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関西弁女とハイテンション男

書き直し終わりましたよ!

3月2日

4時21分(真の完成)


この作品のタイトルの略称をつけるなら、「関敗 笑」でしょうね。

前回の簡単なあらすじ

 突然、どこの誰とも知れない殺し屋少女にスマホを壊され、師匠に助けられ

、さらに投げられた。以上です!



 投げられた、さてどうしようか、と言った感じで着地体制になるように体をひねり動かした。

「いや~、投げられたけど、着地どうしよかな。師匠は変なところで優しかったりするしな、たぶん学校の方に投げてくれたはずやし」

そんな虚しい独り言を言いながら下の様子を見ていると、大川沿いの学校が見えてきた。そのとき、だんだん高度が下がりはじめ、着地点が明らかになってきた。

「まじかよ、俺を学校に直で投げ込んだのか。やめてくれよ~変に目立つじゃんか~、俺のあだ名が"メテ男"もしくは"サイド2"になってまう! 最悪や~、不名誉すぎるやろ~」

そんな嘆きも虚しく、俺は学校の校庭のど真ん中に落着した。

俺が落着した部分はクレーターを作り、俺はクレーターの中心にぶっ刺さり、肩まで砂の中に浸かった。

「やべえ、肩まで土に浸かった。んー……はっ! 抜けられへんし、どうしよかな」

「うわぁ、こんなところに人間生えてる。嘘やろ……人間て、土から生えてくんねんや、知らんかったわ!」

唐突にThe関西人って感じの制服を着た女がわざとらしく声を上げ、こちらに歩いてきた。

「人間が土から生えてくるわけないやろうが! 保健体育受けんかったんか? まぁ、俺は受けてないんやけど」

「受けてないやつには言われたないな」

「受けへんかったやつに知識量負けてるのおかしくないですか?」

「うるさいわ! そういう知識ばっかり持った盛りの着いた猿のくせに」

「誰が猿や! 俺は人間や!」

「えっ、人参?」

「誰が収穫前の人参やねん!」

「そろそろ時間もあれやし、講堂の方に行こかな」

話しかけてきた女は、土の中に埋もれた俺をスルーして、講堂の方につま先をを向けた。

「おい! ちょっと待てや」

俺は思わず引き留めた。

「ん?」

「ここに、埋まった人間がおるじゃろ? ちょっと助けてみたりしたら、いいことあるかもよ」

「いいことって?」

「俺が友達になるとか? 人間関係が一つ増えるとか?」

女は講堂の方にまた、足を進め始めた。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

「は?」

「は? って……。まあええわ、お嬢ちゃんここにちょうど収穫時期の人型の人参がおるじゃろ? 収穫してみてはくれんかのう」

「ふっ、ふふふははははは!」

女は突然笑い出した。

「ええよ、ふっ……収穫したるわ。ふふっ」

女は俺の髪をつかみ、体重を乗せて引っ張った。

「痛い痛い痛い痛いハゲるハゲるハゲる! なんで髪の毛引っ張んねんはげるやろうが! ただでさえ親父がハゲてて将来はげるかもしれんのに」

「えっ、人参収穫するときって、葉っぱの部分を引っ張るやろ? あ、何本か抜けた」

「髪の毛は水分も通ってないし、光合成をするためにあるんとちゃうわ! あほー」

俺は弱々しい声で罵倒した。

「おー、なかなかええ声出すやないか」

「お気に入りの声ならなんぼでも出したるから、早くここから出してくれへん? サディストの女王様」

「誰がサディストの女王や! あと、あんたの声とかあんま需要ないから変な声とか出すなよ!」

「お前、俺の本気の女声聞いたことないやろ」

「わるいな、うちはレズビアンやないねん」

「いやいや、男の艶っぽい女声ってなんか、興奮するやん」

「あんたゲイなんか? 女子の側から言うとそっちの方が安全なんやけど」

「残念やけど、俺はノーマルな年上好きやで。あと、そろそろ出してくれへん? ホンマに抜けられんくて困ってんねんけど」

「じゃあ条件を呑んでくれたら、助けたるわ」

「わかった、呑む」

「即答かいな……まあええわ、さっき引っ張った感じやと、うち一人じゃ無理あるし、助け呼ぶわ」

とか言って女はスマホから、電話をかけた。

俺はそれを「自分で助けるんじゃないだ」という目で見てやった。

「もしもし……うちやけど、今ちょっとグラウンドの方に来られへん? ……うんそう、埋まった人を見つけてんけど、一人じゃ時間が足りんからお願いするわ。うん、ほな待っとくで」

