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ヘルエスタ王国物語  作者: 十月 十陽
再会編(プロット)
29/75

ヘルエスタ王国物語(29)



 フレン・E・ルスタリオは光の中にいた。

 賑やかな声が聞こえる。続いて、タルが壊れるような音。どこかでチンピラが暴れているのだろう。懐かしい喧騒だ。

 肌に触れた風は渇いていて、気持ちがいい。

 そこでフレンは───自分の立っている場所がヘルエスタ王国ではないことに気付く。

 道の途中、目を疑う。

 だが、見間違えるハズはない。

 ここは、かつてフレンが守っていた国。コーヴァス帝国そのものだった。


「フレン! おかえり」

 青髪の小さな女の子がフレンの腰に抱き着いてきた。

 覚えている。

 彼女の名前は、天宮こころ。『龍』の巫女として宝物のように扱われている、可愛らしい少女だ。


「あっ、フレンさん。お疲れ様でーす」

 無邪気に笑う天宮を追いかけてきたのは、赤髪の女性レイン・パターソン。

 いつもは皇帝のボディーガードとして働いている。最近、皇帝の宝物庫からギャンブルのお金を調達していたことがバレて解任されたらしい。


「レイン! ちょっとは手伝えって!」

 コーヴァス帝国の歩兵部隊に所属するアクシア・クローネが、大量の荷物を持ってやってきた。きっと、二人の買い物に付き合わされたのだろう。

 爽やかな好青年という印象が強い。

 カッコいいことをしようとして、いつも失敗している。


「ぐへへ」

 と、邪悪な気配。

 気配を辿った先には、柱の影からあまみゃを見つめる変態───剣持刀也が涎を垂らして、震えていた。

 今日も美しく顎が尖がっている。



 景色が変わる。

 四人の姿も消えて、今度はコーヴァス帝国の訓練場に来てしまったらしい。皇帝の趣味で作られたアラビアン風のお城は、なんだかタマネギみたいで、フレンは無性にカレーが食べたくなった。


 そして新しくフレンの前に現れたのは、

「このバカ! 怒られるのは俺なんだぞ。いい加減、城の壁を壊すのはやめろ!」

 コーヴァス帝国で教官を務める、社築だった。

 彼にはいつも怒られていたような気がする。


 今回、社に怒られているのはパンダのフードを被った学生、笹木咲。

「教官の、ぶさいくううううううう!!!!!!!」

「小学生みてぇな罵倒してくるんじゃねえ! とりあえず謝れ。俺に謝れ。今すぐ!」

「そんなんだから彼女いないんだよ!」

「うるせぇ、バああああああカ!!!!!!!」


 そんな絶叫する二人を見て「アハハ」と笑っている少女がいた。

 金糸のような髪を二つに結んでツインテールにし、コーヴァス帝国の魔法学校に通っているいいとこのお嬢様───鷹宮リオン。

「あの二人またケンカしてら」


「いつも通りでいいじゃないっすか」

 晴れやかに笑う鷹宮の隣に、立つ三枝明那。

 生の赤身肉を食べたことで食中毒になり、コーヴァス帝国の病院で治療を受けていたハズだが……。

 何はともあれ、元気になったならそれでいいのだろう。



 また一歩。フレンは進む。

 ここまでくると何となく察してしまう。自分はリヴァネルに負けたのだ、と。だからこれは、死んだ後に見る夢の世界なんだ、と。

「残念だけど、フレンはまだ負けてないよ」

 懐かしい声がした。

 振り返った先にはミツバチ色の妖精メリッサ・キンレンカとコーヴァス帝国の皇帝イブラヒムの二人が立っていた。

「こうしてメイフが揃うの久しぶりじゃない?」

「一番最初にいなくなった奴のセリフとは思えねえな……」

 メリッサの発言に、イブラヒムが噛みつく。

「いいじゃん、ボクたちの仲なんだし。楽しくいこうよ」

「……お前な」

 イブライムは腰に手を当て、床にため息を落とす。バツが悪そうな顔をした。

 そんな二人を眺めながら、フレンは自分を責めた。……結局、コーヴァス帝国の仇を取ることも出来ず再会してしまったことに後ろめたさを感じる。あと、ほんの少し。何かが違えばリヴァネルを倒せていたかもしれないのに。

