先生女(27歳)と告白男
桜見て
時間の経過
感じたよ
地獄の思想
花開しそうや
前回、無事? 入学式を終えることに成功した夜之丸だったが、入学式の終盤、いきなりポケットに差出人不明の手紙を入れられて、呼び出しを受けた!
以上!
入学式の終わったすぐ後の午前12時ごろ、俺は呼び出された教室棟の屋上で、手紙の差出人を待っていた。
「パッと見誰もいなさそうやな。なんや、急いできて損したな。てっきり上級生が適当に目つけていじめでもやってるんかと思ったけど、そもそも上級生がほとんど居らんかったし。じゃあ同じような新入生か? いくら何でもそないなドアホ居らんやろうしな。じゃあ告白? いや一番ないやろ、まず俺と接点のある人物があの師匠とさっきの先生と平坂愛花ぐらいやし。あとあんなことやらかした後に「好きだ!」ってなる女なんかおらんやろ。
うん、絶対ないな、ありえ……へんな……。
悲しいけどこれ……現実なのよね。
それにしても今日はいい天気やな、風もいい感じに吹いてて気持ちがええわ。というか屋上やのに周りはビルばっかりで景色はあんまりやな、唯一見えるのは旧淀川で、現在一級河川の大川とそれに沿って作られた公園ぐらいか。
これが宿やったら評価は3.2ぐらいやな……多分」
屋上の柵の網に手をかけて、自分の独断と偏見に満ちた戯言を吐いていると、「ばん!」という扉が開く音がした。そこから長髪で身長がだいたい150㎝ぐらいの可憐な女子新入生(仮)が現れた。
「ごめんなさい、遅れました!」
女子新入生(仮)は、そう言って頭を下げた。
「嘘だろ……なんでこんな……ってステイステイ。落ち着けよ俺、とりあえず爆弾か?」
俺は、予想外に可愛らしい人が来たため、頭を抱え混乱した。
「え、なんで?」
「だって、オチ着けやから、とりあえず手ごろな爆発オチを……」
「落ち着けってそんな意味じゃないよ‼」
「え、そうなの! てっきり、無理やりにでもオチをつけろって意味かと……これが五食というものか!」
「違うよ! それ別の誤植だよ‼ 誤植じゃなくても食べすぎだよ!」
「それはそうと、俺に何の用なんや?」
「えっと、その……あの……」
女子新入生(仮)は、もじもじし始めた。まるで、初恋の彼に一世一代の告白をする準備動作のように。
「ゆっくりでええからな」
どうしたんやろうか。なんかすげー緊張してるように見えるけど何を言う気なんやろうか。俺が女子に告白される可能性は、無きに等しくんや! ん? ひとしくんって誰や? スーパーひ〇しくんか? その発想をボッシュート! てか、俺は何を考えてるんや?
「はい、じゃあいきます!」
「よっしゃこい!」
俺は腰を落として、ゴールキーパーのように構えた。
「あなたのことが好きです! 付き合ってください!」
「……?」
俺は首を傾げた。理解しようとした。
一分ほどがたった。
「……え、なんだって?」
俺は理解しようと考えたけど、でけへんかったから、聞こえなかったかのみたいにとぼけた。
「そんなどこかの黄土色ヤンキーみたいなこと言って、ごまかせませんよ!」
「だってさ、あの~、ほら! だって、いきなり君みたいな美少女に告白されたんだから、混乱は免れないと思うんですが?」
「なんで急に標準語なんですか? 関西弁っていうアイデンティティはどうしたんですか⁉ というかなんで逆ギレ⁉」
「質問よろしいでしょうか?」
手を挙げて、聞いてみた。
「別にいいですけど。なんですか?」
「僕のどういったところが好きなんですか?」
俺の中で一番謎なことについて聞いた。
「そんなことですか。理由はいたって簡単でさっきの入学式での一件を見て、僕にできないことを簡単に、平気な顔をしてできてしまうところをかっこいい、好きだ! と思ったからとか、大事な人をちゃんと守ってくれそうだからです!」
女子新入生(仮)は目をキラキラさせてそう言った。
俺は目の前の子の発言の一部に引っ掛かり、それが顔に出ていた。
「俺に人を守ることなんかでけへん……今回はお前の目が節穴やったわけやな。今回って言うても、前回も知らんけどな」
「そんなことないよ! 君は確かに……」
「そんなことあるんだよ! ご、ごめん……」
「別に大丈夫だよ、ちょっとびっくりしたけど」
「さっきの理由について聞くけど、要するに一目惚れというやつですか? もしくは、特殊性癖ですか?」
「一目惚れというものが定かなものではないからわからないけど、それに近いものなんじゃないかな」
女子新入生(仮)は少し頬を染めて、照れた様子で、答えた。
「まあ、俺は恋なんてしたことないけど、話を聞いた限り、それは恋ではなくて、憧れやと思うんよね」
「え、あ、そ、そうなんですかね。僕、結構惚れっぽくて」
「誰かが言うとった。「恋と憧れは似て非なるもので、全くの別物なんやで」って!」
「そうなんです……かね? 「憧れ」って恋をした人にとっては、すごく大事な最初の気持ちだと思うんですけど……」
「それもそうかもしれん、なんにせよ俺は初恋もまだな純情ボーイってやつやからな」
「そうなんですね」
「じゃあ、TAKE2、行ってみよか!
