第4章「明確な目的はなくただ湧き上がる気持ちに従って」
「やっと撒いたか……」
「かなり面倒だったね……」
「取り敢えず偶然にも遭遇したエクソシストの力を借りて事なきを得たが……」
アリスト、雅、カサスの3人は肩で息をしていた。
一応周囲を見回してみるがやはりあの夢魔共は居ない。
その事実を再確認すると全身から力が抜けた。
彼らはほぼ同時にレンガで舗装された道に仰向けに寝転がる。
静かな夜だった。
そうして溜息を吐く。
「そういえば誰も居ねえな……」
カサスがふとそんな事を言った。
2人ももう1度辺りを見回す。
「確かに居ないね。僕達神隠しに遭ったかな?」
「まさか。偶然だろ偶然」
雅の言った冗談をカサスが鼻で笑った。
確かにそんな事があったら一大事だ。
そういえばこの近くには天光神社があったな、とアリストは思い出す。
「暇だし神社に行かないか? 勝利を報告にでも」
「良いね。ちょうど暇だったし」
「俺も何故かあそこに行かなければと思っていた」
反対意見は無い。
という訳でさっさとそちらに向かう事にした。
やはり不気味な事に車も通っていない。
一体何が起きているというのだろうか。
「オカルティックだなぁ……」
「オカルトっていう奴は全て解明されたぞ。人為的にこんな現象を起こしているって事だろ」
アリストが雅の言葉を否定する。
しかし理由がわからなかった。
もしかしたら自分達が逃げるので必死になっている時に大事件が起きて避難警報とかが出たのかもしれない。
「あ、ニュースのヘッドラインにこんな記事があるよ」
雅が携帯の画面を2人に見せる。
アリストとカサスはそれを凝視した。
そこには朧想街の上空に高エネルギー反応があったとの事。
すぐに反応は消えたものの万が一の為にできるだけ外には出るな、と注意書きが添えられている。
「確かに空が眩しい時があったな」
「全然わからなかった」
「あのときは皆必死だったからねぇ。しょうがないね」
とはいえそんな理由だったのなら安心だ。
3人は構わず先を進んでいく。
このあたりにあるのは工場などであり、若干空気が悪い。
環境に配慮されているであろうからこの悪さは精神的なものだろう。
「お、見えてきた」
暫くすると神社の鳥居が見えてきた。
いつも思うのだがよく夜行達はこんな長い階段を登れるな、と感心する。
毎日上り下りを繰り返せばかなりの体力がつきそうだ。
もっとも彼らにとってはこんなもの朝飯前ではある。
そうして参道に入り、足を階段の一段目に載せようとしたその時だった。
何かが変わった。
雰囲気というか空気というものが明確に変わってしまったのだ。
3人の身体が思わず強ばる。
とてつもないプレッシャーだ。
3人はほぼ同時に後ろを振り返る。
そこには誰かが立っていた。
若い男だった。
歳は19くらいだろうか。
後ろに纏めた長い金髪と青い目、白い肌から若干女性的でもある。
あれか、男の娘かとアリストは思った。
しかし残念ながら彼は処女を信仰しておりいかに顔が可愛くても野郎には反応しないのだった。
このプレッシャーはどうやらこの男が発しているらしい。
もしかしたら喧嘩をしたいのだろうかと彼は判断した。
だがそこいらにゴロゴロと居るチンピラでは到底及ばないであろうこの威圧感は初めてだ。
3人で寄ってたかって倒せるか、といった程。
まだ分が悪いかもしれない。
「誰だアンタ……?」
カサスが男に尋ねる。
すると男は柔和な微笑みを浮かべて口を開いた。
「ケルトの英雄……クー・フリンって言えばわかるかな?」
綺麗な声だった。
思わず聞き惚れてしまう。
「クー・フリン……誰だ?」
カサスはアリストと雅に顔を向けた。
代わりに雅が溜息を吐いて答える。
「歴史で習ったでしょー。ケルト神話に出てくる半神の英雄だよ」
雅は彼らに説明を始める。
アイルランド北部にあるアルスターの王・コノールにはデヒテラという妹が居た。