電話が終わったようだ。

 「いったい誰が来るんだろうか」などと、考えを巡らせて二分ほどが経ったとき、校舎の方からスーツに白衣を羽織った女性がかけてくるのが見えた。

「あれは誰なんや? 単純に考えたら先生とかやけど、入学式当日やしお偉いさんも可能性はあるか……」

「あぁ、あれはうちの従姉でここの教師や!」

「一週間ぶりだな、セーラー服似合っているじゃないか」

「そっちこそ普段のだらしない恰好より、全然ええで」

「そういうことは他の人がいないところでしてくれないか」

「そんなこと言うたって、周知の事実やろ」

このまま話が進むとこのまま数日放置されそうなので、声を出してみる。

「あの、そろそろ助けてもらえると嬉しいんですけど……」

「え、あぁごめんごめん忘れてたわ。えーっと、なんやっけ? なんでも言うこと聞いてくれるんやっけ?」

「実質的にはそうかもしれんが、言い方ってもんがあるやろが!」

「私のお願い事も聞いてくれるのか?」

「助けてくれるなら、聞きますよ一人分も二人分も変わりませんし。俺なんかにできることなら」

「いやいや一人分も二人分もって、ご飯作るんとちゃうんやからな」

「ご飯は炊飯では? あっ、稲作農業か!」

「誰が白飯の話や言うた?」

「まぁ、それはいいじゃないか。それより今はどうやってこの人参いや人間を収穫するかだ」

「先生、人参ネタはさっきやりましたー」

「とりあえず、シャベルとかスコップとかで周りを掘るとかしてみる?」

「それ俺けがせえへん?」

首をかしげて俺は訪ねた。

「ちょっと刺さるかもしれんが我慢してくれ、君のためだからな」

「普通に引っ張り上げるとかじゃだめですか?」

「それさっきやったやんか」

「いやいや、お前引っ張るとこ根本的に間違ってたやんか」

「じゃあ紐か何かをわきの下に通して、それを引っ張るのは?」

「じゃあそれでいいのでちゃっちゃとやっちゃってください。お願いします」

先生が倉庫と思われる建物の方に走っていった。

 「それで、俺は何をお願いされるんや?」

「なにを隠そうそれは!」

女が仁王立ちで腕を組み純粋な目をこちらに向けた。

「うちの恋愛をアシストすることや!」

それはそうと彼女は女性用の制服、つまりスカートを装備しているため、下着もしくは肌着が俺の眼前にあらわになった。

俺は思わぬ出来事に顔を赤面させてしまった。

「なぁ、恋愛をどうたら言う前にまず、下着または肌着を隠せよ。どきどきしちゃうだろ。SでMとか最強すぎるやろ!」

女はすぐに仁王立ちを解除し、スカートを抑え一歩下がり、顔を赤面させて俺の顔面をおそらく本気で蹴った!