まずは自己紹介から、俺は那須原夜之丸15歳です!性別は見てのとうりの男、好きな食べ物はラーメン、嫌いな食べ物は特になし。趣味は漫画、アニメ、ゲームとスキー、サイクリング、登山、旅、etc……。彼女なし、彼氏なし、好きなタイプは年上で面白くてショートカットの人です! 両親健在! 誕生日は9月12日おとめ座、干支はネズミ、以上!」
「髪は短いほうが好きなんだ。切ってみようかな……」
女子新入生(仮)はボソッとつぶやいた。
「ん? どうした?」
「えっと、ツッコんだ方がいいのかな?」
「ツッコミどころなんてあるか?」
「まず、なすはら? くんは顔だけで言えばかなり女性的な顔立ちだと思うけど……。それに、彼氏なしって、できる予定でもあるの?」
女子新入生(仮)は、首をかしげて不思議そうに聞いてきた。
「いや、別に予定はないけど、たとえあったとしても、”予定は未定”とも言うし、そんなに気にすることでも、というかそっちの自己紹介は? どこの誰?」
「えっと、名前は都札開華って言います。15歳です。誕生日は5月29日です。枚方市で生まれ育ったんですけど、母親の仕事の都合で、小学校の途中からアメリカに住んでました。性別は男です。好きな食べ物は甘いもの、苦手な食べ物は辛いものです。趣味は女装、かわいいもの、お買い物、スポーツとかです。彼女も彼氏もいません。家庭的問題は少しだけあります。ですが、両親は健在です」
「お前、男やったんか! 見た目じゃわからんぐらい女子してるのすごいな! あれ、お前が俺に告ったってことはつまり……「LGBTQ」ってやつか……あんまり触れん方がええんかな~?」
俺はこいつの扱いに困った。
「あぁ、そんなに気を使わなくてもいいよ。単純にゲイやホモ、同性愛者ってことだし!」
「お前、最初からそんなんやったんか?」
「いや、違うよ! や、那須原君が初めてだよ!」
「そ、そうか……まぁ、それはそれとして、お互いのことをそれなりに知ったことやし、呼び方だけ決めよか。俺のことは好きに呼んでくれてええけど、俺はそっちのことをなんて呼べばええんや?」
「じゃあ「開華」って呼んで。那須原くんのことは「まるくん」って呼ぶね!」
「じゃあ開華、俺は生徒指導室行かなあかんから先に行かせてもらうわ。これから友達としてよろしくな!」
「うんよろしくね!」
「あと、髪は大事にしろよ!」
そう言って、俺は生徒指導室へ走った。
「やっぱり、「やまくん」なんだな。今度は、手遅れになる前に告白してみたけど、ダメだったな……。というか覚えてないとかちょっとひどくないかな? ひどいよね!」
といった感じに取り残された開華は、愚痴をついていた。
一方そのころ平坂愛花は、生徒指導室にて先生の到着を待っていた。
「なんか先生全然こうへんな」
三分ほどたち、ようやくドアの方から足音が聞こえてきた。
「来たっぽいな」
ドアが開き、校長先生と入学式の前に会った先生の二人が生徒指導室に入ってきた。
「すまない、待たせたね」
「あら、さっきの少年は?」
先生たちが、向かい合って設置されたソファーに腰かけた瞬間、誰かが「バンッ!」と扉を開けて入ってきた。
「すみません、遅れました! 一年生、クラスは発表されていないのでわかりませんが、名前は那須原夜之丸です!」
俺は遅れたことの謝罪と自己紹介を早口で済ませると、ものすごい勢いで止まれずに、たまたま開いていた窓から飛んだ。「I can fly!!」と言わんばかりに。
出来事への理解が遅れて三人とも、固まった。
三秒後、すぐに三人は窓の方に駆け寄った。
「「大丈夫か⁉」」
先生二人が叫んだ。
「ちょ、おい! なんでいきなり身投げしとんねん!」
愛花は一人、関西人の血が騒がんばかりにツッコんだ。
そう言って三人が、開いた窓から下を覗くと、すでに飛んでいった窓の真下にいた。