「別にオレたちは敵討ちなんて期待してない。あんま抱え込むなよ」

「そうそう。ボクたちはただ、フレンに長生きしてほしいだけなんだから」メリッサは続けた。「もしも普通に生きるってことを自分で想像できないなら、これまでやってきたことを思いっきりやればいい。イブもそう思うだろ?」

「メリッサ、今日まで戦ってきたフレンにまだ戦えって言うの? ちょっと、引くわ」

「もちろんフレンが他にやりたい事があるなら別だけどさ。でも、今日まで戦ってきた彼女からいきなり剣を取り上げるなんて、そっちの方が失礼だ。だったら、決着をつけて来たらいい。そのための剣も用意してある」

「……まあ、確かに。それについては同意する。」イブラヒムは言った。「そもそもの話。オレたちがこうして話しててもしょうがないだろ。最後にすべてを決めるのはフレンなんだ。オレたちみたいな死んだ人間がでしゃばる場面じゃねえ」

「イブ、ボクは妖精だよ」

「人間の形してるんだから、お前も人間でいいだろ」

「ひどーい」

「フレン、お前には選択肢がある。ここでオレたちと死ぬか。生き返ってもう一度、滅びの魔女と戦うか。決めるのはお前だ」

「イブはこう言ってる。ボクも同意見だ。フレンはどうしたい?」

 どうすると問われて、困ってしまった。

 今の自分が死ねばコーヴァス帝国の敗北になるのか? それともヘルエスタ王国の敗北になるのか?

「私は、負けたくない」

 答えを聞いた二人は、笑っていた。

「決まったみたいだ。イブ、頼むよ」

「あいよ」宝物庫の扉が開く。「オレたちからのプレゼントだ。満足するまで使え」

 フレンは光の中を進む。

 宝物庫には剣があった。台座に突き刺さった、たった一本の剣が。

 それはイブラヒムが鉄を打ち、メリッサ・キンレンカが歌で研いだ聖剣。きっとフレンの手によく馴染むことだろう。

 柄を握りしめる。

「ちなみに名前は───」

「いや、何となく分かるよ」

 引き抜いた剣の名を、フレンは告げる。

「聖剣───コーヴァス」



     △△△



「……はっ!」

 戍亥とこは飛び起き、ソファから転げ落ちた。見覚えのない天井に睨まれ、胸がズキズキと痛む。しかし、木目を数えていくうちに苦しさがなくなってきた。少しづつ楽になっていく。さっきまでは呼吸をする度に冷たくなっていく場所にいて、得体の知れないナニかに身体を剥ぎ取られていくような感覚があったが……最後には何も残らない。

 ───落ち着くまで数分。

 それからゆっくりと熱を取り戻していく。

「ここは……」

 泥のように粘っこくなった汗を袖で拭いながら、戍亥は揺れている視界を片手で押さえた。快適な目覚めとは言い難いが、まずは自分の現在地を知らなければならない。無理矢理にでも身体を起こし、周囲を見渡す。

