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9人が一通り見て回っていきます。

 しばらく当時の絵画や芸術品等が続き、移動して、次のブースに移る。


「あ、これです‼」


 優希ゆうきが示す。


「アーサー・コナン・ドイルが遭遇する『コティングリーの妖精』事件です。1916年7月にフランシスとエルシーと言う15才と9才の少女が、最初、妖精と写真を撮ったとフランシスと妖精が一緒に撮られている写真を公表します。20年までの間に合計5枚を」


 複製である写真を見て、主李かずいは問いかけた。


「ん?これ、本物?」

「写真は当然複製ですよ?このお話はずっと続くんです。最初は偽物だ本物だと論争になったのです。で、この話にアーサー・コナン・ドイルはこの頃……第一次世界大戦が1912年だったと思いますが、その頃に親族を息子を次々亡くしたことで、心霊主義に傾倒していくんです。丁度、その頃にこの写真の公開で、益々深まるんです。『妖精はいるかもしれないが、これは違うのではないか?』と言う意見や『妖精などはいない‼こんな時代にいるわけはない』と言う感じで否定するなかで、アーサー・コナン・ドイルは『いや、必ずいる。これが証拠だ‼』と。でも、アーサー・コナン・ドイルは、写真を完全に信じたわけではなくて、二人の少女が嘘を付き続けている事が信じられなかったって言っていたそうです。アーサー・コナン・ドイルがなくなった後、この二人が年を取った後に、実は合成写真だったと公表しています。ですから、ここにほら……」

井村君江いむらきみえさん?」

「日本の妖精学研究第一人者のかたで、写真の原版や、写真機を。日本の美術館に寄贈されているそうです。すごいですね……こんなに素敵な資料……」


 うっとりする。


「日本にも妖怪や八百万やおよろずの神がいるのと同じで、エルフにフェアリー、ノームにコボルト……考えただけで嬉しいです(^ー^)」

「わぁぁ……‼お姉ちゃん‼これこれ‼」

「あぁ‼」


 優希が妹の竜樹たつきとじっくりまじまじ見いってしまうのは、可愛らしいイラストである。


「こういう絵本が出ていたんです。綺麗ですよね‼見てるとうっとりします。花の妖精が、花びらをスカートにして、花冠を被ったり、羽があって……」


 わぁぁ……一緒に食い入るように見いっているのはただす穐斗あきと


「可愛い~。あきちゃん。可愛いわよね~‼」

「はい‼先輩。こんな子がいたら一緒に写真撮りたいです‼」


 穐斗はモサッとした髪の毛の間からはキラキラとした瞳が見え隠れする。

 黒ぶちの大きなやぼったい眼鏡のレンズの奥は真ん丸の瞳である。




 心行くまで堪能した……特に優希に糺……9人は会場を後にする。

 そして土産物コーナーに行くと、優希はパンフレットを手に取る。

 主李も実里みのりも手にするが、祐也ゆうやが、


「荷物になるだろ?ここに入れておくといい」


とかごを持ってくる。


「でも、重いですよ?」

「大丈夫大丈夫。他のものを見てくればいい」

「すみません」

「ありがとうございます。祐也先輩」


 お礼をいいそして、糺と一緒に移動していた竜樹と優希を追いかける。


「んな!なに、これ?」

「テディベアだよ」

「テディベアって、こんなのじゃないですよ‼だって、ベアです。熊ですよね?だったら、耳は上で鼻が出てて……」


 穐斗は、手にする。


 チリーン……


鈴の音が響いた。


「この子はメリーソート社の『いたずらっ子』。チーキーだよ。優希ちゃんが見たがってたんだよね?普通のベアはあるんだけど、この子は、耳が大きいでしょ?それにほら……」


 チリンチリン……


響き渡る優しい音色。


「耳の中に入ってるんだ。鈴は幸運を呼ぶんだって。だからお母さんに買ってあげようと思って」

「お母さんに……」

「うん。お母さん、シングルマザーなんよ。今は、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんとお母さんと3人おるんよ実家に。お姉ちゃんいるけど都会。僕は大学出たら帰ろうかなって。仕事はないし田舎やけどね」

「へぇ~。すごい‼って……」


 値札を見て絶句する。

 主李のお小遣い数ヵ月分……。

 穐斗は首をすくめ、


「僕はアルバイトとか不器用でできないけど、お母さんがね、イングランドやヨーロッパに働きつつ留学してて、白魔女の勉強もしてて、ハーブとか詳しいんだ。だから、そう言うのを大学の子に教えてて、お礼にってお昼おごってもらっちゃって……。それに、田舎で育ってるから、買い物行かないし、コツコツお年玉とか貯めてたの。皆と一緒。僕はまだ18だもん」

