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契約結婚の決意


 契約の婚約ではあるものの、婚約者であることには変わりない。

 貴族であれば恋愛感情もなく、駒として世継ぎを産み育てるのが当たり前。

 契約結婚なんて、わざわざ口にするまでもないこと。

 発情期が来てもお相手をしてくださるなんて、ヘルムート様はお優しい。

 

「失礼いたします。カミル様、無事のご婚約おめでとうございます」

「おめでとうございます!」

「あ、ありがとうございます」

 

 離れのメイドであるジェーンさんとエレナさん。

 二人とも一ヶ月ほど入院したり、調査協力をしていたり不在だった。

 けれど無事にお二人とも退院、調査協力も終了。

 離れに戻ってきてくれた。

 ディレザさんも退院して現場復帰しているが、今回敵に負けてしまったので「ちょっと鍛え直してまいります」とのことで、まだ戻っていない。

 執事ってそんなことまでするんだ、と驚いた。

 

「婚約も無事に成りましたし、次は結婚式の準備ですね! まずは招待客の選別と場所の確保とゲストへのメニューと式場の装飾、一番大事なウエディングケーキとタキシードの仕立てですよねー! 早速仕立て屋を呼びましょう!」

「こらこら、落ち着きなさいエレナ。言いたいことはわかりますが、カミル様はまず奴隷呪の首輪を外さなければ結婚式は無理ですよ」

「あっ」

 

 執事さんに嗜められて、心底「今思い出した」とばかりにガックリ項垂れるエレナさん。

 奴隷呪の首輪をつけたまま外に出るのも、結婚式も無理だろう。

 今回のことで邪教も犯罪組織もこの国から撤退したと思われるけれど、一時的なものには間違いない。

 それに先程の貴族人口減少の話のあとだと、僕という存在――オメガはあらゆる貴族に世継ぎを産むための存在として求められているような気がする。

 実際ヘルムート様との婚約の話が広まりつつある中でも、カウフマン邸には釣書や二人きりでのお茶会の招待、お見合いしてほしいと言う懇願が届いているらしい。

 すでにヘルムート様との婚約話でお断りしているにも関わらず、お金まで出すからという輩まで。

 ヘルムート様が公安局員だと知っているにも関わらず、そんな強引な提案をしてくる者までいるとか。

 それほど貴族の人口減少は深刻。

 呪いは解けており、年々出生率は戻っているとは、言っておられたけれど……。

 子が生まれない、生まれづらいという不安が一度出てしまったあとだと、僕のような成人済みのオメガは喉から手が出るほどほしいということらしい。

 だからこそ邪教や犯罪組織が去ったあとでも、奴隷呪の首輪がついている現状は楽観視ができないという。

 呪文さえ知っていれば、僕は誰の命令でも聞く。

 聞いてしまう。

 僕の意思はそこになく、物としてあるだけ。

 だから結婚式で大勢の前に出るなんて絶対に無理。

 いや、正直に言えば奴隷呪の首輪があってもなくても結婚式なんて大勢の前に出るような場は想像しただけでも無理だなあ。

 

「えー、じゃあ結婚式はなさらないんですかぁ!? 婚約と言ったら結婚式じゃないですかぁ!」

「確かに貴族同士の結婚といえば結婚式ではありますが、カミル様の事情が事情です。結婚式をしたとしても、身内を呼んだあまり大きくないものになるでしょう。首輪のことがありますから、理解している方のみでもかなり慎重にならなければ。ヘルムート様が公安局員であっても厄介な噂を流す者はあとを断ちませんからね」

「うう……残念です」

 

 厄介な、噂。

 僕はヘルムート様に保護されている立場。

 それなのに、僕が奴隷呪の首輪をつけたままだから、ヘルムート様が『奴隷のオメガを買った』と噂されているということ?

 あとを絶たないということは、もうすでに流れているということだよね?

 そんな……。

 

「ですからカミル様」

「は、はい?」

「奴隷呪の首輪が外れた暁には、何卒その噂を払拭するために大々的な結婚式で以て証明していただけませんか? カミル様とヘルムート様は、絆を育まれて愛ゆえに結婚をするのだと。周囲に知らしめ、噂はただのやっかみに過ぎないのだと。おそらくそうしなければ、噂は残り続けてしまいます」

「あ……」

 

 それもまた貴族に必要なパフォーマンス。

 でも、首輪はいつ外れるかわからない。

 外れた暁には――だから、すぐというわけではないけれど。

 それに……僕はただの契約婚約者だし。

 

「そうしなければ、ヘルムート様を貶める噂が残るのですよね?」

「カミル様……?」

「いえ、わかりました。人の前に出たことがないので、別な意味で粗相をしてしまいそうですが……。仮にも妻となるのですからカウフマン家のためにできることはやりたいと思います」

 

 そうだ。

 たとえ契約結婚だとしてもカウフマン伯爵家の唯一の『嫁』という立場になるのだから、できることは全部やろう。

 いや、もちろん伝統あるカウフマン伯爵家の妻としては絶対に力不足だと思うのだけれど。

 

「よかった。あまり申し上げてもプレッシャーになるとは思いますが……お世継ぎもどうぞよろしくお願いいたします」

「ンッ!?」

「まあ、執事長! そういうのはプライベートなことですのに!」

「そういうプレッシャーは妊娠しにくくなるんですってよ!」

「も、申し訳ありません」

「大丈夫です、よ?」



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