昔は良かった
全くつまらない世の中になったもんだ。やれ全自動だ、やれロボットだと何が面白いというのだ。確かに科学の進歩は、より人の暮らしを便利にした。
例えば一人一台は持つ携帯。いつでも遠くの人間と繋がる事が可能で、そりゃあ便利だろう。だがダイヤル式の黒電話だって味があって良いじゃないか。
例えば薄型テレビ。俺にはよく分からんが、画質がどうだと、結局見れれば何だって一緒だ。叩いて直せる厚みのあるブラウン管テレビの方が愛嬌がある。
夜、男が柳の木の下を通りかかったところで、身体が半透明の女が現れ、機械調の言葉で言った。
「ウラメシヤ…。」
このご時世、幽霊もロボットと来たもんだ。ああ、なんてつまらないんだ。