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神々は適切な罰を与える

作者: 澤西雄二郎
掲載日:2026/11/01

「先生!」

「おぉ、ゆうすけ君、どうしたんだい?」

「これみて~」

「おぉ、これは綺麗なヒトデだな」

「すごいでしょ~」

「あぁ、すごいな~」


私の目の前ではしゃぐ少年を、手にかけた

「先生!」

「おぉ、ゆうすけ君、どうしたんだい?」

「これみて~」

「おぉ、これは綺麗なヒトデだな」

「すごいでしょ~」

「あぁ、すごいな~」


9月2日

ついに沈む

ゆっくりと、飲み込むように水が進んできた

これはどうしようか

風船にでも括り付けておこうか

私なりの抵抗だ

どうか私よりも生きてくれよ


8月30日

校庭にも水が入ってきた

この学校に残るのは私だけなので関係ないのだがな

入り口にバリケードをしいてみよう


8月21日

食料が尽きて二か月

空腹感は不思議としなくなった

死が近いからだろうか

もうすぐ丘も越えるであろう


8月19日

また雨だ

雨が降るたび心配になる


8月18日

雨雲が迫ってきている

どす黒い雨雲だ

これは強い雨が降るかもしれない

一応傘を探しておこう


8月15日

校庭の土を掘ってみる

もう掘ることはないと思っていたんだが

また思い出してしまいそうだ

小杉、岸部、岸本、坂上、島田、大沼、酒井、畠山.......

..................

....................................




思い出せなかった

あと一人がいたはずなんだ

あと一人

あと一人


8月14日

アナウンスが流れた

「8月の19日、大雨が予測されます、お住まいの方は堤防や濠を深くするなどして、対策を行ってください」

とのこと

この学校は大丈夫だと思うが、一応明日やろうか


8月10日

なにやら下で騒ぎが起こっていた

ボートギャングが学校に残る食料を求めてきた

うるさかった

面倒だと思いながら、2か月前に作ったトラップを作動させた

もう処理をするのも面倒になった


7月30日

半月ぶりの文通だった

感動して泣いてしまった

今でも私のことを覚えていてくれていることが、なにより感動した



7月27日

今日は私の誕生日だった

今日の日を楽しみにしていた

39年物のワイン「ヴァン・サザリヴァイ」を開けた

私以外に飲む人がいないのが残念だが

この上物を一人で楽しむことができるととらえておこう

今日の晩に畠山が死んだ


7月26日

いよいよ明日、明日になれば「ヴァン・サザリヴァイ」が飲める

これほど待ち遠しい誕生日は久しぶりだ

畠山の症状が悪化している


7月24日

畠山が倒れた

やっとかと思う気持ちを抑えながら

理科室に運び込んだ

これで7体

あと2体で揃う


7月23日

あんなにうるさかった畠山が意識を失ったのか、静かになった

私は音楽室にあったレコードを取り出し、かけた

優雅な昼下がりであった


7月19日

大林東小学校から「畠山幸之助」という男がやってきた

最初は断ろうとした

この学校でないからな

しかし、あんまりにも弱弱しく泣くもんだから

条件付きで、監禁させてもらった

弱った人間をいたぶるのは趣味ではないんだがな

おかげで探す手間が省けた


7月18日

大林東小学校が沈んだ

昨日は屋上にある、学校のシンボルである時計がついに沈んだ

ここももう限界か


7月16日

ゆっくりとだが、水位が上昇している

また上昇が始まった

昨日は、前日比0,1cm程度だったのに

今日だけで2㎝も上昇している


7月10日

これで八人目

岸本

問題児だった

学校の窓ガラスを何枚割ったことか

最後まで抵抗しているさまは、見ていて楽しかった

しかし、学校に残る児童はもういなくなってしまった

あと三人、どうすればいいのやら


7月9日


「マジで近づくんじゃねぇ!!!」

「..................」

大沼友進

一体どこに隠れていたんだ

この二か月もの間、坂上が口を割らなければ、存在すら知らなかったのに

「もったいないことをしたんじゃないか?」

「うるせぇ!まじで近づくと、これでぶっ殺すからな!」

大沼のその小さな手には、拳銃が握られていた

その拳銃は小杉、岸部、花崎、坂上、島田を殺した拳銃だ

島田を殺し終えた瞬間、酒井に銃を取られてしまったんだ

酒井はすぐ捕まえたが、拳銃は大沼にパスされてしまった

「あぁ、すまない、すまない、これ以上は近づかないよ」

「よくも.......よくも.......」

その目には怒りしか込められていない

その拳銃には弾が入っていないというのに

「なんでこんなことした!」

「動機が気になるのか?ガキのくせに」

「殺すぞ!!!」

大沼が一歩近づき、脅しをかける

「おーおー悪かった、動機が気になるんだな?」

「.......そうだ」

「そうだな」

私は大きく一歩踏み出し、大沼との距離を詰める

「てっ、てめぇ!!!」

銃に力を籠める

トリガーに手をかけ、何回も引く

しかし

弾は出ない

「なっ、なんで!なん…」

大沼の服の襟をつかみ、天井高くまでで持ち上げる。

「私が殺しをする理由か?」

単純だ


高畑製薬を知っているだろうか

第二次世界大戦の混乱の中で人体実験を行い、被験者六名を死亡させた

さらに事件を隠ぺいするため、事件現場を学校にして責任を逃れた悪名高き会社だ

私はその人体実験に深く感銘受けた

前回、実験を行ったのは6人であったが、9人で行うことで成功すると私は考えた

さらに、成長しきった成体の人間ではなく、まだ発達途中である乳児、あるいは子供をつなぎ合わせることで、成長の過程で互いの体が馴染み、死ぬことのない、完璧な人間になるのではないかと考えた。