「さすがとしか言いようがないツッコミ、俺が認めただけあるわ」
「あんたが認めたらなんかあんの? というかなんで今落ちたばっかりのはずのあんたがもうここまで登ってこれてんねん」
愛花が呆れたような声で、聞いてきた。
「猿みたいだな」
白衣の先生が笑い交じりに言った。
「なにをやっているんですか? 全く、学校で身投げとかやめてくださいよ……」
「はいはい。よっこいしょ」
俺は窓枠を飛び越えて生徒指導室に入った。
「ていうか、なんで無駄足先生がいんの?」
「そんなことより、あんたの身体能力について聞きたいことがあるんやけど」
「そんなこととはひどいな。私がここにいるのは、ただの興味だ!」
白衣スーツの先生がふんぞり返って言った。
「なんですかそれ。こどもですか」
「どこが子供なんだ? こんなにいい女は世界に二人といないぞ。それと今さらだが、私は「八津沢雫」、担当は体育と保健室だ」
「ほんとに今さらですね。で、座ってもいいですか?」
「「「どうぞどうぞ」」」
三人が声をそろえて言った。
俺は愛花が座っている方のソファーに座った。
「なぁなぁ、おばちゃん」
「誰がおばちゃんだ! こちとらまだまだぴちぴちの27歳だぞ!」
「へぇー先生ってアラサーなんですね、ぴちぴちっすね。ところで、ぴちぴちって表現が古くないですか? あと……なんでもありません」
「なんだ? 言いたいことがあるのならはっきり言いたまえ」
「いや、先生なら結婚相手もすぐに見つかりますよ」
「おまえ、なんで私に旦那どころか彼氏もいない前提で励ましてんだよ」
「いえ、見るからにべっぴんさんで高嶺の花って感じで、似合う男がいないとか、付き合っても結婚まで行けなさそうだなって思ったからです。知らんけど」
「なんで、結婚まで行けないのがわかるんだよ。五感のうちどれを使ったんだ?」
「だって、先生ヤニ臭いんですもん。どうせ彼氏がみんな吸わなくて、ヤニ中毒の先生と暮らすのは無理、ってことになったんじゃないですか?」
「残念やったな、先生はアルコールも大好きやで!」
「じゃあ、そこのアルコール消毒液でも飲んでてください」
「元彼と同じようなこと言うんだよ~」
「普通に先生の選び方のミスでは? ついでに言うと、俺は親の影響で酒が嫌いなだけですよ。ヤニは普通に健康に良くないので嫌いなだけです」
「あの、そろそろ、話を初めてもいいでしょうか?」
校長が話をぶった切った。
「「「あ、はい」」」
そうして、やっと本題に入った。
「で、なんでここに呼び出されたんでしたっけ?」
確認のために、聞いてみた。
「君たちが入学式で騒音をまき散らしていたからですね」
「騒音をって、改造車じゃないんですから。ついでに言っておくと、わてなんかにマフラーなんてついてませんよ」
「え、あんた乗り物じゃないんか⁉ 空から降ってきたのに?」
「航空機にマフラーってあんのか?」
「たしか、あるにはあるんとちゃうかな? たしか、ガソリンスタンドにあるガソリンの高品質版が航空燃料ってことやったはずやし、同じガソリンなら排気ガス出すやろうからあるんちゃうかな? 知らんけど」
「確かにそうやな。考えてみれば零戦にも前の方にそれっぽいパイプがあったな」
「あの、それはどうでもいいとして。君の隣のそなたは誰なのじゃ?」
校長がハゲ頭を光らせて聞いた。
「そこのってなんやねん! うちはな、ひらさ」
「あ~そこのは、校長が一回目に俺を呼び出したときについでで呼び出してた隣のやつだと思いまーす」
俺が愛花の声を遮って言った。
「だから、うちは平坂愛花って名前があるって」
「おまえ、よくこいつのノリについていけるよな一人で」
今度は八津沢先生が愛花の声を遮った。
「あー、そうですか、無視ですか。ってなにシカトかましてんねん!」
「うるせえ愛花! 黙ってろ!」
愛花は俺の声にびっくりしたのか、きょとんとした顔で、こちらを見た。