彼女が妖精の丘へ出掛けた際に光の神・ルーの子を紆余曲折あって授かった。
そうして生まれたのがフリンである。
彼は幼い頃から非凡な力を持っていたという。
しかし力を誇示したりせずすくすくと真っ直ぐに育った彼は立派な戦士になり国を守りたいと思っていた。
そしてある日彼は占いで『今日初めて武具を身に付ければ最強の戦士として語り継がれるであろう』と術者から聞いた。
これは朗報だとフリンはなにをトチ狂ったか城に突撃し追っ手を振り切って王の元に到着すると彼に武器をくださいと申し出たのである。
因みにこの時フリンは8歳である。
そんな子どもが直接殴り込んできて武器をよこせというのだからとんでもない。
しかし王は感動し、彼にあっさりと自分の愛用している武器や防具や戦車を渡した。
その後、影の国に居る師匠スカアハのもとで親友フェル・ディアと共に修行し、ガイ・ボルグを入手した。
そうしてなんだかんだあり単身で敵の大軍の進行を食い止めるなどしてケルトの歴史に名を刻んだという。
「ああそうだったな」
「絶対知らないでしょ?」
カサスに雅が突っ込む。
しかしアリストの頭に浮かんでいたのは疑問だった。
どうしてこんな存在がここに居るのか。
「実はこの国の主神の弟に頼まれてね、万が一の為に力を貸して欲しいんだってさ」
「俺達に言っていいのかそれ?」
「多分駄目だと思うよ」
なんだコイツ、とアリストは脱力した。
考えが読めない。
「とはいえ僕はこの先に進むんだけれど君達も何か用かな?」
「奇遇だな。俺たちもちょうどここに来ようと思っていた」
「へぇ……」
フリンが目を細める。
彼の威圧感が一気に大きくなった。
それは彼らの肌を粟立たせるには十分だった。
思わずじり……と後退る。
しかし後ろは段になっていたので雅が尻餅をついた。
「邪魔をするなら……潰すよ」
「血の気が多いのは良いが確か他国の神は現地でなければ万全の力を振るえないんじゃないか? 武器も含めて」
神というのは時間と信仰によって力が比例していく。
多くがとんでもない力を保有しているがそれはあくまで自分の国のみに言える話であり他国でそれを使うとなるとせいぜい3割程度にしかならない。
悪いように聞こえるがこれによって他国を単独で制圧できないようになっているのだ。
しかし個人が創作したクトゥルーの場合は例外であり凄まじい力を持っているのは共通しているがネクロノミコンやトラペゾヘドロン、戯曲・黄衣の王などアイテムに封印されている。
つまり解放した者のみが破滅する仕組みであり解放しなければ影響はないという戦略兵器じみた扱いだ。
勿論厳重に保管されており、作者のラヴクラフト氏は責任を免れる為に宇宙へと旅立ったという。
「確かにそうだね。ここで生命を落とせば文字通り僕は死ぬ。傷も負うし攻撃力もせいぜいこの国の歩兵が持てる兵器並みに落ちてるだろうね」
しかし、と彼は続ける。
「君達3人には勝てると思うよ」
そう言うとフリンは右手を前に突き出す。
すると彼の手が眩く光る。
アリスト達は眩しさに目を細めた。
そしてその光が伸び、何かを形作っていく。
「――来い、ガイ・ボルグ」
フリンがその名を呼ぶ。
すると光は一気に明確な形を作り上げ、消失した。
そこから現れたのは一本の槍だった。
穂先が鋸のようにギザギザであり、幾つも細長い突起が飛びてている。
その名前の意味は破裂する槍。
怪魚の骨から作られたものであり、かなりの大きさがある。
3メートル程だろうか。
細身のフリンには似つかわしくない。
しかし軽々とそれを彼は握っていた。
「この槍刺さると体内で30本の刺に分解して炸裂するよ。勿論相手の身体は文字通り爆散するけど」
「怖ぇえなオイ。もっと弱めにしろ」
「万全モードがそれなんだけど今回は弱体化して棘が一本チクリってするだけだよ」
「「「弱……ッ!」」」
「じゃあ始めようか。せいぜい頑張ってね」
するとフリンのシルエットが変化していく。
線の細い身体に血管が浮き上がり、肉体が隆起する。