俺の顔は足がめり込むようにへこんだ。まるで、漫画のように。

「誰が“ドS”PLUS”ドⅯ”の最強の痴女で露出狂や!」

「誰がそこまで強化するか! 俺はせいぜいプラモに墨入れしたぐらいのもんや! あと顔がへこんだわ!」

「あ、やっと来たわ」

そう言って女は先生がさっき走っていった方向を指さした。

指さした方向に顔を向けるとひも状の物を持って走ってくる先生の姿があった。

「それじゃここともお別れか、寂しくなるな」

「いやいや、埋まってから数年たってやっと出れるようになったことで出た、哀愁を埋まってから数分で感じられても地面が迷惑やろ」

「地面が迷惑ってここ数年で稀に聞く意味の分からない言葉やな」

出れる目途が付いたおかげか、少し体を右に左にと出ようとする動きをしてみた。すると、初めに右腕が穴から脱出し、次に右足が脱出し体制が大きく変わった。

「あんたなんで間違った半身浴してるみたいになってるん? というかそれもう出れるんとちゃうん? もうちょっと頑張りぃや」

「出れそうやねんけどさ、なんか新感覚の砂風呂左半身浴って感じで感じたことない感覚に襲われてて、なんかもったいなくなってきたわ」

「じゃあそのままそこで人生棒に振ってみたらどうや?」

帰りたくないという子供を見るような目で女はそう言った。

「あぁ、俺の人生なんか棒に振ったところで人類にとってあまり意味はないし、特別な力もないし、目の前にいる女すら救うことができないような、俺の人生なんてこうして地面に埋まったまま、何もしないで終わっていくんだな。というかそっちの方が人類のためじゃね? そうだ、とりあえず誰にも迷惑をかけないように人生を終了しないと……あ、もう人に迷惑かけてたわ……その分の償いをしてないからせめて、迷惑をかけた人の役に立ってから死のう! あぁ、なんか活力わいてきたで! ジンジンきたきたぁ! とりあえず目につく人間手当たり次第に役に立ってやるで! ということで最初に目についた、お前の役に立つにはどうしたらいい?」

「とりあえずそこから出たらどうや? 話はそれからや」

「それは、お前の役に立つのか?」

「いちいち確認せんでええねん! 子供かあんたは!」

とりあえず言われたとうりに、地面から出てきた。

「は? 小児科受診してないけど?」

「まぁ、成人してないんだから少なくとも、大人ではないな」

先生が到着し、会話に入ってきた。

 「あの、無駄足させてすみません」

俺は90度のお辞儀で、謝罪の意を示した。

「それはいいよ。お願いさえ聞いてくれればね」

「そのお願いって何ですか?」

「おっと、もう入学式が始まってしまうぞ君たちはさっさと講堂の方に行きなさい!」

「ぶっちゃけ入学式とかいいんで、先生のお願いごと聞かせてくださいよ!」

「悪いが見ての通り私も入学式に参加するから、それはできない」

「いやいや、お願い事をさっと言うぐらいはできるでしょ」

「じゃあまだ決まってないってことでいいから行きなさい。てか私も行かないといけないんだった。急がないとまーたぐちぐち文句言われる!」

そう言い残して、先生は講堂の方にすっ飛んで行った。

「それじゃあ俺たちもぼちぼち行こか」

「そうやな」

俺たちはやっと入学式の会場である、講堂に向かい始めた。

 そんなこんなでついに入学式、というオブラートに包まれた、合コン会場にやってきた。

最近は、入学式で出会ってその日のうちに付き合い、いろいろとすっ飛ばしてホテルもしくは家で淫行をするのがかなり普通になっているらしい。そんな倫理観もくそもない連中の餌食にならんように、深く自分の心に誓いの旗を突き刺した。(めっちゃ痛い)

そんな無駄な覚悟を決めながら、入学式の会場という魔境に人間様と足を踏み入れた。

流れるように入学式の受付を済ませ、俺たちは指定された席に着いた。

俺は入学式の空気間に孤独感と不安感に心を乱された。

ほんとに情けない……

「さっきまでは、隣の女のおかげで新しい環境の始まりから、目をそらすことができたけど、今はもう無理というか、もう帰りたくなってきた。でも俺がこの高校を選んだのは、間違いではないと思うし、全く新しい環境でどれだけ一人でやっていけるかもあったわけやから……結局何が言いたいねん!」

