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19.魔王、スカウトする

 新刊3本同時投稿中です。下部にバナーを貼ってありますのでぜひご覧下さい。

 特に「最強賢者は~」は本作と関連が強い作品となります。


※15話において当初、ハーレム賢者15話が誤って掲載されていました。現在は差し替え済みです。申し訳ありません。

「それで、魔王殿がどのような御用ですかな?」


 案内の騎士は領主の後ろで剣の柄に手を掛けたまま緊張した表情を保っているが、それに引き替え、領主のクラウスは飄々とした雰囲気を崩していなかった。


「話の分かる奴じゃな。面白い。気に入ったぞ」


 その様子を見て、笑みを浮かべる魔王イセス。


「では一つ、いい事を教えてやろう。余は、とある人間の手によって魔界より招かれたのじゃがな。その男は、ロンスベルク辺境伯イザークと名乗っておったわ」

「ロンスベルク辺境伯!? と言うことは……あの古城か! では、辺境伯はそちらに?」


 その名前を聞いたクラウスは、一瞬目を光らせた。心当たりがあったのだろう。イセスに辺境伯の所在を確認する。


「いや、余に刃向かったのでな、既に成敗されておる。確か、汝等の主君であったと思うが……これでめでたく、その傘下から外れた、と言う訳じゃな。それとも、主君の(かたき)を取りたいか?」

「なっ……辺境伯閣下を!?」


 イセスの告白を聞いて、柄に添えられた手にぐっと力を込める騎士。ただ、クラウスの方はあっさりとした表情で肩をすくめるばかり。


「確かに主君だが……いや、主君だった、と言うべきかな。他人(ひと)の領地内で勝手に魔王を呼び出すような事をしでかすとは……それこそ人類の敵、ですな。自業自得でしょう」

「そうか、気にせんのであれば、それで構わん。では、本題に入ろうかの」


 クラウスの表情に敵意が無い事を見取ったイセスは、至極あっさりとした口調で本題を告げた。


「お主をスカウトしに来たのじゃ」

「――は?」


 流石のクラウスも目が点になってしまう。


「ただの人間の、このオレを? 魔法も剣術も使えないのに?」

「お主に強さなんぞ求めとらんわ。このまま領主としてこの街を運営して欲しいだけじゃ」


 地が出たのか、一瞬口調が荒くなったクラウス。椅子に座り直し、しばし腕を組んで考え込んでいたが、改めてイセスに顔を向けた時には、普段の口調に戻っていた。


「つまり、(あるじ)替え、という事ですかな? では、一つ、お伺いしたい」

「なんじゃ?」

「魔王殿の目的は? 生きとし生けるものの抹殺、それとも破壊と混乱をこの地にもたらす事ですかな?」


 クラウスの質問に、イセスは首を振る。


「なんじゃそれは。余はこの世界、自然も人間共の営みも総て含めて気に入ったのじゃ。壊すわけがなかろう。ただ、人間界における拠点として、この地を手に入れたいだけじゃな」

「ではもう一つ、質問を。ここで、私が断るとどうなりますか?」

()()()に権力を持っている者に、改めて聞くしかないの」

「――正直なお答えですな」


 破壊と混乱を招きたいわけではない、と言う割には、拒否すればお前を殺して他の者に聞く、と言うイセスの回答に、苦笑するクラウス。


「最後に、もう一つだけ。これを呑んだ場合、我々は帝国軍100万を敵に回す事になりますが、魔王殿に勝算はありますかな?」

「ほう、余に勝算が無ければ、汝が殺されてでも拒否する、と?」

「命を惜しんでこの話を呑んだとしても、叛乱勢力として討伐されてしまえば結局、民を巻き添えに死ぬだけですからな。領主としてそのような無責任な事はできませぬ」


 と、クラウスはいったん口をつぐむと、ニヤリと笑みを浮かべて言葉を続けた。


「っと、このいい方は綺麗事に過ぎますな。つまり、帝国に喧嘩を売るような面白い博打(ばくち)は結構ですが、私と領民を賭けるには、それなりの勝算を見せて頂きたい、と言うわけです」


 クラウスの豹変にイセスは一瞬面食らったが、すぐに彼と同様にニヤリと笑う。


「ふむ、面白い。ならば汝の(もう)(ひら)いてやろう。せいぜい派手に見せてやろうではないか」


 と言い放ったイセスは、椅子を引いて席を立った。


「さて、どこで放てば良いのじゃ? ここで撃てば天井ごとぶち抜いてしまうぞ?」

「ありがとうございます。それでは、中庭にご案内いたしましょう」


 イセスの質問に対し、クラウスも席を立ちながら回答したのであった。



              ◇   ◇   ◇



 イセスとシャノンは、クラウスの先導により中庭に繋がる廊下を歩いていた。イセス達の後ろには、騎士達が緊張した面持ちで続いている。彼らは流石に抜剣する事は無かったが、しかし、怪しい挙動が見られた場合はすぐに斬りかかることができるよう、腰の剣に手を添えたまま、イセス達の背中を鋭い目つきで睨んでいた。


 歩みを進めながら、クラウスは斜め後ろのイセスに話しかける。


「魔王殿の力が証明された時は、このフォーゼンは魔王殿の傘下に加わる事になります。ただ、一つだけお約束いただけないでしょうか?」

「ほう、まずは言ってみるがいい」

「我々は魔王殿の奴隷ではありません。私はどうなっても構いませんが、私の民と部下達に危害が加えられる事は無きよう、お願いできますか?」


 イセスは一瞬首を傾げただけで即答する。


「ふむ、余は内輪揉めは許さん。余の臣下達にも余の考えは浸透しておるからな、魔族達に迫害される事は無かろう」

「ありがとうございます」


 それから少し歩いた後に、今度はイセスの方から話しかける。


「ところで、余の力にお主等が納得できなかった場合は、どうなるのかの?」

「我々としては、魔王殿と戦っても銅貨一枚の利益もありません。できればそのままお引き取りいただきたい所ですが」

「ま、安心せい。ぐうの音も出ない程に納得させてやろうぞ」


 クラウスの返答に、肩をすくめて返すイセスであった。

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