「18ですか‼そっか……大学1年生って言ってましたもんね。すみません……俺の兄貴の方が老けてます」

「お兄ちゃんいるの?いくつ?」

「高校2年生です。優希たちにもひとつ上の兄貴がいて……」


日向ひなたが口を挟む。


「高校1年生の曽我部って、あの曽我部誠一郎そがべせいいちろう?」

「あ、はい……」


 優希はハッとして、そして小声で頷く。

 慌てて日向は付け加える。


「あ、いや……あの噂のあいつに兄弟がいたって言うのが逆に驚きで……優希は全然似てないな。竜樹も言われるまで気がつかなかった」

「あの、曽我部誠一郎ですもんね」


 にっこり醍醐は笑う。


「似てなくて良かったですね。優希も竜樹も」

「可愛い可愛い」


 祐也が頭を撫でる。


「あ、そうだ、先輩。車乗れますよね?俺のところあと二人乗れますし……」

「あぁ、これから、お昼を食べに行くんだが、4人もどうだ?」

「えぇ?いいんですか?だって、4人ですよ?」


 主李の言葉に、日向は、


「一応、祐也のは、軽で穐斗と一緒。俺は糺と一緒で醍醐は一人。昼は一緒に食事に行こうと言っていたんだ。大丈夫。ディナーって言う訳じゃないし、ランチだ」

「二人二人で二台に乗ればいいんですよ。ちょっといきましょう。私のおすすめのところなんです」


醍醐は首をかしげる。


 それが、行くよね?と念押しにしか見えない。


「は、はい……ありがとうございます」

「ごちそうになります」

「いいんですよ。色々お話ししてみたいし……」


 その間に、いつの間にか買い物はすんでしまい、美術館を出て、祐也の車に主李と優希、醍醐の車に実里と竜樹がそれぞれ乗ることになった。




「じゃぁ、行くよ。俺は地元だけどそんなに行かない所だから、先輩について行くしかないんだ」

「祐也先輩はこの街出身ですか?」

「あ、う~ん。生まれは別。父さんの仕事の関係で戻ってきたんだ、うん。でも、父さんは獣医師で前までは勤めてたけど、開業したんだ」

「獣医師?」

「そう。この名前知ってるかな?」


 住所と名前を教える。


「あぁ‼知ってます、俺‼その動物病院は大きな動物から、爬虫類、ハムスターまで診てくれるって有名なんですよね‼他の動物病院に家の近所の人が連れていったら、『ここは犬専門で、無理だから』って、言われたって連れていったって」

「あはは。そうそう。飼っている犬も大きな子から小さい子までいるよ」

「でも、どうして、沢山診られるんですか?……あ、大変だって言う意味です」


 優希の言葉に、


「う~ん。父さんは言わないけど、多分、『大きくても小さくても命は一緒』ってことかな。ほら、ハムスターは本当に可愛いだろう?でも、2歳位が寿命。病気をしても解りにくいんだよ。でも、飼い主さんにとっては、『どうして?自分がもっと見ていたら、面倒を見ていたら』……ってなるんだよ。後悔と悲しみと喪失感にさいなまれてペットロスになる。特に、可愛がっていたらなおさら。それを慰めることは無理だけど、変調に気がついて連れてきた飼い主さんに、『あぁ、お別れが出来て良かった』とか、『直すことが出来て良かった』って思ってもらいたいんだと思う」

「……そうですね……私も、今飼っている犬の前に、大きな四国犬の雑種を飼っていました。7才だったんです。急に死んじゃって……9才だったのですが、ものすごくショックでした。翌年に飼い始めた今の子は、雑種ですけどピンシャーみたいな子です。耳が大きくて目もクリクリ。鼻が長くて。気が強いんです。でも、私にはなついてくれて……」

「へぇ、もう6才くらいか……これまでが一番大変だっただろうな……」

「今が……可哀想です……あ、いえ……」


一瞬俯き、そしてへにゃっと気弱そうに半泣きの作り笑いに、


「大丈夫か?優希。疲れたのか?」

「ううん。大丈夫。それよりもどこに行くんだろうね?主李くん……ここって私たちもそんなに行ったことがない……」

「あ、ホテルのランチバイキングだから。部屋も貸しきりだから大丈夫って先輩言ってたよ」


穐斗が声をかける。


「な‼ホテル‼」

「え?そんな……」

「大丈夫大丈夫。俺や穐斗は、一般人だけど、先輩たちがよく出掛けてる所より安いらしい」


 ハンドルを切り、駐車場へと向かっていくのだった。

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