金髪が逆立ち、口が裂け、歯と爪が鋭くなっていく。
一気に全長が3メートル近くなった。
3人は口をポカンと開ける。
なんか恐怖を通り越して何も感じなかった。
「バーサーカーモード。果たして倒せるかな?」
フリン(暫定)が口を開く。
ハスキーがかった低い声だった。
我に返った彼らは各々能力を発動していく。
あらゆる事象の逆転。
絶対安全空間の生成。
あらゆる穢れを祓う。
それがどこまで通用するか。
神対3人の一般人。
前代未聞の戦いが始まろうとしていた。
そして彼らはほぼ同時に動き出す。
×
「……で、なにをしているのかしら貴女達は?」
屋敷を飛び出してきたワーミィは目の前に広がっていた光景に頭を抱えそうになった。
どうしてこんな所に彼女達が居るのか。
「いやぁ、2人がお金を落としたらしくてね」
困った顔で答えるのが舞子。
「バスに乗れないのさ」
どこか得意げな顔で続けるのが和良。
「そういう事」
最後に付け足すのがエル。
「ハァ……で、舞子が頭を悩ませていたと?」
「そういう事……まったく大変だよ」
苦労性だな、とワーミィは思った。
彼女がここに居るのはクロードの報告が気になったからだ。
上空から高エネルギー反応があったという話。
確かにニュースで確認するとヘッドラインにその速報があった。
もう既にエネルギーは消失したとの事だがまだ警戒せよとの事だった。
しかしワーミィはそれが気になってクロードやエリアの制止を振り切ってここまで来たのだ。
どうやら彼女達は何も知らないようだ。
それを指摘すると3人は周囲を見回して誰も居ないなどと喚いている。
もうこのあたりで大丈夫かと思い始めた。
「という事だからさっさと行くわよ。多分バスも使えないと思うし」
「ええーじゃあ今までここで待っていたのはなんだったのさ?」
和良が駄々をこねるが舞子がチョップを叩き込んで黙らせる。
すると静かになった。
エルも友人の末路を見て口をつぐんでいる。
効果は抜群のようだ。
「徒歩で行けない距離でもないでしょ? 私も付いて行くから頑張りなさいな」
面倒見が良いのもワーミィの良いところだった。
ボディーガードという面もある。
映像から判断してみるにおそらく神話級の何かがこの街で今起きている。
シルエットで判断するに主神が集まっているのかもしれない。
信じがたいが彼女が出した結論がそうだった。
彼らも無益な被害を与えるような人格破綻者ではない……と思う。
が、油断はできないのだった。
目的がわからない以上彼女達を安全な場所に居させなければならない。
「「あい」」
「悪いね」
「別に構わないわ。じゃあ行くわよ」
そんな訳で4人は先に進む事にした。
幼女2人のナビゲーションに従って道を歩いていく。
さっき居たのは中心部だったがだんだんと郊外に近付いてきた。
神鳴山があるのがわかる。
この距離なら目を凝らせば神社の鳥居も見えるだろう。
2人曰くここから20分くらいとの事。
もう少しだ。
すると前から見慣れた集団が見えてきた。
彼女達は目を凝らす。
そうして向こうもこちらの存在に気付いて顔を向けてきた。
「あ、ワーミィと舞子と和良とエルだ。どしたの?」
「あら皆こそ」
瓜は目の前に現れた4人に手を振る。
白雪と風芽もワーミィ達を見た。
「……む、ボンボンと幼女と……………………」
「黙っちゃあれだよ白雪、舞子は胃潰瘍と呼べば良いと思うよ」
「なんか私だけ酷くない!?」
友人だと思っていたがその実外道だった。
「というか胃潰瘍になってないよ……」
「ストレスには強いのか」
「そうでもないよ」
舞子は明後日の方に顔を向け、遠い目をする。
彼女なりに苦労しているのかもしれない。
「とはいえ貴女達はどうしたの?」
ボンボン……もといワーミィが3人に尋ねる。
「尻子玉を探しに」
「尻子玉を探しに」
「尻子玉を探しに」
「意味がわからないわ」
というか尻子玉ってなんだっけ?
