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第七話 教育合宿の始まり

第七話 教育合宿の始まり


 入学四日目の朝、クレア達は学園のグラウンドに整列していた。

「諸君、今日から二泊三日でオトナリ湖での教育合宿を開始する。

 頑張るように」

 学園長先生の簡潔な挨拶の後、教員代表としてAクラス担任のアーギュスト先生から合宿の内容が伝えられた。


 ちなみに、クレア達へ事前に連絡されたのは、二泊分の着替えと移動時の水分補給用水筒だけである。学園生はそれらを鞄やリュックサックに入れて持ってきているが、クレアは手ぶらであった。


「クレア様、お荷物はどうされたのですか」

 アナベラが小声で聞いてくる。

「ああ、私、収納空間を習得していますの」

 と、クレアはいい、懐の内ポケットからそこに入りきれないサイズのリュックサックを取り出してみせる。

「まあ、内ポケットが魔法空間になっているのですね、素晴らしいですわ」

 正確には、他の生徒から見えないように、収納空間への接続先を内ポケットにしただけで、クレアの内ポケットそのものが魔法道具になっているわけではないが、誤解されても問題ないレベルなのでクレアは頷くだけにとどめて置いた。ちなみにその容量はレベルにふさわしく膨大な量で、クレア自身、どれだけ収納できるのかよく分かっていない。ひょっとしたらこの星ごと収納できるのではないかと考えたこともあるクレアだが、試したことはない。


 そうこうするうちにアーギュスト先生の説明が終わる。

 要約すると次のような内容だった。

1.合宿先のオトナリ湖は学園から30kmの距離にあり、そこまで各自、地図を片手に自力で行くこと。

2.途中に森があり、馬車では通り抜けられないこと。

3.夕方6時までにたどり着くこと。但し、森の中は整備されていない道もあり、稀に魔物も出るので各自で対処すること。

4.手におえないときは緊急事態発生用の発煙筒を炊いて先生を呼ぶこと。

5.途中で夕食用の食糧を調達すること。

6.チームを作ってもソロでもよいこと。チームはクラスの枠を超えてよいこと。

7.着いてからのことは現地で説明すること。

 以上である。


「これってサバイバル訓練みたいですわね」

 クレアが呟く。

「そうですわ。先輩方の話では自給自足な上に、魔物討伐実習まであるかなり危険な合宿だそうですの。

 クレア様は知らなかったのですか」

 アナベラがクレアのつぶやきに対して説明してくれる。

「知りませんでしたわ……

 私だけならなんと言うこともない訓練ですけど、体力測定の様子を見ると、大変な方もいらっしゃるのでは?」

「うっ……、その筆頭が体力の無い私かも知れません……」

「アナベラ様は魔法が得意ですから、魔力切れと体力切れに注意して行動すれば大丈夫じゃありませんか」

 クレアの言葉に少し考えていたアナベラだが、首を横に振って否定する。


「たしかに、魔法は得意ですが、クレア様のように魔物を一撃で屠れるほどではないと思います。実習では弱い魔物だけに当たるとは思えませんから、やはり不安ですわ」

「それなら、私とチームを組みませんか。私、ある目的のためともに戦える人を探しているんですの。けれど体力や魔力の測定の様子を見ていると、私と現状で競えるほどの人がいないようですので、できれば私が適性のありそうな方に指導させていただいて未来の共同戦力を育てたいと思っていたところですの。アナベラ様なら魔法の伸びしろがとてもありそうですし、体幹がしっかりしていらっしゃるから武術もかなりいけるのではないかと思っていたのです。よろしければともに行動して私の技を吸収してみませんこと?」


 どうやらクレアは、来たるべき組織との構想を見据え、自ら戦力を育てることにしたようだ。

「クレア様に教えていただければ私も実力が向上するかも知れませんね。是非お願いします」


 アナベラが同意すると、彼女の取り巻きをしているタニアとトレニアがおずおずとしながら前に出てきた。

「クレア様、もしよろしければ私たちもクレア様のチームに入れていただけないでしょうか」

「私とトレニア様はアナベラ様と一緒に教育合宿を乗り切ろうと思っていたのです。出来れば私たちもともに行動させてください」


 二人の申し出に少し考えてからクレアは返事をした。

「これ以上、人数が増えないのであれば二人の参加は歓迎ですわ。けど私以外のメンバーが4人を超えると、当面は行動に差し障りが出ると思いますから、しばらくの間これ以上は増やさないでくださいね。皆さんが十分に育ったら、今度は他の方を皆さんにも御指導いただいて育てていきましょう。最終的には47人の戦士が育てばいいなと思っていますの」

 クレアの返答に他の三人は、なぜ47人なのかという疑問を抱いたが、そこはスルーしてニコリと笑い頷いた。

「はい、よろしくお願いします」


 クレアは明らかに自らがお気に入りのダークファンタジー世界を想定しているのだが、アナベラ達三人にはそんなことは分からない。けれども、出来たばかりの友達を思って、クレアとの関係を大切にしてくれているアナベラ達なのである。

 最も、乙女ゲームの世界であるこの世界が、クレアの想定するようなドロドロの抗争と殺戮に染まっていくとも思えないのだが、海の向こうの大陸では今なお絶賛戦争中であることをおもんばかれば、万一のことが起こらないとは言い切れないかも知れない。




 その後、アーギュストの指示で班を組むかソロで行動するか各自に考える時間が与えられ、15分後に、方針が決まった生徒から目的地の湖への移動が開始された。







ここまで読んでいただきありがとうございます。よろしかったら、感想、たくさんの★、レビューなど、よろしくお願いします。

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