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14.魔王、召喚について講釈を垂れる

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 特に「最強賢者は~」は本作と関連が強い作品となります。

 イセス達が冒険者ギルドを出た頃には、既に日が傾いていた。


「さて、どうされます?」


 シャノンの問いに、イセスは顎の下に手をやって少しの間考え込んだが、すぐに肩をすくめて結論を出したのだった。


「ふむ、ま、そろそろ頃合いじゃの。城に戻ることにしよう」

「それが良いですね。夕食は如何致しましょう?」

「おう、そうじゃな。何か買って帰る事にするか。屋敷妖精(ブラウニー)共は自分たちで何とかできるじゃろうが、バフォメットは腹を空かせておろう」

「は、承知しました」


 と、歩き出した所で、突如立ち止まるイセス。


「そうじゃ、シャノンよ」

「はい、イセス様?」

「余はお主が女じゃとは知らんかったぞ」


 イセスの文句に、シャノンは頭を掻くかのように兜に手をやりながら、軽く頭を下げる。


「あー、申し訳ありません。あちら(魔界)でも基本、素顔を見せる事はありませんでしたからね。種族として、どうしても苦手なんです。素顔をさらけ出すって言うのが」

「ま、種族としての(さが)では仕方ないの。じゃが、人間界(こちら)で生きて行くには、今後も顔を出さねばならん場合もあるかもしれんぞ。覚悟しておけ」

「は、努力します」


 そしてイセスとシャノンは、昼食に訪れた食堂で幾つか持ち帰れる食事を購入し、再びシャノンの馬車に乗って魔王城に帰って行ったのだった。



              ◇   ◇   ◇



 シャノンが操る馬車に乗ったイセスは、魔王城が見える所にまで帰って来ていた。太陽は既に地平線に没しようとしており、小さな丘の上に建つ魔王城は、オレンジから群青色のグラデーションを持つ空を背景に、影絵のようにそのシルエットが見えている。

 元々、廃城に偽装して無人のように見せかけていた城ではあったのだが、今は明かりが灯っているのが見える。中庭にかがり火でも焚かれているのか、城壁内の建物が外から照らされており、その建物の窓からも光が漏れていて、イセスの目には完全に現役の城のように見えていた。


(ふむ、バフォメットとブラウニー共だけでどうなるかと思っておったが、整備は進んでおるようじゃな)


 馬車は細い山道を登っていき、ついに城門前にたどり着いた。もともとメインの城門は固く閉じられており、脇の通用門が開いていたのではあったが、今はそれも閉じられていた。

 御者台から降りたシャノンが、イセスを降ろそうと客室の扉を開けたところで、城壁の上から誰何する声が聞こえてきた。


何者(ナニモノ)ダ!」


 やや訛ってはいるものの、人間達の共通語だ。その声を聞いたイセスは、馬車から飛び降り両手を腰にやって胸を張りながら、その声の方に向かって鋭い声を上げた。


「うぬこそ何者じゃ! 余の顔を見忘れたか!?」


 声の主は、一瞬の間を置いた後、慌てた口調の魔族語で返してきた。


「こ、これは、陛下!? 失礼いたしました、すぐに開門いたします!」


 すぐさま開門を命じる声が飛んだかと思うと、閂を外すごつごつした音の後に、通用門の扉が開かれた。イセスとシャノンが中に入ると、扉の脇には騎士級の魔族、つまり、肌が青紫色で、ややガタイの大きい、蝙蝠型の翼を持ち、人間界ではレッサーデーモンと呼ばれる人型の悪魔が、直立不動の姿で待機していた。


「お帰りなさいませ、陛下」


 そこに、階上からの階段を降りてくる一人の大柄な人影が現れた。体格もその翼も、レッサーデーモンより更に一回り大きい深紅の肌を持った男爵級の魔族、グレーターデーモンだった。先程、イセス達を誰何した者だろう。

 そのグレーターデーモンは、イセスの前にたどり着いたところで、片膝をつき、深々と頭をさげたのだった。


「申し訳ありません、この城門を護り、近づく人間共は誰何して追い払うよう、バフォメット様より命令されておりまして」


 それを聞いたイセスは鼻を鳴らす。


「ふん、それで男爵級の汝が門番か」

「騎士級以下では人間共の言葉は喋れませんので、致し方有りません。自分も得意とは申しませんが、まさか子爵級の方にお願いする訳にもいかず」

「まあよい。事情は理解した。バフォメットは本館であろう? 汝等は任務に戻るがよい」

「はッ!」


 揃って直立不動で敬礼するグレーターデーモンとレッサーデーモン達に見送られながら、イセス達は中庭の先、本館の方に向かって歩みを進めはじめたのだった。



              ◇   ◇   ◇



 中庭には松明が設置できるスタンドが幾つか用意されていたが、そこには松明では無く"照明"の魔法が掛けられた石ころが入っていた。ともあれ、それによって中庭は手持ちの明かりなしで充分に歩けるほどの明るさを保っている。その中庭では、レッサーデーモンと、更に一回り小さい魔族、インプ達が様々な荷物を抱えて忙しげに働く姿を見せていた。

 彼らはイセス達の姿を見ると立ち止まり、敬礼を行ったり頭を下げたりしていた。シャノンは答礼をしながら、独り、首を傾げている。


「随分いますね。転送機はしばらく使えないのではなかったでしょうか?」

「ああ、此奴等はバフォメットが召喚した奴らじゃな」

「召喚……ですか?」

「ああ、汝ら妖精族は自前で行き来できるからな、転送と召喚の違いは分からんじゃろ」


 怪訝そうな顔をするシャノン。それに対し、イセスは軽く肩をすくめると簡単に説明を行った。


「まず、召喚というのはじゃな――」


 イセスの言葉によると、召喚とは、魔界に存在する魔族達そのものが来ているのではなく、あくまで星幽体(アストラルボディ)のみの召喚であり、こちら側の世界に魔素により作られた、仮初めの身体に憑依する事によって存在している、との事であった。

 この仕組みによって、憑依先の肉体を用意しなくても、魔族の力を借りる事が可能になるものの、仮初めの身体であるが故に、それは長時間維持できず、強力な攻撃や"解呪"の魔法、時間の経過でもその肉体は消失してしまうという欠点も含んでいた。


「部分的な貸し出しじゃからな。本体は変わらず魔界におるぞ。召喚された星幽体は独立して行動するのじゃが、本体に戻れば、ある程度記憶も共有できるというわけじゃ。まあ、夢を見るようなものじゃな」

「便利なもんですね」

「憑依した媒体の制限もあるし、あくまで本体の一部分のコピーに過ぎぬから、発揮できる力は限られておるがな」


 イセスはうんうんと頷きながら、シャノンに対して講釈を続けるのだった。

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