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27.魔王、迎撃に出立する

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 特に「最強賢者は~」は本作と関連が強い作品となります。

 征服を宣言してから一週間目。魔王城の寝室で休んでいたイセスだったが、その眠りは突然のノックの音で破られてしまった。


「イセス様、お休みのところ申し訳ありません」

「む、バフォメットか。構わん、入れ」


 上体を起こしたイセスが窓を見ると、外は既にほの明るく、太陽が昇る寸前のようだった。イセスは不機嫌そうな声で入室を許可すると、扉を開けたバフォメットが入室し、深々と頭を下げる。


「空中哨戒中の兵が敵軍を発見いたしました。まだ時間的な余裕はございますが、迎撃の手はずを整える必要がございます」

「ほう、もう来たか。分かった、着替えを頼む」


 その言を聞き、ベッドから飛び降りるイセス。戸口に立つバフォメットが身体を斜めにすると、その後ろに控えていた二人組のメイドが、イセスのドレスを抱えて入室してきたのだった。


「――で、兵力と位置はどうなっておる?」


 寝室に仁王立ちになり、二人組のメイド、リリィとルリィに着替えさせながら、イセスはバフォメットとの会話を続けていた。現在下着姿につき、バフォメットは入室はしているものの、遠慮してイセスには背中を向けている。


「は、高空からの偵察につき詳細は不明ですが、1万から1万5千と考えられます。発見当時は、フォーゼンの西北西80スタディオン(15km)の村落周辺において宿営しており、出立準備を進めておりました。恐らく、本日の昼頃にフォーゼン付近に到達するものと思われます」

魔王城(こちら)ではないのじゃな?」

「は、フォーゼンの目前を通らない限り、魔王城には向かえませぬ。大迂回も考えづらいでしょう」

「分かった。まずは作戦会議じゃな」

「は、大広間に指揮所を設営しております」


 着替え終わったイセスが扉に向かうと、バフォメットはその後に付き従って寝室を出て行ったのだった。



              ◇   ◇   ◇



「それでは、作戦会議を開始する!」


 大広間に到着したイセスは、近辺を記した大地図を広げた机の前で腕を組み、仁王立ちになって会議の開始を宣言した。

 ただ、それに相対するのはバフォメットのみ。デュラハンのシャノンはイセスの背後で待機しており、メイド二人は部屋の隅で待機していた。イセスはバフォメットの顔を見て、僅かに肩を落として苦笑した。


「とはいえ、こう人数が少ないと、何とも締まらんのう。最近転送した経理や調理人どもを並べても無意味じゃし」

「臣が召喚した兵でも並べますか?」


 バフォメットの提案に、肩をすくめて返答する。


「多様な意見が必要となれば頼むかも知れんが、今は必要無かろう。想定よりもちと早いが、それでも想定の範囲内の襲撃じゃ。規定の計画に基づいて迎撃するだけじゃな」

「では、陛下お一人で?」

「無論じゃ。汝はこの魔王城の警備を頼む。余はフォーゼンに赴き、敵軍の迎撃に当たる事にしよう」


 と、そこにノックする音が響き渡った。メイドの二人、リリィとルリィが殆ど音を立てずに素早く扉前まで移動して僅かに隙間を開け、扉の外の人物の応対を行う。


「「人間共の街より、使者が参りました。陛下に火急の用有りとの事でございます」」

「構わん、入れ!」


 イセスの声にリリィとルリィが扉を開けると、内勤の魔族に案内された人間の騎士が一人、入室してきた。フレデリクとかいう、イセスの案内役を務めていた帝国騎士であった。


「フォーゼン騎士団預かり、フレデリク・フォン・ヴュルテンベルクと申します」


 入室したコンラートは、涼やかな動作で敬礼を行った。室内を見渡し、バフォメットの巨躯を目にして一瞬視線が止まるが、表情に表すには至っていない。そして、早朝にも関わらず既に起床しており、周辺地図を前にしているイセス達を見て状況を理解していた。


「現在、フォーゼンに向かって、帝国からの討伐軍が接近中です。そのご連絡に参りましたが……状況はご存じのようですね」

「うむ、我々もその情報を掴んでおる。防衛の責任を果たすため、余はこれより汝等の街に向かう所じゃ」


 足早に扉に向かうイセス。バフォメット、シャノンもそれに続いて出て行く所で、フレデリクは彼らに引き続いて歩みを進めていた。


「それでは、自分が先導させていただきます」


 本館から中庭に出たところで、イセスはふと足を止め、バフォメット、フレデリク達の方を振り向く。


「無用じゃ。余は先に向かうのでな」

「?」


 目をひそめるフレデリクの前で、イセスは背中の翼を勢いよく広げると、ばさっと大きく羽ばたかせた。


「なッ!?」


 いきなり目の前で吹き荒れた風に、思わず目を瞑ったフレデリク。目を開いた時には、既にイセスは目の前から消え去っており、姿を探して周囲を見回すと、旋回しながら高度を上げているイセスの姿が目に入ったのだった。


「汝とシャノンは速やかにフォーゼンに向かうように! バフォメットは防衛を頼むぞぉっ!」


 上空から地上に向かってそう言い残すと、イセスはフォーゼンの方を向き、勢いよく飛び去っていったのだった。



              ◇   ◇   ◇



 フォーゼン上空に到着したイセスは、街はまだ眠りに就いているにも関わらず、城内の方は騒がしくなっている事に気がついた。

 城の上空でゆっくり高度を下げながら旋回していると、城壁の上や地上を歩いている兵士達がイセスに気付いたらしく、警戒した姿を見せている。イセスは彼らに対して害意が無い事を示すべく、大きく手を振りながら降下を続けていた。


 城の中庭に直接降り立とうとしていたイセスだったが、そこには大きな天幕が張り出されている事に気付いた。狭くなっている分、着地の難度が上がっているものの、イセスは問題無く地上に降り立つ事に成功していた。

 服に付いた土埃をパンパンと落としている所で、一人の騎士が足早にやってきて敬礼してくる。


「殿下、お早いご到着で。領主のクラウスはこちらでございます」

「うむ、出迎えご苦労」


 イセスは騎士に答礼し、誘導に従って天幕に入っていった。

 天幕の中には、周辺地図が置かれた大型の机が設置されていた。地図の上には、敵軍を表す駒が配置されている。机の周囲には、数名の騎士と領主のクラウスが立ち、なにやら話し合っているようだった。

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