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第二話 学園入学

第二話 学園入学


 さて、一晩明けて学園入学式の朝、全寮制であるため荷物は先に送られており、午前中に入寮を済ませ、午後から式典に臨むことになる。

 さすがのクレアも今日ばかりは夜中の脱走を自重し、朝はなんとか間に合う時間に起床することに成功した。と言っても5年間の生活習慣を突然変えたため、一種の時差ぼけ状態でやや思考がまとまっていない。


 そんな中、ほとんどの新入生は滞りなく自室となるそれぞれの寮へとたどり着く。この学園の学生寮は、支払える寮費によって部屋のランクが分かれている。

 侯爵家であるリッチモンド家は最上級の部屋を借りようとしたのだが、最上級の部屋だとおつきの使用人を2人まで住まわせることが出来るのを嫌ったクレア本人によって却下された。

 自由に行動したいクレアは、

「飛翔魔法で抜け出すには監視の目がないに限る」と、自主性や独立心を育みたいからというもっともらしい理由で両親を説得し、使用人を連れて行けない無料の狭い部屋へ入寮することに成功した。個室なので抜け出すのは簡単そうだが、周りは当然、経済的に恵まれない没落貴族や爵位の低い貴族、そして特待生入試を突破した優秀な平民ばかりである。

 元々、貴族同士の社交を積極的には行っていない脳まで筋肉なリッチモンド家であるため、同級生に知り合いは少ない。というか、いない。


 入学式に出席するため、持ち込んだ保存食で簡単な昼食を済ませ、一人で格安無料の女子寮入り口を出ててくてくと大講堂へ歩いていると、高級高額寮から使用人や取り巻きをぞろぞろ連れた金髪蒼眼のドリル頭が近づいてきた。

「あら、嫌だ。

 貧乏人がいますわ」

 取り巻きの一人がクレアを指さしながら馬鹿にしてきた。


「トリニア様、貧乏な方をそう馬鹿にしてはいけませんわ。

 あの人たちの中にもこれから私たちのために働いてくれる貴重な将来の戦力となる人もいるのですから、最初から相手を馬鹿にしていては良好な関係が築けないし、悪い噂が広がれば優秀な方と雇用契約を結べなくなりますわ」

 ボス的ドリル頭がクレアを馬鹿にした取り巻きを注意する。

 上から目線で高圧的な物言いに聞こえなくもないが、一概に下位貴族を認めていないという訳でもなさそうだ。


「そうは申しましてもアナベラ様、あの者が私たちより先に行くのは納得できませんわ。

 下々の者は高貴な私たちよりへりくだって頂かなくては」

 別の取り巻きがアナベラと呼ばれたドリル頭に進言する。

「タニア様、学園では皆平等ですわ。それに夜会やパーティーでも身分が下の者は先に入って高貴な方々を待つのが慣例です。

 下位貴族や平民だから後ろを歩けというのは少し違うと思いますわ」

 別の取り巻きを諭すアナベラと呼ばれた少女を見て、クレアは少しこのボス的新入生を見直したので、とりあえず挨拶することにする。

 淑女教育で覚えた貴族家名一覧の中で、アナベラという令嬢がいたのは確かガトレーゼ侯爵家だったはずと当たりをつける。


「アナベラ・ガトレーゼ侯爵令嬢とお見受けしました。

 私、リッチモンド家のクレアと申します。

 以後、お見知りおきを」

 クレアはカーテシーをしながら挨拶する。


「あら、分かっているじゃない。きちんと挨拶出来るのね」

 タニアと呼ばれた取り巻きが上から目線でいってくる傍らで、目を見張ったアナベラはすぐに挨拶を返した。


「こちらこそよろしくお願いします。

 クレア・リッチモンド侯爵令嬢」

 そう言うと、優雅にカーテシーを返してきた。


 それを聞いて引きつったのはクレアを馬鹿にしていた取り巻きである。

「リッチモンド侯爵令嬢ってあのリッチモンド侯爵家……」

「騎士団長と雷帝の娘……」

 引きつって棒立ちの取り巻きに、中心であったアナベラが苦言を呈する。


「だから普段から言動に気をつけるように申しているのです。

 あなたたち、引きつって固まっている場合ではありませんよ。

 あなたたちがまずすべきことはなんなのですか」


 ハッと我に返った取り巻きの二人は慌ててクレアに謝罪すると自らも名乗った。

「す、すいませんでした。クレア様。

 私、マローネ伯爵家のタニアと申します。

 どうか、お許しを」

「申し訳ありません、クレア様

 私、ローゼ子爵家のトリニアと申します。

 どうかご容赦ください」


「あなた方の謝罪を受け入れますわ。

 お二人はいいお友達をお持ちですね。

 アナベラ様は立派な方なのですね」


「二人を許して頂いて、ありがとうございます。

 二人は、我がガトレーゼ侯爵家の寄子の伯爵家と子爵家の御令嬢ですの。

 よろしかったら私共々仲良くしてくださいね」


 アナベラの対応に少し気分のよくなったクレアは、快くアナベラ達と友達になることを了承した。







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