「それはこっちのセリフや! なんやねん、さっきから気が滅入るようなことばっかり言いよって! うちまで入る高校間違えたみたいな気分になるやないか!」

いきなり隣の席の関西弁の女が、勢いよく俺の不安でいっぱいな発言を聞いて、文句をいっぱいに込めた軽い拳で俺の背中をど突いてきた。

彼女はツッコミをするために生まれてきたのかもしれない。

 「でもしょうがないやないか!」

「あ?ショウガなんて今なくてもええやろ」

「なにが神社やねんそんなもんどうでもええわ」

「生姜がジンジャーで神社とは、めっちゃしょうもないな!」

「そんなに驚いたような顔されてもお前には言われたないわ!」

「冗談やって、ちょっとあんたを試しただけや」

「で、俺の評価は?」

「合格やなとりあえずM1エントリーしとくで」

「俺に出場資格あるんかなぁ?「魔法少女の世界1を決めるグランプリ」略してM1グランプリ」

「そんなんあるわけないやろ、あほか!」

「やはりないか……出場資格」

俺はうつむき、残念そうに言った。

「ツッコんだのは「魔法少女の世界1を決めるグランプリ」のほうや‼」

「ちなみにお前は初戦敗退な」

「なんでやねんうちのどこに負ける要素があんねん!」

なんでそんなに自信満々やねん……

「理由は、魔法の審査でいきなり一人コントを始めて最後に「以上人を笑わせる魔法でした!」って言って審査員に「お帰りはあちらです」とか言われて出場を取り消しされるから」

「よくこんなしょうもないやり取りで私のことをそこまで理解できたもんやな、探偵にでもなったらどうや?」

「あんま探偵って儲からなさそうやからやめとくわ。というかお前を理解したわけやない、普通にやりそうでやらなさそうなとこでボケたつもりやったんやけどな……」

「衝撃のボケつぶしやったんやな。それは悪いことしたな。私にとっても笑いは大切なものやから、ボケつぶされたときの気持ちはわかるで」

「まぁ、俺にとって笑いは唯一、幸せを感じていいものだと思ってるので大切っちゃ大切やな。あ、ついでにお願いごとの内容聞いてもええか?」

「そうやな、じゃあ私の友達になって好きな人と付き合えるように手伝いをしてくれへん?」

「一目惚れしました!好きです!付き合ってください!」

「あんた、好きな人居る言うた直後に告白するとか、ボケでも中々に頭いかれとるな」

「はいはい、とりあえず友達として協力者として精一杯やらせてもらうわ」

俺は「高校に行く他にやることもなかなかないし、ちょうどいい暇つぶしくらいにはなるかもしれんしな。あわよくば友達や彼女の数人ぐらいなら作れるかもやし、動機は不純でもできるんやったらええやろ」て感じで軽く引き受けた。

 「よし、それじゃあ細かいことはLIONでやり取りするから交換しよか」

「まだ時間あるしいいか。じゃあQRコード出すから読み取って」

「はいは~い。よし来た! って、え? これ、名前おかしない?」

「そうか? アカウント名とか適当に決めてるから、わからん」

「だって、「DV夜之丸」やで? 絶対名前の前の英語おかしいよな? ついでにアカウントの自画像は某”超時空要塞”シリーズの歌舞いてそうな赤い前進翼機の画像やし」

「DとVは画像に合わせて書いただけやで?」

「とりあえずニックネームは「お手伝いさん」にしとくわ」

「俺は家政婦とちゃうぞ!」

俺は女の頭を軽く叩いた。

「いて!」

 「そういえば話変わるけど、友達さんお名前は?」

「人の名前を聞く前にまず自分から名乗るべきなんちゃう?」

「そうか?俺の名前は那須原夜之丸。那須原は栃木県の那須原市の那須原で、やは夜で、のは芥川龍之介の之、まるは円の丸で夜之丸」

「へえ、アカウント名の”夜之丸”ってお前の名前やったんやな、てっきりアニメとかのキャラかなんかやと思ってたわ」

確かにそれは否めない……絶妙なキラキラ度合いやで。

「うるさいな、名乗ったんやから次はそっちの番やで」

「うちは平坂愛花、平たい坂で平坂、愛おしいの愛に、咲くほうの花で愛花」

「俺に比べたらいい名前やな」

でも、こいつ「平坂」より「平板」って感じだよな。特に胸部パーツのとことか。まさにウユニ塩湖のように真っ平で綺麗な胸部装甲だ!

