23.魔王、暇つぶしに街中を彷徨す
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特に「最強賢者は~」は本作と関連が強い作品となります。
「ふむ、大きな混乱は生じておらんようじゃな。クラウスとやらの群衆制御が功を奏しておるようじゃ」
領主クラウスと、イセス及びシャノンによる協議に入ってから約30分後。イセスは護衛の騎士一人のみを連れ、フォーゼン街中の噴水広場に向かって歩みを進めていた。
魔王軍の傘下に入った際の権利や義務と言った条件の交渉を行っていたのだが、ものの15分で飽きたイセスが「つまらん、飽きた。結論だけ聞かせろ」と、ダダをこね始めたのだ。
結局、条件交渉はクラウスと人間界に詳しいシャノンとの間で行われ、その間イセスは、街に出て暇つぶしする事で落ち着いたのだった。
なお、フレデリクは新しい任務として、イセスがフォーゼン滞在時の護衛・応対役を任せられる事になり、今もイセスの背後で護衛役として付き従っている。
「……」
「無言か、つまらんの」
イセスの発言に対して返答しないフレデリクに、イセスは一瞬物騒な目つきをして振り返ったが、それ以上言葉を発する事無く向き直り、あとは無言で歩みを続けたのだった。
なお、現在のイセスの服装は、ドレスの上からはケープを纏っており、服装そのものはさほど目立つものではないものの、深紅の髪と鄙には希なる美貌故に、本来ならば、周囲の視線を集める程に目立つ存在であった。
ただ街の人々は、噴水広場に急ぐことに気を取られていた事と、イセスのすぐ後ろに城の騎士が鋭い目つきで控えていた事から、敢えてイセス達にちょっかいを出す事は考えず、足早にイセス達の側を通り過ぎて行っていたのだった。
◇ ◇ ◇
噴水広場に到着すると、そこには高札が立てられ、更に、台の上に立ったコンラートと呼ばれていた騎士が、街の住民達に向けてよく通る声で何やら説明を行っていた。
街の住民達は既に百数十人が集まり、更に周辺から集まりつつはあったものの、人々はコンラートの説明に静かに耳を傾けており、混乱は生じていなかった。
「さて、何と説明しているのかの」
イセスはコンラートの説明を良く聞こうと、街の人達の後ろからつま先立ちに頭を覗かせようとしていた。
と、そこで突然、背後から声が掛けられたのだった。
「あれ、イセスちゃんじゃない?」
「む? お主等は……確か、"蒼炎の飛竜"とやらの……」
イセスが声の方を振り向くと、そこには冒険者グループ"蒼炎の飛竜"の面々が揃っていた。声をかけてきたのは斥候のギュンターだ。他の面々も揃っているが、リーダーのロッドの姿のみ見えなかった。
「イセスちゃんも、これを聞きに来たわけ?」
「まあ、そんな所じゃな」
「ところで、そちらの騎士さんは? 今日はシャノンちゃんと一緒じゃないんだ」
「あ、ああ、そうじゃな……」
イセスはどう答えるか一瞬、頭の中で考えた。今後のお忍びの事を考えると、城の関係者に自分が冒険者の資格を取った事がバレるのは避けたい。もちろん、"蒼炎の飛竜"に自分が魔王である事がバレるのは論外である。
「あー、どかんと一発のせいでな。城からお目付役を付けられたのじゃ。シャノンはその件で城で話をしておる。ま、お主等に噛み付く事はあるまいから、気にする必要はないぞ」
「まあ、あれは少々派手だったからなぁ」
「お、お主等の方こそ、リーダーはどうしたのじゃ?」
試験の際の爆発が原因と解釈したギュンターに対し、これ以上ツッコまれる事を避けるため、さりげなく主導権を取るイセス。
「リーダーは城の騎士に問い合わせるため、この群衆の中に突入している。そろそろ戻ってきてもおかしくは無い」
と、魔術師のレナが答えているうちに、大声でぼやきながらリーダーのロッドが群衆をかき分けて戻って来たのだった。
「やれやれ、大事になっているようだ!」
どうも、彼が代表として騎士か兵士に事情を聞きに行っていたようだ。
「で、リーダー、結局、さっきのあれは何だったわけ?」
「ああ、正直、信じがたいとしか言いようが無い!」
ロッドが語った内容は、以下のようなものだった。
フォーゼンの主君である辺境伯が 異世界より転移してきた王女を保護した。
この王女はチート能力を持っており、先程の光柱現象はその能力の一端である。このままでは王女は、異能を許さぬ帝国に拉致、殺害されてしまうだろう。事実、辺境伯は何者かに襲われ、殺されてしまった。
フォーゼン領主クラウスは辺境伯の遺志を継ぎ、王女を擁して帝国より独立する。これにより市民の暮らしには何らの変化は生じないため、安心して普段通りに生活して欲しい。
「異世界のチート王女だってぇ!? 是非ご尊顔を拝んでみたいものだねぇ」
「地母神の僧侶としてはぁ、異世界の方でも迫害するのは許せませんねぇ」
と、口々に答えるギュンターに僧侶のシャーリーン。ただ、魔術師のレナのみが一人、口元に手をやって考え込む姿を見せていた。
「突然現れた、人知を越えた技能を持った女性。異世界からなら、この世界の魔法の事を知らなくても不思議では無い。そして今はフォーゼンの騎士が護衛に付いている」
小声で呟いていたレナは突然顔を上げた。
「イセスさん、まさかあなた……」
「ん、余がどうしたのじゃ?」
レナはきょとんとした顔をしているイセスをしばし見つめていたが、すっと視線を外す。
「状況証拠のみで判断すべきではない、か。いえ、なんでも」
一人納得しているらしいレナを見て、イセスは小首を傾げていたが、気を取り直してロッドに顔を向けた。
「ともあれ、情報は助かる。そのような話になっていたとは知らんかったぞ。して、お主等はこれからどうするつもりなのじゃ?」
「そうだな。まずは冒険者ギルドだろう! 何か情報が手に入るかも知れないし、もし引き払うのならば、挨拶はしておくべきだからな!」
「そうか。ふむ……余も時間を潰さなければならん。共に冒険者ギルドに向かう事にしよう」
と、イセスは"蒼炎の飛竜"の一行と共に、広場を立ち去ったのだった。
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