そのため、まずはこの学校の事務員を選んだ

学校は正直何でもよかったのだが、たまたま高台の上にあったので、この水害から身を守りつつ、計画を進めることができた


「わかったかな?」

「わかるかよ.......そんなの!」

「そうか」

「じゃあ死ね」



他の生徒たちが並ぶ理科室に、両手を鎖でつなぎ、上半身だけを吊って並べる

「これで6人~」

残るは岸本なのだが、岸本はいまだに抵抗を続けている

理解できない

そうだ、日記を書いておこう

何かあった日のために

「今日は確か7月の.......」


7月9日

こんな危機的状況、逃げ場も水にふさがれているこの状況でなぜ逃げ出さないのか

どうして諦めてくれないのか

私には依然として理解できない

それにしても、岸本を含めたとしても、9人にはあと二人足りない

文通をくれる森が9月の3日にボートを使ってやってくると言っていたのだが、あと一人だ

さてどうしたものか


6月29日

残るは岸本、酒井、島田、花崎なのだが、もう正直諦めてくれないかな

そう思えてくる


6月28日

やった

やったぞ!

小杉を仕留めた

調子がいい、一か月の間、なかなか仕留めきれなかったのだが

これで二日連続だ

調子がいいぞ......

この調子でいけば..................


6月15日

はじめて人を手にかけた

気分が悪い

少し眠ろう

あと7人

あと7人だ

7人で済むんだ

そうだ、7人

7人


6月14日

手の震えが止まらない

今日、殺そうとした

けど止まってしまった

視界がぐるんと回転しだした

全身がだるい

体調が悪いのか......?

そうじゃない

いや、抑えるんだ

抑えるんだ



6月1日

豚汁がなくなった


5月19日

パンがなくなった


5月18日

限界が近い


5月17日

目的を見失うな


5月16日

目の前のものは野望のための材料だ


5月15日

俺の身を削るのも、限界がある


5月14日

ボートギャングがやってきた

タンパク質だ

子供達には食べさせられない

何かあってはいけないからな


5月13日

島田雄介君からヒトデの粘土をもらった

可愛いと思ってしまった


5月12日

今日は体調が悪く、寝込んでしまった

子供たちが、一緒にいてくれた

少し揺らいだ

俺の心の中に、何かが邪魔をしている気がした


5月10日

俺がこの子の親代わりであり、最後に接する大人だということに気づいた


5月5日

折り紙って難しいな


5月1日

子供たちと運動場で遊んだ

久しぶりの晴れだったので、みんな楽しそうだった


4月29日

岸本君と大沼君がけんかしていたので、仲裁に入った

俺もこんな時期があったなと少し涙


4月22日

雨が降るたび、みんな震えている

不安がっている

覚えているんだ

3か月ほどたったといえど、心には傷が残っている

その傷を俺がほだすことができたのなら

俺に何かできることがあれば


4月11日

前回使っていた日記が使い終わってしまったので、新しいノートに書くことにした

このノートは事務用のノート、濡れていなくてよかった






9月2日

これで揃った

やっとそろった

私の顔を見るまに衰弱死してしまったのはいささかかわいそうではあるが

仕方ない

これで儀式にとりかかる

私の悲願がついに叶う






9月3日

水が引いていく

いや違う、逆行している

時間が、世界が、なにもかもが

実験は成功した、確かに成功した

歩いた、人語を理解できた、人語で意思疎通ができた

私の命令に反応もしたのに......!

それなのに..................!

神罰だというのか、

この水害のように..................

戻りたくない…!

戻りたく..................






1月21日

この日、未曽有の大災害が日本のみならず、地球を襲った

海水面は急激に上昇し、都市圏はほぼ壊滅

地面を歩くことは、山の上でないと叶わないほど

この災害の直接的な原因はわかっていない

というか、それを調べる研究者が全員死んだ

それほどだった

津波が起きたというものいれば

水の塊がドッと降ってきたという人もいる

これで進む

そう確信した

私が叶えたかったものが、実現できるかもしれない

そうしたあとで、この災害の原因についてあれこれ言うのも悪くないだろう

しかしこんな状況でも、都市伝説というのは止まない

「この水は過去に死んでいった者たちの血である」とかね

「人類は過ぎた力を持ちすぎたことにより、神様が怒った」とか

もし神々が私たちに怒って水害を起こしたのなら、もういいよね

今私が何をしたって



4月11日

前回使っていた日記が使い終わってしまったので、新しいノートに書くことにした

このノートは事務用のノート、濡れていなくてよかった




4月22日

雨が降るたび、みんな震えている

不安がっている

覚えているんだ

3か月ほどたったといえど、心には傷が残っている

その傷を俺がほだすことができたのなら

俺に何かできることがあれば

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