「なんでやろうか、ものすごく失礼なことを考えてる人がおるように感じんねんけど、具体的に言うと、「こいつ「平坂」より「平板」って感じだよな。だって平たいだけで坂なんてどこにもないじゃん、あるとしても超えられない壁だよな」とか考えてるやつが半径1メートル以内に居るように感じたんやけど」

「なんでわかったし。お前、心読めるんか⁉」

「いやいや、あんたの顔に全部書いてあったぞ」

「それでも俺の心を完全に読み解くことはできんかったようやな」

俺は腕を組み、勝ち誇った風格を出した。

「じゃあ、ほかにどんな風にうちの胸を侮辱したんや?」

「いや、あの、すー、えっと、ウユニ塩湖みたいに綺麗で真っ平だなと……」

「そんなにうちの胸は平らに見えたんか……」

愛花は自分の胸を気にしながら、そう言った。

「えーっと、ほら誰かが言ってたで、「貧乳はステータスだ! 貴重価値だ!」って。あとほら、俺はすらっとした女子が好きやで」

「あんたが好きでも意味ないやんか……」

愛花は急に自身がなくなったように落ち込んだ。

情緒が読めない。

「そんなに落ち込むことないやろ、俺にはそこそこの運動能力しか誇れるものがないんやから」

「そうやな、あんたと比べたらだいたいはうちが勝つやろうしな」

「自尊心あるくせにいちいち落ち込むな。あと俺をバカにすんな」

 アナウンスが入学式の開始を伝え、新入生はシーンと静まり返り、司会と思われる先生が舞台に上がるが、そんなのかんけぇねぇ!と、言わんばかりに声の音量を変えず喋る二人、そんな二人の会話。

「あ、あの先生さっきの人か? 俺の面接の担当もしてたなそういえば。それにしても美人やな」

「へえ、那須原くんはあんな感じのがタイプなんか」

「まあどっちかって言えば年下より年上のほうが好きやな。さっきも言ったけど」

「へぇ、あ~そうなんや。手伝ってくれるお礼にうちがあの先生とくっつけたろか?」

「なんでやねん!仮に付き合いたいとか思っても、一人でやりたいと思うし、いらんわ」

「そういえば高校を間違えたみたいな話してたけど、どういうことや?」

「というか入学式の話聞かなくてええんかな」

なにか悪い気がして、そんなまともなことを言ってみた。

「え、さっきから聞いてるやん」

「まじか、言うて俺もなんとなくで聞いてはいたんやけど」

「そんなに驚くことでもないやろ。ただでさえマイクでうるさなってんねんから」

さも当然のように、愛花は言った。

「それはそうやな。ていうか思ったんやけど入学式って必要事項より不必要事項のほうが多いよな」

見栄を張ったものの会話にぼろが出ることを危惧し話題転換を俺は図った。

「そうやな、知らん人のお祝いの言葉とかどうでもええわ」

「あと、入学式の受付でいきなり歌詞渡されるけど誰一人として歌うことのない校歌斉唱」

「そうそう、歌詞がわかってもリズムどころか雰囲気すらわからんのに無茶ぶりが過ぎるよな」

二人が楽しく会話を続けているが、周りの視線はとてつもなく冷たいもので、「あいつら、さっきからうるっせーんだよ! 入学式ってことを忘れてんじゃねぇの。ほんまにこれやから、コミュ強とか陽キャとか空気読めん奴は爆散してほしいわ!」などと訴えているような、殺気のこもった視線を向けるものが所々にいた。