魚の精巣かしら?
「それは白子じゃない?」
舞子が突っ込む。
「白子玉はなぁ……もうないんだよ。人間はな、進化したから白子玉を無くしてしまったんだよ」
「和良ちゃん、白子玉ちゃう、尻子玉や」
エルが和良の袖をクイクイと引っ張って間違いを指摘した。
しかしそれを聞いた瓜はポカンと口を開けて涙目になりふるふると震えている。
どうやら彼女にとって尻子玉とはそれだけ大事なものらしい。
ワーミィはやれやれと嘆息した。
というかこんなところでこんな事をしている場合ではない。
「とにかく早く帰るわよ。どんな事が起きるかわからないような状態なんだから……」
「ほう。まさかまだこんなにも残っていたとは」
7人は声のした方を見る。
そこに立っていたのは褐色の肌の男だった。
特徴的なのはハヤブサの面を被っている事だ。
見るからにエジプトな感じの男。
「マラオだっけ?」
「それを言うならファラオじゃない?」
ここまでくると本格的にエルにツッコまれる和良の知能が心配になる。
しかし着眼点は悪くない、とワーミィは思った。
おそらくあの存在は空からやってきた存在に違いない。
わかりやすく言えば神。
ならば後は簡単だ。
「――ホルスね」
「正解だ」
ハヤブサの面をつけた男は首肯する。
ワーミィは唇を噛む。
まさかこんな場面で出てくるとは思いもしなかった。
目的はわからないが他国の主神がやってくる以上ロクなことではないだろう。
ワーミィは静かに集中する。
そうしてある事がわかった。
「大きな反応がいくつか天光神社の周囲にあるわね。お仲間かしら?」
「その通りだ。詳しくは言えないが余談を許さない状況なのでな」
するとホルスの周囲に積もっている雪が一瞬で消失した。
正確には蒸発したというべきか。
一瞬で膨大な蒸気が発生して周囲を吹き飛ばす。
雪が舞った。
彼女達はどうにか踏ん張ってそれを堪える。
白い空間をワーミィは目を凝らし、相手の姿を探す。
「……居ない」
ならば上か、と彼女がソラを見上げると遥か上空にホルスの姿が見えた。
自分たちから興味を失って先に向かったようだ。
しかし彼らの目的があの神社である以上見過ごす訳にはいかなかった。
「やらせない……」
ワーミィは地面を蹴る。
それだけで彼女の身体は20メートル程飛び上がった。
そうして背中から翼を発生させ、雪の降る空を飛翔する。
こちらの存在に気付いたホルスが顔を向ける。
ワーミィは躊躇せず氷の槍を複数発生させるとそれをホルスに向かって投擲する。
音速近い速さで槍は一直線に飛んでいく。
先端はホルスの背中だ。
しかし彼は優雅ともいえる余裕を持って反応した。
ただ身体の向きを変え、手を翳す。
それだけで氷の槍は掻き消えた。
熱によって蒸発したらしい。
しかし僅かながらも隙が生まれた。
ワーミィは蒸気の塊に迷わず手を突っ込み、その中にある人物の肩を掴んだ。
そうしてホルスを地面に向かって叩き落とす。
爆発が起きた。
買取りする人間の居ない広い空き地を狙ったので周囲に被害はなかった。
ワーミィはその空き地に向かって滑空し、綺麗に着地した。
そうして発生したクレーターの中心を凝視する。
そこに存在する影。
肉塊になっていてもおかしくない影がゆっくりと動き出した。
ワーミィは目を細める。
驚異を排除する為に彼女は新たな武器を生み出す。
右手に嵐のような勢いで氷の結晶が集まっていく。
それはほんの一瞬で巨大な氷塊となった。
ワーミィは右手に力を込める。
すると氷の塊は砕け散った。
いや、何かがそこから現れた。
彼女の右手には何かが握られている。
それは氷の大剣だった。
彼女はその大剣をただ振り下ろす。
ここまでやらなければ神など倒せない。
それを知っているからこそ彼女は躊躇しない。
だが刃が肉を断つ手応えは無かった。
外れたのではない。
間違いなく当たる筈だった。