「さて、気分はどうじゃ?」

 反対側のソファに小さな子供が座っていた。頭には二本の角を生やし、頬を赤く上気させ、ほのかに酒気を纏っている。

「鬼族……?」

「竜胆尊じゃ!」

 小鬼はそう言うと、右手に持っていた盃を近くに置いてあった酒樽にぶち込んで、酒で満たされた盃を見つめ、それを一気に飲み干した。

「かぁーっ! やっぱり御神楽の酒は最高じゃのう。この一杯のためだけにお主を助けたといっても過言ではない!」

「アタシを助けた?」

 尊から思わぬ発言が飛び出し、戍亥は目を丸くする。

「なんじゃ。覚えておらんのか? 魔物の大群に飲み込まれていたお主を、苦労して! わらわが助けてやったのじゃぞ」

 とある一言が物凄く誇張されていて戍亥は気になったが、言われてみれば確かに、魔物たちと戦っていた時の記憶がすっぽりと抜けている。

「……うっ」思い出そうとして吐き気がした。「助けてくれたことは、おおきに。でも、アタシは行かなきゃ……」

「その身体でか?」

 なんとかして立ち上がった戍亥の身体を、尊は軽く指先で押す。

 戍亥はそれだけで、ソファに座った。座らされた。

「力が……入らへん……」

「門を守るにはまだしょんべん臭いガキじゃが、流石は獄獣の一族。そう簡単には死なぬようじゃな」

 かっ、かっ、かっ、と鬼が笑う。

「しかし、これで分かったじゃろ。お主の身体は戦える状態ではない。今は大人しくこの遊びの行く末を見守ると良いぞ」

 再び酒を煽る。

「それにしても運がいい奴じゃ。わらわが偶然通らなければ、お主は今頃、地獄に帰っておったじゃろう」

「アタシは……どうすれば……」

「なんじゃ? 迷っておるのか?」

「違う。こんなんじゃリゼを迎えに行けへんから……。すぐにでも迎えに行かないと……動けるようになるにはどうすればええの? 鬼族ならその方法を知ってるやろ」

「もちろん知っておる」

 尊は続ける。

「何なら、今すぐにでも戦えるようにすることも可能じゃ」

 だったら、と戍亥が言いかけたところで、

「じゃが、いいのか? お主を連れ戻すために、わらわはお主の寿命を八百年使った。戦えるようにするともなれば、さらに八百年の寿命を削ることになるぞ」

 それでもいいのか? と鬼が問う。

「……八百年」

 意識を取り戻すまでに八百年を使ったのなら、これから支払う時間と合わせて千六百年の寿命を削ることになる。

 それだけの寿命を支払って、果たして生きていられるだろうか。

「神を喰っていない獄獣の寿命はざっと見積もって二千五百年ほどじゃろ? なに。このまま何事もなく生きておれば百年かそこらで全快するようにしておいた。それまで待てばよかろうに。何をそんなに急いでおるのじゃ?」