そんなことに二人は全く気付く様子もない。

 「そこの通路右側の後ろから3列目の真ん中の生徒二人! 入学式ぐらいは静かにできないのか? 式が終わり次第生徒指導室に来なさい!」

さっきまで挨拶していた校長先生が俺たちに注意を促した。

正直目立つような注意の仕方は、やめてほしい。晒し物になるから。

「返事もできないのか?」

思わぬ皮肉が飛んできた。俺たちを猿人類かチンパンジーだとでも馬鹿にしてるんやろか。

「返事をしていいんですか、それでは遠慮なく。ワイらはこのあまり意味を感じられない暇な時間をどうにかして楽しい思い出に変えようとしていただけでありますぅ。あと、生徒指導室に行かなければならない、理由がわかりまへん!」

ふざけて返事をしてみた。

講堂の中の数人が静かに笑った。

「ふざけるな! 私は返事をしろと言ったのであって反論をしろなんて言っていない。それに、生徒指導室に行かなくてはならない理由も考えればわかるはずだ!」

「すんません、中学校に生徒指導室がありまへんかったので使用用途がわからないんですよ~。それに~、入学式という強制参加のイベントを開いているのは学校側ですよね。じゃあなんでただでさえ入学式に来ることを強制されているにもかかわらず、強制されて来た場所でのFreedomを奪うんですか?

別の学校では、それなりに楽しい入学式をやっていたりします。少しは強制されて来ている人たちがそれなりに興味を持ちそうな内容にしてみたらどうでしょうか?」

「言い分に多少は理解できるところはあるけどやめときぃや」

愛花が少し心配そうに小声で伝えてきた。

「例えば?」

校長がうまいこと乗ってきた。どうやら、校長の頭から入学式ていう単語が抜け始めてるようや。

「たとえで言うのならそうですね、先生のかくし芸大会だったり、さすがに無理があるかもしれませんが、オリンピック出場選手や芸能人、歌手、人気動画配信者、インフルエンサー、大阪府知事、大阪市長などの著名人を呼ぶことや新入生交流会などの自由参加の場合でも「面白そう行ってみようかな」と興味を強く惹かれるようなものとかです!」

なんか言えそうな雰囲気なので、好き放題言いたいことを言い始めた。

「それはそうかもしれないが、大人の事情というものもあってね、簡単に入学式の内容を変えることはできないんだよ!」

「入学式で先ほど言ったようなことをするのが難しいのなら入学式ではなく、夏休みや冬休み、春休みと言った学校から長く離れる時期に学校もしくは、部活や委員会主催でやってほしいです!」

話題を少しだけ、そらしてみた。

「それでは学校側や委員会、部活動に負担を強いることになってしまう。言うだけなら簡単だがそれを実現させるために君は何をするんだ?」

「その質問を待っていたぞ校長先生! 自分が何をするのか、それは催しを企画、実現する、新たな部活もしくは委員会を爆誕させることです! 名前はそうですね、「理想の学校生活を実現させるためにイベントを企画、実現を目指し、自由に生徒たちの青春を追い求める会」略して「理想実現部(仮)」と言ったところでしょうか」

「面白そうな話をしているところ申し訳ないが、入学式を再開してもいいだろうか? それと、話の続きをしたいのなら、このあと生徒指導室に来なさい。なぁに、あの校長なら面白い話の一つでもすればわかってくれるさ。頑張ってみなさい、少しおかしな少年」

校長より10歳は若い男の理事長先生が冗談交じりに止めに入った。

「あのー、入学式を邪魔してすみませんでした?」

こうして、入学式という本来何も起こらず流れに身を任されるだけでいい行事の中で、校長に自分の理想を語り、あろうことか本来理想で終わるような世迷言が理事長に面白そうと言わせるところまでもっていきましたよ。こいつとんでもなく非常識だな!