ならば何が起きたのかは簡単だ。
影がゆっくりと立ちが上がる。
「……容赦ないのだな」
「友人に危害を与えるのはやめてくれないのかしら」
「こちらは正義を貫いて行動しているつもりだ。結局のところそれが一番の選択になるからな」
そうしてホルスの姿が露わになる。
彼の身体に傷は一つもない。
若干汚れている程度だ。
そうしてワーミィの振るった大剣の刃は半分以上ごっそりと消失していた。
やはり熱には相性が悪いらしい。
するとドタドタと他のクラスメイトがやってきた。
ワーミィは舌打ちをする。
一応彼女達を巻き込まないように戦闘場所を変えたのにこれでは意味がない。
「貴女1人だけでやらせる訳にはいかないでしょ」
舞子の言葉に他の面子が同意する。
ならば何も言うまい、と彼女は諦めて再びホルスに目を向ける。
彼はワーミィ達を一瞥すると鼻で笑った。
「主神であり太陽神の一体の俺に刃を向けるか。面白いな」
「できればすぐに帰ってもらえると助かるのだけれど」
「それは無理そうだ」
ホルスが答えると同時、炎が柱となって吹き出した。
それはホルスを囲み周囲を明るく照らす。
7人はそれぞれ能力を解放した。
新たな戦いが始まる。
×
「とんでもないのが見えたけど……あれはなんだ?」
「多分放っておいちゃあまずいんだろうなぁ……」
朱音の言葉に照玖が答える。
彼女達は麓の広場に居たのだが空に出現した光に警戒心を持っていた。
このままでは何かが危ない。
長年の経験からそう判断した。
それ相応の力がある事は自覚している。
しかしその自信が弱る程の脅威が近づいている事を彼女達は理解した。
「全く……丁度良いところだったのに」
「決着は後日に持ち越しだ」
未だに魅麗と貉那はいがみ合っているが戦闘はやめたようだ。
それを見てひとまず照玖は安堵の溜息を吐く。
取り敢えずどこか広い場所に行くのが良い。
そう判断した彼女達はどこかに移動する事にした。
狭い場所だとやりにくいからだ。
「――お、ジャパニーズクリーチャー発見」
「アンタは誰さね?」
朱音達は横を見る。
彼女達から10メートル程離れた場所に誰かが立っていた。
「ギルガメシュだ。半神半人。ウルクの王」
街中で偶然会った知り合いに挨拶するような気軽さでギルガメシュはそう名乗った。
しかし4人の反応はイマイチだった。
「名前だけは痺れるさね」
「でもコイツって特に見せ場らしい見せ場が無い気がするわね」
「元暴君が改心したとか言ってるけど信じがたいしな」
「うーん……不老不死になりたいとか言ってたらしいけど明らかに小物なんだよなぁ……」
「……全員散々な評価だなオイ」
「というかカリスマが無いさね」
「おまっ……昔はヤンチャしてたよ俺」
「というか名君になったとか言うけど一周回って馬鹿になってる感じじゃない?」
「確かに言えてるなぁそれ」
ギルガメシュは口をポカンと開けた。
カリスマがあるつもりだったのにこんなにも散々な結果になるとは思わなかったらしい。
「……で、どうするつもりさね? 俺はアンタの目的が少しもわからない訳だが」
「ん? 女神様の奪還。すぐそこの神社に行ってさ」
ギルガメシュはあっさりと答えた。
もしかしたらそこまで乗り気ではないのかもしれない。
「あそこには随分と世話になっている訳だからはいそうですか、って通す訳にもいかないのさ」
朱音は毅然とした態度で彼の前に立ち上がる。
それに対してギルガメシュは困ったようにポリポリと頭を掻いた。
「とはいえこっちも頼まれた以上やるしか無いのな。だから――邪魔はするな」
ギルガメシュの目が金色に光る。
そして全身に金色の稲妻が走る。
半神半人。
その神としての性質が解放される。
対する4人の顔には焦りも恐怖もない。
彼女たちの心に秘められているのはただ相手を絶対に止めるという闘争心のみ。