人間レシピ
まず、人間を構成する基本的な材料を紹介しましょう。これがなければ始まりません。70%の水、18%の炭素、5%の窒素、そして少々のカルシウムやリンなど、いわば肉体を形成する物質です。でも、大事なのは他にあるんです。ほら、よく言うでしょう? 人間にとって大切なのは「心」だと。というわけで、心を構成する基本的な材料は以下のとおりです。
・感情:1リットル
・理性:500ml
・野心:300g
・誠実さ:200g
・嘘:100g
・自信:80g
・謙虚さ:50g
・ユーモア:30g
だいたい、こんなところです。では、さっそく作り方に入りましょう。
1. 大きなボウルに感情を1リットル注ぎ、理性を500ml加えます。感情は熱く、吹きこぼれやすいので、理性を手早く混ぜることが肝心です。ただし、冷たくなりすぎないように、少しずつ慎重に入れましょう。バランスよく混ぜ合わせることが大切です。
2. 次に、野心を300g、誠実さを200g加えます。野心がないと向上心は生まれません。ただし、多すぎると独裁者になります。分量は守りましょう。野心は燃えやすく周囲を巻き込むので、取り扱いに注意が必要です。また、誠実さが足りないと詐欺師か政治家になります。
3. 嘘は慎重に100g加えましょう。もっと少ないほうがいいと思うでしょう? それが違うんです。不足すると苦労することになり、仕舞いには腐ってしまいます。ただし、多すぎると後味が悪くなります。
4. 自信を80g加えます。これが不足すると、自己嫌悪に陥りやすくなります。でも、過剰に加えると鼻につきます。気をつけましょう。
5. 謙虚さを50g。これはバランスを保つために重要です。ただし、評価はされにくいです。
6. 最後にユーモアを30g。これがあると、どんなにブラックな料理もなんとか食べられる味になるのです。ただし、多すぎると風味をぶち壊し、周りの空気まで冷やしてしまいます。適量を心掛けましょう。
その他の材料も少し。自己中心性を大さじ2杯加えましょう。これがないと、人間らしさが出ませんからね。自己愛も加えておくと良いでしょう。ただし、これが多すぎると酔いやすくなり、他人から愛されなくなります。
皮肉をひとつまみ加えると、味に深みが出ます。嫉妬は少々。これがあると、ピリッとした刺激が出ます。
これらをしっかり混ぜ合わせたあと、用意しておいたスープを加えます。
スープの作り方は以下のとおりです。 現実をしっかりと受け入れた鍋に、夢をたっぷりと投入します。夢は現実に溶けにくいので、よくかき混ぜながら加えることが重要です。挫折は適量加えておきましょう。これがないと、甘ったるくなってしまいます。それから、火にかけて、三回ほど焦がしてしまいましょう。なぜって? 失敗はアクセントになるからです。
幸せは加えません。というのも、ここには存在せず、自分自身で見つけ出すものだからです。優しさや道徳心は空気に触れると自然に現れてきます。ですが、悪い空気だと風味が薄いです。
さて、以上が人間のレシピになります。
まあ、実際に作る際は大鍋で大量に作るため、ムラができてしまうんですけどね。これを小分けにしたあと、こうして……と、その前に少し味見を……うーん、これはなかなか。もう一口……もう一口……。おっと、はいはい、こうして地上に流して人間の完成です。
どんな評価がされるか楽しみですね。ただ、社会という評論家は時に辛辣で、目が節穴だったりするんですけどね。