 「ふぅ、なんとかなった~」

俺は意味の定かではない口喧嘩が終わったことに安堵の息をついた。

「あんた、あんなようけ人が居るとこで、よくあないなこと言えたな。しかも校長に」

「なんか「返事もできないのか?」っていう文言にムカついたっていうのと、大人に反抗して自分の意志を押し通したいっていう謎の欲が出てきて、あとは思い付きで頑張った!」

「あんた頭どうかしてるんちゃうか」

「そうか、ならちょこっと頭の中見てくれへん? ウジ溜まってるかもしれんから」

「うわ、きたな」

「冗談言っただけやのにひどいな。ちょっと黙っといてくれへん?」

「断るわ」

「はいはい」

「はいは一回!」

「ふんふん!」

ほっぺを膨らまして、かわい子ぶって俺は言った。

「「ふんふん」ってなんやねん! 適当なのはツッコみにくいからやめてくれ。あと、ちょいキモイ」

愛花は少し嫌悪感を持った顔をしやがった。

「そうやな返事はもうちょいわかりやすくボケなあかんな」

「なんでやねん! なんでやねん?」

「自分のツッコミに疑問を持つな!」

「それはそうやな」

 「それはそうと平坂愛花は生徒指導室に行かへんでもいいと思うで」

「なんで?」

「さっき理事長先生はなんて言うたっけ?」

「まぁ、理事長は最終的にあんた一人を呼び出した、と解釈したら行かんでええかもな」

「でも、間違って解釈したことにすればすぐに帰れるぞ!」

「それであとから呼び出しくらうのもあほらしいから念のため一緒に行くわ」

「今日暇なんか?」

「そうやな、今日は予定ないなこれ以外」

「そうか、それはよかった。実を言うとめっちゃ心細かったから助かるわ!」

「安心しとき、せっかく捕まえた協力者をみすみす逃すわけにいかんからな!」

 「それはそうと、聞きたいことがあるんやけど」

「なんや?例の件についてのことやったらだいたい答えるつもりやけど」

「お前の好きな人を教えてくれ」

「えっと、それは大事なことやしな絶対に知られることになるんやからもうええか。それでは改めて、私の好きな人は. . . 」

「ちょっと待て、そんなどこにいるかもわからない本人に伝わるくらいの声量はやめろよ」

「危ない危ない、早くもGAME OVERになるとこやったわ」

「いやいやなにも知られた瞬間死ぬわけじゃないんやから、でも死ぬんやったら"You are Dead"になるか」

「そないなことどうでもええねん」

「そうやなとりあえず耳打ちとか、手話、筆談、アイコンタクト、ニ〇ータイプ空間、フォールドク〇ーツ、無線、電話、写真、メール、ダイレクトメール、ディスコード、Telegram、以心伝心、話す、手紙、伝書鳩、看板、コマーシャル、ラジオ、テレビ、ビデオレター、絵、地上絵、俳句、川柳、詩集、詩、短歌、歌、曲、演奏、MV、PV、絵本、漫画、小説、脚本、アニメ、映画、特撮、フィクション、ゲーム、二次創作、クイズ、尻文字、点字、テレパシー、コメント(某NIK〇NIKO動画、Y〇utubeなど)、投稿(SNS、某動画サイトなど)、拳、アテレコ、記者会見、緊急速報、防災無線、電波ジャック、感想、トランザムバー〇ト、クアンタムバー〇ト、記憶改変、融合、腹話術、刺繍、ヒント、Wikipedia、ありとあらゆる言語、翻訳、字幕、言葉、指を差す、誰か経由、アイドルになる、女優になる、動画配信者になる、インフルエンサーになる、報道関係者になる、アナウンサーになる、芸人になる、国会議員になる、王になる、天皇になる、総理大臣になる、大統領になる、独裁者になる、異能力者になる、救世主になる、神になる、新世界の神になる、ダイニングメッセージ、人間を操る、世界の中心で叫ぶなどいろいろ手段はあるぞ!」

なんでこんなに早口で、しかも思い付きで提案したんやろうか?

