神々は適切な罰を与える
「先生!」
「おぉ、ゆうすけ君、どうしたんだい?」
「これみて~」
「おぉ、これは綺麗なヒトデだな」
「すごいでしょ~」
「あぁ、すごいな~」
私の目の前ではしゃぐ少年を、手にかけた
「先生!」
「おぉ、ゆうすけ君、どうしたんだい?」
「これみて~」
「おぉ、これは綺麗なヒトデだな」
「すごいでしょ~」
「あぁ、すごいな~」
9月2日
ついに沈む
ゆっくりと、飲み込むように水が進んできた
これはどうしようか
風船にでも括り付けておこうか
私なりの抵抗だ
どうか私よりも生きてくれよ
8月30日
校庭にも水が入ってきた
この学校に残るのは私だけなので関係ないのだがな
入り口にバリケードをしいてみよう
8月21日
食料が尽きて二か月
空腹感は不思議としなくなった
死が近いからだろうか
もうすぐ丘も越えるであろう
8月19日
また雨だ
雨が降るたび心配になる
8月18日
雨雲が迫ってきている
どす黒い雨雲だ
これは強い雨が降るかもしれない
一応傘を探しておこう
8月15日
校庭の土を掘ってみる
もう掘ることはないと思っていたんだが
また思い出してしまいそうだ
小杉、岸部、岸本、坂上、島田、大沼、酒井、畠山.......
..................
....................................
思い出せなかった
あと一人がいたはずなんだ
あと一人
あと一人
8月14日
アナウンスが流れた
「8月の19日、大雨が予測されます、お住まいの方は堤防や濠を深くするなどして、対策を行ってください」
とのこと
この学校は大丈夫だと思うが、一応明日やろうか
8月10日
なにやら下で騒ぎが起こっていた
ボートギャングが学校に残る食料を求めてきた
うるさかった
面倒だと思いながら、2か月前に作ったトラップを作動させた
もう処理をするのも面倒になった
7月30日
半月ぶりの文通だった
感動して泣いてしまった
今でも私のことを覚えていてくれていることが、なにより感動した
7月27日
今日は私の誕生日だった
今日の日を楽しみにしていた
39年物のワイン「ヴァン・サザリヴァイ」を開けた
私以外に飲む人がいないのが残念だが
この上物を一人で楽しむことができるととらえておこう
今日の晩に畠山が死んだ
7月26日
いよいよ明日、明日になれば「ヴァン・サザリヴァイ」が飲める
これほど待ち遠しい誕生日は久しぶりだ
畠山の症状が悪化している
7月24日
畠山が倒れた
やっとかと思う気持ちを抑えながら
理科室に運び込んだ
これで7体
あと2体で揃う
7月23日
あんなにうるさかった畠山が意識を失ったのか、静かになった
私は音楽室にあったレコードを取り出し、かけた
優雅な昼下がりであった
7月19日
大林東小学校から「畠山幸之助」という男がやってきた
最初は断ろうとした
この学校でないからな
しかし、あんまりにも弱弱しく泣くもんだから
条件付きで、監禁させてもらった
弱った人間をいたぶるのは趣味ではないんだがな
おかげで探す手間が省けた
7月18日
大林東小学校が沈んだ
昨日は屋上にある、学校のシンボルである時計がついに沈んだ
ここももう限界か
7月16日
ゆっくりとだが、水位が上昇している
また上昇が始まった
昨日は、前日比0,1cm程度だったのに
今日だけで2㎝も上昇している
7月10日
これで八人目
岸本
問題児だった
学校の窓ガラスを何枚割ったことか
最後まで抵抗しているさまは、見ていて楽しかった
しかし、学校に残る児童はもういなくなってしまった
あと三人、どうすればいいのやら
7月9日
「マジで近づくんじゃねぇ!!!」
「..................」
大沼友進
一体どこに隠れていたんだ
この二か月もの間、坂上が口を割らなければ、存在すら知らなかったのに
「もったいないことをしたんじゃないか?」
「うるせぇ!まじで近づくと、これでぶっ殺すからな!」
大沼のその小さな手には、拳銃が握られていた
その拳銃は小杉、岸部、花崎、坂上、島田を殺した拳銃だ
島田を殺し終えた瞬間、酒井に銃を取られてしまったんだ
酒井はすぐ捕まえたが、拳銃は大沼にパスされてしまった
「あぁ、すまない、すまない、これ以上は近づかないよ」
「よくも.......よくも.......」
その目には怒りしか込められていない
その拳銃には弾が入っていないというのに
「なんでこんなことした!」
「動機が気になるのか?ガキのくせに」
「殺すぞ!!!」
大沼が一歩近づき、脅しをかける
「おーおー悪かった、動機が気になるんだな?」
「.......そうだ」
「そうだな」
私は大きく一歩踏み出し、大沼との距離を詰める
「てっ、てめぇ!!!」
銃に力を籠める
トリガーに手をかけ、何回も引く
しかし
弾は出ない
「なっ、なんで!なん…」
大沼の服の襟をつかみ、天井高くまでで持ち上げる。
「私が殺しをする理由か?」
単純だ
高畑製薬を知っているだろうか
第二次世界大戦の混乱の中で人体実験を行い、被験者六名を死亡させた
さらに事件を隠ぺいするため、事件現場を学校にして責任を逃れた悪名高き会社だ
私はその人体実験に深く感銘受けた
