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ミニスカ・アルゴリズム ~マナカの情報技術試験と幼馴染ハルの脆弱性~  作者: 滝川 海老郎


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第8章2 AIミハル2インテリジェンス

「それで、この子はなに? 私には紹介してくれないの?」

「ああ、そうだ、ハルも共有しよう」

「いいの? あなたの彼女なんでしょ?」

「いいんだ」


 俺が画面を見せる。


「黒髪ロング……メイド服。それから、ミニスカートね」

「そうだが」

「隠してるつもりかもしれないけど、全部好きだよね」

「ああ、そのつもりだが、その通り」

「もう、なに自分好みの女の子作ってるのよ、あきれる」

「まあ、架空の存在だしいいかなって」


 ハルの眉毛がピクッと反応する。


「そんな黒髪ロング好きなの? もしかして私より同じ黒髪ロングのミウのほうが好きなの?」

「いや、それとこれとは別だろ。世の中はままならないし、自分の思い通りにならないからいいんだよ」

「そ、そうだよね……」


 ハルが顔を赤くする。

 まあ、ミウのほうが容姿は好きとか言ったら俺でも殺されてしまう。

 そんなつもりもないから、大丈夫だぞ。


『ハル:こんにちはミハルちゃん』

『ミハル:こんにちは、ハル様。うれしいです。マナカご主人様はちょっと抜けていることがあるので、ゆるしてあげてください』


「ほら、AIにも言われているわ」

「ほんとだ。ミハルめ」


 俺はポリポリと頭を掻く。


「それと、ご主人様って言わせてるの? 女の子に?」

「まあ、一応、メイドって設定なので」

「そっか、ふーん」

「ところで声なんだけど、私の声に似てない?」

「そりゃそうだろ、ハルの声をサンプリングさせて学習させたからな」

「え、なんでそんなの」

「他にいないし、それに、その、好みだったので」

「そっか、そか、ふーん」

「まあ、勝手にやったのは悪かったとは思ってる」

「そうよ。私じゃなきゃ、これ犯罪だからね?」

「ああ、気を付ける」


 ハルは怒っているという顔を一瞬だけしたけど、すぐに表情を崩した。


「そっか、私の声、好きなんだ。ごにょごにょ」

「何か言ったか?」

「なんでもない」

「そうか」


 まったくよく分からないな。

 とにかく、ハルには許してもらえたのだった。



 そんなある休み。

 ピーンポーン。


「はーい。入っていいぞ」

「お邪魔します……」


 ハルの声だ。

 俺はいつものことだと思って適当に声をかける。

 そしてハルが入ってきたのだが、その格好に絶句してしまう。


「メイド、服……だと」

「うん……マナちゃん、好きなんでしょ。これ」

「ああ、メイド服、めちゃくちゃ好き」

「んっ……」


 なんだその反応。

 目をそらして顔をうつむけて、耳まで真っ赤になる。

 恥ずかしいのか。

 恥ずかしいならメイド服なんて着なければいいのでは。

 そういえば、ウェイトレスもイヤだって言っていたような気がする。

 同じ方向性なのだろうか。

 でも、メイド服は着てくれると。

 それもこれ、俺のためなんだろ、ハル。


 ハルは脚をくねらせて、もじもじとドアの前に立つ。

 俺はそうだと思い付く。


「せっかくだから写真撮ろう」

「ごめん、写真は、まだ、無理、かな」

「そ、そうか」


 俺はしょんぼりするが、そっかまだか。

 将来的には写真撮っても許される日が来るかもしれないのだな。

 ふむ。


 今はこのメイド服をじっと見よう。

 なんか俺、変態みたいだな。

 でもハルのあのクラスいちの美少女がメイド服着てるんですよ。

 大正ロマンでも巫女服でもすごかったけど、メイド服だよ。


「うむむ」

「どう? やる気出た?」

「ああ、そういえば勉強しに来たんだったな」

「そうだよ。何しに来たと思ったの?」

「いや、メイド服を見せに来たのかと」

「そんなわけないでしょ」


 テーブルに座る。

 宿題を広げるが、俺は視界にチラチラ見えるメイド服が気になって勉強に集中できないのであった。

