第9章2 IT展示会エキシビジョン
俺氏、風邪から完全回復。
「これもそれも、ハルおかげだよ」
「えへへ、うれしい」
「だな。俺も風邪から復活して、うれしいよ」
「だよねぇ、にやにや」
「口でにやにやって言うかよ」
「だってぇ……」
俺たちはいちゃついていた。
別にそうするつもりだったわけではない。経緯はこうだ。
俺が風邪でダウン、落ち込んでいたところ、ナカチュウがIT展示会イベントに誘ってくれたのだ。
そこで俺とハルが一緒に開場前に到着。
ところが待ってもナカチュウとミウがやってこない。
「なあ、あいつら遅いよな」
「ホントだね」
「ワザとじゃないのか、俺たちを二人っきりにさせるつもりで」
「どうなんだろう。チャットで聞いてみる」
「頼んだ」
「任せてくだサインシータ」
「草」
ハルがバシッとダサいセリフを言いながら敬礼してくるので、笑ってしまった。
早く来てくれ。中のイベントが見たい。
IT展示会には様々なものがある。
新しい商品、開発中で来年、再来年あたりに発売になる予定のものまであった。
こういう情報って意外とネットでもあまり話題にならず知られていないことも多い。
特に今は生成AIを応用した、様々なものが飛び交っている。
もちろん色々と注意はしなければならないが、産業界が期待しているのは事実だ。
無線ラン規格もさらに次が出てきており、各社から新作のお知らせが発表されていた。
有線のギガビットイーサ系には敵わないところだが、どんどん速度も向上していく。
セキュリティー面も昔よりかなり強化されている点も興味深い。
いままでは夢物語だと思っていたことが、現実化してきているのを目の当たりにすると、うれしいのと同時にショックでもある。
SFに現実が追い付くというのが生きている間に起きるなんて想像しがたいが、そういう時代に生きているんだなというのを噛み締めた。
「どうだった、マナちゃん」
「おおむね、よかったよ」
「そうなんだぁ」
「おう。ハルは?」
「わたし? 私はうんと、コンパニオンの子がかわいかった」
「そっちかよ」
「うひひ」
確かにこういうイベントでは女の子が教えてくれたりしてうれしい。
しかも妙なコスプレみたいな服を着ている子もいる。
そういうお姉さんがガチで教えてくれたりするので、俺はうれしい。
やっぱり知識欲は重要だな。
俺は充実感に満たされて、会場を後にした。
ナカチュウとミウと俺とハル。
会場を後にした俺たちは、カラオケ店に来ていた。
「何、歌うかな」
「俺はアイスコーヒー」
「それは飲み物だろ」
「ういうい」
おのおの気合を入れて店に入る。
「私はね、コーンポタージュ」
「いいね。私もそうしよっと」
ハルとミウはコーンポタージュか。
あれ地味に美味いんだよな。
甘さと塩味もあって、あったかくてホッとする。
コーンの風味が効いてて美味いんだ。
俺もコーヒー飲み終わったらそうしよ。
「いっちばーん」
「おお、カイはアニメソングか?」
「もちろんでござる。他は歌えないでござるよ」
「だよな」
カイは二次元オタクだが、メインはアニメだ。
流行の人気曲はキャッチーなものが多い。
意外と街中で流れていたり、俺もたまに聞いたりするので、知っている曲が多い。
今は公式動画もネット動画サイトで公開されていることが多いので、そういうのをたまにBGMにしたり、がっつり見たりするのだ。
俺だって年中プログラミングと小説書いて、情報技術試験の勉強だけしているわけではないのだ。
「トウマは七森ナナカだよな」
「当たり前だろ」
「あはは」
「一曲でも多く歌って、印税に貢献しなければ」
「そういう」
「スパチャしてるから別にいいんだけどな、一応ファンなので」
「お前もよくやってるよ」
七森ナナカはVtuberというやつで、トウマの推しだ。
容姿はシマリス風の女の子で、歌が抜群に上手い。
その歌唱力で以前は歌ってみたをやっていたのだが、今はその実力が買われてプロの事務所に誘われてプロジェクトに参加している。
可憐オンプ・プロジェクトだったかな。
そこでオリジナル曲を何曲かヒットさせていて、今ブイブイ言わせている人物の一人だろう。
トウマはその七森ナナカのファンの古参なのだ。
今日は恋人のカナエちゃんは部活だそうだ。
あのラブラブチュッチュ攻撃がないだけで、俺たちは助かる。
ちょっと心臓に悪いからな。
『先輩たちはキスもしないんですか?』
ガチ質問にもタジタジの俺たちだったのを思い出す。
ちょっと俺たちには荷が重いかなぁ。あははははははははは。ふぅ。
俺だって歌える曲はある。
昔のアニメの定番曲だけじゃないぞ。
合成音声のキャラの曲や最新の有名アニメ曲、Vtuberのオリジナル曲、そういうネット音楽文化を何曲もヘビーローテーションしたこともある。
伊達にパソコンオタクをしていたわけではない。
プログラミングとかしていると単曲リピートとか作業用BGMとか、そういうのを聞きながら作業することもあるのだ。
もちろん気分によって変えるけど、その辺は好みだろうか。
俺はコーンポタージュを飲んだ後、アイスコーヒーをお代わりした。
カラオケは進んでいき、色々な歌を歌う。
ミウとハルのデュエット曲なんかは特に楽しそうで、俺も盛大に拍手した。
こういうのも青春かもしれない。
ただ、他のメンバーとかクラスメートの陽キャと一緒だったらと思うと、ちょっと遠慮したい。
このメンバーだから俺たちは歌ったりできるとは思う。
曲の趣味とかも全然違いそうだしな。
俺の隣にはハルが座っていている。
ハルも声は可愛いほうだし、俺の好みだし、歌もうまい。
気が付けば、アイスコーヒーの氷が解け、水になっていた。
今度はジンジャーエールにしよう。そう思って席を立つ。
「あ、私も」
「一緒に行くか?」
「うん」
ハルと一緒にお代わりを貰いに行く。
ここもセルフサービスだ。
昔は注文する店が多かったと聞くが、コスト削減でセルフの店も増えた。
俺たちの時代では当たり前のファミレスのドリンクバーもそういう変化の一つらしいね。
世の中はちょっとずつ変わっていくらしい。
そんな俺の体調もちょっとずつ変わっていた。
喉も若干痛い気がする。普段使わない筋肉なので、弱っているのだろう。
どこの筋肉もよわよわなので、まったく、困ったものだ。
俺たちはこうしてリア充みたいに、カラオケをしたのだった。