前回、実験を行ったのは6人であったが、9人で行うことで成功すると私は考えた
さらに、成長しきった成体の人間ではなく、まだ発達途中である乳児、あるいは子供をつなぎ合わせることで、成長の過程で互いの体が馴染み、死ぬことのない、完璧な人間になるのではないかと考えた。
そのため、まずはこの学校の事務員を選んだ
学校は正直何でもよかったのだが、たまたま高台の上にあったので、この水害から身を守りつつ、計画を進めることができた
「わかったかな?」
「わかるかよ.......そんなの!」
「そうか」
「じゃあ死ね」
他の生徒たちが並ぶ理科室に、両手を鎖でつなぎ、上半身だけを吊って並べる
「これで6人~」
残るは岸本なのだが、岸本はいまだに抵抗を続けている
理解できない
そうだ、日記を書いておこう
何かあった日のために
「今日は確か7月の.......」
7月9日
こんな危機的状況、逃げ場も水にふさがれているこの状況でなぜ逃げ出さないのか
どうして諦めてくれないのか
私には依然として理解できない
それにしても、岸本を含めたとしても、9人にはあと二人足りない
文通をくれる森が9月の3日にボートを使ってやってくると言っていたのだが、あと一人だ
さてどうしたものか
6月29日
残るは岸本、酒井、島田、花崎なのだが、もう正直諦めてくれないかな
そう思えてくる
6月28日
やった
やったぞ!
小杉を仕留めた
調子がいい、一か月の間、なかなか仕留めきれなかったのだが
これで二日連続だ
調子がいいぞ......
この調子でいけば..................
6月15日
はじめて人を手にかけた
気分が悪い
少し眠ろう
あと7人
あと7人だ
7人で済むんだ
そうだ、7人
7人
6月14日
手の震えが止まらない
今日、殺そうとした
けど止まってしまった
視界がぐるんと回転しだした
全身がだるい
体調が悪いのか......?
そうじゃない
いや、抑えるんだ
抑えるんだ
6月1日
豚汁がなくなった
5月19日
パンがなくなった
5月18日
限界が近い
5月17日
目的を見失うな
5月16日
目の前のものは野望のための材料だ
5月15日
俺の身を削るのも、限界がある
5月14日
ボートギャングがやってきた
タンパク質だ
子供達には食べさせられない
何かあってはいけないからな
5月13日
島田雄介君からヒトデの粘土をもらった
可愛いと思ってしまった
5月12日
今日は体調が悪く、寝込んでしまった
子供たちが、一緒にいてくれた
少し揺らいだ
俺の心の中に、何かが邪魔をしている気がした
5月10日
俺がこの子の親代わりであり、最後に接する大人だということに気づいた
5月5日
折り紙って難しいな
5月1日
子供たちと運動場で遊んだ
久しぶりの晴れだったので、みんな楽しそうだった
4月29日
岸本君と大沼君がけんかしていたので、仲裁に入った
俺もこんな時期があったなと少し涙
4月22日
雨が降るたび、みんな震えている
不安がっている
覚えているんだ
3か月ほどたったといえど、心には傷が残っている
その傷を俺がほだすことができたのなら
俺に何かできることがあれば
4月11日
前回使っていた日記が使い終わってしまったので、新しいノートに書くことにした
このノートは事務用のノート、濡れていなくてよかった
9月2日
これで揃った
やっとそろった
私の顔を見るまに衰弱死してしまったのはいささかかわいそうではあるが
仕方ない
これで儀式にとりかかる
私の悲願がついに叶う
9月3日
水が引いていく
いや違う、逆行している
時間が、世界が、なにもかもが
実験は成功した、確かに成功した
歩いた、人語を理解できた、人語で意思疎通ができた
私の命令に反応もしたのに......!
それなのに..................!
神罰だというのか、
この水害のように..................
戻りたくない…!
戻りたく..................
1月21日
この日、未曽有の大災害が日本のみならず、地球を襲った
海水面は急激に上昇し、都市圏はほぼ壊滅
地面を歩くことは、山の上でないと叶わないほど
この災害の直接的な原因はわかっていない
というか、それを調べる研究者が全員死んだ
それほどだった
津波が起きたというものいれば
水の塊がドッと降ってきたという人もいる
これで進む
そう確信した
私が叶えたかったものが、実現できるかもしれない
そうしたあとで、この災害の原因についてあれこれ言うのも悪くないだろう
しかしこんな状況でも、都市伝説というのは止まない
「この水は過去に死んでいった者たちの血である」とかね
「人類は過ぎた力を持ちすぎたことにより、神様が怒った」とか
もし神々が私たちに怒って水害を起こしたのなら、もういいよね
今私が何をしたって
4月11日
前回使っていた日記が使い終わってしまったので、新しいノートに書くことにした
このノートは事務用のノート、濡れていなくてよかった
4月22日
雨が降るたび、みんな震えている
不安がっている
覚えているんだ
3か月ほどたったといえど、心には傷が残っている
その傷を俺がほだすことができたのなら
俺に何かできることがあれば