「那須原くん、入学式は無駄ではなく必要な行事なんです。必要な理由は、いろいろありますが、その中でも生徒にわかりやすい理由を挙げると、入学したという自覚を得やすいことや、同級生との顔合わせの機会になること、各々のクラスを伝えやすいこと。などの生徒にとっての利点のほかにも我々、学校側の利点があったりします」
「はぁ……?」
「那須原くんはそんな入学式で、周りが迷惑を被る声量で話したりしたことについてどう思いますか?」
「え、ちょっと話題の転換が急すぎて、ついていけなくて事故り気味というか、ガードレール突き破って崖下に真っ逆さまって感じで、ちょっとお待ちくださって?」
「那須原夜之丸はだいぶ混乱しているようやな」
「こんなものでこうなるとは、先が思いやられるな」
従姉コンビが何か言ったようだ。
「今となっては、非常識だったと反省しています。すみませんでした」
俺は頭を下げた。
「ほんとにわかっているんですか? 最近の子はその時だけいい顔をして、反省ができていない子が多すぎるから困るんですよ」
「そうですね、その点に関してはすべての子供を代表してお詫びします」
「あと、君が言っていた新たな部活についてなんだが、結論から言うと無理だ。」
「調子こいて言いたいこと言っただけなので、それはお構いなく。でも何でですか?」
「まず、君のやろうとしていることは、学校側にも責任が及ぶことになるという問題や、単純に部員の数が足りないこと、学校側が許可を出さないとなかなか活動ができないことだったりの問題があるから、無理なんです」
「そうですね、貴重な時間を割いていただき、ありがとうございました校長先生」
「それではそろそろお暇させてもらうよ。最後にひとつ、窓から飛び降りるのは危ないからこれからは気をつけなさい」
「はーい、自重しまーす!」
俺がそう返した時には、生徒指導室に校長の姿はなかった。
「それにしても先生と平坂は、お互いに慣れ親しんだ感じがしていて、扱いはひどいし、実際のところ従弟以外で関係性を説明するならどんな感じですか?」
「そうやな、小さいときからこんなかんじで居るから、実質お姉ちゃんとかやな」
「ああそうだな、私たちはお互いの扱いの酷さも昔から変わらないよ。まさに姉妹喧嘩って感じでね」
「二人とも小さい時からこうなんすね」
「そんなことどうでもええやないか、それよりなんであんたは新しい部活を作ろうと思ったんや?」
「それは単純に、楽しい行事を増やしたかったというのと、口から出た出まかせだろ?」
「すごいっすね、100てん満点中、百万点! て、感じですね」
「雫ねえって、心読めたんか!」
「いや、俺の顔に全部書いてあったのを読んだだけかもしれんぞ!」
「そんなんじゃなくて、普通に考えたらこんな奴の考えることなんて、あんなもんだと言えるだろ?」
「さらっとこんな奴とか言って、俺をバカにするのやめてもらえます? せめてあほの方にしてくださいよ」
「あほならなんやねん、あんまり意味は変わらんにゃろ」
愛花が噛んだ。
「ほら、あほの方がバカよりはマイルドだと思わにゃいか?」
俺もつられて噛んだ。
「あんた、うちのことバカにしとんのか?」
「いや、違うんや誤解や! 普通につられて嚙んだだけにゃ!」
「にゃーにゃーにゃーにゃーうるさい。縄張り争いでもしているのか?」
「ここは俺のもんじゃ!」
「もんじゃ? あー、あのゲロみたいなやつか?」
「ゲロとか汚い話はもういいから、なんか面白い話でもしてくれないか?」
「日本人総出で殴られそうなことよく聞きますね。まぁ、中途半端な話ですけど、一つ」
「文句言うけど、やるんやな」
「期待なんかしても損するだけやからな。やめてくれよ」
「早く始めろよ」
「先生、なんか校長先生がいなくなってから、変わりましたね。猫車ですか?」
「それを言うなら猫かぶりや」