「リゼと一緒にこの国を離れて、別の国で暮らしたい」

「かっ、かっ、かっ。面白いことを言いだす奴じゃのう。姫を連れてこの国から逃げるとは。本当に、そんなことが出来ると思っておるのか?」

「このままじゃ出来ない。手遅れになってまう。だから、寿命を……払う……!」

「ふむ。リスクを承知の上で首を縦に振るならば、わらわが断る理由もない……。しかし、お主が失った首二つ。それを元に戻すことは出来ぬぞ」

 それは分かっていたことだ。

 戍亥の半身とはいえ、バンとケンにはそれぞれ独立した命がある。フレンに襲われて身代わりになってもらった時に、二人の魂は地獄へと帰っているハズなのだ。

「やって」

「よし! それじゃあさっそく───」

「尊、さっきから一人で騒いでおる?」

 邪魔が入った。

 のれんをくぐって部屋に入って来たのは大きな耳と和服姿が特徴的な女性。戍亥はその女性を一目見て、彼女が神仏の類であることを見抜く。

 続いて、男の声がのれんの奥から聞こえてきた。

「この声───!」

 戍亥はフミの横を抜けて、声のした食堂へと足を向ける。

 そこに、

「舞元はん! リゼは!? リゼはどこ!?」

「ちょ、ちょっと落ち着こう! 死んじゃうから。このままだとオジサン死んじゃうから!」

 戍亥に胸ぐらを掴まれ、絞められる。

 誤解されることに定評のある舞元啓介。

 どうしてそんな星の下に生まれてしまったのか。

 人生の危機がいとも容易くやってくる。

「教える! 教えるから。お願いだから話を聞いてください!」

 だが、戍亥にとってはそんなことどうでもいい。

 この場所に舞元がいて、リゼがいない。それだけが答えだ。

「アンタまさか……リゼを置いて逃げたんちゃうやろな……もしそうやったら、ほんま。……死ぬ覚悟しといたほうがええで」

「と、とりあえず! これまでのあらすじを聞いてもらえないでしょうか!?」

「……分かった」

 言葉とは裏腹に、戍亥の表情は納得していない風だった。ピエロ顔の男───ジョー・力一の案内に従って、戍亥と舞元は食堂の席に座る。

「アンタがここにいるっちゅことは、ここが小野町亭なんか?」

「ああ、そうだ」

 ぐるり、と戍亥は食堂を見渡す。

「それで? どうしてここに舞元はんが居って、リゼがおらんの?」

「手短に話すとだな───」

 舞元はリゼが目を覚ましたこと、魔物に襲われたこと、リゼだけは地下に避難するようにお願いしたことを話した。

「じゃあ、リゼは地下におんの?」

「行方不明です」

 彼女の問いに答えたのは舞元ではなく、すぐ隣に立つ、ピエロ顔の男だった。

「アンタ、誰?」

「私はジョー・力一。リゼ様と一緒に地下から抜け出して来た者です。……話を聞いていた限り、ケルベロス様はリゼ様の味方、ということで間違いありませんね?」

「親友や。回りくどい話はいらん。さっさとリゼの居場所を教えて!」

 舞元と力一は困ったような顔をして、

「実はですね。私共もリゼ様が何処にいるのか把握しておりません」

「一緒に地下から出てきたんやろ? だったら───」

「先ほど申し上げましたように。リゼ様は行方不明なのです」

 分かってください、と力一は話を結んだ。

「そんなんで納得できるか! 居なくなったんやったら死ぬ気で探せ! そしてここに」

 興奮気味に立ち上がった戍亥の口から、血が噴水のように溢れ出し、彼女はそのまま床に手をついた。血に映った自分の顔が、驚いている。

「なんや、これ……」

「あー、あー、言わんこっちゃない」

 尊の呆れ果てたような声が、慌てふためく舞元と力一を押しのけて、戍亥に近づく。

「お主はまだ全快じゃないとさっき教えてやったじゃろうが。フミ、隣の部屋から御神楽の酒を持ってきてくれ。大至急じゃ」

 酒樽を持ってフミが戻ってくる。酒樽を尊のそばに置き、フミは床に倒れている戍亥の身体を起こす。

 尊は御神楽の酒を口に含むと、倒れている戍亥の唇を奪う。柔らかい鬼の舌がするりと口の中に入って来る。戍亥は尊から逃れようと必死に抵抗したが、ダメだった。唇を離してもまたすぐに追いつかれ、次々と甘い酒を流し込まれる。

 弄ばれるような時間とこれまでとは違った痺れ。頭の奥にむず痒いような感覚あって、そこからパチパチと電流が瞬いていた。

「ちょっ、……いきなり」

「黙っておれ」

 強引に唇を塞がれる。

 そんなことが数回続き、ようやく解放された戍亥は遊び疲れた犬のようにぐったりとテーブルに突っ伏した。

「尊よ。これはどういうことじゃ? 一体何と戦えば此奴をここまで消耗させられる?」

 冷静に、フミは意見を求める。

「うーむ……首は動脈までスパッといっておったし、胸の傷も心臓まで届いておった。じゃが、それらが原因ではない。一番の問題は魂のほうじゃろう」

「……魂か」フミは顔を上げて。「おい、娘。お主まさかとは思うがモアの王冠を持ったリヴァネルと戦ったのではあるまいな?」

 質問されても答えようがない。モアの王冠という言葉に聞き覚えはあるものの、リヴァネルと戦ったかと問われればそうではないのだ。あの時はリゼを抱えて一目散に逃げたから。他のことは何も考えられなかった。

