ホワイトデーのご褒美!?
校門、10分、マイペースな彼氏、3月14日。と、偉そうな私。
今回はそんなお話。
楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
「ふふん♪」
小さな鼻歌が聞こえてくる。
あ、いや、音の発生源は私なんだけどね。
ども、梨香と申します。
健全な女子高校生、そして彼氏持ちです。
いやぁ、ね。
鼻歌だって歌いたくなるじゃない!
だって今日は…。
ホワイトデーなんだからっ
「…でも、遅いなぁ…。」
私はちらっと腕の時計に目をやる。
ここ、学校の正門についてから軽く10分は経っていた。
いつもなら5分もしないうちにあいつが来るのに。
「ふぅ…。」
いつの間にか鼻歌はやんでいた。(いや、私がただ止めただけなんだけどね。)
あいつ、私の彼氏は亮介って名前の同じ高校、同じクラスに通っている。
見た目?一言で言うと…。
イケメンメガネ。
これに尽きるねー。
もうカッコよすぎるったらありゃしない。
はなして、今日は何をくれるんだろうか…。
マシュマロ?
ホワイトチョコ?
クッキー?
んー…。
亮介は料理苦手そうだから市販だよね。
やっぱり、手作りの方が心こもってる気がするけど…。まぁ、そこは愛でカバー!?
楽しみだなぁ…。
もうほとんどの生徒が帰って誰も通らなくなった校門で、私の頭の中ではいろんなお菓子が踊りながら通って行った。
「おーい。…おーい。りーかー」
…声が聞こえる…。
いや、そっちを見なくても誰が呼んでるかくらい分かるけど。
この少し低くて大人っぽい声、そして何より私を呼んでいる…。
それはもちろん…。
亮介だっ
ぱっと振り向く私。
やっぱり声がした方では大きく手を振りながらこっちにゆっくり歩いてくる亮介の姿があった。
っていうか、彼女待たせておいて歩いてくるって何なの?
全力ダッシュで息切らすくらいの彼氏っぽさ見せなさいよー。
「お、気付いた。遅れてごめんなー。」
まだ遠くから叫んでくる。
もう誰も居ないから別に構わないけど、大勢の前でやられたら私は恥ずかしくて死んでいたかもしれない。
「はーやーく!走りなさいよっっずっと待ってたんだから!」
私も亮介に負けない声で叫ぶ。
声が聞こえたのか申し訳なさそうな顔になったけどやっぱり歩いたまま。
マイペース…なのか。
「遅れてゴメンって。そう怒るなよなー?」
あれから走ることなく悠々と歩いてきた亮介。
私はそれにイラっとして亮介が側に来た時にはもうそっぽを向いていた。
走れって言ったのに…。
自分でもぷくぅと頬が風船の様に膨れてるのが分かる。
亮介は何も言わない私を怪訝そうに見て、顔を覗き込んでくる。
私はまた、別の方に顔を向ける。
覗きこんでくる亮介。
よける私。
何回か繰り返したあと、折れたのは私の方だった。
「ふんっ…早く渡しなさいよっ持って来たんでしょ?」
ホワイトデーのプレゼント…とは言わない。
言ったらなんか負けた気がするでしょ?
「ん?なにがだ?何か貸す約束してたっけ?それとも俺、何か借りてた?」
返ってきたのはこんな返事。
この感じ…本当に分かってない?
とりあえず1つ質問してみた。
「今日が何月何日か知ってる?」
もちろん、今日は3月14日。
これは知らなかったら、あれだね、常識力的ななにかが欠けてる。
「あーえーと。3月ー…13?14?いや、15?梨香ーいつだっけ?」
常識力的にダメだったらしい。
「はぁ…。」
私は膨らんだ風船に入っていた空気をため息に変えた。
もう、知らない。
彼氏として、男として、ホワイトデーぐらい覚えとかなきゃいけないはずでしょ。
亮介を置いて家の方へ歩き出す。
私と亮介は家が近いから、すぐに離れるわけじゃない。
ちょっと歩いてから振り向くと、困ったように考え込んでいた。
本当に分かんないらしい。
悩ましい姿もカッコイイ…。
なんて私が見惚れて立ち止まってるのに気付いた亮介が小走りでこっちに来る。
歩いてこない点、学習してるらしい。
「ゴメン。本当に分かんないって。たぶん、14日だろ?でも、だから何なんだ?梨香の誕生日は少し先だろ?4月で。」
…///
何で誕生日は知ってるんだし…。
むかつくなぁ…。
「きょ、今日はホワイトデー!分かる?男の人が女の人にチョコのお返しをする日。」
ここまで言って、私は深呼吸する。
心なしか頬が熱い。
誕生日とか不意打ちするからだ!卑怯者!
亮介はと言うと、とてつもなく驚いた顔をしてる。
うん。天下のマイペース亮介さまは日にちすら知らなかったんですものね。
「あと、えと…。」
困ってるイケメンメガネ。
立ち止まってあたふたしてる。
可愛い…。
この姿を見たらもう怒る気もしない。
惚れた弱みってやつ?
「1つだけ!1つだけ…今すぐ渡せるものがあるんだけど…。」
どうやら、後日買ってきますなんて言わないつもりらしい。
まぁ、当日に渡そうとする精神は認めてあげてもいいんじゃないかな。
「へぇ…何?」
私が問うと、急に目を泳がせて顔を真っ赤にさせてる。
…何?
「えと…目。目をつむって。」
サプライズ?
まぁ、鞄ごそごそするのをこっちがじっと見てるっていうのもなんだかね…。
私は素直に目を閉じた。
けど、鞄を漁る音も何もしない。
っていうか無音?
「早くしなさいっ。」
無言に堪えられなくなった私は目をつむったまま亮介をせかした。
―チュッ―
可愛い音が響く。
その音の発生源は鼻歌の時と同じように私なんだ。
おでこ。
おでこに亮介がき、キスを…。
「なっ…。」
びっくりして声も出ない。
「こ、これがお返し…ダメ?」
うつむいた顔を真っ赤にさせていう亮介。
か、可愛い…。
なんかつられて私も顔を真っ赤にさせる。
…悔しい。
亮介なんかに赤くさせられてる感じが悔しい…。
…。
私はクイッと亮介の顎を持ち上げる。
そのまま顔を近づけて…。
―チュッ―
今度の音の発生源は私の…口です。
いや、正確には私と亮介のだけど!
「ご、ご褒美だから!ありがたく受け取りなさい。」
自分でも理不尽だと思う言葉を残して歩き出す。
あとで亮介に「ご褒美って何の?」って聞かれて答えられなかったのは秘密。
読んでいただきありがとうございました
コレで書きためていた分は投稿し終わったので、次回からは長編を投稿していきます
感想頂けると泣いて喜びます。