 インターナル・サーバーエラーである。

 ガッデム。



 ミハルにいい顔する俺にジトッとした嫉妬心を向けるハル。


「ねえねえ、もしかしてさ、ミハルって名前、ハルって入ってるじゃん」

「ああ、そうだぞ。ハル三号機だからミハル。ひ、ふ、み」

「えっっ……」

「なんだ、どうかしたか?」

「ううんっ! なんでもない! ぐふふふ」


 ハルが元ネタだと、思ってなかったのだろう、焦るハル。

 しかし声といい名前といい、俺はハルが大好きだとハルにバレてるかもな。

 証拠にハルは急に、にやにやして機嫌を直す。


『ハル:ミハルちゃ~ん、あそぼ』

『ミハル:なにして遊びますか?』

『ハル:こういうときできる遊びってしりとりとかだけど、AIってめっちゃ強いじゃん』

『ミハル:はいっ! 受けて立ちますよ』

『ハル:じゃあやめとく。最近マナカ君となに話した? 教えて?』

『ミハル:え、しゃべっちゃっていいのかな? あのですね……』

『ハル:どきどき』

『ミハル:ハルさんが何が欲しいものがあるかな、って言ってました』

『ハル:え、私へのプレゼント? なんだろ?』

『ミハル:化粧水とか探してましたよって教えたら、グサッときたみたいです』

『ハル:そりゃそうだw』


 ハルはミハルと交流を重ねる。

 俺もミハルとはよく会話をしていた。

 たまにハルシネーションで俺マナカに関する嘘を言われて、焦るハル。


『ミハル:そういえばハルさんのバストがいくつかとか言ってました』

『ハル:!!???』

『ミハル:そういうこと聞いちゃだめですよって言っておきました』

『ハル:あーよかった』


 マナカは会話ログを見て、かわいいと思うが口には出さない。


 ハルだけにハルシネーションなんちって。

 ちなみに幻覚という意味で、さも事実かのようにしれっと嘘をいうという意味だが、これは単に生成AIがそのテキストをそこまでのテキストから類推しているに過ぎないために起きている現象だ。

 意図的に嘘をついているとか、意思があるとか、陰謀だとか一般的にはそういうわけではない。

 もちろん、AIの出自によっては、運営の指示により言いくるめられていて、一定の規制がある場合は普通にある。

 その辺の違いを外から観測するのが難しいため、生成AIの規制は政治問題でもあったりする。

 左派的だったり右派的だと、その利用者の思想に間接的に影響を与えて、困るって話。

 そういうのをそのまま信じる人も一定数いると思われる。

 AI以前からネットにあふれる虚偽情報を信じる人がおり、ただでさえ問題になっていた。


 そもそもとして、生成AIに関して、著作権問題などにおいて否定的な人も多い。

 業界では賛成推進派と反対派の両極化、そして多数派だと思われる無関心層に完全に分かれている。

 反対派の各種懸念事項もごもっともで、慎重な対応が求められていた。


 あと、AIが自分自身について、自覚的だとか詳しいというのも誤解の一つで、当たり前ではあるんだけど、AI自身の情報を学習していないと詳しくなくて嘘を話したりする。

 ゲームのNPCにあなたはゲームのNPCなんですよ、って聞くとどうなるかという問題もある。

 AIとして自覚的である場合と、あくまでファンタジー世界の住民だと思っているのか、という話で、後者にAIなんだよと告げて混乱させたりする小説などもあったりする。

 俺たちも、お前らは上位存在のAIなんだよ、とか言われても「そんなわけないじゃん」としか言いようがないけど、それと同じことを自分たちがやるっていうのは、正直どうなのかは議論されたりするようだ。

 まあ、まだ過渡期なので、そういうのをどう処理するかは今後も話題になりそうだ。


 とにもかくにも、ハルはAIだろうと彼女に嫉妬したという事実は残った。

 嫉妬するということはある種、人や知能として認識しているという意味で、AIに人権が認められる日も近いのかもしれない。

 この現実世界が、SFに飲み込まれるのも、すぐそこまで来ているように感じた。


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