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11.魔王、爆裂弾を真似てみる

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 次回より、投稿時間を少し後に変更しようかと思っています。

 イセスが指をぱしんと鳴らした次の瞬間、地面に突き立てられた大剣は、轟音と共に空中から現れた稲妻の直撃を受けていた。


「なっ!?」「落雷!?」「落ちたぁ!?」


 突然の轟音に、思わず身を屈める"蒼炎の飛竜"の面々。見ると稲妻の直撃を受けた大剣は、溶けたり壊れたりこそはしていないものの、全体が黒く焦げ、柄に巻かれた革からは炎が上がっていた。

 呆然と立ち尽くしている魔術師のレナに、イセスはどや顔で宣言する。


「どうじゃ、余の"雷撃"は!」


 そのレナはしばらく固まっていたのだが、ようやく動きだし、小さく首を振る。


「違う……これは、"雷撃"じゃない」

「なんじゃとぉ!?」


 レナの却下にショックを受けるイセス。その後方では、デュラハンが頭を抱えているようだ。


「"雷撃"とは、目の前に魔法陣が現れて、そこから稲妻が飛び出す魔法。今のは、自然の落雷のように見えた。でも、こんな晴天で、前触れなしに落雷なんて、あり得ない……あなたが何かを行ったのだとは思うけれど、それが何なのか。私には理解できない」

「ふむ、ま、余の技は、この国の魔術と少し違う事は否定せぬがな。しかし、基準が違うのでは評価もできまい」


 しばし考え込んでいたイセスであったが、ぽんと手を叩くと、邪気の無い笑顔を見せながら、レナの方へ顔を向けた。


「――そうじゃ、こうしよう。何か、手本を見せてくれぬか?」



              ◇   ◇   ◇



「了解。それは理解できる。では、"爆裂弾"を。これは術式魔法、第4環の攻撃魔法。これができたらDランクは間違いない」


 小さく肯いたレナは、他の参加者に向かって下がるように声を掛けた後、目標である地面に突き刺さった大剣に向かって、両手に持った魔術師の杖を構え、魔法を唱え始めた。


「"マナよ、我が求めに応じ万物を砕く破壊の炎となれ"――」


 彼女の目の前に真っ赤に輝く魔法陣が浮かび上がる。それをイセスは興味深そうに観察していた。


「――爆裂弾(エクスプロージョン)


 最後に彼女が力の言葉を唱えると、魔法陣の中央から拳くらいの大きさの火球が飛び出していった。それは火の粉を引きながら飛んで行き、目標として立ててあった大剣に衝突する。

 次の瞬間、火球は爆発音と共に膨れあがり、周辺を焼き尽くしたのだった。


「ほうほう、なるほど、圧縮された火球が飛んで行って、当たったらこの範囲で爆発するのじゃな」


 イセスは爆心地に近づいてしげしげと観察している。爆発の衝撃で倒れた大剣を見つけると、それをひょいとばかりに掴んで再び地面に突き刺した。イセスの外見年齢は二十歳前、体格も年相応ではあるのだが、その細腕で突き刺した割には、シャノンの時と比較してより深く突き刺さっているように見える。



              ◇   ◇   ◇



「今度は余の番じゃな!」


 レナの側に戻ったイセスは、いかにも魔法を掛けるが如く、両手を前に突きだした。


「いくぞ! ――まなよ、わがもとめにおうじ、えーと、以下略。えくすぷろぉじょぉん!」


 適当に呪文らしき物を詠唱し、指をぱしんと鳴らすイセス。


 イセスの目の前に現れたのは、レナの爆裂弾と比較すると遙かに小さい、胡桃(くるみ)ほどの大きさの光球であった。しかし、その輝度は異常に高く、直視すると目が眩みそうになる。

 思わず手をかざしたり、顔を伏せたりしている"蒼炎の飛竜"の面々と、ギルド職員のイザベル。それに対し、シャノンは愕然としてイセスの顔を見ていた。


「お嬢様、まさかこれは――!?」

「ん、"極小超新星(プチノヴァ)"じゃが? 流石にこれ以上は絞り込めんが」


 出現直後は揺蕩(たゆた)っていた光球は、少しずつ前進を始め、次第に加速していった。


「ま、まずい……み、皆さん、伏せて下さいッ!」


 慌てて大剣とは逆方向に伏せるシャノン。目を伏せていた他の面々は反応が遅れてしまっている。


 もっとも、イセスは「大丈夫じゃぞー?」などと口にしていたのではあったが。

 ともあれ、加速度を増した光球は、ついに大剣に命中してしまった。

 その瞬間、先程の爆裂弾とは比べものにならない程の輝度をもった光が周囲を満たしてしまう。手で目を覆っていた"蒼炎の飛竜"の面々は、手を透かしてその輝きが目に入るほどであった。

 が、次の瞬間、同じ場所で()()()が輝いたかと思うと、光球はまるで動作を逆回転するようにしゅるしゅると収縮し、消え去っていった。


「め、目の前が真っ赤に燃えたぁっ!?」

「君の輝きは目の毒だねッ♪」

「神様が降臨されたのかと……」

「こ、こんなの見た事ありません!」


 目を(しばたた)かせながら顔を上げる"蒼炎の飛竜"の面々とイザベル。伏せていたシャノンも、身体を起こして立ち上がっていた。


「今のは……」

「うむ、余の"えくすぷろぉじょん"じゃ! お主の"爆裂弾"の効果範囲から、一寸たりともはみ出しておらんじゃろう?」


「あなたは、これが"爆裂弾"と?」


 腰を抜かしたかのように、ぺたんと腰を落としたまま固まっているレナを尻目に、シャノンは光球が着弾した場所に近づき、()()覗き込んだ。


「恐れながらお嬢様、どう見てもオーバーキルです」


 確かに、"爆裂弾"の効果範囲からはみ出る事は無かった。しかし、目標である大剣を中心としたその効果範囲は、地面も含めてことごとく溶けて蒸発しており、半球型に(えぐ)られた大地の表面はガラス化してしまっていた。


「ただ、お嬢様の"極小超新星"であれば、この程度で済むはずが無いんですが……」

「うむ、その通りじゃな!」


 シャノンの問いかけに、満面の笑みで答えるイセス。


「お主が知っておる通り、これだけ絞り込んでも、普通ならここら一帯を吹き飛ばしてしまうわ。ここがミソなんじゃが、すぐ後ろに"虚空爆弾(ヴォイドボム)"を続けたのじゃ。それで余剰出力を虚数空間に放り込んでチャラ、と言った訳じゃな!」

「相変わらず、大剣で細工物を作るような真似をしますね。そんな必要、あったのでしょうか?」

「これはお手本を真似る試験じゃからな」


 と、シャノンに答えたイセスは、改めてレナの方を向いた。


「――で、レナとやらよ。これで余の力が分かっただろうか?」

 ご覧頂きありがとうございます。

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