第7章2 ナカナカの陰謀&ハンバーグ、ミスチーフ
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ある日の午後、パソコン部で使っている学校の実習室に行くと、なにやら事件が発生していた。
「マナカ君、これ」
「なんだこれ」
「君、ではないようだが」
「先生、俺じゃないですよ」
「だろう。まあ、マナカ君の力で元に戻しておいてくれ」
「分かりました。やっておきます、森河先生」
「頼んだよ」
森河先生はパソコン部だけでなく情報科の先生でもあり、情報技術試験にも受かってる本物だ。担任でもある。
先生に頼まれたら、俺がやらなければという気がしてくるから不思議だ。
犯人は大方、予想がつく。どうせこういうことをするのはナカチュウの二人だ。
共有サーバーの画像ファイルが、img001マナカはハルが大好き.jpg、img002マナカの恋はハルに一直線.jpg、みたいに全部書き換えられていたのだ。
共有サーバーへログインして、管理ツールを起動して、履歴ログをたどっていく。
あった、これか。変更日時からすると事前に一覧を用意してあって、スクリプトを使って変更したようだった。
俺は末尾に追加された俺がハルを大好きという文字を見て、じゃっかんクラクラしながら数字より後ろを一括で削除するスクリプトを書く。
ファイルのバックアップを圧縮ファイルにして作った後、スクリプトを実行し無事、元のファイル名に戻すことができた。
「ふう……終わった」
「さっすが私のマナカ君! あっという間に戻しちゃったね。お疲れ様です」
「ありがと、ハル。でもハルさ、全然動揺してないよな、こんなことされて」
「まあね、こういうの前にもあったでしょ」
「ああ、いつだっけ、小六だったか」
「うん……」
黒板にマナカ、ハルの相合傘。
それも一つじゃなくて、大きいのを中心に何個も書かれていた。
俺は憤慨し、ハルは恥ずかしくて縮こまっていた。
俺は学校に登校してすぐに発見して、黒板消しで必死に消したのだ。
ハルはもちろん一緒に登校したので一部始終を見ていた。
彼女は呆然と立ったまま、俺が消し終わるまで、フリーズして黒板を眺めていた。
もう平気で過去のこととはいえ、子供たちはこういうことを容赦なくする。
あれくらいで収まっていたので、俺たちはよかったけど。
そこまでではないが、似たようなイタズラは以前からたまに起こっていた。
「俺とハルはいつも仲良しだったからな」
「だもんね、あはは」
「それでなのか? 中学から、その、ちょっと距離とって」
「うん……そういうことするの、男子に多かったんだけど、中学上がって雰囲気が変わってね」
「お、おう」
「女子も恋愛に敏感になってて、嫉妬とかの目を向けられてたから」
「やっぱそういうのか」
「ごめんね、マナちゃん」
「ハルの謝ることじゃないだろ、な?」
「うん」
なんだか過去の疎遠の理由を聞けて、少しすっきりした気分だ。
何事にも理由があるものなんだな。
てっきり恥ずかしいから離れる選択をしたのかと思っていた。
思春期で男女が一緒に行動するとか、中学生にとっては羞恥の対象でしかない。
もちろん、そうでない人もいるにはいるが、俺たちは奥ゆかしかったので。
さて、問題はこっちだ。
放置するわけにもいくまい。
ナカチュウを呼び出し厳重注意だ。
「これやったの、お前らだな」
「ししし、知らないし」
「知らないだろ、共有サーバーのファイルってさ、誰が変更したか全部ログが残るんだ。ここのセキュリティーソフト」
「げ、まじか」
「ほれここ、Tanaka_Kaiってなってるだろ」
「ほんとだ、すまん、出来心だったんだ。お前らが早くくっついてほしくて」
「なんだそれ?」
「じれったいんだよ」
そう言われても困る。
まあ、犯人は分かったし、どうやら俺たちのことを思ってのことらしいので、不問とする。
それにファイルを削除されたわけでもない。
実害はなく、完全に元に戻せたという理由も大きい。
これが、img001の部分まで変更されてたら、面倒だった。
一応、そういうことも考慮してくれたのだろう。