ボケるにしても長すぎやしな。

「……」

言葉の物量に驚愕しているのか、愛花は言葉を失った(憶測)。

「どうした? はよ教えてくれよ」

「どうしたもこうしたもあるか! ツッコミどころが多すぎて思考回路ショート寸前やわ!」

「そうか? 普通の現実的な提案やと思ったんやけど」

「お前は宇宙世紀の生まれなんか⁉ それとも三世紀後から来たんか⁉」

「いいや、俺はレイハントン家の生まれや」

「あんた、姫様やったんか?」

「いや、運航長官の息子やけど、そんなことはどうでもええねんほら言うてみ彼の名前」

「そうやなじゃあ言うで」

「はよ言えや」

「うるさいな」

「お前の好きな人が気になって寝られへんなったらどうすんねん!」

「「輝夜岬(てやさき)彩葉(あやは)」や」

「もう一回」

「見たことがあるかもしれんその名前。さっきまで名前の読み方はっきりせんかったけど、今ピンと来たわ」

「下の名前はともかく、苗字はおかしいよな。で、なんで見たことあんの?」

「この学校ってホームページに部長、副部長、委員長、副委員長の名前を載せてるやろ」

「そうなん?」

「え、受験の時に見ぃひんかった?」

「合格することしか考えてなかったから」

「恋は盲目ってこういうことを言うんやろうな」

「で、彩葉兄ちゃんはどこの所属なんや?」

「確か、冬季運動部の副部長やったと思う」

「冬季運動部ってどないなことをしてんの?」

「文字から考えるに、一般的にウィンタースポーツって呼ばれてる部類に限った運動部とかちゃうか? 知らんけど」

「普通に考えたらそうなるな」

「ちなみにウィンタースポーツに入るスポーツの経験は?」

「うちは、スキーが5回とスノボが3回どっちもまだ初心者レベル、スケートは何回か忘れたけど人並みに滑れる程度」

「俺はスキーが11年目でスノボはまったく無理で、スケートは多分人並み程度。それで、お前の思い人はどんなもんなんだい?」

「うちが知る限りは、スキーが初心者レベルで、スノボは少し滑れるようになってきたって言っとったで! スケートは技はでけへんみたいやけどスピードは出るらしいで」

「なんで、そんなにあやふやなんや?」

「部活の話をちょこっと電話で聞いてたりしたからやな」

「じゃあなんで部活のことを知らんかったんや?」

「あ……忘れてた」

「忘れるようなことやないと思うけど……。そういえば、記憶違いやったらあれやけど、たしか二前はこんな部活なかったんちゃうかな?」

「そんなに気になることか? 単純に新設された部活やないん?」

「いや、確か師匠によると二年前はスキー部って言うのがあったらしいけど」

「あ、なんか新入生みんなで写真撮るみたいやな。うちらも行こか」

「あぁ、うん」

そうんな感じで俺たちは席を立ち、新入生の列に混じった。

 入学式最後のプログラム、新入生全員での写真撮影がすんなり終わりを迎え自分の席に戻ろうとしたとき、ポケットに何か入れられたような感覚がしたと思い、ポケットに手を入れてみると4つ折りになった紙が入っていた。

紙を開いてみるとそこには、かわいらしい文字で「入学式が終わったら教室棟の屋上にきてください」という風にラブなレターか、はたまた果たし状なのかもわからない。それに加えて、差出人さえ不明。

正直行きたくはないが、差出人に待ちぼうけを食らわせるよりは、決闘に応じるほうがまだいい結果になりそうだしな。

まあ、決闘なんてしたら捕まるけど……あぁ、どうすればいいんじゃろか。

「こんなもんポケットに入れられたんやけど、どうしようかな」

自分じゃ判断がつかないため、愛花に聞いてみる。

「どうしようって言うてもな……。そうや、とりあえずうちが先に生徒指導室に行って先生と話といたるから、すぐに行ってこい」

「いいんか? まじですまん、恩に着るわ。あとでお礼はさせてもらうから!」

そして、少々のトラブルはあったものの、無事? 入学式が終わりを迎え、ようやく次の話に移れます!

次回「教師(27歳)女と告白男」に、十年以上続編が来ないアニメぐらいに期待していてください。

このまま勢いで頑張ります。


ちなみに、夜之丸のLIONのアカウント名は最初「グ〇ザイアのぬ〇たし ~F○te.ヨ〇ガDays~」にしようとしてました。

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