それに、お魚は運動しているからだにいいんですよ?」

「骨が……苦手で……」

「私が取りましょう‼」


 その様子に、


「母親だな……」


呟く日向。


「言うか、可哀想やなぁ……あの子」

「ん?」


 醍醐は険しい表情で呟く。


「あれだけ妹はんや、恋人や友人に世話やいて、優希を可愛がるんは誰なんやろ……」

「……」


 日向は再び振り返る。

 すると歪な何かの欠片が見え隠れするような気がした。




 ……一粒の心の欠片、どこにいってしまったんだろう……。

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