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ミニスカ・アルゴリズム ~マナカの情報技術試験と幼馴染ハルの脆弱性~  作者: 滝川 海老郎


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第12章2 初詣とファーストショット

 さて今年も散々なクリスマスを過ごし、数日。

 あっという間に正月になった。

 今年も、俺たちは明日田神社へ参拝に向かった。

 駐車場はいっぱいになり、道には徒歩で参拝に向かう人であふれている。

 これでもコロナになってから分散参拝が呼びかけられていて人が減っていた。

 それでも正月に限っては、この人だかりで、人気がうかがえる。

 地元密着の神社は、やはり有難味が違うのだろう。


 コンクリートの鳥居をくぐり、砂利道を歩いていく。

 サクラとケヤキはすっかり葉が落ち、今は枝だけになっている。

 その下を参拝客たちが次々と移動していくのが見える。

 俺たちもその流れに沿って移動する。


 ナカチュウとミウ、それからカナエちゃんも合流していた。

 着物は着ていないが、みんなダウンジャケットにトレーナーみたいな格好だ。

 しかしハルは今もミニスカートだ。

 ミウはジーパン、カナエちゃんはホットパンツにニーソックスといういで立ちだった。

 特にハル、足は寒くないのだろうか。生足がそのまま冬の空気に晒されている。

 俺だったら寒くて震えそうだけど、女子の気力はすごいのだろうか。

 別にオーラとかは見えないけどと、じっと見てたらハルがちらっとこっちを向くので、さっと視線を外す。

 なんだか見てはいけない気がしたのだ。

 俺たちも微妙なお年頃だった。特にこの前のクリスマスの夜を過ごしてから。


「トウマ君、ホットパンツ好きだもんね」

「まあな、ちゅ」

「ちゅ」


 さっそく手を繋いだまま、キスを始めるトウマとカナエちゃんを見て、俺たちは目を見張る。

 この前の二人っきりのクリスマスでさえ、肩を寄せ合っているのが限界で、キスすらしていないというのに。

 このままだと俺たちがおかしいことになってしまう。


「お前ら……」

「マナカ先輩、実行あるのみですよ」

「なんだそれは」

「奥手とか言ってるうちに、横から取られちゃいますよ」

「そんなバカな」

「クラスメートの中にもハルちゃん狙てる人、何人もいるって知らないんですか?」

「そうなのか、トウマ、カイ」

「まあ、そうだけど、なあトウマ。そろそろ観念したらどうだ」

「観念といわれましても。俺たちはこういうのだし」

「そこが甘いんだよ」

「カイもそういうのか?」

「え、ああ、まあ、そうだな」


 カイはちゃっかりミウといちゃついており、話を聞いていなかったらしい。

 もしかしてカイとミウのほうが、俺とハルより進んでいるのか。

 そんな話、聞いていなんだが。

 ちょっと焦る。ヤバいのはやっぱり俺とハルのほうなのか。


 列がさばけて、賽銭箱の前に到着した。

 今日も礼儀作法にのっとり、二礼二拍手一礼をして、五百円玉を投げる。


 パンパン。


 よしこれで今年も安泰だな。

 家内安全、交通安全、元気が一番。

 それからハルといい感じになれますように。よろぴっぴと。


 ああ、お願いは心の中でひっそりするもんだと思っている。

 口に出してはいけない。

 幸せが逃げてしまうからね。もちろん俺が勝手に思っているだけだが。


 みんなも無事にお参りを終わり、反転して帰り道の流れに沿って移動する。


「んじゃ、行きますかね」


「トウマ君」

「カナエちゃん」

「んっ」

「んんっ」


 相変わらずな二人をよそにハルのほうを見る。

 俺とハルは一緒に並んで道を戻っていく。

 どちらかともなく手が当たり、そのままそっと手をつないだ。

 はじめての恋人つなぎだった。


「はぐれちゃうと困るもんね」

「ああ」


 言い訳だと言われてもいい。

 だって俺たちは手をつなぐ関係になったんだから。

 これはただの幼馴染じゃないんだ。

 幼馴染も手はつなぐかもしれないけど、こういうつなぎかたはしない。

 そういう決意表明であり、俺たちのまずは大事な一歩だった。


「じゃあな、また今度。学校で」

「ばいばい」


 カイとミウ、トウマとカナエちゃんたちが順番に列から離れ、それぞれ帰っていく。


「んじゃ俺たちも家に帰りますかね」

「うん。家が近所でよかったぁ」

「まあ、越してきたのが先で、それで幼馴染やってるからな」

「そだよね。でも家が近所になったのが運命だったんじゃん」

「そうかもな」


 俺とハル。二人で道を歩いて行く。

 家まではそれほど離れていない。

 しばらく無言だったがどちらともなく、普通の世間話をしていた。

 俺たちはこういうものだった。

 ハルの家の前に到着した。


「じゃあまた。あけましておめでとう。また今度。今年もよろぴっぴ」

「ああ、よろしく」


 俺が家に帰ろうと、振り返ろうとした瞬間、服の袖をつかまれていた。


「どうした?」

「んっ」


 ハルが急に顔を近づけてくる。

 そっと、目をつぶり、また開いた。

 それが超スローモーションみたいに見えてくる。

 まつ毛が長い。瞳は輝いていて、黒目が綺麗だ。

 頬は赤くなり、丸い顎のラインはどこかまだ幼さと女性的なラインで、かわいらしい。

 俺の好きな亜麻色の髪が風になびいて、カールが揺れる。

 耳は寒いからか赤くなっているのがここからでも見える。

 少し上を向いて、プリッとした唇が見える。

 その唇がほんの少し、前に出てくる。

 そして目を完全に閉じたのだ。


「んっ」

「んっ……」


 俺は直観的に理解した。キス待ちの顔だ。

 頭の中は完全にホワイトアウトして、自慢のコンピューター用語比喩さえ思いつかない。

 顔を吸い込まれるように近づけていって、その距離はついにゼロになった。


「ちゅっ」

「ちゅっ、んん」


 唇が重なる。思った以上に柔らかくて動揺する。

 でもその感覚はわずか数秒で、俺たちはどちらかともなく離れていく。


「じゃあね!」

「ああ」


 ハルが走って家の中に逃げていく。

 俺はさすがに追いかけることができずに、その場に棒立ちになっていた。


「しちゃったか。ファーストキス」


 俺の独り言を聞いた人はいないだろう。

 さっと周りを見るが、人影はない。

 そっと胸をなでおろし、ドキドキし始めた心臓をなだめて家に逃げるように帰った。

 幼馴染として固定化されていた長年の「脆弱性バグ」が初めてのキスでデバッグされた瞬間だった。


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