「さて、遅くなっちまったし、ファミレスでもいくか」
「うんっ」
俺たちは様子を見に来たミウも合わせて、五人でファミレスへ向かう。
「いらっしゃいませ~」
「五人です」
「こちらの席へどうぞ」
たまたま空いていた六人席に通される。
「ふう、冷房効いてて快適」
「カイは暑がりだもんな」
「ああ、残暑は暑いな、いつまで続くんだこれ」
カイと雑談を交わす。
第二ボタンまで外して、パタパタと中に風を送っている。
俺たち男子はこれでいいが、女子はそうはいかないので、ちょっと可哀想。
でも見た限りでは平気そうだ。
女子はこういうのには強いのか、やせ我慢なのかは謎だ。
冬でもミニスカートだし、寒くないわけないんだから、ファッション優先の根性なんだろうけど。
「なあマナカ、ハルちゃんのウェイトレス姿とか見たくないか?」
「どちらかといえば見たいが」
「だよな」
「ハル、どうだ、バイトとか?」
「え、今はあんまり」
「そっか、そりゃ残念」
まあ俺たちも本気ではないので、笑って終わった。
でもハルのウェイトレス姿か。
きっと可愛いし似合っているとは思う。
ここの制服はとにかくかわいいんだよな。
見てみたいという気持ちは本当だった。
残念。
ベルを鳴らして店員さんを呼ぶ。
ニコニコ笑顔の素晴らしい店員の女性に声をかける。
「和風ハンバーグ、ライスとドリンクバーのセット」
「あ、俺も同じので」
みんな同じだと手を上げる。
ということでジュースはいろいろだが、みんな今日は和風ハンバーグだ。
「ドリンクバー行こうぜ」
「じゃあ私、待ってるね」
「わりいな、ハル」
「じゃあ、私も待ってる」
「ハルはミウと仲良しだな」
「いひひ」
男組で先にドリンクバーへ向かう。
俺はアイスコーヒーを入れる。
ここのは豆から淹れるコーヒーメーカーがある。
コップに氷を入れ、そこにコーヒーを注ぐ。
ミルクとガムシロップを入れ、ほい完成。
席に着くと、ハルとミウがちちくりあっており、ハルが赤い顔をしていた。
どうせまたコイバナでもしていたのだろう。
女子ってやつはこれだから。
まあ悪いわけではないので、そっとしておこう。
「ドリンク、取りに行ってくるね」
ハルが俺たちと入れ違いに席を出ていく。
ちらっと俺のほうを向いて笑顔を浮かべていくところが、なんともいえない。
「なあ、マナカ」
「なんだトウマ」
「ハルちゃん、ずっと待ってるんだぜ」
「俺のことか?」
「お前がいつ告白してくれるんだって」
「そんなこと言われましても」
「ふぬけ!」
「俺はヘタレだからな」
「まったく、可哀想に」
俺はそっぽを向いて、会話を拒否する。
アクセスデニードだよ、アクセス拒否だ、こんちくしょう。
「アクセスデニードといえば、共有サーバーの設定、ちょっと変えたぞ」
「そうなん」
ファイル共有サーバーの共有フォルダーのアクセス権を変更したのだ。
ファイルの追加は可能だが、作成者以外による変更を禁止にした。
これで他人が追加してくれたファイルを無条件にいじることができなくなる。
フォルダーのアクセス権がその中のファイルに自動継承されるので、フォルダの設定さえしておけば基本的にはオーケーだ。
こういうアクセス権の一覧をACLという。
アクセス・コントロール・リスト、まんまだ。
「こちら和風ハンバーグになります」
「ありがとう」
このお肉が今からハンバーグになるようだ。
じっと変化を見つめるが特に変わらない。美味しそうだ。
冗談はさておき、さっそくナイフとフォークで食べる。
オニオンソースの甘みの旨味、それから大根おろしの風味がとてもよい。
牛百パーセントの肉は格別に美味い。
ハンバーグになっているので、焼いてあっても硬すぎない。
ほどよい噛み締める硬さはあり、食べ応えがあった。
「うまうま」
「久しぶりだったけど、美味しいね、マナちゃん」
「ああ、来てよかった」
作業してたら遅くなってしまったからな。
原因はナカチュウのせいではあるが、まあ結果オーライとしよう。
ドリンクバーもお代わりして元は取った。
美味しかった。ごちそうさま。