 口の中に残る血を飲み込み、戍亥は青ざめた顔で二人を見つめる。

 もし、心当たりが在るとすれば───。

「レイナ様と、戦った……」

「レイナ? レイナ・ヘルエスタか? 彼奴はすでに死んでおるはずだが……。尊、おぬしは何か知っておるか?」

「其奴のことなら知っておるぞ! 月ノ家の長男と結婚したあのハーフエルフじゃな。何度か手合わせしたこともある。とっても面白い女じゃったぞ!」

「そういう事を聞いているんじゃない。黄泉帰りの秘術を教えたかどうかを聞いておる」

「教えておらんよ。まあ、教えたところで使えぬだろうがな」

 かっ、かっ、と鬼が笑う。

 フミはそんな尊に苦い視線を送り、戍亥に向き直る。

「レイナとは何処で会った?」

「ヘルエスタ城。リゼに……取り憑いてた……」

「戦ったか?」

 こくり、と戍亥が頷く。

 フミは顎に手を置いて何かを考えてようだったが、戍亥がその内側に耳を澄ましても声は聞こえてこない。

「さて、小娘。さっきの話の続きといこう。寿命、八百年。捧げる覚悟はあるのじゃな?」

 尊が言った。

「おい、待て」フミが制する。「妾はそうならないように、御神楽の酒を貴様に預けたと思うのじゃが……」

「酒は余すことなくわらわのモノじゃ! こんな小娘に使ってやるなど勿体なかろう!」

「没収!」

「イヤじゃ! イヤじゃ! それに小娘も了承しておるのだぞ」

 助けを乞う鬼を無視して、

「そのお酒を使えば寿命を支払わなくてもええの?」

「もちろんじゃ」

 フミの返答に、それならと戍亥は納得する。

 慌てて、

「分かった! 寿命を払うのならば、お主の探している娘の居場所を教えてやる! それでどうじゃ!?」

 鬼が魅力的な提案をしてきた。

「本当に……分かるんやな?」

「鬼に二言はない!」

 沈黙があった。

「寿命を払う」

「正気か?」

「それでリゼの居場所が分かるんなら、安いやろ?」

「よし! それじゃあ気の変わらぬうちに始めるぞ───!」

 尊は一枚の札を取り出し、戍亥のおでこに貼り付ける。

「すぐ終わる。じゃが、覚悟はしておけよ」

「……───」

 鬼が手を叩く───直後、戍亥は内側で何かがゴリゴリと削れる音を聞いた。

「寿命を払うって……こんなに痛いんやな……」

「ほう、生きておるのか。良い事じゃ」

 戍亥は冷然とした瞳で鬼を見つめる。

「元気になったとたん噛みついてきおるのぅ……」

「約束を守って。リゼは何処にいんの?」

「ちょいと待ておれ」

 鬼は人差し指と親指で輪っかを作ると、それを両目に装着し、望遠鏡を覗き込むようにして辺りを見回した。

「あんなんで見つけられんの?」

「案ずるな。尊はバカっぽいが、ああ見えて妖術に関しては抜きんでておる」

 尊の全身におびただしい数の切り傷が浮かび上がる。

 それらを気にも留めず、鬼は告げた。

「見つけたぞ。リゼ・ヘルエスタは北東方面に向かっておる」

 鬼の言葉をきいた瞬間、戍亥は小野町亭を飛び出し、北東方面へ向かう。

「……おい、大丈夫か?」

「まさか悟られるとは思わなんだ」

 尊はかっ、かっ、かっ、と笑う。

「何を見た?」

 フミの問いに、尊は勿体ぶって、

「最高に面白いものじゃ!」



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