愛花は呆れた声を出しながら、俺の頭を小突いた。
「言ったか忘れたけど、俺には師匠がいます」
「「いやいや、言ってない言ってない」」
二人が声と動きを合わせて言った。
さすが従弟って感じだ。
「それはいいとして、俺は中一の秋ごろ、その師匠と一緒に大阪市内へ行こうと電車に乗ってたんですが、何かがケツに当たっていることに気付いたんです。自慢じゃないけど、俺は顔が男にしては、か……かか……可愛い……くそぅ!」
俺は恥ずかしさと悔しさから、拳を自分の膝に振り落とした。
「いきなりどうした⁉ 自分で言っといてなんでダメージ受けてんねん!」
「すまん、過去のストリップダメージが……」
「スリップダメージのことか?」
「俺はなぜかその時、今以上の小心者だったせいか、痴漢行為をされていることを周りに伝える行為ができませんでした」
「女子かよ」
鼻で笑いながら愛花は言った。
「お前に言われたかねえよ!」
「私もそうだったな~」
「え、先生って痴漢されたことあるんですか!」
「それはいいだろ、早く続き!」
「えーっと、次第に痴漢の手つきはハードになって、やっと声が出せるようになったとき痴漢の手の先から腕を伝って視線を向けていくとですね……見覚えのあるブレスレットやら服の袖口が見えてきて、嫌だなー、怖いなーって思いながら見ると、マジかよって言いたくなるぐらい、口笛を吹けてない師匠だったんですよ!」
「私もやったなー彼氏に……」
「え、雫姉って彼氏おったん!」
「そこじゃねえだろ! なんでこんな変態が周りに二人もいるんだよ!」
「愛花、お前には散々元カレの話聞かせただろうが!」
「ごめんやけど、あれ最初以外ほとんど聞いてなかったわ」
笑い交じりに愛花は謝罪した。
「なんで聞いてないんだよ」
「雫姉が言ってることについて考えるのがめんどいからやで」
「例えばどんな話してんの?」
「主に彼氏の愚痴とかやな」
「へぇーそれはほんとにどうでもええなー」
俺は死んだ目をしてそう言った。
「あ、そういえば」
先生がそう言って、白衣のポケットから二つ折りの紙を二つ出した。
「はいこれ、多分クラス表の紙もらってないだろ」
「ありがとうございます……」
「気が聞くやん。ありがとうな」
愛花と俺は紙を一枚ずつ受け取り、内容を確認した。
「あ、俺七組やったわ」
「うちもや」
どうやら愛花と俺は同じクラスだったらしい。なんかうれしい。
「ちなみに、クラス分けの方法って何ですか?」
「そんなもの秘密に決まっているだろ。だいたい聞いたところでどうもしないだろ」
「それもそうやな」
「ところで、そろそろお開きにしないか?」
「ぐ~」と俺のお腹の音が生徒指導室の壁を突き抜ける勢いで鳴り響いた。
「ほら、君のお腹も「何か食いもんを入れてくれ~! そうでもしないと目の前の見目麗しい女どもを食い荒らしてしまうぞ!」って言ってるぞ」
「見目麗しいが複数形? おかしいな、ここにはそんな奴一人しかおらんのにな」
「そうですね、悲惨な状況には耐性がないので、そろそろ行きますね」
「え、スルー? お腹空きすぎて正常な判断できんくなった?」
そう言って、愛花は俺の肩をたたいた。
「自分を棚に上げて人を異常者扱いすんのはやめようね?」
愛花は「じとー」とした目で俺を見てこう言った。
「気持ち悪い」
「自分を否定してくる人を貶すな。人間関係壊れるぞ」
「ごめんごめん。あんたならいい気がしてな」
「まぁ、あの程度やったら罵倒のうちに入らんからええけどな」
「やっぱり異常者やんか」
「じゃあ、お先に失礼します」
そう言って俺は流れるように生徒指導室の窓から飛び降りた!
「あ、待って! うちも行く!」
そんな感じで愛花も続いて飛び降りた……
次回、「大阪系美少女と美少女系変装男」
期待をするのはやめてくれ、次回をほどほどにお楽しみにね!
奇跡ぐらい起こせなくて何が人間か!
なので僕は人間じゃない