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24.魔王、冒険者ギルドを再訪す

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 特に「最強賢者は~」は本作と関連が強い作品となります。

「申し訳ないが、私はここで待たせていただく」


 帝国冒険者ギルド・フォーゼン出張所の建物の前で、騎士フレデリクは立ち止まってイセスにそう告げた。

 扉を開けて入ろうとしていた"蒼炎の飛竜"の面々は、立ち止まってイセスとフレデリクの方を振り返る。


「ああ、騎士さんだからな!」

「どういうことじゃ?」


 手を打って納得しているリーダーのロッドに、怪訝な顔を見せるイセス。


「つまり――」


 ロッドの説明によると、冒険者ギルドは帝室直営であるため都市からは独立しており、都市所属の騎士は、冒険者ギルドの許可が無い限り立ち入ることができない、との事だった。


「ふむ。ま、問題あるまい。すまぬが外で待っていてもらおう」

「承知した」


 納得したイセスは肯くと、近くの壁面に腕を組みながら寄りかかったフレデリクを残し、"蒼炎の飛竜"の面々と共に冒険者ギルドに入っていったのだった。



              ◇   ◇   ◇



「いらっしゃいませ! あ、"蒼炎の飛竜"さんにイセスさんじゃないですか!」


 先日と同じように、にこやかにイセスと"蒼炎の飛竜"の面々を迎えるギルド職員のイザベル。しかし、そこに所長のトムの姿は見えなかった。


「先程の光柱の件ですよね? すみません、こちらにもまだ情報入っていないんですよ。今、所長が情報収集に出かけている所で、戻ってくれば何か分かると思うのですが……」

「広場で説明していた内容なら、オレ達も聞いてきたぞ!」


 と、かくかくしかじかとイザベルに説明する"蒼炎の飛竜"のリーダー、ロッド。その説明が終わったときには、イザベルの顔は驚愕の色に染まっていた。


「異世界のチート王女を擁して帝国から独立、ですか……私たち、どうなっちゃうんでしょう?」

「「う~~~ん……」」


 誰もその質問に答えられず、(うな)っているうちに、イセス達の後ろの扉を開けて、ギルドマスターのトムが戻ってきた。


「おや、お揃いだね」


 イセス達に片手を挙げて挨拶しつつ、カウンターをくぐり抜けて内側に入るトム。定位置らしき奥の方の椅子に、よっこらしょとばかりに腰を下ろし、イザベル、イセス達の顔をじっと見つめた。


「その様子だと、状況は分かっている感じ、かな?」

「あ、はい。あの……私たち、どうなっちゃうんでしょう?」


 イザベルの問いに、トムは飄々とした雰囲気のまま返答した。


「私たち、か。まず、冒険者であるあんた達は問題無い。自由に帝国領に行く事もできるし、ここでも依頼が回りさえすれば、そのまま仕事をこなす事ができるだろう」

「余もか?」


 イセスの質問にも、ちらりと顔を見ただけで、淀みなく返答する。


「うん、お嬢さんの登録文書は今朝、地方支部に向けて発送済みでね。どこでも立派な帝国冒険者の一員として取り扱われるはずさ」

「じゃ、何も問題無いんですね!」


 元気を取り戻したイザベルに、トムは肩をすくめて爆弾を投下した。


「冒険者は、ね。オレ達は終わりだよ」

「お、終わりって、どういう事ですか!?」

「我々には今、二つの未来がある。一つは、すぐにこの独立運動が制圧された場合。まあ、騎士団には悪いが、フォーゼンの戦力ではまともな市街戦にはなり得ない。城は燃えたとしても、街に損害は出ないだろうから、すぐに帝国冒険者ギルドの一部として業務を再開できるだろう」

「じゃ、大丈夫じゃないんですか?」


 首を傾げるイザベルに、トムは僅かに口の端を歪める笑みを浮かべた。


「帝国冒険者ギルドの存在理由の一つに、駐在都市の動向を監視し、不穏な動きを報告する義務があるのさ。それを果たせなかった我々に、続投の目は無い。それどころか、良くて事情聴取、最悪で拷問が待っているからね。身を隠すしかないだろうさ」

「はうぅ……じゃ、もう一つの未来は?」

「この独立が続いた場合だな。当たり前だが帝国側からの連絡は切られるから、外部の仕事は舞い込まず、冒険者の情報は共有されなくなる。元々、大した機能も無い出張所なんだ。根から切り離されると枯死するしかないわなぁ」

「うー、確かに、私たちだけで何ができるって言われると……」


 頭を抱えるイザベルを、トムは諦めの混ざった笑みを浮かべて見つめていた。



              ◇   ◇   ◇



「根から切り離されたのであれば、汝等自身で根を張れば良いのではないか?」


 ぼそりと聞こえた呟きに、トムはイセスの方に視線を上げた。


「ほう?」

「逆に言えばシガラミからも切り離されたと言うことじゃろう? 汝自身で思い描いた組織を作り上げる好機ではないか」


 思いも寄らなかった提案なのか、トムは顔をしかめて頭をガシガシと掻く。


「む……いや、しかし」

「ここには所長も受付も、そして冒険者もおる。足りないものがあるのであれば、揃えれば良いではないか。汝の手でな」


 言いつのるイセスに、顔をしかめたまましばらく無言を続けていたトムは、ようやく絞り出すような声を出した。


「こんなおっさんの心に火をつけて、一体どう言うつもりなんだ?」

「余も冒険者ギルドが無くなるのは困るのでな。それに、シガラミから解き放たれた汝がどこまでやれるか、見たくなったのじゃ」


 イセスの言葉を聞き、目を閉じてしばし考え込んでいたトムだったが、ついに覚悟を決めたのか、一転してすっきりした表情でイセスに向かって肯いたのだった。


「分かった。話に乗ろう」


 勢いよく立ち上がったトムは、イセスと"蒼炎の飛竜"の面々の顔を見渡した。


「さて、まずは3日間……いや、今日と明日の2日間ほど出張所を閉めさせて貰う事にしよう」

「どうするつもりなのじゃ?」


 突然の休業宣言に怪訝な顔をするイセス。トムはこれまでの気だるげな雰囲気を全く感じさせない口調でそれに返答した。


「まずは組織案を作る。そしてそれを持ち込んで支援を受ける先だが……今後、他の街が加わる可能性を考えると、フォーゼン領主の指揮下に入るのは避けたい。できれば、その王女様とやらの直轄という形にしたい所だな」

「なるほど、妥当な所じゃな。それでは、再開を楽しみに待っておるぞ」


 と、イセスは、満面の笑みで答えたのであった。

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