Poittyo2─滅亡を呼ぶゲーム機
当たらない…
なぜ、俺だけ…
深紅の夜空に、淡い光を放つ三日月が浮かんでいた。
だが、その夜空の彼方から、忌まわしき唸り声が世界を震わせる――
――陣天堂社が誇る究極の次世代ゲーム機「Poittyo2」が世に出た日から、世界は狂気の淵へと静かに足を踏み入れていた。
だが、その騒乱の裏側で、忘れられし邪神――バル=グリムラ――は目覚めつつあった。
深夜のとあるゲームショップ前に、長蛇の列ができていた。
ファンたちは凍える風の中、手に汗握りながら開店を待つ。
だが、店内に搬入された在庫はわずか十台。
列の後ろのほとんどは手に入れられず、不満の溜息が広がる。
その時、地を穿つような轟音が響き渡る。
誰もが空を見上げると、黒い蠢動が三日月の輪郭を濁らせ
まるで夜そのものが割れたかのように裂け目が開いた。
裂け目から漆黒の影が降り注ぎ、街灯が一つ、また一つと消えていく。
ショップ内では店員も含め全員が硬直し、ただ互いの顔を見つめ合うしかなかった。
興奮と不安が混じり合い、どよめきが走る。
だが、異変の核心に気づく者はまだいない。
漆黒の影の中から、長い髪を逆立てた男が現れた。
その目は燃えるように赤く、瞳孔は裂けていた。
魔力を帯びた唸り声が震えとなって地面を伝い、店内のすべての電子機器が暴走を始める。
スマートフォンのバイブは激しく震え、ディスプレイには無数のグリッチが走った。
「くっ…! この呪われた小箱のせいで…世界が…我が憤怒を…この手に…!」
バル=グリムラはPoittyo2の空箱を掲げると、その内部からほとばしる光を浴びた。
だが光は冷たく、ゲーム起動の気配すらない。
彼の体から黒い炎が噴き出し、たちまち店内を焼き尽くさんばかりに蠢いた。
「手に入らぬ…! 我が無限の力を誇示しうるその装置を…!
ならば、我が神威を以て、世界ごと焼却しようぞ…!」
邪神の咆哮が轟き、世界中の電子回路に異常をもたらす。
銀行システムは停止し、飛行機は空中で漂い、全人類は恐怖と混乱に陥る。
だが、バル=グリムラの目は一点――ポイティオ2を抱えたまま
東京タワーよりも高くそびえ立つ欲望の塔を見据えていた。
世界政府は直ちに対策会議を開くが、邪神の前には無力だった。
あらゆる武力・魔力が無効化され、バル=グリムラはただ嘲笑う。
「その小さき箱ひとつ持たぬ愚か者ども…さあ、滅びを味わえ!」
地球各地では地殻が軋み、津波が押し寄せ、空は血の色に染まる。
だが、わずかに残った抵抗勢力――ゲーム開発者とマニアたちは最後の賭けに出た。
Poittyo2の“幻のプロトタイプ”を起動し、邪神をその内部世界に封じ込めるという計画だ。
暗号化された回路図を唐突に解読し
伝説の開発者・朝比奈リツコは震える手で一行のコマンドを打ち込んだ。
スクリーンには「SYSTEM BOOT:Poittyo2—Dimension Link」の文字が浮かび上がる。
次元の狭間が開き、バル=グリムラは抗いがたい引力に捕えられた。
彼の絶叫は炸裂し、地球を揺るがした。
しかし、封印の輪は強固で、邪神は徐々に内部世界へと引き込まれていく。
「貴様ら…何という……!」
その声はやがて遠ざかり、やがてか細い囁きとなって消えた。
深い静寂の後、世界は息を吹き返した。
壊滅寸前だった都市は復興を開始し、人々はゲームショップの前に再び列をなす。
しかし、誰もが知っていた。
次にPoittyo2を手に入れ損ねた者は、再び邪神を呼び覚ますかもしれないということを。
空を見上げると、あの裂け目は完全に塞がり、三日月だけが静かに微笑んでいた。
――終わり? それとも、新たなゲームの始まりか?
某ゲーム機の抽選に落選しまくって、全く手に入る気がしないので
怒りを鎮めるためにこの作品を書きました
7月5日だし、いいよね?
しかし、ここまで当たらないとなんか虚しくなりますね。
この作品が◯天堂にバレたらまた落選になるのかな…?